閑話4
もはや恒例の遅延……。
申し訳ないです。
理由は後書きにて!
「ちょっとー、蓮華が考え込んじゃって仕事が手につかないじゃなーい」
「俺をここにおいとくから悪いんですよ、雪蓮様」
「何その顔、腹立つー!」
Side 陽
雪蓮と
どや顔まではいかないが、それなりにむかつくであろう笑みを浮かべる。
どうも、相変わらず暇してる陽ちゃんです。
いや、遅くね?
もう十日ぐらい経ってんだよ?
結局、俺はそのままで、馬印商会が間に入ったんだが。
馬印が絡んでるのにこんなに遅くはならない。
大陸の端から端を、うちの早馬なら3日でいけるんだぞ?
涼州産の馬しか使ってないからな。
それはさておき。
早く持って来てよ!
俺、殺されちゃうやんか!
いやまぁ、絶対ないけどさ。
「殺す? ないない、有り得ないわよ。何が悲しくて、山百合お姉ちゃんに殺されなきゃならないのよ」
と、本人が言ってたし。
どうやら、山百合は本気で怒ると怖いらしい。
笑ってごまかしてはいたが、若干の怯えは隠しきれていなかった。
まぁ、なんとなくわからんでもない。
本気で怒ったところを見たことはないが、なんとなく想像はつく。
おそらく、いつにも増して無表情になっていたのだろう。
今なら、綺麗な笑みを浮かべるだろうな。
教えてないのに教わっていた、怒る時は笑みを浮かべる、という法則に則って。
表情豊かになったのは良いことだが、この点は果たしてプラスだったのやら。
山百合にとってプラスなら、一向に構わんがな。
「それで、一体どうしてくれるわけ? 蓮華が働いてくれないことには、私がさぼれないじゃない」
「それは幸いでございましたねぇ」
「どこがよ!」
どうやら真面目に働かせられていることにストレスを感じているらしい。
あぁ、なるほど。
それで、ここに匿って、とやってきたのか。
「おぉーい、美周r――「ちょ、陽っ!」――もがっ!」
「冗談でもやめなさいよっ!」
決して冗談ではないぞ。
だって、本気で連れて行って欲しいもの。
退屈はしないが、やかましくなるからな。
「ぶはっ! つか、仲謀のことは二の次かよ」
「そんなことないわよ? 勿論、姉としては心配してるわ。けど、……なんとかしてくれるわよね?」
「さてねぇ。手助けは出来るが、自分で乗り越える気がないならなんともできん」
「そう」
反応は薄いように聞こえるが、そんなこともない。
王としては成長してほしい一心であるし、姉としてはかなり心配している。
つか、今までが過保護過ぎるんだよ。
蝶よ花よと育てられたのかは知らんが、経験があまりに足らんと思うし。
あと、短気。
「……しかし、俺に任せたら、最悪性格変わるぞ?」
「大丈夫大丈夫。蓮華なら心配ないわ」
「随分な自信だなー」
主に器的な問題だろう。
まぁ、今のところ俺は、それが見えてないけどな。
★ ★ ★
周喩と・1
「いつも雪蓮がすまないな」
「アンタも大変だねぇ」
「全くだよ」
何か起こされる為にフォローしなければならない大変さは知っている。
トラブルではないのが救いなんだよな。
まぁ、嫌気がさしているなら、こんな柔らかい苦笑はしないだろうが。
「それはそれとして。わざわざそんなことの為だけに来たわけじゃないだろう?」
「さて、それはどうかな?」
「おいおい、軍師さんよ。要領の得ない会話は嫌いだぞ?」
「軍師同士、腹の探り合いは当然だと思うが?」
あーもーめんどくさい!
「もういいから。今、軍師やってないし」
「それもそうだな」
え、納得すんの?
