第八十話
毎週更新!
くそ、ちょっと間に合わなかった!
「着たぜ建業! ……遠いわぁぁぁーーーあ!!」
Side 陽
いくら一度体験していたとしても、この本音は覆せん。
無事?建業に到着した陽だ。
まぁ、ここに至るまでに立ち寄った街も栄えていたから十分に休んでこれたし、体力的な問題はない。
だけど、遠いからめんどくさかったんだよ。
しかも、もう蒲公英成分が不足してきたんですけど。
ぶっちゃけもう帰りたいと思うのは悪くないはずだ。
まぁ、到底無理な話なんだけどさ。
★ ★ ★
「なんつーか、……なんと言えばいいのやら」
城内の城の門前まで来て今更な話なんだが。
どうすれば正解なんだろう。
使者は送ったことはあるが、実際に俺が訪問するのは蜀に次いで二度目だ。
向こうは別に簡単だったんだ。
だって、なんかゆるゆるだったし。
翠や蒲公英といった知り合いのつてで着た、みたいなこと言ったら結構簡単に入れた。
感謝すべきは身内か。
比べて呉には、知り合いが、……まぁ、いるな。
いるけど、ねぇ。
そのつてでやってきた、というのは無理がありすぎるだろ常識的に考えて。
どうして猫之神とか調子に乗ったよ俺。
それはさておき。
いきなり蜀から来ました陽くんでーっすミ☆
とかやったらどん引きだろう。
……今のは多大な誇張があったが、蜀から使者としてやってきた、なんて言ったら絶対警戒される。
ってか、今絶賛警戒されてますけどね。
どうしようかと門前で俺は考え事をしている訳で、門番からすれば、門前で俺がぼーっとしてるように見える訳で。
門前と言っても十メートル位は離れてるから、声を掛けるには遠いから、今は警戒までで済んでいる。
ホントのところはさ。
朱里ちゃんが紹介文的な、俺の身分証明ができる物を持たせてくれたら早かったんよ。
それを門番に渡して、周喩様に渡してください、とかいうやりとりが出来ればすんなり入れたはずだ。
後は、そっちに蜀の使者がいきますよー、といった内容を認めた手紙とか。
後者は確実じゃないから、普通は両方、出来なくても前者でやるはずなのに。
うっかりだったらぶっ殺すかんな……!
兎も角。
仮に手紙が送られているとしても、自分でもアポは取っておくべきか。
あ、そうだ。
ここで迷ってたんだった。
なんて声を掛けようかってことをさ。
……もう、いいや。
明日にしよう。
今日会おうとするにはいささか問題がありそうだ。
因みにだが、現在は昼も過ぎ日が少しだけ傾いてきた頃だったり。
おい、そこ!
問題の先送りだとか言うな!
ようし、上等だ。
今からアポ取ってきてやんよ。
明日、お目通り願いたいと頼んできてやる。
それで文句あるか!
★ ★ ★
結果、案外すんなりOKされたよ。
別に蜀からの使者を名乗る必要はなかったんだ。
馬印商会の身分を騙ればよかったのさ。
いや、実際商人だから騙ってはいないけど。
まぁ、さすがに代表取締役だから会わせてとは言わなかった。
んで、門前で立ち尽くしてた理由を聞かれたが、緊張してたと答えたらなんか気さくな態度になった。
「だよなー、城の前って緊張するよなー」
「んだべ、んだべ」
「元田舎者としては、威圧感が凄くて。たははは」
みたいな会話をした。
片方はいいとして、もう一方が田舎者すぎて笑えたわ。
おらさ、呉に仕官して、母ちゃんやしなうさ〜。
とか言いそうな奴だった。
……半分冗談だ。
それは兎も角として。
明日と決まったからには今からが暇になるわけで。
宿も手配してるから――黒兎はそこの厩においてきた――なんにもすることがない。
暇つぶしになることはないもんかねぇ。
と、宛もなく歩いていると。
「おらおら邪魔だぁ! 殺されたくなかったら引っ込んでな!」
「そうはいかないわね。私の民が人質に取られてるんだから」
「出たな孫策ぅ!」
「しぇ、雪蓮ちゃん」
「安心して、おじいちゃん。すぐに助けてあげるわ」
「おうおう、言うじゃねぇか! やれるもんならやってみろや!」
……チンピラとのエンカウント率高くないか、俺。
