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不信 -dutch angle-

 二十六年前、与太さんが高校生だった頃のお話。

 与太さんの家はお父さん、お母さん、与太さん、そして妹さんの四人家族だったそうだ。また、家族仲も良く、御近所からも羨ましがられるほどだったらしい。

「もちろん喧嘩をしなかったという訳ではありませんけどね」

 ときには取っ組み合いの喧嘩にまで発展することもあったが、最後にはいつもみんな笑っていた。

 与太さんは懐かしそうに、もう戻らない日を恋焦がれるようにそう語る。

 しかし、彼が身を置いていたその幸せな家庭は突然壊れてしまった。

 彼一人を残して、跡形もなく。

 完全に消え去ってしまったのだ。

 家庭が壊れてしまったその日。与太さんは部活動で帰るのがだいぶ遅れていた。急がないと、そう思って与太さんは帰り路を必死に走っていたそうだ。

「その日は妹の汐織しおりの誕生日だったんです」

 家族の誕生日は家族全員で祝う。それが与太さんの家の約束事だったらしい。

 与太さんはその約束を守るために走り続け、何とか晩御飯の時間までに家に着くことができた。

 ホッと安堵し、与太さんは玄関のドアを開く。

 汐織はプレゼントを喜んでくれるだろうか?

 そんなことを考えながら与太さんが家の中に入ると待っていたのは両親でも、妹さんでもなかった。

 血。

 血を滴らせた肉片たち。

 与太さんを待ち構えていたものはそれだけだ。

 玄関の靴箱の上に置かれた花瓶には両親と妹の左腕がまるで花のように活けてあった。それは血で赤く染まったその手は花弁のように開かれ、まるで彼岸花のよう。

 血の跡を辿りリビングに入ると、そこはまさに地獄だったと、与太さんは言った。

 家族の残った右手から指を切り取り、テーブルの上に置かれていた汐織のバースデーケーキに蝋燭のように突き立てられていた。

 家族の両足は骨と、骨から剥がされ細切れにされた肉とに分けられ、床に「HAPPY BIRTHDAY!」という文字を書くための材料にされていた。

 家族の胴体はリボンでラッピングされ、あたかもプレゼントのようだった。

 折り紙で作ったリースに紛れ、家族の腸で作ったリースが飾られていた。

 そして、与太さんの家族の頭部は椅子の上に置いてあったらしい。パーティーのときに被るような円錐型の帽子を被らされながら。

「その光景を見たあの日から、私の時間は止まっています」

 二十六年前のことを話し終えた後、与太さんはそう漏らす。その顔は相変わらず無表情だが、その目に深い悲しみが刻まれていることを私は肌で感じていた。

「きっと探し物が見つかるまで再び動きだすことはないでしょうね」

「……あの、その探し物ってもしかして」

「ええ」

 静かに椅子から立ち上がりながら与太さんは答える。

「私の探し物は私の家族を殺した犯人ですよ。私はどんな手段を用いても見つけ出すつもりです。そして必ず殺します」

 その後、お茶のお礼を言って私は与太さんの部屋を後にした。そして自分の部屋に戻った瞬間、ベッドに跳び込む。

「……悪いことしたな……」

 正直予想だにしていなかった。与太さんの探している物が自分の家族を殺した犯人だったなんて。

 シーツにくるまりながらさっきの話を思い出す。

 花瓶に刺さった手。

 蝋燭のようにケーキに突き刺さった指。

 身体の寒気が止まらない。ハーブティーで温まったはずの身体が凍りつく。

 あの人はどんな手段を用いても必ず見つけ出すと言っていた。

 二十六年間、その想いを抱いて生きている。

 あれだけの強い決意があれば彼はどれだけ無理なことでもやってのけるだろう。

 だが。

「必ず殺す……か」

 私には何も言う権利はないし、言うつもりもない。他人である私が口を挟めるはずがないのだ。

 ……ごめん。私はいま嘘をついた。

 大層な理由を掲げてそんなことはできないと言ったけれど、本当はそんなことが理由ではないのだ。

 私は怖いだけだ。

 彼の探し物に疑問を投げかけることで私までもが憎しみの対象となってしまうことが、殺意の対象となることが。

 途轍もなく恐ろしいのだ。

 きっと彼の決意はどんな言葉でも揺らがない。もし、揺らがそうとするモノが現れたら彼はそれを壊すだろう。何の躊躇もなく。

 身体の震えと寒気が止まらない。

 暗い部屋の中で私はそれが治まるまで自分の身体を抱きしめ続けた。

 

