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29 港町にて

 リベリオンにて、傷も癒えたが、結局、他の怪人やMなる人物の足跡を追うことは難しかった。そこで、前からの予定通りに、西の荒野の魔女に会いに行くことを金剛グリーンが提案し、受け入れられた。


 一つの幌付き馬車と二頭の人が乗った馬が、街道沿いに進んでいた。

 馬車は二頭の馬に引かせ、手綱を握るのはマリアであり、中にはかもめが乗って、旅に必要な物資が積まれている。

 二頭の馬には、それぞれ金剛グリーンとヴィハンが騎乗していた。

 馬車も馬も旅の物資も、ミリアリアが手配してくれたものだ。

 それだけでなく、金剛グリーンは、ミスリル製の胸当てに小手、フード付きの緑色のマントを羽織っており、この装備も手配して貰ったものだ。

 今後、意味なく目立つわけにもいかないと言うことで、金剛グリーンもかもめも現地の人間に見えるように服を着替えたのだ。


 また、マリアの提案で、ヴィハンと金剛グリーンは教会に雇われた護衛ということにもしてある。教会ならば、街に入るのも関所を通るのも比較的楽であることと、教会が旅をするときにハンターなどを護衛に雇うことも珍しい話では無く、目立ちにくいというのもある。


 さて、彼等は西の荒野を目指していたが、地理的にはリベリオン領の南方向にある港町から船で西に向かうのが早いとことで、まずは港町ラシャに向かっていた。

 ストラ河の河口に位置しており、川沿いに進めばニケの街に着く。


「もうすぐ辿り着くでしょう」

「ええそうですね」


 マリアの言葉に、ヴィハンが頷く。両者ともに、ラシャには訪れたことがあるという。

 色々と不安はあったが、この両者は普段ならさほど対立すると言うことはなかった。

 とはいえ、ここに来るまでにモンスターと戦ったが、ヴィハンは発見次第即殲滅の独断専行に移り、他の者達に抗議の嵐を受けていた。

 戦闘時には、とにかく注意が必要であることは、間違いの無い事実のようだ。

 

 ともあれ、ひとまずは無事にラシャへと辿り着いた。

 街に近づいただけで、潮騒が聞こえ、潮の香りも強く感じられる。

 街の正門で簡単なチェックを受けて、マリアの提案通りにあっさりと入ることが出来た。

 ストラ側の河口を取り囲むように街が作られており、他の街同様に、険しい城壁が街を取り囲んでいた。

 背の高い建物は多くないが、その分街は広いようだ。

 大通りには、ニケの街のように屋台が目立ち、人通りも非常に多く活気があった。

 人間だけでなく、エルフやドワーフ、リザードマンまで自由に闊歩している。


「人の出入りが激しいので、多種族の方も多いのですよ」


 マリアが説明をする。


「その分、人が隠れるにももってこいのタイプの街ですね」


 続けてヴィハンが言った。

 なるほど、確かに、暗殺者に狙われた彼としては、こういった街に潜むことも多かったのだろう。


「ひとまずは、ギルドに行き、情報収集しましょうか」


 ヴィハンが提案し、街のギルドへと向かう。

 ニケの街とは違い、ラシャの街のギルドは表通りに面していて、建物も非常に大きい。

 マリアとかもめを馬車に残して、金剛グリーンとヴィハンがギルドへと入っていく。

 中は、テーブルが幾つも並んで酒場になっていて、片隅にギルドの受付と買い取りのカウンターが設置され、そこはニケの街と同じようになっている。

 テーブルには、各々得物をもったハンター達で埋まっており、非常に賑やかでもある。

 金剛グリーンがハンターカードを提示する。


「確認します、Fランクのヒロシ様ですね」


 受付嬢がなにやら受付簿に書いて、カードを返してきた。


「やぁ。この街にきたばかりだが、何か変わったことはあるか?」

「変わったことですか?」


 受付嬢は、むむと視線を下にして考え出す。


「どういった変わったことですか?」

「そうだな……見たことも無いモンスターが現れたとか?」


 ひとまずは怪人が現れたかどうかである。それだけは危険視しなければならないし、次の手がかりにもなる。


「いえ、そういったことはありませんね。ただ」

「ただ?」

「最近、見たことも無い巨大な船に乗った海賊が現れまして、非常に対処に困ってますね。強力な大砲を積んでいるので、まともに接近すら出来ず、商船が一方的に略奪されていまして」


 巨大な船という単語に、金剛グリーンとヴィハンが顔を見合わせる。ここに来る前に、人気の無い荒野で戦艦を呼び出し、ヴィハンに一通りのレクチャーだけはしていた。


「他に、船の特徴は?」


 ヴィハンが乗り出して問いかける。


「ええ。それが、黄色い鉄の船です。周辺の海賊をまとめ上げて、大船団となってまして、それを避けて行くことも難しく、今は全ての船が運休になってます。それを知らない旅人が大勢足止めされていまして、治安の面でも不安がありますね」


 再び、顔を見合わせた。

 その黄色い鉄の船には心当たりがある。

 伊勢イエローの戦艦、伊勢である。

 だが、それがどうして海賊となっているのか。


「レシーバーを取られた可能性は?」


 ヴィハンが微笑みを崩さないまま問いかける。


「無いとも言い切れない、しかし、そう簡単に変身して戦艦を呼び出せるとも……」


金剛グリーンが、歯切れの悪い言い方をする。

 思わぬ形で、仲間に関する情報が手に入ってしまった。

 だが、することは一つだ。

 その海賊を確認しなければなるまい。

 どういった経緯で、そのようなことになったのか、確認し、最低でもレシーバーを回収する必要があるだろう。

 いずれにしろ、海賊をどうにかしなければ、船での移動も出来ないのだ。


「とりあえず宿を取って話をしよう、部屋の手配を頼む」

「ええ」


 そして、ヴィハンが宿の受付に向かい、金剛グリーンは建物の外で待っているマリア達の元へと向かう。

 しかし、建物から出る直前に、壁に掛けられていた鐘がけたたましく鳴り響いた。

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