いや、まだエンカウントではないか。
実際絡まれてないし。
つか、絡まれてるのこの国の王様なんですけど。
自由だな、おい。
元主もそうだったから、フォローする側の気持ちが痛いほどわかるが。
かと言って、関係あると言えばあるし、ないと言えばない呉の問題に首を突っ込むのもどうかなと思う。
ぶっちゃけて言えば、正直めんどくさい。
そんな理由で、踵を返したわけだが。
そこには、なんだかとてもめんどくさそうな匂いを醸し出してる女がいた。
俺のよりは銀に近い長い白髪に、どういうわけか歳のわりに老けない美人と言える顔立ちと、迫力のある双子山。
特筆すべきはそれぐらいだが、総合すると世間一般からすれば美人な女、黄公覆がそこにいた……いやがった。
「お、お主は、白狼……ではないな。いやしかし、ここまで瓜二つとは……。えぇい、悩んでおる暇などないわ!」
「…………」
なにこのひと、頭おかしいよ。
いきなり自己完結しちゃうし。
「何故ここにおるかは知らぬ、聞かぬ。じゃが、頼む。協力してくれ、牡丹の子よ」
「…………えー」
「ここは黙って頷くところじゃろっ!? 少し隙を作ってくれれば良い! 分かったか? では頼んだぞ!」
「おい! 強引すぎるだろ!」
なんという一方的な頼み。
別に聞いてやる義理はないんだが……。
牡丹の子、と言われては、どうにかするしかない。
主に口封じの為に。
牡丹め、容姿を伝えるという余計な真似しやがって!
面倒を受けんのはこっちなんだからな!
★ ★ ★
「やぁ、皆さんこんにちは」
「なんだテメェ! 関係ねぇ奴は引っ込んでな!」
『そうだそうだ!』
「そうね。邪魔しないで頂戴」
敵、味方、双方に邪魔者扱いされたんですけど。
いや、現時点では第三者にすぎないんだから仕方ないのかもしれないが。
ってか、敵方に部下、というか子分いたのかよ。
これは、制圧が面倒だぞ?
「まぁ、落ち着いてください。とりあえず整理しましょう」
「うるせぇよ、優男! 邪魔するならコイツ、殺すぞ」
「同時に人質の意味がなくなるけど、良いのかしら?」
「ハッ! 新たに人質を取ればいいだけだ」
「そんな隙、この方が与えるわけないでしょうに」
「あら、良くわかってるじゃない」
人質を少しでも離してみろ。
その瞬間に惨殺されるぞ。
どうやらそれぐらいの実力差があることが分かっているようで、口元を歪めるリーダーっぽい奴。
さっきはちょっと強気にでてみただけのようだ。
「ふむ。貴男方はこの方に恨みがあると。それで、この方を殺したい。そして、貴女はこの方達を捕まえたいと」
「いいえ。殺すわ」
「あ、そう」
殺気立ってるからそれはわかってたよ。
だから、言葉で操ろうと思ったんだが。
こと民(家族)に手を出す者に関しては、結構冷静なようだ。
やっぱコイツ、笑顔で人を殺せるタチの人間だな。
人のことは言えないけども。
しかし、厄介だ。
逃げる為の立ち回りだったなら簡単だったのに。
逃がすことを保証してやれば良いのだから。
「……予想ですが、貴男達は、黄巾党の残党というところですか。そして、大親分がこの方に殺されたとか、そんな感じですね?」
「お、おう。……って、なんでわかった!」
「あら、当たったよ」
ってか、それぐらいしかないでしょうよ。
だって、孫呉が敵対した相手がそもそも少ないし。
反董卓連合の時は袁術の客将だったから、恨みを買うというのはどうも違う。
で、袁術は張勲以外、元から誰にも慕われてないし。
劉表は、正直わからん。
だが、今更皇族だのと言うなら曹操に喧嘩を売れよって話だし、領地だった荊州の統治も良好だ。
つまり、限りなく低い。
すると、残りは賊に絞られる。
山賊、江賊が陸にくるわけがないし、見たところ異民族(山越)でもない。
まぁ、そんなところだ。
而して。
「やっちゃえ、バーサーカー」
「ばーさぁ……? なんて言ったの?」
「冗談です」
手加減は必要ない。
ただ、殺しは良くないかな。
ほら、子供いるし。