 

 結局昨日の夜はいつまで経っても身体の震えと寒気は治まらず、いまのいままでずっと自分の身体を抱きしめていた。

 日の光を見ることでやっと身体も安心したのか震えと寒気が治まり、私の心も恐怖から解放される。

 言ってしまえば一晩中起きていたことになるのだが、おかしなことに疲労感はない。頭は問題なく動いているし、昨日蓄積した身体の疲れもベッドで横になっていたからか、ある程度解消されていた。

「私もそれなりに体力がついた……のかな?」

 前にテスト前に徹夜したときはフラフラになってしまい、結局酷い点数を取ったものだが。

 独り言を呟きながら昨日与太さんが用意してくれた服に着替える。

 ……与太さんは一体これらを何処から調達してきたんだろう?

 そんな風に疑問に思ったが深く考えてはいけないような気がしたので考えるのをそこでやめ、部屋を出て食堂へと向かう。

 こんな時間ではまだ与太さんは起きていないだろうが、こうしておけば後で呼びに来てもらう手間が省けるだろう。

「おはようございます、夏弥さん。意外と早起きなんですね」

 食堂に着くと与太さんは余裕の表情で新聞を広げていた。

「お、おはようございます。そう言う与太さんこそ早いじゃないですか。まだ六時にもなてませんよ?」

 昨日のことがあるので私の応対は少したどたどしい。

「私は寝なくても問題ありませんから」

 ん? ということは……。

「まさか一睡もしていないんですか!?」

 私も寝ていないが常日頃からこんな風に眠れない訳ではない。しかし、いまの与太さんの口振りから考えるとこの人は普段から睡眠に時間を費やしていないようだ。

「? 別に驚くことではないでしょう?」

「いや、四十三のオジサンが徹夜してピンピンしてたらそりゃあ驚きますよ……」

 私を抱えあげたときもそうだが、この人は細い身体をしているくせに一体何処にそんな体力を隠しているのか、皆目見当がつかない。

 それに、いまの言葉は特に見栄を張って言った訳ではなさそうだ。与太さんの顔には疲労の色は見えない。

 まるで、昨日からまったく時間が動いていないような印象さえ受ける。

「まあ、そんなことよりこれを見てください」

 与太さんは自分が読んでいた新聞をこちらに渡す。

 渡された新聞に視線を落とすと、そこにあったのは『連続誘拐殺人事件の二人目の被害者、遺体で見つかる』という大きな見出しだった。

「昨晩、ゴミ置き場に捨てられていたそうです。大量の血液がなくなった状態で」

「血液が?」

「ええ、首に大きな切り傷があったようなのでそこから血液が流れ出たのかと。ちなみに一人目の被害者の死因は溺死だそうですよ。肺の中から大量の水が検出されました」

 一人目は溺死。二人目は失血死。

 一人一人わざわざ殺し方を変えているというのか?

