-pain3-
日が落ちた。
夜がやってくる。
アレがやってくる。
ゆっくりとドアノブが回るのを私の渇いた目が捉える。
少しでもドアから離れようとするが、私の身体の主導権は既に私にはない。
「よう、良い子にしてたか?」
その声に反応して視線を上に移すと、無様に床を這いまわることしかできない私をあの男がいつの間にか見下ろしていた。
「ああ!! 床を汚しやがったな!?」
男は怒気ではなく喜悦を孕んだ声で私を叱る。昼間吐いた胃液が見つかってしまったらしい。
「ご、ごめん……なさい!! ごめ……んなさい!! ご……げえっ!!」
男の蹴りが腹をヒットし、私は謝罪の途中で壁に吹き飛ばされる。
ちなみにそのときの衝撃でまた口から胃液が飛び出した。
「また汚しやがったな!! どうやらもっと罰が必要みたいだなぁ!?」
男はそう喚きながら私の髪を掴み、平手打ちを頬に喰らわせていく。
何度も。
何度も。
この手の罰はもう何度もされているので慣れてしまった。
もう痛みもあまり感じない。
あるのは私の頬に何かが当たっているという感覚だけだ。
「うん? あんまり反応が良くねえな……」
私の所有者であるこの男は私の反応に不満があるようだ。
私の髪を放し、自分が先ほど持ってきた鞄をゴソゴソと漁っている。
「よし!! 今日はこれを使ってみるとするか!!」
と、男が鞄の中から取り出したのは四角い箱のような形をした黒い物体。
これは何だろう?
私の視線が手の中のものに注がれているのに気づいたのか、男は嬉々として話し出す。
「気になるか? これはな、こうやって使うんだ」
男がそう言って箱の横についていたスイッチを入れると先端部分から青い火花が飛び散る。
スタンガンだ。
「ヒッ!!」
「あはは!! 怖い!? ねえ、怖い!?」
私が怯えた目をしたのがそんなに嬉しいのか、男は馬鹿みたいに笑っている。
ああ、これだけ上機嫌なら今日の罰はこれで終わりにしてくれないだろうか……。
私が床に手足を投げ出したまま、そんな甘い考えに浸っていると不意にそれは襲いかかってきた。
「ガッ、アアアッ!! ギッ、アッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
意識が飛びそうになる一歩手前で身体を襲っていた痛みが去った。
「ハアッ!! ハアッ!! ハアッ!! ッ!! ハアッ!!」
派手に叫んだ分、肺が酸素を欲しているのか自然と呼吸が荒くなる。
「ははっ!! サイッコーだ!! 何だよ、いまの動き、キモチワリィ!!」
男は腹を抱えて転げまわっている。
右腕に残るヒリヒリした火傷のような痛みから察するにさっきのスタンガンを押し当てられていたようだ。
これだけやればもう良いでしょう?
朦朧とする頭の中で男にそう問いかける。
だが、今日のお仕置きはこれで終わらなかった。
「じゃあ、こうすればどうなるんだろうなぁ?」
男は私の口を無理矢理こじ開け、スタンガンを押し込んでくる。
「ガボッ!?」
それを吐きだそうとするも、力で敵うはずがない。
やめて……!!
そんなことされたらきっと死んでしまう……!!
目でそう訴えると男は何ともいやらしい嗤いをその顔に浮かべた。
まるで悪魔のような顔。
私がそう錯覚した瞬間、私の身体を電流が蹂躙する。
目がこれ以上ないくらい見開かれる。
自分の中で爆発が起こったかのような衝撃。
その衝撃に耐えきれず、私の意識はついに消失した。
もう一つに気を取られてたら危うく更新忘れるところでした。どうも、久安です。
スタンガンは正しい用途で使いましょう。
次回更新は1月13日 23時です。