というわけで、出血大サービスしてやることにする。
「じーさんよ。目、閉じてな」
「お、おぉ、わかりました」
「おいテメェ、なに勝手に会話して――「黙れ」――っ!」
サービスタイムなので、雰囲気もがらりと変えておく。
殺気も少し洩らす。
孫策に剣―南海覇王だったか?―を向けられたのは仕様だ。
「なぁ、お前ら。こんな噂、聞いたことあるか?」
「な、なんだよ。っていうか、お前、動くんじゃ!」
「まぁ、聞けよ」
ボーナスタイムに突入してやろう。
左目にかかる眼帯を上に捲る。
閉じたままにしておき、氣を集中させる。
「銀の瞳は全てを見通し、黒の瞳は絶望の始まり、だったか。……知っているか?」
「んなもん知るかよ!」
「なんだよ、そのアホらしい噂は! なぁ、アニキ!」
「それに、その噂がどうしたってんだ!」
『ギャハハハッ!』
「うるせぇぞ、オメェ等! ……確か天狼の噂だな。それがどうしたってんだ。アレは死んだんだろ?」
どうやらリーダー格しか知らないようだ。
距離があるから仕方ないかもしれない。
だが、それでは困るな。
ホントは、馬白が死んだってのをもっと広めないといかんところなんだが。
「あぁ、そうだな。……ご協力、感謝する」
「何がどういう……ッッ!」
『……ッ……!!』
もう喋らせる必要もないから、閉じてた左目を開き、溜めていた殺氣を開放する。
俺に向かう視線を媒体にするため、無差別になりかねなくて扱いが難しかったりするが、すでに慣れたものだ。
倒れるリーダー格以外の賊達。
いや、リーダー格も刈り取るはずだったんだがなぁ。
……流石に、一割は舐めすぎたか?
それは兎も角。
そんなことをしでかしたので、孫策からの警戒心がビシビシと伝わってくる。
何をやったかはわからんだろうが、俺が何かをしたというのはわかるだろうからな。
「な、テメェ、何を……っ!」
「っと、危ねぇ」
「……邪魔しないでくれる?」
何かされたということはリーダー格もわかったようで、一瞬後ろを振り向く。
約束通り隙を作ってやったわけだが、それを孫策が見逃す筈もなく。
自身の得物―南海覇王?―で首を跳ねようとする。
が、殺しダメ、絶対!の信条を現在掲げてる俺が、その凶刃をリーダー格の首の薄皮一枚で止めた。
間に割り込んでの白刃取りで。
……言っておくが、未だじいさんは捕らわれたまんまだから斬るなら首しかない、ということで予想できたからこそ取れただけであって、一度も剣筋を見てない奴のを取るのは不可能だからな。
「それは無理な話だ」
「そう。だったら一緒に殺してあげるわ!」
「おいおい、冗談――「かっ!」――ちょ、待っ、ぐっ……ぬぇい!」
1センチでも動かせればリーダー格の首筋をかっ斬れるわけで、剣―南海覇王?―を押し込んでくる孫策。
剣を挟んで押し留めようとする俺は明らかに不利である。
今はギリギリ拮抗しており、リーダー格もまだジッとしてるからいいが、このままだとじいさんが危ない。
頼むから早くしてくれクソババァと念じながら耐えていると、後ろで小気味良い音と、空気を短く吐く音がした。
多分だが、後頭部に鏃を丸めた矢が当たり、気を失ったと思われる。
そんな訳で、体勢を崩しかけているだろうと判断し、若干上方に向かうように剣を受け流す。
瞬間に振り向くと、はらりと落ちる茶色の髪。
ギリギリセーフだったことにホッとしつつ、じいさんを巻き込みながらこちらに倒れてくるリーダー格の首下辺りを左手で抑え、右腕で倒れそうになったじいさんを受け止める。
勿論、小刀を持ってじいさんの首元にあった右手は払いのけてある。
そんな感じで両腕が塞がっているわけで。
受け流した剣の返す剣をどうすることもできず、首元に置かれた。
「ちょっと、お話しましょ?」
「…………はぁ」
ほらー、やっぱり嫌な予感は的中だったじゃんかよー。
★ ★ ★
「……まさか、いつかのフラグを回収する日がこようとは」
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!
