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遠い先輩  作者: 音我手ぃ舞
〜歩み編〜
4/12

〜歩み編〜4

夕陽の綺麗なオレンジ色が街を染めてゆく。時刻は6時50分。家路を急ぐ。ミーティングが思ったよりも長引いた。部長が土星について延々と話をしていたせいだ。ずっと座っていたから腰が痛い。土星だけであんなに熱く語れるもんだ。土星観測は今週末土曜日に天文学部全員で行うことになった。少し楽しみでもある。休みの日まで学校に行くのはやはり面倒だけど。


最寄り駅から歩いていると、私と同じ制服の女子高生がいた。珍しい。私の地元には同じ学校の人が少ない。誰だろう。知っているひとかな。大分前を歩いているからなかなか追いつかない。すると、その人はコンビニへ入って行った。私は無意識にその人を追っていた。コンビニに入る。顔が見てみたいと好奇心にかられる。彼女はジュースの売り場前で止まった。少し離れたお菓子売り場から彼女の様子を伺う。周りに怪しまれそうだったので買う予定でもないポッキーを手にとった。




「あ、財布持ってきたっけ?」


慌てて鞄を探っていたら彼女はレジへ向かっていた。その時、顔が見えた。


『栞先輩だ』


今日から入部した先輩だ。ただそれだけしか知らない人なのになぜか先輩を目で追っていた。可愛い横顔。肩にかかるぐらいの長さのサラサラしてそうな髪。私より低い身長。私は先輩をガン見していた。そのまま先輩はレジを通りコンビニから出ていった。はっと我に返る。




「何やってんだろう、私…」


やっとのことで財布を見つけたが、買う理由が無くなってしまった。ポッキーを元にあった棚に戻しコンビニを出た。先輩はもういなかった。ケータイのロック画面を見れば時刻は7時20分をまわっていた。


「ヤバ…急がないと」


私は早歩きになった。










***********




「ご馳走様っ」


「沙月、デザートにケーキあるんだけと、いる?」


「いる!」




リビングのソファにどかっと座りテレビをぼーっと観る。最近のバラエティは面白くない。けどテレビを着けないと何か落ち着かない。静かなのは好きだが、静かすぎるのは苦手だ。


洗い物を済ませた母がケーキを運んできてくれた。私の好きなチョコレートケーキ。苺とラズベリーが乗っている。美味しいに決まってる。それじゃ、


「いただきまーす」


甘いチョコレートのクリームが口の中に広がる。


「んー美味い!はあ〜幸せだぁ」


「そーいえば、なんで今日遅かったの?いっつもは6時半ぐらいには家に着いてたのに」


「あぁ、ミーティングが長引いたの。なんか部長さんがさ、土星の観測をしようとか言い出して。土星について延々と語り出すし。もー退屈過ぎて大変だったよー」


「へえーいいじゃない、土星の観測かぁ。お母さんも行きたいわ。で、いつ観に行くの?」


「ん?今週末の土曜日ー」


母は私より星に興味がある様だ。小さい頃はよくプラネタリウムに連れて行ってもらったっけ。天文学部に入った理由は母からの影響もあるが、一番は地味で楽な部だからだ。私の学校では高校のくせに中学校のように全員がなにかしらの部に入部しなければいけない。恵と私は面倒くさがり屋で体力もないし、楽な部に入ろうと決めていた。そんな時に見つけたのが天文学部だ。星がよく観える日にしか活動がないと言っても過言じゃない。ゆるっゆるな部。毎日毎日怠いと言っている私にとっては最高な部だ。星も好きだし、何より、仲の良い恵が一緒だ。天文学部も結構居心地がいいのかも。



部活のことを考えていたら、ふと、ある顔が浮かんだ。栞先輩の横顔だった。私はあの横顔を見た時変な感じがしたのを覚えている。フワッとした体が宙に浮くような錯覚に陥った。一体私はどうしたのだろう。考えれば考えるほど分からなくなるので、私はさっさとお風呂に入ることにした。


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