第八十三話
二週間、だと……!
申し訳ないです。
とは言え、これからも不定期更新になりそうなんですよねー……。
「フィイィィィーーッシュッッ!!!」
「ちょっ、どうしたのっ!?」
「テンション上がってキタァアァァァアーーッ!」
「はぅあ! 猫之神さまが暴走しているのです!」
Side 陽
おはよう、こんにちは、こんばんは。
相変わらず呉で日々を過ごしている陽さんからお送りします。
二週間程経ったが、やっと徴税の資料が届いた。
聞いた話じゃ、ギリで廃棄になるとこだったそうな。
まぁ、実際使いどころないのに、かさばるというマジで必要ないやつだったし。
満を持してというか、やっと使われるべくして使われているというわけだ。
……まだまだ詰めるところはあるらしく、俺はここにいろということらしいが。
「あー、もう暇。暇すぎてやってらんねー」
「では、お猫様を見にいきましょう!」
「明命よ、お前は仕事中だろーが」
何を俺に託つけて癒やされようとしてんだ。
……癒やし、か。
やべー、めっちゃ帰りたくなった。
マイスイートハニー蒲公英に会いたくなった。
うわー、一気に蒲公英成分が欲しくなってきたわ。
愛しのハニーは一体何をしているのやら。
浮気なんて……。
ないないない。
それはない。
俺が信じなくて、誰が信じるっていうんだ!
……なんとなくクサイ台詞言ってみたけど、蒲公英に限って、そんなことをするとは思えない。
が、会えてないことに不満はあるかもしれないし、何が起こるかはわからん。
まぁ、とりあえず。
蒲公英の心が動いたというのなら仕方がない。
泣く泣く別れるとしよう。
だが、もし無理矢理とかだったら、容赦なく殺そう。
いや、不生不殺というのも悪くない。
簡単に許すと思うな。
……言っておくが、これはラッキースケベ一刀にも適応されるからな。
「うぅ、会いたいのです」
「俺も会いたいなぁ」
「あぁでも、献上物を入手しなければ……」
「……献上物?」
引っかかりを覚えたので、声にあげてしまう。
いや、考えればすぐにわかることだったんだが。
とりあえず、自分の世界に入ってる明命にでこぴんする。
「あいた! うぅ、酷いのです」
「酷くもないし、それほど痛くもしていない。……しかし、献上物って?」
「…………あっ」
「まーだ、貢いでんのか」
「あぅあぅ、申し訳ありません。まだまだ精進が足りないようなのです……」
どうやら、前に教えた猫語とか、諸々の技術がまだまだ習得できていないらしい。
まぁ、猫が好き過ぎて冷静になれないのが主な理由だろう。
しかし、献上物か。
猫の好物といえば、木天蓼とか魚とかか。
……あれ、魚?
「しっ、しまったぁあぁぁ! 今の今まで忘れてた!」
「はぅあっ! いきなりどうされたのですか!?」
「呉といえば水産物! 水産物といえば海! 海といえばフィッシンッッ!!」
この俺が、釣りをするのを忘れていた、だと……!?
元の世界では、月一で嗜んでいたというのに!
向こうでも海は近かったし、じじいが好きだったからな!
これは、あってはならないことだッ……!
「準備しろ明命。今すぐ行くぞ早く行くぞ急いで行くぞ疾く行くぞさぁ行くぞ!」
「えっ、えっえぇっ!? 一体どこに、って陽様ーっ!?」
Side 三人称
「それで、こんなところに来たのね」
「はい……」
「一応、人質だと分かっているのかしら」
「っしゃァ! かかったァ!」
「「…………」」
最早、キャラが変わっており、テンションがテンションwになっている陽。
それを後ろで呆れて見ているのは蓮華と明命である。
げに恐ろしきは、ここまで性格を変えるほどの釣りの魅力だろうか。
因みにだが、現在彼らは江水(長江)の分水にいたりするので、陽の考えていた海釣りは出来ていない。
簡単に言えば、今は予行練習みたいなものである。
「フィイーーーッシュ!!」
「でも、釣り自体は流石のものね。……うるさいけど」
「そ、そのようですね」
まだ半刻ほどしか経っていないのにもう十匹目となれば、それなりに評価せざるを得ないだろう。
しかも、蓮華の中の比較対象が、何刻待ち続けようと――半刻もしないうちに飽きるが――釣れる素振りを全く見せない雪蓮となれば、天と地ほどの差があった。
まぁ、うるさいせいで呆れさせるのは愛嬌である。
★ ★ ★
そのころ蜀は……。
Side 種馬
オッス!オラ、一刀!
久々の登場だなー!