俺は犯人タイーホに協力したと思ったら牢獄にいれられた。
な、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった……。
王様な覇気だとか流れだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
まぁ、ネタに走ってみたわけだが、状況はわかるだろ?
陽さんインザ牢獄☆
って感じだ。
危ない顔なのは、まぁ自覚していた。
それで勘違いされて連行、という展開なら、まぁ、許容できたさ。
だが、今回は理不尽すぎない?
ってか、黄蓋てめーちょっとこっちこい。
「おぉ、おったおった」
「……呑気なもんだなぁ、おい。殺すぞ?」
噂をすればなんとやら。
やってきたのは黄公覆。
「こんなことで死にたくはないのぉ」
「……こんなこと、ねぇ」
「あいや、待たんか! 話は詰め所でする! じゃから、殺気は抑えてくれ!」
強引な頼みを聞いてやったというのに扱いが酷いことにキレそうだぜ、バカやろうが。
あぁ、もう清涼剤(蒲公英)が欲しいぜ……。
★ ★ ★
「本当にすまんかった! 策殿を止められんかったのは儂の失態じゃ。本当にすまぬ」
「……はぁ、もういいです。頭をあげてくださいよ」
「しかしじゃな。お主の都合も聞かず勝手を協力をこじつけ、さらに獄に入れてしまったのだぞ? ただの謝罪では申し訳がたたんじゃろう?」
「なにそれ、棒叩きしてほしいわけ?」
「は?」
「いや、なんでも」
とても罪の意識は高いようで。
そういえば、黄蓋への罰といえば棒叩き。
あれ、鞭だっけ?
しかし、鞭とも読むから、結局は棒なのか?
割とどうでも良い話だがまぁ、先の言葉はそんなことを思い出してただけだ。
……仮にもし、鞭打ちの刑になったとしたら、一刀の阿呆は、自分を抑えてられるのだろうか。
変態だからな、アイツ。
人のこと言えないが。
「お、いたいた。やっほー、元気ー?」
「さっ、策殿! どうしてこのようなところに!」
「そりゃ勿論、この子と話そうかなー、と思って。まさか祭と逢瀬を交わしてるとは思わなかったけどね」
「それはない」
割とどうでも良いことを考えると、いきなりやってきた孫策。
理不尽の塊なコレに、今更驚く黄蓋が不思議だ。
まぁ、牡丹という理不尽に慣れてたが、牢にいれられたのには吃驚した俺に言えたことではないが。
それはさておき。
世の男には随分と魅力的なんだろーが、俺の食指は動くはずもなく。
即座に否定したら、吃驚した顔して、その後複雑そうな顔をした二人。
何故だ。
「祭、なんか、ごめんなさい」
「謝らずとも良いですぞ、策殿。余計惨めになるのでな」
なんか空気が重いが、俺のスルースキルはバッチリだ。
話題変換話題変換。
「で。何をしにきたのです、小覇王殿」
「そっちこそ、何をしにきたのかしら、天狼」
「天狼。はて、彼奴は死んだはずでしょう?」
「死んでないわよ。だって、目の前にいるもの」
……おいおい。
周りに人の視線やらがないからいいが、機密事項なんだぜ?
天狼たる俺が生きてることは。
「……はぁ。隠しててもしょうがねぇか。どうせ勘で確信してんだろうからな」
「そうそう♪」
「うっわー、腹立つー」
策略が、勘一つで崩れるなんて理不尽にも程がある。
そんな感じで倒された敵の気持ちがわかるよ。
……牡丹の勘はそこまで便利じゃないから、ここまでの理不尽は初めての体験だ。
「仲が良いな、お主ら。初対面であろうに」
「そう? 普通じゃない?」
「普通じゃないぞ、常識的に考えて」
「え〜」
俺が初対面で仲良くなったのって、蒲公英と牡丹と明命、美以等ぐらい。
崇められたらのと懐かれたのを除くと二人しかいない。
……コミュ障ではないからな!
