第三章
空になっていく私のすべて...
3.失う
日向と息を切らしながら教室に駆け込む。
ギリギリセーフとほっと息を吸い直して自分の席につく。
机の上には朝貸した宿題がきちんと置いてある。
私はきっと誰かから借りたものはこんなに整備が整った返し方は出来ない。
あぁ...きっかり主義は虫唾が走る...なんて言っちゃいけない。
私の目の前にも斜め後ろにもきっかり主義がいる。
坂春日向と七伊勢来夢は2人とも私と正反対のきっかり主義者。
この人達とつりあえる私は不思議だ、と心の中で呟く。
頬杖をついて窓の外を睨み付けた。
何故か空を物凄く睨みたかった...。大好きな大好きな青空。
だけど今だけは判らないけど凄く凄く憎いアオ。
如何してアンタは私を見下すの。判らない。
頭が痛い。頭痛。
眠い。如何して?睡眠不足、多分。
今、私じゃない私がいるみたいに脳を支配する。
きっと何かの考え過ぎ。毎回深く考えすぎで疲れてるんだ、きっと。
1日の経過は早くしてもう放課後。
疲れたと何時もながらに思う。今日は何時もより重症。
「千、一緒に帰ろうよ」
「あ...日向君と来夢。うんちょっと待って」
大雑把な性格が此処で発揮。鞄にめちゃめちゃに教科書を詰め込む。
2人の視線は遠くに感じる。
肩に鞄を提げて、行こうと声をかけ廊下に出る。
ざわっと廊下にいる生徒の話し声などが耳に入って抜けて行く。
ムカツク雑音。消えろ消えろ。
下駄箱で靴を履き替えて学校を出る。
校庭ではサッカー部が楽しげに部活動を楽しんでいる。
そう言う光景が大嫌い。みんな仲良くとか大嫌い。
来夢と日向君は私の事を心配、不安、不思議と言う視線で見詰める。
何でそんな目で私を見るの?と私は少し頭に来た。
無言で公園まで。時刻は5時を少し過ぎたぐらい。
「暗くなるのは早いね」
「確かに...」
「うん」
私は関心なしで答える。何かダルイ。てかすべてが。
頭で考えるのが嫌。行動に出すのも嫌。
とにかく。私は。
この何かに満たされた世界が嫌い。
こつっと爪先で小石を蹴り上げる。
地面にあたってバウンドを繰り返して壁にゴールイン。
「千さぁ...」
「何」
「自分を失った事ある?」
「多分ない」
「嘘だな」
会話に割り込んで来た来夢は空を見上げている。
自分を失った事なんて無い。
失うなんてありえない...ありえない...。
『お前は既に自分を失ってるんだよ』
脳に過ぎった言葉は...。