ワクワクすっぞ!
と、謎にテンションを上げてみた俺、一刀がお送りしよう。
ってか、視点の名前おかしくないか?
まぁ、蜀は心配する必要もなく、皆すこぶる元気さ。
なんてったって、俺が元気を分け与えて――うわ、何をする止めろっ!
ふぅ、危なかった……。
ま、まぁ、ともかく元気ではあるよ。
一人を除いては。
なんというか、俺も同情する。
一月近くもH禁されたら辛いだろう。
……いや、冗談だからな。
だが、本当にそれぐらい会えないというのは辛いものがあるだろう。
好きで好きでたまらないのに、我慢を強いられているのだからな。
俺も、皆と離れるなんて考えられない。
発狂するわ。
本当に寂しそうな素振りを見せないんだよなぁ、蒲公英は。
空元気なんだろうと予想はつくのだが、全くそんな風に感じさせないから逆に何も言えない。
前に謝ってみたのだが。
「大丈夫、大丈夫。お兄様も、少しはたんぽぽ離れしないといけなかったから、ね♪」
「でもなぁ」
「そんなこと心配するより、翠お姉様の幸せを考えてあげてよ」
と、見事にはぐらかされてしまった。
しかも、そこに翠を推してくるところがなんともあざとい。
悪戯好きだったり、少々強引だったりわがままだったりと、所々子供っぽいところがあるけど、立てることを知っているんだよな。
まぁ、その子供っぽさを見せる時はと言えば、九割方は陽の前でだけだけど。
……アイツはそれをまた盛大に甘やかすのだが。
いいよな、そういうのも。
そう考えると、なんか素直に甘えてきてくれる娘が少ないような気がする。
愛紗は頑固だし、星と鈴々には集られてる気がしてくるし、翠は初だし、朱里雛里は若干メニアック目覚めてきたし、詠はツン子だし、恋はじゃれてきてるような気分になるし、ねねは蹴るし、焔耶は桃香ラブで俺にはガチツンだし、白蓮は愚痴の聞き手だし、麗羽猪々子はトラブルメーカーだし、斗詩はかわいそうだし、美以たちは最早猫科だし、そもそも、紫苑と桔梗は娘か疑問――はっ、殺気っ!?
……なんだ、ただの矢か。
まぁ、つまり、素直に甘えてくれるのは桃香しかいないのだ。
次点で、自分から求めることは少ないけど、素直な月というところ。
いや、皆平等に愛してるし、一人一人個性があって可愛いんだけどさ。
しかし、蒲公英も可愛いよな。
陽が溺愛するのも分かるぞ。
アイツから言わせれば、俺が知っている可愛さなんて序の序なんだろうけど。
……そう考えといると、もっと知りたくなるのが人の性だろ?
仮にも恋人関係である翠の妹分だし、親友である陽の彼女だ。
仲良くなりたい気持ちはある。
だけど、近づきすぎてみろ。
親友に、全力で噛みつかれるに決まっている。
昔の縁なんて関係なく、今の絆さえ断ち切って、全力でなぶり殺されることだろう。
冷めてるけど、アイツは激情家だ。
面に出さない分、内へ内へと、研ぎ澄ますように持っていく。
だから、底が計り知れない。
それが陽の恐ろしさだ。
向こうの世界、陽からすれば前世でもそうだったから、多少は慣れている。
しかし、俺は本当の意味で敵に回したのとはない。
アイツは身内に甘いから、必然的にそうなる。
だから、慣れなんてものは何の意味もないかもしれない。
つまり、あれだよ。
そんなこと考えさせないで、仲良くさせてください。
★ ★ ★
Side 蒲公英
おはよう、こんにちは、こんばんは!
皆のあいどる、たんぽぽちゃんの登場だよっ♪
……ってのは、勿論冗談だよ。
だって、たんぽぽはお兄様だけのあいどるだから、ね。
それより、さ。
もうね、すっごい暇。
お兄様がいなくて、寂しいし淋しいしさびしいけど、それは泣く泣くしょうがないとして。
朝も昼も夜も。
お兄様がいなくてもの足りないし、お兄様の料理がないからあんまり美味しくないし、お兄様がいないから何をやってもつまらないことが多い。
政務したり、鍛錬したり、うじうじと悩んでる焔耶を弄ったりしてるけど、なんだかいま一つなんだよね。
ご主人様にはああ言ったけど、ホントはたんぽぽがお兄様離れしないといけないのかも。
お兄様が西涼に残った時は我慢できたのに、今はもう我慢できなくなってる。
まぁ、あのときより関係は進んでいるんだし、当然と言えば当然なんだけどさ。
「お兄様お兄様と、いつも口うるさく言っているお前はどうした」
「桃香様桃香様と言ってた癖に、ついにご主人様とまぐわったあんたは一体どうしたのかな」
「なななななななっ!? な、なんでお前知って!?」
「言っとくけど、そんなの皆知ってるからね?」
たんぽぽは星お姉さまに聞いたんだけどね。
嗾けた本人はいち早く知っておくべきだ、とのことで、その翌日に知った。
……別に、こいつの性事情なんてそんな早く知りたいと思わなかったけどね。
嗾けたとか、なんだかたんぽぽが悪いことしたみたいな言い方に反論するけど。
元の原因はこいつ――焔耶にある。
まだお兄様が蜀にいた頃だ。
お察しの通り、らぶらぶなたんぽぽ達は惚気あっていた。
今でも惚気られる自信はあるけどね!