「話しやすいのは、牡丹に似てるからかなー」
「「…………」」
あれ、すげぇ空気が重くなったんだが。
牡丹が死んだことなんて、現在まで引き摺ることじゃねぇっての。
「まぁ、なんだ。俺がここに来たのはそれも関連してる。明日、纏めて話すんで、……とりあえず、釈放してくんね?」
★ ★ ★
娑婆の空気は美味ぇぜ……。
まぁ、半刻も獄に入ってなかったんだが。
しかし、だ。
「何故についてくる、孫伯符」
「別に良いじゃない。監視兼暇つぶしよ」
「仕事が溜まるだけだぞ」
「やっさしい冥琳がいるから大丈夫よ」
「コイツ、牡丹よりタチ悪ぃ」
アレは、なんだかんだやる。
周喩みたいな超できる奴は西涼にいなかったし。
しかも、俺と薊さんの壁があったから逃れられないし。
まぁ、俄然仕事量も違うから、周喩の心労は計り知れない。
「……倒れるぞ?」
「大丈夫よ。適度に癒やしてあげてるから」
「仕事押し付けといて、さらに寝不足にさせるとかこれ如何に」
「癒しって、別にそういう意味じゃないわよ! ……っていうか、そういうことも知ってるわけ?」
「俺に知らぬことなど何もないってな」
つか、コイツがレズってるのなんか、魏も知ってるだろうけどな。
まぁ、個人的にだが、魏の百合ハーレムよりは好ましい。
牡丹と薊さんと同じように、デレデレを全面に出してないからな。
……お前はデレデレしすぎだって?
っるせぇよ、バーカァ!
「それで? これから何かするの?」
「なんもしねぇよ。つか、することねぇよ」
「じゃあ、ちょっとついてきて」
「だが、断る」
「ほら、いくわよ」
俺の言葉聞こえてます?
断るって言ったんですけど?
ちょ、首元引っ張んなや!
★ ★ ★
「おぉ、先程救って頂いたお方。本当にありがとうございます」
「あー、いえ。大したことでは」
「そうそう。気にしなくて良いわよ、おじいちゃん」
「お前が言うな」
半ば引きずられる形で連れてかれたのは、さっき――と言っても一刻ほど経ってるが――助けたじいさんの家。
礼を言われるまでもないが、お前が答えるのはおかしいだろーが。
「ホッホッ、仲の良いことじゃ。雪蓮ちゃん、もしかして」
「あはは、それはないない。絶っ対、ないわよ」
「こっちからも願い下げだぜ」
「あら、聞き捨てならないわねー」
万に一つもないな。
向こうから来ない限り、俺は返すつもりはない。
蒲公英と、山百合と瑪瑙は例外として、だが。
「あ、一応紹介しておくわね。こちら、馬はk――「馬雄孝白です。よろしく」――ちょっと、邪魔しないでよ」
「うるせぇ。……自己紹介ぐらい自分でさせろ」
別に名前を言うつもりはなかったがな。
馬白と言われるのは回避したかったから仕方なくだ。
「まぁいいわ。それで、何か手伝うことない?」
★ ★ ★
「なんで肉体労働させられたんだ……!」
別に苦ではない。
そんな柔な身体はしてない。
だが、理解ができない。
なんで手伝わされたし!
「良いじゃない。どーせ暇なんでしょ?」
「そういう問題じゃねぇだろーが、バカやろうが!」
分かってるのか?
初対面だっての!
しかも、会ってまだ三刻も経ってねぇし!
なのに、何この親密な感じ!
おかしいだろうがっ!!
「言いたいことはわかるわ。けど、これが私なりの見極め方なのよ」
「もっとマシな嘘を吐けよ。見極めもクソも、お前全部勘でやってんだろーが」
「あっ、ひっどーい! 私だってやるときはやるのよ!」
「やるときの割合が低くて話にならんだろう」
なんか本当に牡丹と話してるみたいだぜ。
別に重ねてるわけじゃないが。
似てるから、ついついからかい口調になる。
……相手は王様だから、いつ首を跳ねられてもおかしくないけどな。
「……今回は本当に目で見て見極めてるわよ。山百合お姉ちゃんの婿候補なんだもの」
「婿候補て。アイツは嫁にはせんぞ、俺は」
「……ちょっと聞き捨てならないことを聞いた気がするわね」
目が笑ってない、むしろ鋭く光ってる笑みを浮かべる孫策。
なんというか、凄く恐ぇ。
理由は大体わかるけども。
「いいか? アイツは家族であり、もう俺の右腕、一部だ。今は貸してやってるが、いずれは返してもらう。誰にも渡さん」
「……それは、山百合お姉ちゃんが望んだこと?」
「当たり前だ。アイツが俺のみの色に染まり、俺のみを愛することを誓ったから、俺は受け入れた」
だから、山百合から離れるなんてことはないだろう。
別に、俺からも捨てる気はないしな。
嫌になったら、離れてもらっても構わんが。
「……そう。わかった。じゃあ、私を雪蓮と呼んでくれて良いわ」
「合格、というわけか。別に認められまいが、手放すつもりはさらさらないがな」
「けじめよ、け・じ・め。山百合お姉ちゃんが好きになった人が、悪い人なわけないもの」
「あっそ。……あぁ、そうだ。俺は陽だ、よろしく」
「よろしくね、お義兄ちゃん♪」
「ぶはっ!」
なんだその嫌すぎる呼称は!
