28 久しぶりの再会
領主の書斎に、金剛グリーン、ヴィハン、ミリアリア、かもめ、マリアが顔をそろえていた。金剛グリーンが連絡を取り、一度合流することを提案してのことだ。
しかしながら、ヴィハンを見つめるマリアの表情は険しかった。
金剛グリーンが、領主について調べて分かったことを簡潔に述べていくが、その表情が気になっていた。
「――というわけだ。何か質問や付け加えたいことは?」
「一つ良いでしょうか?」
マリアが間髪入れずに口を開く。
そして、ヴィハンを睨むように見つめるが、その彼は涼しい顔で微笑んでいる。
「鉄血の狂犬が本当にセンカンジャーになったのですか?」
「そうだ。俺としてはレシーバーが選んだものとして受け入れることにした。正直、彼の戦力はどうしても必要になる。それに、怪人の強さを考えると、今後は一緒に動いた方が良いだろう」
「グリーンがそう言う以上、反対までは出来ませんが、しかし……私とは宗派こそ違いますが、彼は破門されています」
「……この世界について詳しくないのだが、そんなに不味いのか?」
思わず金剛グリーンはヴィハンを見るが、彼は決して微笑みを崩すことは無い。
「教会の最終手段です。彼の宗派では、死罪と同意義となります。逃亡した場合は通常ですと賞金がかかりますが……」
「ええ。教会は公にしたくないようで、賞金はかかっていません。ですが、何度か暗殺者を差し向けられましたね」
変身せずとも領主の城一つを陥落させかけた実力者をそうそう暗殺できるとも思えない。それ所か、魔王討伐に成功した勇者である、そう易々と暗殺者が対抗できたとも思えなかった。
「つまり、教会を敵に回すと?」
「そうなります。今後、活動する上で、最大宗派の教会の協力が得られないのは非常にマイナスです」
「あの教会ならば、僕がいなくても協力は難しいと思いますがね。何せ、権威の塊ですから、力を持った部外者を敵視することはあっても協力するとは思えません」
マリア、ヴィハンの双方の言い分にはどちらも一理ある。しかし、金剛グリーンは一つの懸念があった。
「一つ、気になっている点がある。ヴィハン、何故、破門になった?」
「僕の正義が気にくわなかったようです。僕が上に行くことも良しとしなかったのでしょう。かといって、魔王討伐の実績を無視するわけにも行かない。そのため、僕は悪魔と契約しているとえん罪をかけられました。それが?」
「……悪魔も契約を躊躇うと思いますが」
実際の権威のためか、それともと金剛グリーンが口元に手をやって、考え込む。
「そうですね。悪魔などが姿を現したら、すぐさまに殺しているでしょうね」
「……今回の件もあり、一つ可能性がある」
ヴィハンの物騒な言葉のあとに金剛グリーンが言った。
「怪人が、あちこちに潜伏している可能性だ。それこそ、今回のように人に化けている可能性もある。そのことを考えると、無闇に組織に協力を求めること自体がリスキーだ」
「できれば、私達は信用していただきたいし、恩人には可能な限りは協力するつもりです」
とミリアリアが口を開く。
が、実のところとしては、事後処理が非常に手間になっていて、どれほど協力できるかといったところである。
「教会に怪人が潜んでいると?」
「経緯はともかく、可能性は十分にある。今後は、出来るだけ目立たないように動いた方が得策だろう。まず前提としては、俺たちは、人間同士の争いに関与している場合でもないし、関与するべきでも無い。当然、助けを求めている人間は助けるべきだが、それはモンスターや怪人が原因となっている場合だけだ」
「異があります」
ヴィハンが口を挟む。
「僕は僕の正義を実行するだけであり、その対象に怪人が加わっただけです。絶対に目立つなとはお約束できません」
「貴方、魔王軍以上の脅威なのですから、優先順位を考えてください」
「優先順位は目の前に居る順ですが?」
険しい表情でマリアがかみつくが、ヴィハンは素知らぬ様子で涼しい顔である。
どうもこの二者は、根本的に相性が悪いように思えて仕方なく、金剛グリーンは頭痛の種が増えたと悩むことになる。
☆
ある部屋に、金剛グリーンとかもめがいた。かもめは、左手と左足に金属製の魔道義肢をつけているが、まだ慣れないのか右手には杖が握られていた。
とりあえずは、ゆっくりと歩く程度なら回復はしてきたそうだ。
二人がいる部屋は、リベリオン城の客室の一つだ。一人用の部屋であったが、それなりに広く、調度品も整っていることから、客室でも格が高いのであろう。
一人の男が、椅子に座って開け放たれた窓の外を見ている。
いや、本当に見ているのだろうか。
その濁って生気の無い目には、明確な意志を感じられることは無い。
窓の外から入ってくる風にも、まるで無反応である。
「大海……」
かもめが、別人のように変わり果てた彼の姿を見て呼びかけるが、当然のように反応は無い。
「どうしてこんなことに……」
「わからん」
金剛グリーンとしても、やりきれない思いでいっぱいだった。
レッドは、人一倍の正義を胸に秘めた優しい男だった。若さと勢いで、皆を引っ張ってくれるリーダーだったのだ。
それが、今では、まさに生きる屍である。
二人とも、センカンジャーである以上、誰かが欠ける可能性を考えたことはあった。
危機的状況はこれまでも幾つもあった。
だが、その度に協力して乗り越えてきた。
だというのに、この異世界に来てから、致命的な損失を出してばかりである。怪人の強さが、地球でこれまで戦ってきたものよりも手強くなってきているのは実感しているが、それでも、このような悲劇が待っていようとは想像だにしていなかった。
「大海は、ミリアリア嬢が、今後の世話はしてくれるそうだ。彼女なりにも責任を感じているらしい」
「そう……」
今後の度に連れて行く余裕は無く、ミリアリアの提案はありがたく受け入れていた。
「……俺たちはもっと強くならなければならない。もう、仲間を失うわけにはいかない」
「グリーン」
グリーンが、自分の手のひらを見て、そして強く握りしめる。
そう、決して、もう仲間を失うわけには行かない。
固く決心をしたのだった。




