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07 消えた住人

 金剛グリーンとクリスの二人が、借りた馬で飛ばすこと一日半。

 集落に辿り着いたときには夕方頃になっていた。

 林に囲まれた集落には、三十ほどの家が点在していたが、いくつかの家は焼け落ちて、そのまたいくつかの家は、木製の壁に穴が開いていた。集落を取り囲む柵も所々で破壊されていた。

 だが、それ以上に異様なことは、破壊された集落を悲しむ住人の姿が一人も見当たらないこと。たった一人も住人の姿も見えず、集落は静まりかえっていた。


「遅かったか」

「誰かいるかもしれない。探してみようよ」

「そうだな……俺はあちらを探してみる」

「じゃあ、あたしはあっちで」


 そうして、二手に分かれて、残っている家を確認していく。

 金剛グリーンが入った家は、村でひときわ大きな家だ。おそらくは、集落の長の家に違いないだろうと思う。

 咄嗟に備えて、刀を抜いて入り込む。

 まずは、椅子とテーブル、そして暖炉のある広間だった。

 暖炉は最近まで使われていた様子であるし、テーブルの上には水差しと水の入ったジョッキが置かれている。念のために水の臭いをかいでみると、腐った様子も無く、まだ新しいようだ。


 それから、奥の部屋へと行くと、寝室になっていてギルドの宿屋同様に固いベッドが置かれている。この硬いベッドがこの世界では標準であるらしい。寝具は起きてそのままにしたかのように乱れているが、特に目立った点はない。

 一応、ベッドに手を差し込んでみるが、冷たい感触が伝わってくるだけだ。


「ん?」


 ベッドの下に箱があることを見つけ、引っ張り出してみると、どうやらチェストらしきものだ。開けてみると、住民の戸籍らしき帳面や日誌、それに銀貨の入った袋が入っている。


「物取りでもないな……」


 念のために、一番新しい日記を取り出して開いてみると、内容としては税が幾らになるとか、誰々が喧嘩して仲裁したとか、そういった内容だ。

 集落の長は几帳面な性格なのか、何もない日でも一言、二言だけでも何かしら書いてある。


「最後の日付は、一昨日か」


 つまり、ニケの街を出発した日になる。

 一応、さかのぼって読み込んでいくと、ここ最近、魚や野生の動物があまり取れないと言ったことが毎日のように書かれている。ただ、今のところは、備蓄してある分でまかなえているので、特に飢えているわけではなかったようだ。数年に一度や二度程度は、獲物が取れない時期というものがあるらしく、今回もそういった時期なのだろうという感想も見つけた。

