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第五十七話



一週間ぶりです。




これからも、毎週更新ぐらいで頑張ります。



「あーあ、なんでトラブるのー? 蒲公英とのToLOVEるだけでいいんだってばさー」










やぁやぁ、僕様ちゃんですよ。

陽でござんすよ。


うん、最初の文句は仕方ないと理解してくれ。

いや、実際ToLOVEるなんてのは見たことないんだけどな。

めっちゃ前のことだが、じじいがさ、ダークネスになってから激アツ、とか言ってたんだ。

孫同様、スケベだよ全く。


……あー、現実逃避もゆるしてくれ。

この状況だもん。


「ナメてんのかゴルァ!」


「テメー、アニキに逆らうとか良い度胸じゃねぇか!」


「そう言われましてもねー」


無駄マッチョに絶賛胸ぐら掴まれてますもん。

別に逆らってないんだけどな。


いやなに、ぶつかられて難癖つけられただけさ。

俺は悪くないのだ。

たぶん。

めいびー。


「無視してんじゃねぇぞ!」


「そうだ、こっち見やがれ!」


もう、めんどくせーよ。

殺そうか?

でもなー。

あんまり騒ぎは起こせねーんだよなー。


ここ、長安だからさ。


流石にね、そーそーちゃんいる時に騒ぎ起こすのはアホやろ?

逃げた意味ねーし、まだまだ自由は謳歌したいし、捕まったら蒲公英に会えんじゃねぇか!


「で、なんですか? どうすれば?」


「ナメた態度とってんじゃねぇぞ!」


その言葉と共に、テレフォンパンチってんだっけ?

おっそいパンチが降ってくる。


どうしよう。

当たった方がいいのか。

正当防衛適応されるし。

でも、ちょっぴり痛そう。

無駄筋肉だけだが、質量分だけ重いのは重い。


いや、しかし遅いな。

当たるまでに、頭を左右二往復はできるよ。


「ラァ!」


「……ぐっはー」


パンチが当たった瞬間。

そうやって、声を出して吹っ飛んでみせる。

一瞬で唇の端を噛み切って、血を出るようにして。

んで、尻餅をついておく。

はっはっは、なかなかの名演技だろう?


あ、因みに、首回して受け流してほぼ無力化してやったがな。

奴の手に違和感を感じさせないようにしながらとか、めがっさ大変だったよ。


「いつつ……」


痛くないけどな。


「見たかチビ! 俺の拳でこんなに飛びやがった!」


「へっ! ざまぁねぇぜ!」


馬鹿だなコイツ(苦笑)

困ったもんだぜ(失笑)


「だがなぁ、それとこれとは話が違うぜ!」


「そうだそうだ!」


どれがだよ。

つか、早くしてほしい。

そうしないと――


「おい、お前達! 何をしている!」


――ほら、警備隊長さまがやってこられたよ。

ホント勘弁してーな。


「やべぇ! ずらかるぞ、チビっ!」


「あっ、アニキ!」


俺に目もくれず、逃げる二人

逃げるからやましく思われるんだぜ?


「あ、こら待て!」


逃げ足が速いのもあるが、反応も鈍いな。

逃げられちまうぜ?

別にどうでもいいから、俺としては構わんのだが。


「逃がすかっ! ハァァァーーーッ!! 猛虎っ――「よっと」――っ!!」


突然立ち上がった俺に反応したせいで、脚に溜めていた氣が霧散する。

こんな街中でぶっ放したらあかんやろ。


なぁ、なぎちゃんよぉ。



「くっ、逃がしたか。……御仁、大丈夫でしたか?」


「えぇ、無問題です」


「それは良かった。では、奴等を追います故、失礼」


なんとも律儀なこった。

わざわざ俺の安否を確かめてから追っかけてくなんて。


……あの師で、よくもまぁこんな性格になれるもんだ。

いや、むしろ師がルーズだからかねぇ……。


まぁ、いいか。

今となっては、な。





   ★ ★ ★





「え、うそん」


「……おやぁ、これはこれは」


頭が逃げろと叫んでる。

だが、相対する人の背後立ち上る真っ黒でゾッとする氣が、俺をここに縫い付ける。

これが、足が竦むって奴なんだね。

いつもさせる側だったからさ、初体験だよ。


「こっ、こんにちはー、韓遂殿。お茶でもどうですかー?」


「良いですなぁ。お付き合いしましょう」


つか、まさか会ってしまうとはな。

これは、逃げられんぞぉ……!



   ★ ★ ★



「で。弁明は?」


「いや、ね? 元から追うつもりだったお」


「そんなことは分かっておる。何故死んだか、それを聞きたい」


「牡丹が好きだった。それだけの話じゃないか」


「……馬鹿馬鹿しい」


ちょ、酷い!

死した者を追っかけるなんて、よくあることじゃねぇか。

それに、現にアンタやろうとしてたやん。

牡丹に止められたけど。

山百合は俺が止めたし。


まぁ、牡丹嫌いを演じる上では仕方ないか。


「何が馬鹿馬鹿しいんだよ。兄弟を貶めるのは、いくら薊さんでも許さんぞ」


「許されなくても結構。本当の事を言うておるのだからな」


「なぁにぃーっ」


やっちまったなぁ!

あ、古いか。


お、やっと薊さんの表情筋が動いた。

つっても、眉を僅かに上げただけだが。

俺の過剰反応に、ちょっとイラッときたかな?