それはともかく。
そんなデレデレなたんぽぽが羨ましかったのか、こいつと会うと、いつも絡んできたのだ。
お兄様お兄様と、うるさい小娘だとかなんとか。
勿論、その恋する小娘に負けたあんたは何なの、バカなの、と決まって言い返してたんだけどね。
しかも、自分だって桃香様桃香様とうるさい癖に、それを棚に上げてるのに腹が立った。
……っていうか、元々こいつとは反りが合わない。
西から来てる、仏教ってやつのりんねてんせい、だっけ?
あの、命は生死を繰り返すってやつ。
それで、前世が犬と猿だったかぐらいの気分だよ。
それなのに、若手として度々こいつと組まされる。
……皆、たんぽぽよりおばさんだっていう自覚があるんだー、と毒づくことで納得してるよ。
あ、たんぽぽは犬ね。
当たり前だけど。
ま、そんな猿程度の知能しか持ち得ないこいつに、色恋の何を言ったって無駄だってわかってたから何も言わなかったんだけど。
どれくらいか経ったある日、こいつから、たんぽぽに向かって、嫌味と愚痴以外の言葉が口から出た。
「お館って、なんなんだ?」
ってね。
いやー、そのときはすっごいびっくりしたよ。
思わず心配しておでこに手をおいちゃった。
そのあと若干キレられたけど。
そりゃ、そんな反応になるに決まってるでしょ?
ついこの間まで桃香様桃香様としつこいぐらいに言ってて、そんな桃香さまが好きな男のご主人様を相当嫌ってたんだから。
なんだその変わり身はって思うはずだよ。
まぁ、その質問に答えなかったけどね。
だって、ご主人様のことは、弄りがいのある義兄、っていう程度の認識しかないもん。
そもそも、親密な関係だといえるか微妙な関係しかないし。
あ、一応主だった。
うーん、そうだなぁ。
お兄様がいるからあんまり意識したことないけど。
魅力的な人、なのかな。
顔は悪くないし、底抜けの優しさで、器量もある。
手を出すのがちょっと早い気もしなくはないけど、皆を愛してるって公言して、それを態度で示すだけの種馬力もある。
……改めて考えると、お兄様がいなかったら惚れてたのかも。
「うわぁー……」
「なんだ、ついに頭がおかしくなったか」
「頭がトチ狂ってるのはあんただからね」
今更ご主人様とそういう関係になってることなんてあんまり想像できないけど。
お兄様の如く、ご主人様が甘えてくるのは凄く嫌だった。
他の皆が暴力的だし、ちょっとわがままに振る舞う、癒し系の子供っぽいたんぽぽぐらいがちょうど良かったかもね。
そんな風に色々考えてたら、いつの間にか復活していた焔耶。
結構どうでも良いことである。
だって、所詮はこいつだし。
「貴様という奴は、いちいち喧嘩を売らなければ気が済まないのか……!」
「なんでたんぽぽがわざわざ喧嘩を売らなきゃいけないわけ?」
「貴様がワタシにそういう態度だから言っているんだ!」
全く、めんどくさいことこの上ないよ。
これだから肉体派の熱血系は。
こっちはそこはかとなくバカにしてるだけなのにね」
「……聞こえているぞ!」
「あ、聞こえちゃった? ごっめーん」
「(ブチッ!)」
あ、キレた。
正直、短気もいいとこだと思うよ。
「そんなに怒りっぽいと、ご主人様に嫌われるよー」
「き、きき貴様には関係のない話だ!!」
あぁ、そうそう。
たんぽぽは兎さんなんだ。
淋しいと死んじゃうの。
だから、……早く帰ってきて欲しいな。
そうしないと、
――そろそろ、『蜀の筆頭軍師は八百一がお好き。拡散希望』って、馬印使って公表しちゃうんだからね♪
ではでは、焔耶から逃げなければならないんで、これにて!