別に良いけど。
「では聞こう。天には何がある?」
「……漠然としすぎだろ」
「そうは言われてもな。こちらも何があるかわからん」
確かにそうだな。
天上のことなんざ知る由もないんだし。
大体、天からきてないよ、俺。
「つか、よく知ってんな。俺が天の御遣い関連だって」
「お前に比べるのはおこがましいが、これでも軍師でな。それなりに情報には聡いつもりだ」
「まぁ、この情報力は俺だけの力じゃないけどな」
元から下地は出来ていた。
商人や店と結んで、情報の売り買いはしていたようだし。
範囲を広げ、商会を作って店舗を増やし、と昇華させたのは俺だけどな。
「それはさておきだ。まず、俺は、俺達は天から来たわけじゃない」
「天の御遣いは、流星のように落ちてきたようだが?」
「そういう意味じゃねぇよ」
「冗談だ」
見た目、そんなこと言わなさそうな奴なんだがな。
周喩と・2
「ほう、未来からと。まるでおとぎ話だな」
「ま、そうだよな」
この時代の者からすると、項羽やら劉邦やらと会ってる感じなんだからな。
……俺としては、こっちに馴染みが深いし、知ったのも最近の話なんだが。
「未来といえば、白い悪魔や赤くて角があると、強さが三倍になったりするからくりがあるのだろう?」
「まて、誰に教わった」
「あっがい、とやらが可愛らしいとも聞いたぞ」
「なんか通っぽいんだけど!」
どこぞのガン〇ム!?
周喩と・3
「なんだ、いないのか」
「空想の話だ。いたら俺もビビる」
「雪蓮が良くやっていたのだがな。『見える! 私にも敵が見える!』とかなんとか」
「え、そんな浸透してんの? つか、なんでそこまで知ってんの?」
まさか、それが驚異的な勘の精度の原因じゃないよな?
ニュータイプとか笑えない。
「山百合姉様は、よく白い悪魔にされていたな。『父様にもぶたれたことはありません』と、ノリノリでやっていたが」
「マジで? 山百合ってそんなキャラじゃなくね?」
「まぁ、全部嘘だが」
「嘘かよ! しかも全部!」
今度、二人の名誉の為に聞くとしよう。
「だが、王蓮様は『私は月渓の角さえあれば、いつでも三倍よ』と言っていたな」
「下ネタじゃねぇか!」
周喩と・4
「有意義な時間だった。感謝する」
「……いや、大したこともない」
なんか、色々つっこまされた気がする。
幻想殺しとか、異世界帰りの偽勇者とか、悪魔とか、マフィアのボス候補とか、魔法使いとか、あかいあくまとか、ゾンビとか、アブノーマルな会長とか、人類最強かもな武士娘とか、そんな人外ばっかりがいる学校なんかねーから!
いや、学校なんか行ったことねぇから知らんけども!