 ただ、あまりに長くなるようなら、領主に減税を直訴するしかないが、今の領主はあまり話が通じないので、困っているようでもある。


「動物が激減か……」


 そこになにかあるか分からないが、とりあえず異変らしき異変は起きていたようだ。それが、この現在の事態を引き起こしている予兆であったのだろうか。

 チェストを元の状態に戻して家を出ると、井戸の近くの地面が濡れていることに気がつく。

 金剛グリーンが、跪いて地面に付着した血痕を手にとって見る。

 まだ濡れていて、指先が赤黒く染まった。

 ニケの街を出発してから雨は降っていないことを考えても、何かが起きてからさほど時間は経過していないはずだと推測する。

 何かが起きたか、恐らく、襲撃があったと思われるが……。


「どうだい?」


 後ろからクリスが問いかけてくる。彼女も臨戦態勢になっていて、片手には細身の剣が抜かれていた。


「一日も経過していないだろう」

「あんたの勘が当たったってことかい?」

「別件かもしれない。この辺りに盗賊は?」

「この辺りじゃ、盗賊の被害は最近は無かったと思う。あんまり街の近くだと騎士団とか自警団を警戒して働かない」

「そうか」

「それに、盗賊の暴れ方ってわけでもないと思うね……貯蔵庫の食料とか貴金属も無事だったから」

「こちらでも、金は無事だった。やはり人だけが目的の犯行か」


 麻布で、指先に付いた血痕を拭き取りながら、改めて村の中を見渡す。

 無事なのは、数軒の家と、取水施設ぐらいだ。

 あとは、やはり村人の姿など一人も見当たらない。


「まるで人にだけ用事があった? 身代金でも要求する気?」


 クリスが、あまりに不気味な惨状となっている村を改めて見渡しながら、つぶやく。それはそれでありそうにないことは分かっているようだ。


「さて、どうだか。こんなことは俺も初めてだ」


 怪人があの手、この手で人々を襲い、時には人質を取ることもあった。

 時には、救えなかった命もある。時には、大打撃を受けたこともある。多くの死者を出してしまったこともある。

 それでも、これまでの経験を踏まえても、ただの人質としてさらっていったとも考えにくい。


「あの怪人が犯人と仮定しよう」


 金剛グリーンが、そう言いながら枝を手にとって地面に一つの丸を描いた。そして、離れた箇所にもう一つの円を描く。二つ目の円は小さく描いた。


「怪人は、街から逃げて、この集落にやってきた。そして、住民を襲った。その上で、一人残らず連れ去っていった。恐らく、アヴェンジャーも数多くいたのだろう」


 金剛グリーンが、大きな円から小さな円へと枝で指し示す。どうやら、大きな円はニケの街、小さな円はこの集落を差しているようだ。


「うん」


 クリスが、地面に書かれた円を見ながら頷く。


「だが、ここで分からなくなる。何のためにかだ。何か、思いつくことは無いか?」

「奴隷……」

「労働力はアヴェンジャーで十分だろう」

「人質、いや、多すぎるか」

「そうだな」

「保護?」

「まさか」

「だよね。……あー、もう、分からん」


 クリスが、頭をクシャクシャと掻きむしる。


「あんたの方が頭使うの得意じゃないのかい? 私は肉体労働専門だから」

「こちらがわ特有の事情があるなら、俺には見当がつかない」

「そうかもしれないけどさ」


 さらにクシャクシャと髪をかきむしる。


「良い髪なのに、台無しになるぞ」

「だったら、そんな質問をぶつけるなよ」


 金剛グリーンは、ふむと鼻から息を吐いて、トレンチコートから一枚の羊皮紙を取り出す。折りたたまれたそれを広げると、ニケの街が中心に描かれた簡易的な地図であった。

 彼らかいる集落も丸印で示されていて、主立った街道も描かれている。


「ここから、一番近くの村はここか?」

「どれどれ? あー、ここか」


 集落の南側にニケの街があり、金剛グリーンが指し示したのは、集落の北側の山の麓にある集落だ。ニケの街との距離を考えると、徒歩で一日、馬なら半日もあればたどり着けるだろうか。


「村ならそこだな。ニケに来るときに寄ったけど、普通の村だった」

「そうか。行ってみるか?」

「逃げた人がいるかもしれないってことか?」


 クリスが髪を指で整えながら問いかける。


「そうだ。なんだ、十分に鋭いじゃないか」

「誰だってわかるよ。でも、最初に行くなら、こっちじゃないかな?」


 そう言ってクリスが指さしたのは、集落から東側にある逆三角形の印だ。


「これは?」

「教会とか修道院の印。徒歩で半日の距離だし、まずはこっちを調べてみないか?」

「そうだな。色々と助かるよ」


 そして、二人は再び馬に乗り、無人の集落を後にした。


08 教会にて


 馬を飛ばすこと二時間ほどで、目的の教会に辿り着いた。

 石畳の街道が三つ叉に分かれており、そのすぐに教会は建っていて静かな様子だ。

 堅牢な石垣で囲まれ、教会自体も石のレンガを組み合わせて作られていて、この世界における十字架のようなシンブルなのか、逆三角形の下に十字がくっついているものが矢根の天辺にくっついていて、その下には薄汚れているが大きな鐘がぶら下がっている様子が見て取れる。