「恐らく精神異常者の仕業でしょうね」

 精神異常者。

 その言葉が私に昨日の話を思い出させる。

 その異常な殺害方法から考えると与太さんの家族を殺した犯人も精神に異常をきたしていることは明白だ。

 まさか、この犯人が与太さんの――。

「まあ、私の探し物ではないようですが」

 私の考えを先読みしたかのように与太さんがその可能性を否定する。

「何です? その顔は?」

 私は当てが外れたことでよっぽど間の抜けた顔をしていたのだろう。与太さんが呆れたような声で尋ねる。

「はは……、もしかしてこの犯人が与太さんの探し物かと思ったので」

 頭をかきながら白状する。

「絶対に違います」

 そうキッパリ言い切る与太さん。

「何で言いきれるんです?」

 新聞に書いてある程度のことから判断するのは難しいことではないのか? まあ、短絡的にこの犯人が与太さんの探し物だと考えた私が心配することではないかもしれないが。

「私の探している犯人とは異常の方向性が全く違います」

「異常の方向性?」

 そう言われてもいまいちピンとこない。

「簡単にいえばタイプの違いです」

 与太さんはコーヒーを啜りながら説明してくれる。

「私の家族を殺した犯人は殺した後に死体を弄ぶことに快感を覚えるタイプの人間でしたが、この犯人は人間を殺害する過程に快感を覚えるタイプの人間だということですよ」

「……私からしたら同じですよ。どっちにしても最悪じゃないですか」

「ええ、それが普通です。ですからこの違いに気づいて得をするのは、きっと警察と私だけでしょうね」

 カップをテーブルに戻し、そう締め括る。

「ところで夏弥さん、朝ご飯はどうします?」

 そういえばまだ何も食べていなかった。基本私は朝ご飯も結構しっかりととるタイプなのだが今日はまったく空腹感がない。

 おかしいとは思ったが、減っていないものは仕方がないだろう。

「えっと、あんまりお腹も減っていないのでやめておきます」

「そうですか」

 一瞬与太さんの目が鋭くなったような気がしたが気のせいだろう。お腹が減ってないぐらいであんな怖い目をされる謂れはない。

「なら、出かけるとしましょう。時間はまだ早いですが街にまったく人がいないという訳でもありませんからね」

 そう言って食堂を出ようとする与太さんに続いて私も食堂を後にした。



「はあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 いきなりため息をついて申し訳ないが、どうか許してほしい。