……はいそうです、俺に学歴はないです。
「機会があれば、また頼もう」
「どうだかな。知識はあったが、向こうじゃ世間知らずだったし。教えられることはあまりないと思うが」
「では、陽。次は軍師として語らうとしよう」
「それこそ、お前に遠く及ばねーよ、冥琳」
★ ★ ★
孫尚香と・1
「あーっ! ……えっと、誰だっけ?」
「わかんねぇなら大声だすんじゃねぇよ」
そうとう暇だった俺は、外に出る許可を貰って、街にやってきていた。
良いか良くないかといえば絶対に良くないが、冥琳が良いと言ったんだから、問題ない。
……まぁ、真名を交換するぐらいには仲良くなったよ。
そんな街中で、大声だして指を指されたのだから非常にめんどくさい。
向こうはホームなのだから、こっちは完全アウェーなわけで。
つまり、余計な注目を集めてしまうのだ。
「とりあえず、ここを離れましょうか」
「あ、うん」
孫尚香と・2
「私は馬雄です。別にアンタでも貴様でもお前でも構いませんが、一応客兼人質なんでお見知り置きを」
「そうそう、馬雄! シャオを子供扱いしたやつ!」
「あれは私ではなく、牡丹の手紙を代読したまでです。他意はありません」
「でも、最初に小さいって言ったのはアンタでしょ? シャオはちゃーんと聞いてたんだから!」
「あぁ、それは違いますよう。陽は陽でも、違う陽ですよう」
「ようよううるさい!」
「ちょっとした冗談じゃないですか」
からかいやすい辺り、まだまだ子供だねぇ。
「兎も角。尚香様は、天狼を知っていますか?」
「その名前だけだけどね。あんまり興味ないもん」
それでいいのか、王位継承者第二位。
「彼は、姓名を馬白、字は孝雄、真名を陽といいます。また、私も真名を陽と申します」
「え、おんなじ真名なの?」
「はい。ですから、先の手紙の陽とは彼を指すのですよ」
対外として、現在の俺こと馬雄と、かつての俺こと馬白は兄弟みたいな感じにしている。
しかも、瓜二つ設定であったので、外に出ていた時の俺は、馬白と認識されていた馬雄となっている。
だから、蒲公英と親密にしているのが馬雄であることに矛盾しない。
そして、馬白は牡丹を追って死んだ。
つまり、馬白という虚像が死に、実像たる馬雄が生きている。
そういう筋書きだ。
……俺はただ一人だがな。
まぁ、今の状況を簡単に言えば、俺自身が俺を庇っているわけだ。
「そうなんだ。じゃあ、許してあげようかな」
「ありがとうございます」
孫尚香と・3
「で? いつになったら解放して頂けるんです」
「さぁねー。シャオに謝る気があるなら、黙って着いてこれば?」
「そうですか。では、全く関わりのない私は帰らせて頂きます」
「うわ、笑顔怖っ!」
どうやら許していなかったらしい。
ちょっと着いてきてと言うものだから仕方なく着いていってやっていたのだが。
俺(馬白)に関わりあることだが、俺(馬雄)には関係ないから。
にこやかに意思表示してみたら、恐れられた。
……まぁ、意図してやってるのだが。
「でも、どうせ暇なんでしょ? だったらシャオに付き合ってよ」
「嫌です」
「どーしてよ!」
「ぶっちゃけ、めんどくさいです」
「即答っ!?」
孫尚香と・4
「雪蓮お姉ちゃんとお姉ちゃんとは会ってるのに、シャオだけ話さないってのもどうかと思ってねー」
「最初からそう仰れば」
「ついてくる?」
「いきません」
「って、言うと思った」
人となりを理解していただけたようで。
現在、俺達は甘味処で団子を頬張っています。
やっぱり、みたらし超旨い。
「んー、なんて言うか。……お姉ちゃんと、反りが合わないよね?」
「わかります?」
「ものぐさで適当そうだもん」
「おい」
「冗談だってばー。ホントはお姉ちゃんぐらい几帳面そう」
「あ、わかります?」
洞察力は孫権より肥えてるらしい。
雪蓮同様、よく街に出てるからだろう。
勉強をさぼって、だが。
机上の空論とあるように、机にかじりつくだけでは見えないものもある。
かといって、机仕事をするかしないかでは理解度が格段に違うことだろう。
つまり、双方にメリットデメリットは存在するということだ。
