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始まりは串刺しから

前作がこんがらがってきたので、頭の体操で始めました


前作の投稿ペースはちょい落ちかも?


楽しんでいただけると幸いです


ブクマ、感想お待ちしてます

最大の大陸、ヴェルガルム大陸の中央には、何人(なんぴと)も受け付けない、まさに人外魔境があった。それは大陸の五分の一を占めるほど広大で、数多(あまた)の国が領土とせんと競って兵を差し向けたが、入ったが最後、帰ってくる者はなく、幸運にも逃げのびたものは発狂し、内部の情報はただその外側から見た天をつかんばかりの巨大な樹があるというものだけだった。


ある教皇は言った。


──神があの場所に封じ込められている!我らが神は宣託(せんたく)を下された!勇者よ!信ずるもの達よ!我らが神をお救いせよ!


結果、その人造の神を崇めていた国は滅びた。



ある皇帝は言った。


──不敬にも、帝国の領土である森を魔物が占拠しておる!魔物から我が帝国の領土を奪い返すのだ!


結果、その帝国は国力を使い果たし、周辺国に呑まれた。




様々な理由で森を手中に収めんとした国は滅びの道を辿るものだから、森は恐れられ、いつしか立ち入るものもいなくなった。



『不可侵の森』『魔界』『絶望の地』『神の加護の届かぬ場所』


いつしかその森は 【悠久(ゆうきゅう)の森】と地図に示されるようになった。


...........................................................





大陸中の人間が恐れる悠久の森のほぼ中央に(そび)える大樹は、生命樹(セフィロト)という名が付けられている。その巨大な樹のこれまた巨大な根には、場違いなドアが設置してある。


中に入ると簡単な生活スペースがあり、奥へ進むとまるで実験室のような部屋があり、さらに奥へ進むと、そこは世界中の書という書を集めたような(実際すべてある)巨大な図書室がある。


その部屋に反してこじんまりした椅子に腰掛け、パラリ、パラリとページをめくる全身真っ黒な女がいた。


本を読み終わると手近な棚の空いたところに押し込み、そのままぐいっと背伸びをした。


「うぅぅぅん、終わったぁー」


何とも締まらない顔でさらにあくびを一つ


「流石にもう読み飽きたわぁ」


しっかりとした足取りで生活スペースに戻って本日のご飯を作る。


「最近気がついたけど、私って独り言多いのかしら」


はああぁぁぁああ


重々しいため息をついて食事を始めようとしたとき


──リィーン


鈴の音とともに顔がきゅっと引き締まり、フードをかぶる


「悪意はなさそうだけど、この侵入者。どこの奴だろ」


黒いローブの中に細身の長剣を()いて探る


「1、2、...4人...、少ないわね...」


目的地を思い浮かべながら魔法を発動する


「目的は後で聞けばいいや──転移!」


フッとその場から姿が消える黒ずくめな女。

随分といい加減なことを最後に口走ったが、最後のスペルははっきりと紡いだ。




......................................................




かつてこの世界は大人気VRMMORPG 【Mythology Online】略して〝ミオ〟と呼ばれた世界だった。

コンセプトは魔物によって滅びかけた世界に神が使徒(プレイヤー)を遣わし、人類を救うというもの。


プレイ人口は十万人規模、経過時間は現実の4分の1で、終盤では五つある大陸の守護者の称号を最強と(うた)われた5人の使徒(プレイヤー)が獲得し、最大の敵であり、魔物を統べる邪神を住民(NPC)と共に封印し、ワールドストーリーはクリアされた。その後は住民(NPC )の中でも使徒(プレイヤー)との関わりの深いキャラクターのサブストーリーが展開され、その後はラストクエストの魔王の降臨、その戦闘模様は生放送でテレビ中継もされた。


こうして現実で15年、ゲーム内時間にして70年の長寿VRMMORPG は幕を下ろした




私は事故によって首から下が麻痺し、入院していた。そんな生活に飽き飽きしていた頃、テストケースとしてこのVRMMORPGをプレイすることになった。ほぼいつでもログインしていたから、自然と廃人級のトッププレイヤーとなり、このゲーム内では、言わずと知れた中央(ヴェルガルム)大陸において守護者の称号をゲットし、ホームは初期から最高難度のフィールドに設定した上、転生という種族限界突破も果たした。


ゲーム終了後はとてつもない虚脱感に見舞われたものだった。




しかし、ゲーム終了から一ヶ月、私は死んだ。



台風の停電で人工呼吸器が停止し、医師や看護師が外部の医療施設へ搬送する途中、風でアンカーが外れた鉄骨が降ってきて、救急車に乗っていた私をピンポイントで貫通した。体を両断する勢いだったから即死確定だね


人生短かったわーなんて思ってたら次の瞬間には白い部屋に座ってた。


「なっ何事!?って声が出る!?」


人工呼吸器を付けていたから声は出なかったはずだ


『落ち着きなよ、きちんと説明するから』

「ひえっ」


突然空中から超絶美形なキラキラした人が出てきて情けない声が出た。


って、あれ?なんか見覚えがあるような...


『覚えているかい?』

「...どう見ても〝ミオ〟に出てくる最高神様ですね、間違いなく」

『大正解だよ!いやー覚えてたのかー、神様感激だね!』

「うわウザッ、稀に見るウザさ」

『ガーン!傷ついた!神様傷ついたよッ!』

「超どうでもいいんだけど。ほんとに最高神?」

『ひどいッ神様は繊細なんだよ?!』

「...ボソッ(神様のクセに?)」

『聞こえてるからねぇー?!酷すぎるよ!龍神くんがどうしてもって言うからこっちに呼んだのにぃ!この子やっぱり龍神くんそっくりだよぉ!』



は?