 石垣の中の敷地内には、教会自体の他に麦畑とブドウ畑が広がっているようだ。


「立派な教会だな」


 金剛グリーンが、中折れ帽を押さえながら教会を見上げる。


「そりゃ、地図に記してあるぐらいだし」


 そう言って、クリスが門の横にある小さな鐘をならす。


「何か知っていることがあればいいが」

「本当にね」

「ちなみにだが、どういった宗派かわかるか?」

「メサイア教団ってことしか分からないけど。ちょっとばかり堅物な連中だよ」

「そうか」


 そうこう雑談していると、足音が聞こえ、扉の小さな窓が開いた。


「どちら様でしょうか?」


 若い女の声で、窓から見える口元を見る限り、十代から二十代前半ぐらいだと見当をつける。とても、落ち着き払っていて、厳かな雰囲気を醸し出している。


「私はクリス。ハンターだ。近くの集落で、襲撃があったのを調べている。何か知っているかい?」

「……失礼ですが、ハンターカードを見せていただけますか?」

「はいよ」


 クリスが、腰のポーチからカードを取り出して、これでもかと言うぐらいに小窓に近づけた。


「……わかりました。今、開けます」


 小窓が閉じられて、ガシャリと閂の音がすると扉が開かれた。そこにたたずんでいたのは、真っ黒な修道服を着た修道女だ。禁欲的かつ慎重そうなたたずまいに、金剛グリーンはただ者でないように見えた。

 そう、隙が見当たらないのだ。

 修道女だが、何かしらの武術でも身につけているのかもしれないと見当をつける。


「私はこの教会のシスターを務めるマリアです。集落が襲われたことは存じてます。そして、何人かこちらに避難してきています」

「そうか。詳しい話を聞かせて貰えるか?」

「ええ。こちらに」


 そう言って、シスターマリアが先導していくが、その背後にも隙が一切見当たらない。そして、何よりも間合いをとり続けており、二人の剣の間合いにだけは入らないようにしている。

