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37 キャノン

 虚空が開き、亜空間ドックから大和と陸奥が現れ、二人はそれぞれの戦艦に乗り込む。

 金剛グリーンも戦艦へと乗り込み、いったんは怪人から距離を取った。

 怪人は、下半身が海中にあるが、現れている上半身だけで高さは百メートルはあるだろうか。


「はぁぁぁぁ!」


 怪人が叫ぶと、右肩の傷から血があふれ出て、血が腕の形になった。血糊が垂れ流れ、その下からは灰色の腕が現れる。


「……再生だと?」


その光景に金剛グリーンが呟く。

 サメが再生するなど聞いたことも無く、あれは巨大化薬の効果もあるのだろうか。


「ふざけるなー!」


 シャークキングは、両手で全長約二百メートル弱の伊勢を持ち上げ、ひっくり返してしまう。シオンと海賊達がなすすべも無く海へと投げ出され、伊勢は哀れにも船底を空に向けた。


「くっ」


 金剛グリーンが、伊勢への誤爆を避けるために、真正面からシャークキングに向かって体当たりをかます。


「ぐぉ!?」


 海底まで脚が届かず踏ん張りがきかないのか、思った以上に勢いよく怪人を押していくことに成功する。が、シャークキングの両腕が、金剛を掴む。


「このまま沈めてやる!」


 しかし、大和と陸奥から、シャークキングへと大量の砲弾と魚雷が迫り、頭部を中心に被弾し、両腕の力が緩む。その隙を見て、金剛は急旋回してシャークキングから逃れた。


「小賢しいわ!」


 シャークキングが、両腕を振り回して戦艦を掴もうとするが、三隻の戦艦は空を飛びながら距離を取って、砲撃を続ける。

 しかし、今度は海水がシャークキングの体を覆っていき、分厚い海水の壁は砲弾も魚雷も阻んで、体にまで攻撃を届かせない。

 さらに、怪人が海水をまとった両手を向けると、そこから人頭大の水球をマシンガンのように撃ち出し始めた。

 三隻の戦艦は、水球をかすめ、ときに被弾し、バランスを崩しかける。


「マリア。チャージキャノンを! 俺とヴィハンで引きつけるぞ!」

「わかりました」

「了解」


 金剛グリーンが、恐らく戦艦戦であれば、最も破壊力が高いであろうマリアの魔術を込めたチャージキャノンを使うしか無いと判断する。

 いったん、マリアの戦艦は、怪人からより離れて、金剛グリーンとヴィハンが、より近づいて砲撃を食らわせていく。

 二人も、魔術を砲撃に込めて、炎の砲弾を撃ち出してみるが、結局それは海水の壁に阻まれてしまう。

 恐るべき防御の能力であった。

 恐らくは、これが、怪人の奥の手であったのだろう。

 そして、怪人からの水の砲撃は、確実に金剛と大和の二隻にダメージを与えていく。


「撃ちます!」


 マリアから通信が入る。

 陸奥の全ての砲身に光が収束していた。

 他の二隻の戦艦は、射線から退避して行く。


「発射!」


 陸奥の砲身から、稲妻をまとった光の線が発射され、光の線は混ざり一本の太い光となって怪人に向かって行く。

 海水の壁にチャージキャノンがぶつかり、貫こうとするが、一部の光は弾かれるようにそれていく。

 ただの海水では無く、強力な魔力を込められた攻防一体型の魔術障壁であり、極太の光は海水も削っていくが、とうとう削りきれること無く、チャージキャノンは収束してしまう。


「そんな!?」


 マリアが、疲れた様子で驚く。今の一撃には、ほぼ全魔力を込めての最大の一撃だった。


「まずいな……」


 金剛グリーンも呟く。

 白兵戦では通じていた分、想定外であった。

 怪人は今、全力を出している。そして、ただ巨大化しただけで無く、間違いなくパワーアップしている。

 あの巨大化薬が、ただ巨大化だけするわけではなく、そう根本的な生命力を限りなく上昇させ魔力を与えているとすれば、腕の再生や圧倒的な防御魔術に説明が付くのだろうか。

 三隻はなすすべもなく、通じない砲撃を繰り返し、着実に水球の攻撃を受けて、損傷を蓄積している。


「何か、手は……」


 本来なら、巨大化した怪人に対しては五隻の戦艦が合体した巨大ロボットであるセンカンオーで戦うのが定石ではある。

 五個分のインファニティストーンの力を集結することで、相乗効果によって計り知れないパワーを引き出すことが出来る。

 しかし、今は、船は四隻しか無く、イエローも居ない。


「何か手は……行けるか?」


 金剛グリーンが一つの手を思いつく。

 出来るかどうかは分からないが、理屈の上では可能なはずだと計算する。

 そして、さらなる強力な攻撃をするにはそれしかないと決定づける。


「ヴィハン、マリア、戦艦を合体させるぞ」

「はい?」

「え?」


 ヴィハンとマリアから戸惑いの声が帰ってくる。それもそうであろう、五隻がそろえば合体できると説明はしているが、今は三隻しかいないのだ。

 

