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第一章

すべてが空になってしまえばきっと私達は裏切りを繰り返してしまうんだ



1.青い空の果て



私は夢を見ない。眠りについて見る夢も将来について考える夢も何も見る事はない。

考えもしなかった。考える事が判らなかった。如何して夢を望むのだろう。

何を夢と言うのだろう。何を将来と言うのか。そんなの判らない。

みんな、何を考えて夢を夢と未来を未来と言うのだろう。判らない。


私の無駄な考えは此処まで。


空は気持ち悪い程の青空。雲が一つもない。

この空にだってきっと、未来とか言うものが存在するのだろう。

今日はこの色、明日はあの色、明後日はまた違う色。全部変わるのだろう。


読みもしない本を片手に教室を出る。向かうあてはない。

廊下はとても賑やか。とても考えられない世界...とか言うのはきっと真面目な人達なんでしょうね。

窓の外の空は青一色で染まり上がる。数分で変わる筈ないか。

数分前じゃない数秒前。教室を出てまだ一分も経ってない。分でも秒でもいいや。

考え過ぎるのは毒だと思いゆっくりと歩き出す。床がキュッと鳴く。


歩き出しても勿論向かうあてはない。適当に行こう。

大雑把な性格。A型だけど、大雑把。

読みもしない本を持って来て今更後悔。手ぶらでくればよかった。

まぁいいかと思っているがやはり邪魔なものは邪魔。

何もかもキッパリと決められない性格。面倒。

毎日唯ボーっと空を眺める。そして無駄に何処かに行きたくなる。

まともに何処かに行き着いた事はない。悪い時は一歩踏み出した瞬間チャイムアウト。

考えてから行動に出る時間がのろい。カメ以下。自分では思う。


廊下の曲がり角を曲がろうとした時、。


「千、おはよ」

「おはよう...日向くん」


前方から声をかけて来たのはクラスメートの坂春日向。

彼の特徴は青い綺麗な瞳に右耳にクロスのピアス。言ってはいけないがフランス人形みたいに可愛くて綺麗。

夢を見ない私にだって好きな人ぐらいいる。勿論、目の前に立っている彼。

坂春日向...彼はクラスでも人気が高い。明るくて頼りになれる中心的人物。


「何処行くの?」

「別に決めてないけど」

「気まぐれ?」

「うん」


彼はニコッと微笑んだ。『千らしいね』って。


「一緒に行きたいけど宿題やってないんだ...借りていい?」

「机の中に入ってるから使って」

「サンキューじゃね」


手を振って教室に駆け込んで行く日向の後姿を見送って階段を下りた。

さて、本当に何処に行こうか。

誰か私を何処かに連れて行ってくれる人はいないものか。

絶対それは運命だろうけど。


本当に行く当てもなく私は図書館に辿り着いた。

何もする事はないけれど、試しに中に入ってみよう。

静かな図書館。端の方に座り、分厚い本を何冊も目の前に積み重ねている人物が居た。


「千」


分厚い本を目の前にしていながらも私の気配に気付いたらしい。

彼もクラスメート、でも日向とは性格は正反対。

あまり人とは接触しない。頼りにはなるが...そう思っているのは私だけらしい。


彼の特徴は、日向と同様綺麗な青い瞳に左耳にクロスのピアス。

でも彼とは赤の他人。別人。一滴たりとも血液は繋がっていない。

唯の偶然。


「朝早くから勉強」

「其処まで俺は真面目じゃない」


彼はアッサリ問を否定した。別にあっさり言わなくても。


あともう一つ、特徴と言えば。

私と性格が似ている...特徴とかじゃないか。何処となく似てる。


「君は何しに来たんだ」

「気まぐれ...ってやつ」

「君は本当に雲みたいだね」

「有難う」


此処に来て、来夢と一度も目を合わせていない。彼は何時も瞳を逸らす。

じれったい。彼にはたまに呆れる。

私は彼らの瞳が好き。青空のように透き通った色をしていて。


果てのない青空。


「何の本を読んでるの」

「ソラと言う本」

「どんな内容?」

「世界がすべて空っぽになるお話」

「へー」


私は呆れて返事を返した。彼からの言葉は。


「この話の内容がそのままになってしまえばいいのに」


微かな声で言った。何、この本の内容は...。

彼が私の目を捕らえた。鋭い青に鳥肌が立った。

視線を逸らし、開いてあるページをゆっくりと見た。其処には――――。



『青い空の果てにはきっと冷たい世界が広がっている』



如何か。如何か。

私にこの言葉の理解をさせて。そして。

彼の言葉を理解させて...。

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