 本当に修道女なのかと疑問に感じ、横のクリスもまた何か感じ取ったようである。しかし、今は、情報が欲しい故に大人しくついて行く。


「実は、こちらからもニケの街に姉妹が向かっていたのですが、会われましたか?」

「いや、会ってない。集落までは川に沿って着たからルートがずれたと思う」


 クリスが応える。


「そうですか。ですが、ハンターの方に着ていただけたのは幸運です。これも精霊の思し召しでしょう」


 厳かに呟くが、その隙の無い佇まいを崩すことは無い。

 片側が石レンガ、反対側が窓になった廊下を抜けて、礼拝所に辿り着く。

 幾つもの木のベンチが並び、奥の正面には協会のシンボルと巨大なクリスタルが鎮座していた。礼拝所には、照明なのか光り輝く石が並んでいてボゥっと中を照らし出していた。

 礼拝所には、数人の年端もいかぬ子供と大人が数人ずついて、例外なく疲れた様子を見せている。


「こちらへ」


 と並ぶベンチの最前列に案内されると、そこには中年の男が、ぐったりとした様子で座り込んでいた。目の下にクマがあるが、疲れているのにあまり寝ていないのだろうか。


「シスター?」


 中年の男が、修道女とハンター二人を交互に眺める。修道女が簡単に双方の紹介をする。

 中年の男は、あの集落に住んでいた者であり、襲撃があった夜に、何人かの村人を連れて命からがら逃げてきたらしい。


「詳しい話は、ここではなんですので、個室に案内します」


 修道女が、周囲の不安そうな避難民を一瞥する。確かに、思い出したくも無いことのようなので、その提案に三人とも頷いた。

 そして、個室へと案内される。

 個室は、木のテーブルと椅子が置かれただけの殺風景でこぢんまりとした部屋だった。

 テーブルには、クリスとシスターマリア、そして集落の男が座る。


「では、再度になりますが、話をお願いします」


 修道女に促され、男は口を開いた。


「あれは、夜のことでした。警戒用の鐘が鳴っているのを聞いて、起きました。家族を置いて家から出ると、見たことも無いような化け物が……」

「それは、アヴェンジャー、全身に海藻をまとったものか?」

「はい。そういう人の形をした妙なモンスターです。ご存じで?」

「まぁ、続きを」


 ひとまず、怪人の仕業だと言うことはこれで確定した。ただ襲うのでは無く、さらっていったことに違和感はあるが、続きを促した。


「はい。ただ、続きと言っても、みんな襲われていて……とにかく、これは、もう村の防衛どころじゃないと思ったので、家族を連れて逃げ出しました。夜の街道を命からがら逃げて、とにかくこの教会に辿り着きました。おらの前後に、何人かやってきましたが……全部で十人もいません。村が、どうなったのかしっているんですか? みんな無事ですか!?」


 なにか感情があふれ出たように男が立ち上がって問いかけてくる。


「すまんが、俺たちが辿り着いたときには、誰もいなかったし、死体すら無かった」

「ああ、そんな!?」


 男が、両手で頭を抱えて嘆く。


「まだ、希望を捨てるな。きっと生きている」


 そうは言ったが、金剛グリーンは最悪の事態も考慮している。優しくも無い気休めにもならない嘘だった。


「そうです。希望を捨ててはなりません」


 シスターマリアがそう言いながら、立ち上がった男をなだめる用意して席に着かせた。

 言葉とは裏腹に、シスターマリア自身は十分に落ち着いていて、彼女もまた気休めの嘘を言っているように見えた。


「他に、覚えていることは? 他のモンスターがいなかったか?」

「いや、暗くて大騒ぎで、私は、無我夢中だったもんで……。他の誰かは何か見ているかもしれませんが」

「なんでもいい。他に変わったことがあればなんでもいいんだ。教えてくれないか?」

「なんでも……いや、他に……、たいしたことは無いです。ここ一月、川から魚が全然とれなくなったぐらいで、関係ないでしょう?」

「魚か……」


 金剛グリーンが、独り言のように呟いた。


「気になるのか?」


 クリスが、金剛グリーンの様子に気がついて問いかけてくる。


「あの怪人も食事をするなら、魚を食うかもしれないと思ってね」

「すみませんが、何をご存じなのです?」


 マリアが、冷たい雰囲気を崩さぬまま聞いてくる。


「ニケの街にも、怪人とアヴェンジャー、その海藻をまとったモンスターが現れた」

「ニケにもですか……」

「追い払ったというか、逃げられたが、川沿いに移動していると踏んであの集落に」

「そうですか。では、こちらのような姿でしたか?」

「これは」


 シスターマリアが傍らから差し出してきたのは、落書きが書かれた粘土板だった。そこには、人間の身体とタコの頭部らしき姿が描かれている。見る限りは、推測だが怪人だろうか。


「姿を見たという子供が描いたものです。新種のモンスターなのか、魔王軍の刺客なのかわかりませんが」

「……この怪人ではない。ニケの街に出たのは魚の頭をした奴だ」


 魔王軍というフレーズが気になったが、それはひとまず置いておく。


「別でしたか……」

「だが、怪人同士仲間であるだろう。合流しているかもしれない」

「……これから、怪人を探すのですか?」

「当然。怪人を放置して置くわけにはいかん。あれは、人類の不倶戴天の天敵だ」

「天敵……」


 金剛グリーンの断定に、シスターマリアは何か考え込んでいる様子だ。


「やはり、魔王軍に関係するのでしょうか?」

「それはなんとも。すまんが、魔王軍自体についてあまり詳しくない」

「この人、東方の人なんだ」

「そうでしたか」

「よければ、魔王軍について簡単に説明して貰えるか?」


 魔王軍という言葉はこの世界に来てから聞いたことはあったが、あまり詳しくは知っていなかった。


「何から説明したものか……そうですね。魔王ディスグレアが現れたのは十年以上前のことです。幾多もの魔族をまとめ上げて、さらに統制の取れた動きをとり、人類に戦争を仕掛けてきました。人類側も、大陸同盟を結んで抵抗し、十年以上にわたって戦争が続いていました。ですが、三年前に、勇者と三百の戦士達を先頭に、総力を投入して魔王城に攻め入り、魔王の討伐に成功しました」