「でも、今はその几帳面さはいらないかな。シャオも疲れちゃうし」
「そうですか、では。……気楽なもんだねぇ」
「何が?」
「一応外だし、言葉とか気にするべきだと思うが」
「シャオは気にしないもん」
気にしろよ王族。
これは雪蓮にも言えるが。
「あ、そうだ。シャオって呼んでいいよ。シャオも陽って呼ぶから」
「自由かっ!」
「別に仲良くしちゃダメってわけじゃないし、真名交換ぐらい普通じゃない?」
「……なんでもいいわ、もう」
真名で呼ぶとまた睨まれたりするからなぁ……。
今も睨まれてるし、蒋欽とやらに。
つか、既に決定しているのがまた王族っぽいよな。
★ ★ ★
宿将たちと・1
「それで、共にいたと」
「えぇ、まぁ。勉強のお時間だったとは知らず、申し訳ありませんでした」
「嘘を言うでない。知っていたじゃろう?」
「あら、バレてます?」
「『俺に知らぬことなど、何もない』とは、誰の決め台詞だったかの」
「なんで決め台詞扱いになってんです」
大方、予想はつく。
どや顔して宣う牡丹が目に浮かんだわボケ。
「まぁ、良いではないか。さぁ、飲め」
「私、酒嫌いなんですけど」
「なんと! それでは人生の九割は損をしておるぞっ!」
「いくらなんでも、そこまではいかんぞ、祭」
だから結婚出来ねーんだよ、とはつっこまない。
酒で九割とか、この時代で60は長寿に分類される。
つまり、6歳以降はすべて損だということになる。
戦国でも、元服は12から15が主流なのだから、最短で6年は損なわけだ。
いや、どうでもいいんだが。
「しかし、孝白君は酒を造っているのだろう?」
「別に酒自体が嫌いなわけでなく、飲むのを好まないだけですよ」
「成る程。飲むことに心的外傷があるようだ」
「ご名答。親は天災をも上回る怖さですから」
地震、雷、火事、親父とある。
一番身近で感じられてしまうから怖いのだ、親父は。
しかも親代わりだったのがじじいで、しかもそういうことには超厳格だった。
……助平な爺だった癖してな。
「男ならば、父と酒を酌み交わすものだと思うておったのだがなぁ。お主も情けないのぉ」
「そう言うな、祭。父とは息子に厳しいものだ。大りーぐぼーる養成ぎぶす、とやらを付けて生活させると聞く」
「なんじゃ、その面妖なものは」
「詳しくはわからん。だが、『一徹』とやらは怒ると『ちゃぶだい』とやらをひっくり返すようだ。実は、数えるほどしかやっていないというのは内緒だぞ、とも言っていたな」
「……発信元はアンタか!」
「発信元……?」
宿将たちと・2
大リーグボールだの一徹だの卓袱台だの、大男のスターかってんだ。
そんな未来関連がわかるということは、冥琳のガン〇ムネタもこの人ということになる。
……だが、何故知っている?
悪いが、一刀のように、本当に未来から来たような雰囲気はないし、俺のような転生?というやつにも見えない。
小さな残り香のようなものが残っていてもおかしくないのに、それがない。
その旨を、この場の黄蓋と程普に伝えてみると。
「そういうことか。成る程、私が未来から来たと」
「どうなんじゃ、月渓」
「そうであったならば、みすみす王蓮様を殺すはずもない」
「っ……! すまぬ」
「……申し訳ありません」
うん、質問ミスったわ。
空気を下げてしまったようだ。
「あぁ、すまない。酒も入り、少し感傷的になっていたらしい」
「……らしくないのぉ」
「私も歳ということさ。友の面影を見て、友を思い出すと、つい、な」
「あの、そんな似てます?」
かねてからの疑問だ。
天狼の二つ名も、そこからきていると聞くし、牡丹や薊さん、山百合に瑪瑙に翠まで、似ているとか懐かしいとか言われたら少し気になるのもおかしくないはずだろ?
「似ているな」
「似ておるの」
「成る程。やはりですか」
「目元だけ少々違う、むしろ牡丹似だが、全体的によく似ている。……君の言う、残り香も含めて」
「ふむ、そう言われると感じるな。儂等と何かが違うような気がする」
「公覆殿は曖昧すぎやしませんかね」
しかし、違いか。
一刀は、平成児って感じがまだまだ抜けてないのが分かるが、俺もそうなのか?