★ ★ ★
とある辺境にて……
Side 陽菜
「さて、もう良いかしら」
「我等は誇り高き騎馬民族! この程度で――カハァッ!」
「そういうの、もう聞き飽きたわ。族長、いいえ、単于を出しなさい」
「誰が貴様のような漢人に――「もうよい」――な、王よ……」
「やっとお出ましね」
もう、嫌になっちゃうわね。
雑魚を相手取るのも簡単じゃないもの。
「お久しいですな、とでも言っておこうか」
「あら、貴方ごときが彼の後任なんてね、爺」
「誰かが、息子を殺してくれたからな」
「そう。それはご愁傷様、と言っておきましょう」
ふぅん。
あれは息子だったの。
まぁ、どちらにしたところで、彼より弱くて私よりも弱い奴に単于が務まるはずはなかったんだし。
彼を殺してくれた報いは受けて当然よね。
「……それで、今更一体何用でここへ来たというのだ」
「うふふっ。あのね、今日は良い知らせに来たのよ」
「……話してみろ」
「あら、弱者の癖に頭が高いんじゃないかしら?」
全く、状況を見て判断も出来ないのかしら。
半数が地に伏せ、残りは殆ど戦意を失っているこの場で、誰が上(強者)で誰が下(弱者)かも分からないなんて、ね。
「ま、大昔のよしみとして、そのまま聞くことを許してあげる。……やっと見つけたわ、私の愛しい息子をね」
「まさか……!」
「えぇ、そうよ。貴方の息子によって引き離された私の息子を見つけたと言っているの」
「やはり、そうか」
私は、彼のモノ。
彼以外に身体を許す気はない。
あ、陽は別よ。
陽は私のモノなんだもの。
そう、だから私の息子は陽ただ一人ということ。
そして、それすなわち、彼の息子でもあるということ。
「ねぇ、爺。少し手伝ってくれない?」
「息子を殺した漢人を手伝えと、そう言っているのか?」
「あぁ、言い方が拙かったかしら。――従え、と言っているのよ」
「くっ……!」
盛大に殺気をぶつけてみせる。
殺氣じゃないだけ、まだましでしょう?
っていうか、この程度で苦しむなんて、衰えたんじゃないかしら。
まぁ、質が落ちたであろうことは一目瞭然だけど。
二十年前は、もっと強いのがうじゃうじゃいたというのに。
……その中で一番の強者の妻が、二番目の私なのだけど。
「分かっているでしょう? 一番と二番を掛け合わせが私の息子なのよ? これ以上に、単于に向いた人がここにいるのかしら」
「いくら最強足りうる器といえど、漢人を快く思わない者が少なくない。それを、混血となればさらに反感は大きくなる」
「うふふっ」
おかしいわね。
反感なんて、何をおかしなことを言っているのかしら。
あ、おかしいといえば。
二十年前と言わず、周りの騎馬民族よりは漢にかなり友好的だったはずだけど。
ま、どうでも良いことね。
むしろ、好都合と言えるわ。
私も、アレが嫌いで嫌いで仕方ないもの。
漢人である自分にも嫌悪感を抱くぐらいにね。
でも、この力のおかげで彼と結ばれたと思うと、自分が嫌いにはなりきれない。
……陽は彼の子だし、嫌いな漢の血は半分に減ってるし、好きで好きで堪らないわよ?
「何がおかしい」
「笑っちゃうわね。快く。反感。一体、それがどうしたの? ……強者の私に文句を言うなら殺すだけじゃない」
「…………」
たったそれだけのことよ。
なぜならここは、弱肉強食の世界なのだから。
そんなこともわからなくなってるなんて、相当落ちたものね。
目に見える弱体化は、元単于夫人として嘆かわしいばかりね。
……なーんて、言うと思った?