★ ★ ★
「あ、聞こうと思って忘れてたんだけど。……どうして邪魔をしてくれたのかしら?」
「殺気出さないでくれます?」
「答えによっては、スパッといくから」
「なんて暴君なんだ」
そういえば、孫策って過激だったな。
理由は忘れたが、于吉の首をちょんぱしたんだったか?
どーでも良い話だが。
「……完全に俺の都合だが」
「…………」
ちょ、目を細めないでくれますか?
めっちゃ恐いんですけど。
「俺、子供が好きなんだわ。だから、血を見せたくなかった。それが大方の理由」
「私は見せしめの贄として、ああいう奴らは殺すことに決めてるの。見せる対象は、子供も例外じゃないわ」
「小覇王、孫伯符の名を知らしめたいのはわかる。しかも、……王を譲るだろうこともな」
また、目が細くなる。
考えてることを見透かされてるみたいなもんだし、仕方ないだろう。
だが、自分より王器のある者が近くにいて、しかも妹だとしたら、最高の状態で譲りたくなる気持ちは理解できるんだ。
俺が恐れられることを目指したのは、牡丹の為というのが大いにあったから。
「充分だろ。小覇王の冷酷さは、呉に知られてるよ。孫伯符の呉を、家族を愛する気持ちも、皆分かってるさ」
「要するに?」
「もう、傷ついてまで殺さなくてもいいんじゃねぇの?」
自分の愛する者から怯えられたら、俺は泣く。
具体的には、蒲公英が俺を恐れたら、多分壊れる。
それぐらい傷つくのさ、好いてる者に嫌われるって。
「ぷっ、あははっ! 気障ったらしいっ! 傷ついてまで殺さなくてもいいんじゃね、……ぷはっ!」
「おい、笑うなよー。真面目に言っただけだろーが」
「あー、おもしろかった! ……今更、気にしてなかったけど、一理あるわね」
未だニヤニヤする雪蓮。
くっそ腹立つんだが。
「流石、山百合お姉ちゃんが惚れた男ってところかしら?」
「あー、そうだねー」
「傷ついてまで、ぷっ、殺さなくても、……っく、いいんじゃね、あーっはははっ!」
コイツ、いつか殺す……!
陽は語る。
「雪蓮が勝手に動きすぎて困る。……まぁ、殺さない理由は、情報を引き出す為というのもあったが、聞きやしねぇ」
と
なんというか、雪蓮回です。
城で会うはずだったのに、どうしてこうなった。
……原作のせいですよ!
常々思ってたのですよ。
賊殺しからのセクロスシーンイベント。
あそこ、救済したいなーと。
雪蓮が、ちゅきダカラー!
「(ギリギリ)」
なんしてん、あんた。
「いや、私の面影をみせる雪蓮ちゃんに嫉妬?」
あぁ、そう。
ってか、あんたが真似するからそうなるんでしょうに。
「るっせぇなぁー!」
「あら、牡丹ってば恥ずかしがっちゃって可愛いー」
「うるせぇぞ、王蓮!」
「ネタバレだけどー、女として振る舞おうと、私の真似をしたのが始まりなのよ?」
ちょ、やめて!
そんな秘話殆ど本編には出てこないけども、やめて!
「それも、白狼にもっと好かれたいから、って乙女心からなのよ♪ かっわいー、超ラブリー牡丹ちゃん」
「うがぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあっっ!!!!」
「わー、牡丹が怒ったー」
終われ!