こっちにはもう20年いるのに、まだ感じられるというのはおかしな話だ。
「実は、私以外の三雄の二人は、未来人らしい」
「「えぇっ!?」」
「祭、君は知らなかったのか?」
「初耳じゃ、たわけ!」
「…………」
……マジか。
宿将たちと・3
「厳密には、白狼は君と同じ転生とやらで、謙一……徐晃はとりっぷ、らしい。私にはよくわからない話だが、君には分かるかい、孝白君」
「なんとなくは」
転生、つまり、こっちに輪廻転生したということか。
ここはまだ儒教が深く浸透しているから、わからないことだろう。
トリップ……旅行とか?
まぁ、一刀みたいな感じか。
横文字の時点でわかるはずもないだろう。
しかし、謙一、ね。
この中華っぽくない名は、聞いたことがあるような、ないような。
かの有名な徐晃なんだし、そいつの真名が耳に入るのもおかしな話ではないか。
『ボクは謙一というんだ。好きに呼んでくれて良いよ』
『おや、こうさん。その坊主は?』
『拾った』
『……ま、まさかこうさん、そんな趣味が』
『誰がショタだっ!』
……あれ?
宿将たちと・4
「まぁ、そんな感じで色々教えて貰った、いや、教え込まれたんだよ」
「成る程。必要のないことばかり教えたのが徐晃殿で、役立つことを教えてくれたのが成公英殿と」
「つまり、策殿が冥琳や山百合を巻き込んで、色々やっておった元凶は徐晃であったのか」
「……直接教えた私も同罪ではある。冥琳と山百合には申し訳ないことをしたと思っている」
冥琳の話、嘘じゃなかったんだねー。
しかし、山百合がア〇ロとか全く想像できんぞ。
……存分にからかってやるとしようかな。
★ ★ ★
陸孫と
「馬雄さんは、天の御遣いさんなんですよね~?」
「遠からず、そうではありますね」
「でっ、では! 私の知らないことも沢山知っているのですよね!?」
「知りません」
「あはっ♪ 考えるだけで興奮してきました~」
「…………」
ようはにげだした。
甘寧と
「…………」
「…………」
「…………」
「…………こんにちは」
「…………あぁ」
話題が見つからなかった。
周泰と
「再び、監視の任につかせて戴くのです!」
「だから本人に言うなと」
「はぅあっ! すみません!」
「……俺に謝られてもねぇ」
毎度ながら、なんでこんなテンション高いのさ。
いや、気持ちの良いぐらいだから、文句ではなくただの疑問だが。
「まぁ、いいか。しかし、昨日まで魏に行ってたんだよな。昨日の今日で、疲れてないのかよ」
「お猫様成分は十分なので、問題ないのです!」
「だからテンション高いのね」
帰って来たあと、もしくはここに来る前に、にゃん公に出会ったのだろう。
……本当に、呆れるぐらい猫好きだねぇ。
呂蒙と
「…………」
「…………」
「……度、合ってます?」
「……ふぇ?」
いきなりだった俺も悪いかもしれない。
だが、こうも睨むように見られては居心地が悪い。
悪意とか敵意がないのに、何故睨まれなあかんのや、って。
……まぁ、理由はわかってるから聞いてやったのだが。
「とりあえず、眼鏡を新調してはいかがですか? 合っていないと、逆に視力を落としかねませんよ」
「知っていらしたのですか?」