「説明する暇が無い。やる! 合わせてくれ。大和の両サイドに付くぞ」

「……やってみます」

「わかりました」


 金剛グリーンの言葉を信じ、ヴィハンとマリアは頷く。センカンジャーとして最も長く戦い続けてきた男の言葉を信じることにした。

 三隻は怪人から距離を離す。一見すれば逃げ出したかのように見えただろうか。


「逃がすか!」


 怪人から水球が撃たれ、三隻はそれに晒されながらも合体をはかる。

 大和の右側に金剛、左側に陸奥が併走する。

 大和の船尾部分が折れて、それが胴体の下部分になる。

 金剛と陸奥の船尾も折れて回転し、それが肩の部分になっていく。

 ハードポイントが現れて、赤いレーザーガイドが位置を合わせていく。金剛が、まずは先に大和とドッキングする。船の中央部分が伸びて、黒色の肘関節が現れ、船の先端部がスライドして、中から真っ黒で巨大な手が出てくる。


「マリア!」


 金剛グリーンが叫ぶと、陸奥も大和とのドッキングを果たす。金剛と同じように、船の中央部分が伸びて、肘関節が現れる。そして、船の先端部が開き、黒い巨大な手が現れる。

 ドッキングには成功し、大和の艦橋部分がせり上がり、中から銀色の無機質で巨大な顔が出現する。

 脚こそないものの、センカンオーへの合体変形は無事に成功した。

 艦内司令部だけが、転移し、大和の司令部と合体を果たし、三人とかもめは、一つのコックピットに移動していた。三人それぞれが舵を握り、センカンオーを操縦していく。


「これが?」

「センカンオー」


 マリアとヴィハンが、成功したというのに戸惑った様子である。ロボットという概念さえも無い世界の住人なのだから、それもそのはずであろう。


「なんだ!?」


 怪人がさらに水球を打ち込んでくるが、センカンオーの周りに特殊装備の超電磁シールドが展開され、水球はセンカンオーに届く前に弾けていった。

 センカンオーは、上半身だけのまま海上に着水し、両腕と胴体に付いている砲を向ける。

 次から次に砲撃が始まり、格段に威力の増した光の砲弾が、海水の壁に着弾していく。


「この程度でやぶれるとおもうなぁ!」


 怪人が、さらに一回り大きな水球を撃ち始めてくる。だが、それも電磁シールドでふさがれていく。


「グリーン! まだ威力不足ですよ。チャージショットをすればいいのですか?」

「魔術を込めましょうか?」


 ヴィハンとマリアが矢継ぎ早に金剛グリーンに問いかけてくる。

 金剛グリーンとしては、既に計算通りではあった。

 あとは、計算通りの手段が通じるかだけである。


「センカンオーキャノンを使う。狙いは俺がやる。ヴィハンは機体制御、マリアは砲撃を続けてくれ」

「わかりました。信じますよ」

「ええ」


マリアと金剛グリーンの舵がスライドして、代わりにマリアの前には二本の操縦桿が現れ、金剛グリーンの前にはハンドガンの形をした操縦桿が現れる。

 上半身だけのセンカンオーが、ブースターから炎を噴出しながら怪人に近づいていく。


「パワーチャージ!」


 金剛グリーンがセンカンオーキャノンの為のパワーチャージを始めると、ディスプレイに丸い円が現れ、徐々にエネルギーを貯めていることを示す。

 両者の間では、光と水の砲弾が撃ち合われ、時に砲弾同士がぶつかって大きく弾け、嵐のような状況になり、波は大きく揺れる。


「六十パーセント……」


 エネルギーが思いの外、速く貯まったが、どういうわけか六十パーセント以上に達しない。


「三隻分だからか……」


 インファニティストーンなら、イエローの分のレシーバーもあるが、恐らく、使用者がいないので活動休止しているのだろう。

 金剛グリーンは、これで行くしか無いと判断し、さらに操作を続けていく。


「センカンオーキャノン発射準備! 各員衝撃に備えろ!」


 センカンオーの胴体、丁度大和の船首部分の装甲が左右にスライドすると、直径五メートルを超える巨大な砲が姿を現し、前方にスライドして固定される。

 砲の周りが点滅を繰り返して円を描き、それが徐々に速くなっていく。砲の中には白い光が収束していき、圧倒的なパワーを感じさせる。


「センカンオーキャノン発射!」


 グリーンのかけ声で、センカンオーの胴体の砲から、直径五メートルを超えるエネルギービームが発射された。

 水の弾など意にも介さぬ様子で空を貫き、怪人に迫る。

 怪人が何かを悟ったのか、海水の壁を全面に集中させて、エネルギービーム防ぐも、圧倒的なパワーは、海水の壁を一挙に削り取っていき。


「そ、そんな、ばかな!」


 海水の壁を全て消し飛ばして、エネルギービームが怪人の胴体を貫いた。そのままエネルギービームは彼方まで飛んでいく。


「うそだぁぁぁぁぁ!」


 貫かれた部分から、全身にヒビのように亀裂が入り込んでいき、亀裂から光が漏れ出す。

 最後に全身が光に包まれかかと思えば、次の瞬間に破裂し山のような水柱を上げ、怪人の肉体を木っ端微塵に燃やし尽くしていき、エネルギーの粒子が光る雪のように辺りにフワフワと漂っていた。

 巨大な衝撃波、周囲に豪雨のように海水を降らせ、降らせ終わった後には、穏やかな海に戻り、遠くには虹が見えるのだった。

 こうして、苦肉の策であったが、怪人の撃破に成功したのだ。

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