「ふむ」

「ですが、魔王軍の幹部クラスを全て討伐するには至らず、人類側にも大きな損害がありました。ですが、これで魔王軍が大々的に動くことは無くなりました。しかし、噂では幹部が再び魔王として君臨しているといったことや、水面下で侵略を進めているという話もあります。今回のこと、あなた方の言う怪人ももしかすれば魔王軍に関係するのでは無いかと」

「そいうことか」

「これ以上は、長くなりますので」


 この話だけでは、怪人が関係しているのか判断はできない。しかし、人類の敵というのならば、無関係とも思えなかった・


「とりあえず、どうする? 川沿いに調べてみるかい?」


 クリスが金剛グリーンに向かって聞く。彼女なりの考えとして、魚が減ったことや川沿いに移動していると推測される点から、川にアクセスしやすい箇所を拠点としていると考えた。


「そうだな。そうしよう。あまりぐずぐずしていられんか。すぐに集落に戻ろう。ありがとう、助かったよ」


 そう言って、金剛グリーンが立ち上がったが、シスターマリアが静かに口を開いた。


「私も行きます」

「何?」

「この辺りの地理に詳しい人間も必要でしょう?」

「だが、しかし」

「私は教会の制裁者を兼任しています。腕には少々自信はあります」

「制裁者?」


 聞き慣れない言葉に、おもわず聞き返す。


「神に背く敵に制裁を下す専門職だよ。要は、教会のモンスターハンター」


 戸惑う金剛グリーンに、クリスが簡単に説明をする。


「その言い方は、あまり好きではありませんが、おおむねはそういったことになります」

「……その制裁者があなただと?」


 そういった事なら、出会ってからの隙のなさにも説明が付き、一人納得する。


「はい。実は、私だけでも集落の確認に行きたかったのですが、神父様に一人では行かせることはできないと止められていました。ですが、あなたたちと同行するなら許可もおりすでしょう。馬もいますので、遅れはとりません」

「ふむ」


 少々金剛グリーンは考え込む。果たして、本当に連れて行くべきなのだろうかと。

 だが、答えを出す前にクリスが口を開く。


「決定だな。生半可な腕じゃ制裁者の称号は与えられない。私は同行に賛成さ」

「分かった。だが、二人ともに無理はしないで欲しい。怪人の強さは格別だ」

「わかったわかった。それは身にしみて分かってるさ」

「よろしいですか? では、神父様に一度報告と連絡をしてきます」


 そう言ったとき、ドアをノックする音が聞こえた。


「どうぞ」


 シスターマリアが促すと、一人の女性の姿を表す。


「来客中に失礼、神父様がよん……」


 入ってきた女性は、黒髪に東洋人の顔立ちをしていて、修道服を着ていた。

 金剛グリーンと目があった瞬間に、言葉が止まる。

 同じく、金剛グリーンも目を見張り、呼吸が止まる。


「グリーン?」

「ピンクか!?」


 金剛グリーンは勢いよく立ち上がって、ドアへと近づいていく。

 そう、彼女はセンカンジャーの一人、陸奥ピンクに他ならなかった。


「無事だっ……」


 近づいたとき、金剛グリーンは言葉を失った。

 彼女の修道服は、左腕の肘から先がだらんと垂れていて、まるでそこに腕が無いかのように見えた。

 そして、足下には右足だけが見えて、左足もまるで無いかのように見えなかった。

 陸奥ピンクは、再会の喜びを見せることも無く、金剛グリーンから目を背けた。

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