 だって私ときたら何の成果もあげられなかったのだから。

 朝この街の中心部に着いてすぐに与太さんと別れ、街灯が点き始める夕暮れ時のいままであの男性を探していたのだが、結局手がかりすら得られなかった。

 そうして失意を抱えながら昨日と同じく与太さんとの待ち合わせ場所である屋外ビジョンが見えるベンチに一人座りこんでいるのが私の現状である。

「与太さんの方はどうなってるだろう……」

 与太さんの方も成果がなければ良いのに、とつい思ってしまう。そうすれば少しは自分の無能が隠されるから。

 そこまで考えて私は首を左右に振った。

 何を馬鹿なことを。

 自分の探し物を手伝わせているくせに何てことを考えるんだ、私は。

 こんな卑屈な考えをしてしまう自分が自分で嫌になる。

「そんなに首を振ってどうしました? 新しい体操ですか?」

「ひゃん!!」

 不意を突かれ私には似合わないであろう声が出る。

「お待たせしました」

 時計を見ると昨日と同じく約束の時間通りだ。

「いえ、全然待ってないですから気にしないでください……」

「? 微妙に元気がないように感じるのですが」

「……大丈夫です。本当に大丈夫ですから」

「それなら構いません」

 たまにそのドライさに傷つくことがあるが今回はその淡白な反応がありがたい。

「ようやく探していた知人が見つかりましたよ。これで明日にはあの男性の居場所が判明するでしょう」

 そして、そのままさらっと重大な成果を発表する。

「…………」

 凄い成果引っ提げて来たよ、この人……。

「夏弥さん?」

「ありがとうございます……。本当に助かります……」

 どうしても心から喜ぶことができない。

 自分の無能さがホントに悲しい。

「喜んでもらえたならよかった。それでは今日の捜索は打ち切って帰ることにしましょう」

「もう……ですか?」

 切り上げる時間は昨日と大体同じだが、不思議なことに私の体力はまったく減っていない。この様子だと夜通し捜索できそうだ。

「当たり前でしょう。徐々にですが人が少なくなってきました。これ以上は危険です」

 どうやら与太さんは私のことを心配しているらしい。

 それは素直に嬉しいが、それでは効率が落ちるのではないだろうか。

「大丈夫ですって。きっと私なんか目の前を通っても無視されますから……」

 今日も道行く人に無視されまくったのでそうなる自信がある。

「駄目です。いいですか、夏弥さん? 自分はきっと大丈夫なんて考えはいますぐ捨てなさい。周りの人間は全て敵だと考えても構いません」

「それじゃあ、与太さんも敵ってことになっちゃうじゃないですか」

 その言葉は私を心配しつつも子ども扱いする与太さんに対するささやかな反抗だった。 しかし、その言葉に対して与太さんは、

「はい、そう思って構いません」

 そう返してきた。

「ええ!?」

「それぐらいの気持ちでいてください、ということです。さあ、帰りますよ」

 与太さんはそう言って私の手を握り、スタスタと歩き出す。

「ちょ、ちょっと与太さん!?」

「ほら、ちゃんと歩いて」

「わかった!! わかりましたから!! はーなーしーてーー!!」

 結局私がその手から解放されたのは家に着く直前のことだった。

 ……私が普通に与太さんの家につく日は来るのだろうか?



「何をそんなにむくれているんです?」

 そうして家に着いた後、私の機嫌は当然のことながら最悪になっていた。

「そりゃあ、むくれもしますよ!! 昨日は人のことを荷物みたいに担いで、今日は強引に引っ張るし!!」

「それは夏弥さんが帰ろうとしないからでしょう?」

「それにしてももっと穏便な方法があったはずですよ!!」

 バンバンと食堂のテーブルを叩きながら、与太さんに怒鳴る。

 そして丁度そのとき、食堂におかれた振り子時計が低い音を鳴らして現在の時刻を私たちに知らせた。

「おや、もうこんな時間ですか」

 時刻は午後八時。外はもうとっくに真っ暗になっている。

「夏弥さん、お腹は空いてます?」

「お腹ァ!? あれだけ歩きまわったんですから空いてるに……アレ?」

 おかしい。全然空腹感がない。

「えっと……全然空いてないです。ハイ」

「そうですか、なら急ぐとしましょう」

 そう言って食堂を出ようとする与太さん。

「急ぐって、ちょっと!! 帰って来たところなのに何処に行くっていうんです!?」

 そもそも会話が成り立っていない!!

 慌ててその腕を掴む。街のときとは完全に構図が逆だ。

「仕事を依頼した知人のところです。彼女ならもう依頼を終えていても不思議ではないので」

 不思議ではないって……。今日のいつ依頼したのかは定かではないが、いくら何でも依頼した当日にそこまで調べられる筈がない。

 それに。

「行くなら私も連れて行ってくださいよ。私がそもそもの依頼の原因なんですから」

「それは駄目です」

「何でですか!?」

「昨日も言ったでしょう? 事件に巻き込まれるような真似をしてほしくないからですよ」

「じゃあ、与太さんは自分が襲われるのはいいっていうんですか!? おかしいですよ、そんなの!!」

 理不尽な理由に思わず語気が強くなってしまう。

「大丈夫ですよ。私が誘拐犯にどうこうされる可能性はありませんから」

「それだってゼロじゃないでしょう!? さっき私に自分は大丈夫だなんて思うなって言っておいて何を言ってるんですか!?」

 すると嘆息して与太さんが口を開いた。

「……仕方がないですね」

「連れてってくれるんですか!?」

「いえ、急いだ方が良いのですが、夏弥さんがしつこいので今夜は諦めます。おやすみなさい」

 彼は冷たくそう言い放つと彼は自室へと消えて行った。


「あー、こちらレッドリーダー。目標は三丁目付近の路地に入った。指示を頼む」

 まあ、こんなことをしても指示なんてどこからもこないのだが。

 あの後、与太さんの言葉がどうにも信用できなかった私は玄関の片隅に隠れていたのだ。すると案の定足音を殺して外出する彼を発見し、いま現在も追跡中という訳。

 ちなみに与太さんの家を出た辺りから妙な感情の昂りに襲われ、ずっとこのテンションを維持し続けている。言い訳をさせてもらうと尾行なんて子どものころスパイごっこをして以来なので、何だかドキドキしています、はい。

「なかなか目的地に着かないなあ……」

 かれこれ二十分は歩き続けている。

 普通に歩くのであれば大した距離ではないのだろうが、いまは与太さんに見つからないよう細心の注意を払いながら歩いているので、精神的な疲労が酷い。

 唯一の救いは与太さんの歩くスピードがそれほど速くないことだ。これで競歩並みの速さで歩かれていたらとっくに見失っていたことだろう。

 と、ここで与太さんが更に狭い路地に入るのを確認した。私も少し距離を空けながら、その路地に入る。

 幸か不幸か路地にはゴミや不法投棄された物が多くあり、私はそれに身を隠しながら与太さんを追跡することができた。

 先を行く与太さんが角をまがったのが見えたので、数秒間隔をあけて私も角をまがろうとするが、その直前これまで聞いたことのない声が聞こえた。

 慌てて立ち止まり、背を角に押し付けて耳をそばだてる。

「よう、また来たんか自分」

 女の人の声? それに関西弁?

