カミング・アウト
ご飯ができたので4人組の部屋に呼びに行く
コンコン、ガチャ
「ご飯できましたよー食べますよね?」
おや、意識のなかった最後の1人は目を覚ましている
「ああ、何から何まですまない」
「目が覚めたらお腹すいちゃったよ」
「ご飯...」
「お世話かけます」
上から金髪、ぶったぎられてた人、灰髪、足が折れてた人の順だ。物凄く個性を感じた返事だった。
とりあえずリビング的なところまで案内する。ルークはすでに席に座っている
「テーブルには適当に着いててください、並べるので。」
「そうさせてもらう」
食器を並べて盛り付けていく。目の前でやるのは毒を警戒されないようにだ。ピリピリしてたらご飯がまずくなるからね
私も席につく
「「いただきます」」
「「「「いただきます」」」」
ルークと私に続いて手を合わせる。そのへんの文化はゲーム時代に流入したそうだ。
黙々と食べる私とルークとは違い、4人組は
「ヤベエ久しぶりの温かいご飯...!」
だとか
「...うま、...うま」
だとかいいながらかなりの勢いで食べ進める。
欠食児童かよ。
「いきなりものを詰め込むとお腹壊しますよ」
それに金髪は苦笑を返す
「すまない、最近は飯を食べる時間も惜しかったから、久しぶりなんだ。大目に見てくれ」
「いえ、無理をしない程度なら何も言いませんよ。そうだ、とりあえずご飯を食べ終えたら自己紹介しましょう。」
頷き、食べ終わってから食器を片付けて姿勢を正して座る
「私はアルバート・フォン・ルインという。ルイン王国の近衛騎士団団長をしている。名前で察したかもしれんが、現国王の異母弟に当たる。」
「次は私ですね、セイン・ガーラントと申します。近衛騎士団副団長を拝命しています。ちなみに平民上がりですよ」
「次は俺だね。俺はジェイン・フォン・ウェンティス。近衛騎士団の団員だよ!貴族だけど長男じゃないから楽させてもらってまーす!」
「...名前はウィルヘルム・ザナトス。平民出身」
「王弟殿下が何であの森にいたのか気になりますが。ひとまず私はシオンといいます。」
「僕はルーク。シオンに拾ってもらったんだ。ちなみに魔人族」
ルークの自己紹介に驚いた顔の4人
「驚いた、魔人族は初めて見たな。あまり人族と変わりがないようだが...」
「人族とは根本から違うよ。魔力は軽く人族の10倍はあるし、寿命も森人並だからね。でも個体数は人族の3分の1にも満たないし、僕も別の大陸が故郷だから中央大陸で見ないのも無理はないよ。」
その説明に感心した様な王弟殿下とほか3人。
「魔人族は、歴史書に出てくるくらいしか情報が無かったからな。」
「初めて知りましたね、そういう情報。」
「あれ?でも何でルークはここにいるんだ?」
ジェインがふと気づいたように聞いてくる
「ルークはね、魔人族が住む大陸から攫われてきたのさ。奴隷として」
「「「「?!」」」」
「馬鹿な、奴隷など犯罪奴隷か借金奴隷しかこの大陸全体では認められていないぞ!?」
「知らないの?連合国の一部の商人が攫ってきた人たちを違法に犯罪奴隷として売買してるのよ、他国だからって探してみればそういう経緯で奴隷に落とされた人なんてごまんといるわ。」
「そうですね、僕以外にも攫われてきたという人はかなりいましたから。」
「それにね、魔人族の中では有名な話らしいわよ、人族が魔人族を奴隷としてさらいに来るの。幼いうちはいくら魔人族とはいえ非力だから、魔封じと隷属の首輪を取り付けたらあっという間に攫われるらしいわ。」
「そんな...連合国では取り締まっていないのか?」
はん、と鼻で笑ってしまった
「国ぐるみに決まってんじゃない」
「っ、そんな!」
「言い分は、『ほかの大陸から不法に渡ってきた侵入者を犯罪奴隷として何が悪い?』だってさ。攫われてきてるから旅券なんか持ってるわけないし、身分証もない。証拠は捏造。それが500年くらい前からある連合国の手口。」
シーンと静まり返ってしまった
「500年前からだと?ならば、初期に攫われた魔人族はどうなったのだ?寿命は森人並なのだろう?...まさかとは思うが」
「未だにどこかで奴隷として使役されているでしょうね。でも、助け出す手段は買い取って、持ち主の登録を変更してからでないと首輪で絞め殺されてしまうわ。それに聖属性の〝解呪〟か、〝呪い返し〟を掛けるか、反転の魔法陣を描けなければ首輪は外れない。」
こちらをギっと睨みつける
「どちらも喪失魔法ではないか、反転の魔法陣に関しては陣が伝わっていないものだぞ!?」
「だからどうしたと言うの?どれもも失われた理由なんて権力者が報復を恐れて抹消したんじゃない。今更だわ」
そこでセインが待ったをかける
「あなたは、ルークを買ったんですね?」
「そうよ」
「ですがルークは首輪をしていません」
「そうね」
アルバートはハッとしたようだ
「それにあなたは私たちが喪失魔法だと認識している魔法をいくつかすでに使ってらっしゃる。」
「あれ便利なのよ?」
「そうでしょうね、あなたの言葉を借りるなら『便利』だからこそ権力者が危機を抱いた...というところですか。」
「当たり。そういう経緯で消えた魔法は多いわ」
「お詳しいようだ。なら、先にあげた方法を、あなたは使えるのではありませんか?」
ルーク以外の視線が集まる
「セイン鋭いわね。その通り、使えるわ。私だけじゃなく、この森に招き入れた者は知っているわ。失われる以前に逃げ込んだ彼らも、当時を知るものが、まだまだ現役だもの。」
「招き入れた、ですか。この森ということは、ここは悠久の森の中なのですね...あなたは何者か、と聞いてもよろしいですか?」
「それは私もぜひ聞きたいが、聞いてもいいか?」
うーん
「別に隠しているわけでもないし、いいですけど、」
「それは僕も知りたいです。二百年前からシオンは全然変わらないし、うちの周りは色々おかしいから...」
ルークも?
「じゃあ初のカミングアウトだね。良いよ、改めて自己紹介しよう。私の名前はシオン・ゼクシオル・ガードナー。龍神の使徒で、約12000年前の邪神戦争期にこの世界に誕生しました。ここ中央大陸の守護者の称号をいただく、龍神の義理の娘ということになってます。趣味は秘境巡りと、本集め。最近のマイブームはポーション生成。以後よろしく?」
特大の爆弾は、爆発した