田舎の常識は都会の非常識
件の4人組の近くの木の上に転移した私はその侵入者を観察する、うち2人は大怪我をしているらしい。おぶわれているのと、足を引きずりながらもう1人に肩を貸されて走っている。奥地に向かって。
4人組の10メートル前方に飛び降りる
「そこの4人組、止まりなさい。用件はなんだ、この森に害なすなら容赦なく斬るぞ。」
神剣夜露を抜き、地面に突き刺しながら言った。
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4人組、と称された方は硬直していた。全身黒づくめの格好の怪しい人影が降ってきたと思ったら、流麗な剣を引き抜き、こちらを脅してきたのだから。
しかし、彼らには余裕がなかった。
「誰かは知らないが、こいつを助けてくれないか!?時間が無いんだ!今処置しなければ死んでしまう!」
背負われた仲間は瀕死だった。命乞いして逃げる時間も惜しかった。それにこの森に好んで入るものは自殺者か命知らずの密猟者か、自分たちのようにやむなく逃亡して決死の覚悟で入ってきたものくらいだ。悪意など抱く暇もあるわけがなかった。
「...良いでしょう。私の家に案内します」
「ああ、感謝する!」
謎の人物は幸いにも剣をしまった。治療まで施してくれるらしい、すがる他なかった。
「では、転移!」
「「「?!」」」
しかし、失われた転移魔法を使うとは予想外だった。
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なんかワケありっぽかったから、興味を惹かれて連れて帰ることにした。外ではなく、生活スペースに転移した。
その瞬間お茶を飲んでいたとおぼしき魔人の青年こと、ルークがこちらを見てお茶を吹いた。
「ルーク、怪我人です。とりあえず中級ポーション二本、下級ポーション三本、持ってきなさい」
吹いたお茶を適当において寄ってきたから使うことにする
「いきなりですかっ?!はいはい、持ってきます!」
一瞬目を剥いたが、すぐに走っていく
「貴方がた、背負ってる人をその3人がけの椅子に降ろしてください。足を引きずってた方はそのへんの椅子に座って、他はどいててください!」
そこで金髪が進み出た
「あ、ああ、しかし何か手伝いをさせてくれ。出来ることならなんでもしよう。」
「なら、そこの桶2つに四分の三ほど水を出してください。それと、これはなんの傷ですか?」
「剣で斬られたのだ。錆びてはいなかったし、毒も塗られていなかった。」
「なら大丈夫ですね」
「ポーション持ってきましたよ!」
「下級ポーションを一つ傷にぶっかけて止血!中級ポーションを飲ませて置いて!」
「はい」
ルークに任せて椅子に座る方に近寄る
「貴方はどの辺りを?」
「右の脹脛から足首にかけて火傷と、多分骨折。」
「なら1度骨の位置を直します。引っ張りますから暴れないで下さい。」
「...ああ」
「いちに、のさん!」
「ッうぐ!」
「いま中級ポーションを飲んでください!」
「...ぐ、わかっ、た、」
中級ポーションを飲むと骨は繋がったようだ。ぶらぶらしてない。
「このまま座っていてください、立たないでくださいね、」
「ああ、」
さっきの斬られていた方に近寄る。とりあえずほっぺたをペチペチ叩く
「おにーさん、叩いてるの分かりますかー」
「...ぐ、...」
「あ、反応はあるね、なら大丈夫か、ならとりあえず復元かけとけば血も復元するから大丈夫だよね!〝復元〟!」
「「「?!」」」
周りの3人が目を剥いたけど何でだろ。
「ちょっと無事な二方、このひと動かしていいんで、服を剥いて体拭いてあげてくれません?桶の水は換えて温かい水にしといたんで。換えの服はルークに借りてください」
「僕も手伝うよ~」
「ああ、何から何までありがとう」
「終わったらベッド出しますんで、そっちに動かしてください」
そこで比較的無事な金髪と灰髪はキョトンとした
「君たちのベッドじゃないのかい?」
「いいえ、別のベッドを持ってるのでそれを出しますよ。結構ここ空き部屋があるんで、そこに置きます。まとめて大部屋にしていいですか?」
壁を掘ったら部屋が出来るし、ベッドはゲーム時代の持ち物だ。
「そうか、助かる。」
「案内しますね。他のドアには触らないようにしておいてくださいね、多分迷子になりますから」
ここで初めて灰髪が口を開いた
「そんなに広い?」
「ええ、家主の私ですらルートを覚えるのに二年かかったくらいですから、迷って餓死しても知りませんよ。」
聞いてた3人は顔が引きつった
「着きました。ここの真向かいのドアはトイレですから入っていいですよ。ベッド出しますね」
持ち物からベッドを四つポポンと出した
「さっきから気になっていたのだが、君は時空魔法を使えるのかい?〝復元〟も確か時空魔法の分類だったはずだ。」
「使えますけど、ベッドのは魔法でもなんでもないですよ。そういうものなんです。」
「...深くは聞かないでおこう」
「懸命ですね。ああ、トイレの右横はお風呂ですから適当に入ってください。着替えはルークが届けますからお気になさらず。後で食事も届けます。では失礼します」
「世話をかける」
ま、いいかと思ってドアを閉めた。ご飯作らなきゃ
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灰髪が口を開く
「団長、何者なんでしょうか、あの人」
団長と呼ばれたのは金髪だ。
「考えても仕方なかろう。副団長、足はどうだ」
副団長と呼ばれたのは足を怪我していた人物だ
「もうほとんど治ってると思います。あのポーションほんとに中級ですか?効果がいやに高い気がします」
「効果が高いなら儲けものだろう。とりあえず今は傷を癒さなければ、何にもならん。」
「風呂があると言ってましたが、有難く入らせてもらいましょう。」
何せここ数日逃げるのに必死でまともに風呂に入っていない
「そうだったな...ありがたく入らせて頂こうか。服は『シュン』...届いたな」
3人でその服を凝視する。まさかの転移で届いた。
「俺らの常識ってもしかしたら通じないんじゃ?」
灰髪が呟いた言葉が、何故か的を射ていた気がしたけれど。現実逃避をするのに忙しかった。
彼らは風呂に入って更にその広さに驚愕するのだが、それは別のお話