「どういうこと?龍神くん?もしかして〝ミオ〟の龍神さんの事なの?!」

『うぇ?うん、その龍神くんで間違いないよ。君のキャラクターの主神である龍神ゼクスは実在する。それでね、特に目をかけていた子が死んでしまうから、とりあえずこちらに呼んでくれって頼まれたのさ。君がゲーム内でAIだと思っていた人や神、幻獣は全部ほんとうに存在するんだよ。ネタバラシするとね?あのゲームは魂の選別と邪神の封印を兼ねて私たち神が作ったものなんだよ。──妙にリアルだって思ったりしなかった?』


確かに、掲示板などでもよく『神ゲー』『謎の運営』『NPCが本当の人間みたい』と言われていて、私もそう思ったひとり。そして15年間ハマり続けた理由。でも


「魂の選別って何?」

『そこによく気がついた』



パチパチと拍手をする最高神サマだけど、ふざけた雰囲気はなりを潜めた


『魂の選別、つまりは良き行いをしたプレイヤーの魂を、死後私の世界に招き入れることにしたんだ。邪神がいただろう?かの神は魂を食らったのだよ、愛する子らの魂を。そしてね、邪神に食われて歪んだ魂は、残念ながら元には戻らないんだ。だから君たちの世界から魂を輸入することにしたんだ。君たちは何とも思ってないかもしれないけど、あの地球は異常に多い魂で溢れていたんだよ、まるで限界まで水を入れた水風船みたいなものだった。なんせ管理する神のいない、野良の世界だったから、伸び伸びと野性的に育った強い魂の宝庫だったよ』


「じゃあプレイヤーの情報引き継いでってこと?」


『違うよ、死後の魂の記憶は綺麗に浄化して、お礼として先天的に元のプレイヤーの持っていたスキルの(もと)をあげるんだ。邪神がいない今、無双とか俺TUEEEEとかハーレムなんかやっても怖がられるか、うわぁって目で見られるだけになるよ?それに邪神も倒せる武器とかそれで何を殺るんですか?って話だ。』


「なら私はどうしてここにいるの?」


『いい質問だ。君のキャラクターは龍神ゼクスの使徒にして、中央(ヴェルガルム)大陸の守護者だろう?正確には、〝中央大陸における幻獣、及び希少種族達の守護者〟と言った所だ。君のゲームでの生活(プレイ)は実に素晴らしかった。龍神ゼクスはもちろん獣神アニマも、精霊神エレメンタルも、魔神デュランも、そして私、最高神もいたく感激したよ。他四大陸の守護者もそれぞれいい魂だったから、いつか地球で命を終えたら、君と一緒でこの場所に来る。最初に来た守護者が君なのさ。』


「いずれにせよここに来たってこと?」


『Exactly!』




...なんで急に英語になったし


「まあ、いいんじゃないの?中学の時の事故からずっと病院でお金を食いつぶすだけの生活より、ずっといいはずだもの。」


『そう言ってくれると助かるよ。向こうはね、本来は地球の時間軸より物凄く早くて、君たち使徒が去ってから遅くしていた時間を戻したから、ざっと一万年経っているんだ。君たちはもはや伝説の存在だね、でも文明は世界のバランスをとるためにあれ以上進まないからあまり仕組みは変わっていないし、混乱はしないと思うよ』




「...そう、あの時一緒に過ごした住民は、みんな死んじゃったんだね...」


私は比較的住民と仲がいい方だから、知り合いもいっぱいいた


『その子孫はかなり元気にしてると思うよ、君を見ていた龍神がこれは、という人物に受け継がれる加護を与えていたから。』


「あはは、目印みたいじゃん...」


『見つけやすくていいだろう、って龍神くんが言ってたよ。』




天然だからね、龍神さん




『さて、もう君を向こうに送るけど、場所はホームのベッド、ヘルプ機能は私に直通だから心配しないでね!』



そうなんだ...




「うん、いろいろありがとね、最高神ナヴァンノート。私を救ってくれたカミサマ達。例えゲームだったとしても、私はこの世界が大好きだったから、とても、とても嬉しいんだ。ありがとう。」



少し声が震えたけど気にしない


『なんか照れるね、名前を呼んでくれたヒトは久しぶりだ。こちらこそありがとう、冬月(とうづき)慈乃(しの)さん。この世界を好きになってくれて。これからは【シオン・ゼクシオル・ガードナー】として、頑張って!』



とても晴れやかな顔で最高神ナヴァンノートは笑った。一緒に私も笑った。


死んだけど、とてもいい日になった。




床に真っ黒な穴が開いて、それを指さす最高神


『ここを通れば、もう君は【シオン・ゼクシオル・ガードナー】だ。でもその前に一つ忠告を。悪人も当然いる。もちろん善人も。どちらが正しいなんて、決めることは出来ないよ。迷っても、悪ではない。正義は絶対ではない。矛盾を孕んだ世界は、それでも前に進む。覚えていて、長い時間の中で君はいつか悪意に直面することもある。その時は自分を信じて。』



「あはは、了解。最高神サマって過保護なんじゃない?じゃあね!」


そう言って黒い穴に飛び込んだ。


『それ、龍神くんも言ってた...』


なんか聞こえた気がしたけど、うまく聞き取れなかった。










次に目が覚めた時、最高神の言った通り、ホームのベッドに寝ていた。





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