「えぇ、まぁ」
近視と老眼は違うが、遠くが見にくい、という症状は似ているしな。
じじいも遠くを無理に見ようとすると、どうしても目に力が入り、目つきが悪くなるのがザラだった。
そんな目の癖に、眼鏡やコンタクトをせずに、俺を十分に倒せる力を持ってやがったのだから腹立たしい。
……今なら負けてやるつもりはないがな。
いかん、話が逸れた。
「兎も角、変えた方が良いと思いますよ。見た目は、シャオ様辺りに頼んでおけば間違いはないでしょう」
「あ、ああありがとうございます!」
フラグは立てんよ。
★ ★ ★
Side 甘寧
「一手、お相手いただけますか?」
「……はぁ。またか」
「まぁ、そう仰らず。今日は槍ですよぉ」
「もうなんでも良い。さっさと構えろ」
そう言って、正眼に構える蓮華様。
対して奴――馬孝白――は、左半身で構え、槍の切先を蓮華様に向けている。
祭様ほどではないが、徒手に剣にと、器用な奴だ。
申し遅れたが、私は甘寧。
蓮華様の刃にして、影者として第一位を任されている者だ。
隠密の能力だけを評価されるのならば明命に劣るが、まだ一位を譲ってやる気はない。
そして、誠に光栄なことに、蓮華様は私を友として扱って下さる。
……本来、王は国の為に切り捨てられるよう忠臣とは淡泊な間柄であるべきなのだが、呉の皆は家族と仰る雪蓮様の下では、例外だ。
それはさておき。
ここ三日間で、蓮華様は少し変わられた。
相変わらず思い悩んでおられるようだが、いずれ自ら答えを出されるだろう。
私はそれに従うまでだ。
「おぉ、今日は耐えますねぇ」
「ぐっ! それは、お前が手加減を、……きゃっ!」
「してませんてば」
奴の突きを耐えながら払う蓮華様。
だが、隙なく続けて横凪ぎがくるとは思っていなかったようで、弾かれた蓮華様の剣は宙を舞って、地に刺さった。
一見、大したことのない凪ぎだったが、実際は細かく手が込んだものだ。
槍の中心軸方向に槍自身を回して威力を上げ、穂先に近い側―今回は左―の手を支点に、右手で穂先と逆側を操作することで、素早い二撃目を可能にした。
……小手先の技術だが、大したものだ。
しかし、それでも槍は得手ではないだろう。
鍛錬しているのはわかるが、他に比べて練度が低い。
「ですが、まだまだ甘いですよ。これぐらい捌ききらなければ死にますよ」
「くっ、もう一度だ」
「構いませんよ」
ここが、変わられたところの一つだ。
必要以上に熱くなることが減った。
完全になくなったわけではないが、良い兆候ではある。
おそらくだが、奴への対抗心が冷静にさせるのだろう。
……ただし、仕掛けてきた奴に呆れていたにも関わらず再戦を自分から求める辺り、少々熱くなられているようだが。
「ふっ、ほっ、いやぁあっ!」
「くっ、……まだまだ!」
完全にふざけているとしか思えないような声と共に、力強い槍が蓮華様を襲う。
奴の厄介な所は多様性で、自身の器用さを使いこなせているところだ。
先の戦い方は、技が7に対して力は3だったが、今はその配分が逆になっている。
奴の槍での本分は知らないが、どちらもそつなくこなせるというのは異常だ。
いや、執着がないからこそ成せるのか?