ふふっ、馬鹿馬鹿しい。
そんなこと、微塵も思っていないわ
何故、彼のいないこの部族に興味を持たないといけないのか、甚だ疑問ね。
今や、私を占めているのは全て陽のことばかりよ。
他にはこれっぽっちの興味すら湧かないわ。
そう、わざわざこんなとこまで来たのは陽の為。
愛しい息子が囚われているのだから、助けてあげないとね。
あれから何度も考えてみたけれど。
やっぱり陽が、私を拒絶するなんて有り得ない。
自由に振る舞っているだけで、縛り付けられているんだわ。
ああやって答えろと、指定されていたに決まっている。
私に渡すまいと、陽を誑かして囲っているに違いない。
陽が魅力的なのは、とてもとてもわかるけれど。
せめて、母親の私を通すのが礼儀じゃないかしら。
……最も、そんなことされても渡さないけれどね。
そうよ、だから奴等は私に会わせたくないのよ。
自分のモノに出来ないから、国で縛ってるんだわ。
全く、屑の所業ね。
これだから漢民族は大嫌いなのよ。
気持ち悪くて欲深いとか、なんて醜いのかしら。
あぁ、……殺し尽くしてやりたいわ。
はっ、駄目よ私。
いくら一城ぐらい簡単に制圧できるからといって。
それを行えば、結局私まで醜い野蛮な漢民族に舞い戻ってしまう。
それはいけないことよ。
陽は優しい子だから、どんな私でも受け入れてくれるはずだけれど。
それでは私が自分を許せない。
やっぱり、女は慎みを持って、頭を使わないと。
改めて言うけれど、だから私はここへ来たのよ。
私の手を欠片も汚さずに。
魏も呉も蜀も全部潰して。
陽を縛る絆も断ち切って。
綺麗な手で向かえる為に。
けど、今のままではどうかしらね。
ここまで質が落ちているとなると、圧倒的に戦力が足りないでしょうね。
いくら『テイ』に話をつけてきたとはいえ、まだまだ足りないわ。
仕方ないけれど、『匈奴』『鮮卑』『羯』も動かさせるとするしかないわね。
……この三部族、時期を見る目はあるから動かすことは簡単だけど、収集がつくかが問題なのよ。
漢民族が殺し尽くしてくれて一向に構わないけど。
飛び火して、部族抗争になられては困る。
私は陽と、平穏に暮らしたいのだから。
そう考えると、少しは奴等にも頑張ってもらわないと。
相打ちで共倒れするぐらいには、ね。
「爺、私は少し所用で外れるけど。全員、鍛え直しておきなさい。良いわね?」
「…………はっ」
「うふふっ、不満そうね。でも、それは貴方が弱いから悪いのよ。そうでしょう?」
「その通り、……です」
「ん、よろしい」
上だと勘違いしてる奴を屈服させるのは、堪らなく快感だわ。
従う喜びも知っているけど、それは限定的だもの。
「ねぇ、そこの貴方」
「…………私、ですか?」
「貴方の隊は、統率がとれてるわね。それほどの求心力は感じられないけれど」
「……っ……」
「うふふっ、これはどうでも良いことかしら」
千人長ぐらいの才はあるのはわかるけど。
それでも、私を前に普通でいられるのは、隊を含めて分不相応のはず。
それぐらいには、私にだって自信はある。
上手く抑えたけど、動揺は隠せていなかった。
……おそらく、何か目的があるのね。
「兎も角、私に臆さず抵抗しなかった貴方を主軸に抜擢してあげる。精々、励んで頂戴」
「……はっ!」
「良い返事ね。素直な子は好きよ。名前も聞いておきましょう」
「私は、……ケンと申します」
ま、私の邪魔さえしなければ、何をしたって構わないわ。
ごめんね、陽。
あと二月、うぅん、あと一月の辛抱よ。
それまで不自由させるけど、良い子だから我慢してね。
必ず迎えに行くから。
陽は語る。
「川釣りは、一刻で飽きたわ。海釣りいきたいわー。魚捌きたいわー」
と
バイト二週間休み!
ひゃっふー!
と、思っていた時期もありました。
なんなんだ、この忙しさは!
誰か、VBA教えて……。
誰か、レポート書いて……。
陽さんは壊れました。
原因は、偏に蒲公英成分が足りないせいです。
一刀くんはオープンスケベ。
邪な考えはなく、少し蒲公英と仲良くなりたい。
蒲公英さんは毒舌。
これも陽成分が足りなくなっている証拠です。
陽菜は相変わらずのキ〇ガイ。
ただただ、陽への愛故に。
「現在まで、萌将伝の箱を探していた作者です」
ちょ、バラすなし!
ガチ焦りはしてたけど!
「そういえば、母親と妹にバレて爆笑されたんだっけ?」
……もういいよ。
最早ネタというか、自虐だよ。
引かれるよりは良かったけど、これのせいで逆『俺妹』みたくなってるからな。
「…………まぁ、いいんじゃない?」
自分から言って引くな。
「それにしても、陽が釣り好きだったとは」
あからさまな話題転換。
本当は、じじいこと北郷義一につき合ってただけです。
彼が坊主な時も、陽だけ常に大漁でしてね。
それで毎月連れてかれて……、ということです。
「後付け感がハンパないわ」
……そういうこと言うなよ。
おしまい☆