「はい。貴方に頼んだ依頼の進行状況をお聞きしたくて」

「進行状況て。今日の夕暮れ時に頼んだばっかりやんか」

「ということはまだまだ時間がかかりそうですか?」

「いや、もう終わっとるけど」

 ヘラヘラと相手の女が答える。

 ……何だかこの人たちの会話を聞いてるとこっちが疲れてくる。

「コイツや。自分が探してたんは」

 その言葉の後にパラパラと紙をめくる音がする。

 どうやら与太さんが確認しているらしい。

「……相変わらず頼りになりますね」

 与太さんの声は少し呆れた調子だ。

「そう思うんやったら今後とも御贔屓に頼むわ。何でかわからへんのやけど自分以外のお客少ないねん、ウチ」

明石あかしさんが誰にでも情報を売るからですよ。もう少し節操というものを身に付けた方が良いと私も思います」

「アイタタ。自分にまでそんなん言われたら泣いてまうかもしれへんよ?」

「どうぞ」

「うあーーん!! 与太がいじめよるー!!」

 何とも豪快な嘘泣きだった。

「私が本人かどうか確認し次第残りの料金を支払う、いつも通りこれで良いですね」

「うん、それでええよ。……ちなみに与太がいまやってんのって例のアレ?」

「はい」

「はあ~。じゃあその夏弥ちゃんって娘が今度の被害者っちゅう訳か」

 被害者?

 その不穏な単語の登場に反応する。

「……嫌な言い方をしないでください」

「だって、そうやん。ほんで? いまんとこ首尾はどんな感じなん?」

「貴女に男の資料を貰った段階で殆ど終了したといって良いでしょう。あとは仕上げだけですから。ただ――」

「ただ?」

「今回はいつものようにはいかないかもしれません」

「お、どないしたん? 与太ともあろう者がえらい不安そうやんか。珍しいこともあったもんやな」

 明石さんが楽しそうに尋ねる。

「いえ、夏弥さんはいままでの人たちとは違う感じなので、最終的にどう転ぶかわからないというだけです」

「普通はそれを不安っちゅうんやけどな……。まあ、ええわ」

 そこで会話が少し途絶えるが、どちらも動く気配は感じられない。

 どうなっているのか確かめるために顔を出そうとした瞬間、再び明石さんが口を開いた。

「でも与太のそれが杞憂やったら、いつもどおりお別れするんやろ?」

「ええ。私の他の友人たちのように探し物が見つかったら、あの世に送ります」

 何?

 あの二人は何を言ってるんだろう?

 与太さんは一体何を言ってるんだろう?

 あの世に送るってことはつまり私を――。

 殺すということ?

「そうなったらまた寂しくなるんちゃう? ウチやったらいくらでも相手したるで?」

「遠慮しておきます」

 まだ何事か話しているが私の頭には何も入ってこない。

 私の頭にあるのはただ一つ。

 与太さんに裏切られたという事実だけだ。

 震える膝を抑えてこの場から逃げようとするが、上手く歩くことができない。

 逃げる途中で足元に転がっていた空き缶を蹴飛ばしてしまう。

 それまで静寂を湛えていた路地に無骨な金属音が響く。その瞬間、二つの足音がこちらに近づいてくる。

「夏弥さん……?」

 その声を聞いて後ろを振り返るとそこには与太さんと一人の女性が立っていた。


 一話が長いのは最早お約束。どうも、久安です。


 描写力の無さが凄まじいですね。この頃より少しは成長していると良いのですが……。


 あ、次回更新は1月15日 23時です。成長してるのかなあ……。

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