それは知る由も――別段、知りたいと思うことも――ないが、蓮華様にとって、良い経験になることには変わりない。
「そーれそれそれー」
「このっ! ふざけているのかっ!」
「そんなことを聞いてる余裕がおありですかー?」
「くぅっ! ……いいだろう、目に物を言わせてくれるっ!」
些か、力での攻撃に慣れてきたようで、喧嘩を売っているかけ声に気付いた蓮華様。
それを悟った奴は、また技と力の比率を7と3に戻す。
蓮華様が変わられたもう一つは、安易に攻勢に出なくなったことだ。
奴がそんな隙を作らないようにしている、という理由もあるが、少なくとも、身を捨てるような前掛かりになることはなくなった。
さらに、相乗効果で守りが堅くなっている。
……忌々しいが、奴の育成能力には目を見張るものがあると、深く思う。
外から見ていると、私や月渓様、祭様まで、如何に過保護だったのか、よく分かる。
加えて、蓮華様もまた、虎の子であることも。
頭で考える方を得手としているが、武に関しては、やはり実践での感覚を頼りにしている節がある。
つまり、実践に次ぐ実践、危険がよりあった方が、強くなれたということだ。
限度はあるだろうが、今よりは確実に強かっただろう。
「ふっ、どうだ。耐えきってみせたぞ」
「………………」
「なんだ、お終いか?」
「……勝てなきゃ、意味はねーんだぜ?」
何と言えば良いのやら。
奴の槍を捌ききったことに胸を張る蓮華様にも、その挑発に乗る奴にも。
溜め息に似た息を吐くとすぐ、戦況が変わった。
「……きゃっ! きっ、貴様っ、卑怯だぞ!」
「卑怯じゃねぇし。手加減をしなくなっただけだし」
「おっ、大人気ない!」
不意に、蓮華様の持っていた剣が宙を舞う。
奴の今日一番の速度と威力の槍に、握力がついていかなかったのだろう。
未だ、仕合が終わっていなかったにも関わらず、油断してしまった蓮華様に非があるが、挑発に本気を出すのは少々大人気ないと、私も思う。
……しかし、手加減をしていたことには怒らないのですか、蓮華様。
「何とでも仰ってください。勝利こそ全てです」
「先日と言っていたことが逆ではないか!」
「そうですか? それほど違えたことを言ったつもりはないんですけどね」
前は、負けなければ良い、とかなんとか言っていたはずだ。
……確かに間違いではないが、屁理屈に聞こえるだろう。
「貴女は、負けなければ勝ちなんです。つまり、勝てってことじゃないですか」
「それは、そうだが……」
「言いくるめられていますよ、蓮華様」
「…………」
少し恨みがましさの籠もった目で、奴はこちらを見てくる。
助け舟を出そうとすることを非難したいのかは知らないが、元から私は蓮華様の味方であり、とやかく言われる筋合いは微塵もない。
「なっ、貴様、謀ったな!?」
「いえ、全く」
「嘘を吐くな!」
「私が嘘を吐いて、何の得があるというのですか、いえ、ありません」
……コイツといい、雪蓮様といい、蓮華様で遊ぶのがそんなに楽しいのか。
弄られては顔を赤らめて怒る蓮華様を見ていると、そう思う。
しかし、最初に比べると、かなり打ち解けた様子だ。
相変わらず怒ってばかりの気がするが、前までとは少々質が違う。
具体的には、雪蓮様に対して怒るときのような怒りだ。
……また、一回り大きくなられたなと、深く思った。
陽は語る。
「呉の皆さんは取っ付きやすいですなー。……一部、非常に絡みにくい人もいるけども」
と
最近、忙しくてしょうがない。
レポートエグいよ!
プログラミングとかまじ訳分からん。
VBAってなんだバカやろー!
……これからも、こんな感じでかなり不定期になったりしますが、どうかご容赦を。
それはともかく。
陽君の敬語がたびたび外れたりしますが、寧ろかれは敬語なんか使いたくないんです。
面倒なので。
だから、雪蓮が良いなら冥琳もいいかと、タメ語を使ってます。
あと、感情的になったりするときも、似非紳士が綻ぶので、敬語が外れます。
「不器用ながら、手取り足取り教える陽に、徐々に思いを寄せていく蓮華。しかし、彼女は生徒であり次期王……。彼は一介の先生であり、将来を約束した恋人がいた……。許されざる恋と知りながら、蓮華は……」
なんだその次回予告は。
ねーから。
蓮華ちゃんが陽に恋するとか、そんな羨ましいシチュエーションねーから!
「あら、男の嫉妬は醜いわよ? 陽の嫉妬は許すけど」
結局、人によるのかよ!
「違うわよ。僻みによる嫉妬が醜いの。純粋な思いからの嫉妬とは違うのよ!」
……そっちの方が病んでそうでこえーわ。
おしまい☆