「奴の為に死ぬなど、馬鹿のすることではないか」


「そんなことはないっ! 牡丹は尊敬に値する人間じゃねぇかっ!」


「ふん。貴様も虚構に魅せられているに過ぎん。アレはそんな人間ではない」


まぁ、うん。

そうだよ。

間違っても、尊敬される程の人間じゃない。

牡丹も俺も、自分の事を考えているに過ぎないんだからな。


俺を家族にしたのも、違うように歩む自分を見たいから、面白くなるだろうから、という気持ちだろう。

受け入れてくれたことが無償に嬉しかった気持ちもあるが、そういう気持ちも、俺にもあったからな。


「まぁ、薊さんの牡丹嫌いなんか知ったことじゃねぇさ。だからといって、その価値観を押しつけんな」


「それもそうじゃな。ここまで言っても変わらぬのだから、仕方あるまい」


そろそろ終わりにしよう。

喩え演技でも、あんまり家族の苦言は聞きたかないし。

……牡丹がアホなのは否定はしないんだけどさー。


「出来れば、戦場で出会わぬことを祈っておるよ」


「さぁな。薊さんがわざわざ出張って来なきゃ、会うこともねぇだろうがな」


「ふっ。童が言いおる」


「代金は払っておくよ。じゃあな、薊さん」


そう言って立ち上がると、薊さんに襟を引かれる。

不意にだったから地味に痛かったり。


「(ちゃんと、帰ってくるのじゃぞ。瑪瑙の為に。)精々、死なんようにな」


「(やなこった。俺の為に俺は帰るからな。)薊さん、あんたもな。先も長くないんだし」


「(それで、……まぁ、譲歩してやろう)ふん。言うてくれるわ」


襟を離して貰い、佇まいを整える。

薊さん相手だろーが、俺は揺るがんぜ?






   ★ ★ ★






数日後……。


Side 三人称



「……お久しゅうございます、曹操殿。そして初見の方々はお初にお目にかかります。鳳令明にございます。きらっミ☆」


長安の城の大広間にて、左の拳を右の手のひらで包み、仰々しく一礼した者が一人。

自己紹介の通り、山百合である。

上げられたら顔には何処までも無機質で無表情で、冷たさを感じさせる程だ。

しかし、片目ウィンクと共に零れた星が台無しにした。

……勿論、本当に星が出ている訳ではなく幻視なのだが、上手いこと飛ばなかったことが逆にクオリティの高さを窺わせた。


「ひ、久しいわね、鳳徳。息災だったかしら?」


「……えぇ、まぁ」


「貴様っ! 真面目に――っ、くっ!」


そんなことを山百合が本人の意志でやると思っていなかった曹操。

言葉を失って初めは若干どもったものの、途中から持ち直したのは流石だろう。

対する山百合は、曹操の問いに真面目に答える必要もなければ、特に語ることもなかったので、適当に答えた。

それにすかさず反応したのが、やはり曹操大好きっ子夏侯惇。

だが、彼女は途中で急ぎ口を噤む。

どうやら先日の薊の言葉が、思いの外効いているらしい。


「……おや? ここは元譲ちゃんが反応するのが定石だと思ったのですが」


「何ぃ〜!」


「……冗談ですよ」


……どうやら、忘れっぽいのが玉に瑕のようだが。




「……さて、曹操殿。御指名戴き恐悦至極。ですが、一つだけお許し戴きたいことがあります」


「その内容次第だけれど、何かしら?」


「……この三国の争い終わり、世が泰平になった暁には、私を主の下に帰して頂きたく存じます」


その山百合の言葉に、部屋全体にざわめきが及ぶ。

正しく意味を理解できない者、解って憤怒する者、解って納得する者。

様々な者がいたが、曹操は――


「二君には仕えない、か。……その忠誠、私に捧げる気はないのね?」


「……ありません。私の主、いえ、私はこの世唯一人の主に全てを捧げて居りますので」


「……そう。わかったわ」


「「華琳様っ!?」」


『…………っ!?』


「そのかわり、働くからには全力で。それに、基本的な指示には従って貰うわよ?」


――理解を示し、認めた。

それには、曹操を除く全員が驚きを隠さなかった。


「(……成る程、これこそ曹操殿が覇王たる所以、ですか)」


そう、山百合も、である。

器の大きさ、人の心を掴む力、どちらを取っても覇王と呼ぶに足る。

牡丹様と陽様に魅了されていなければ、一生の忠誠を誓っていたでしょう。

と、僅かな会話しかしていないのに、心から山百合が思った程だ。


「……分かりました。我が真名、山百合を預けると共に、ここに誓いましょう」


「私は華琳よ。期待しているわ、山百合」


「……はっ」


ここに、仮初めの契約が交わされることとなった。




だがしかし。


それを見て面白くないのは、魏に仕えている、いや、曹操の下に元から集っていた者達だ。

その中でも、一番気に入らない、といった顔をするのは夏侯惇である。


この場には、曹操ラブの人間が、夏侯惇、夏侯淵、荀イク、そして郭嘉、以上四名がいる。

その中でも――言い方は悪いが――かなりがっつくのが、夏侯惇と荀イクである。

曹操が他の人を寵愛すれば嫉妬するし、自分が受けられれば喜ぶ。

……だからこそ、二人は仲が悪いのだが。


兎も角、そんな理由で、――同じ武官でもあることも含まれているが――山百合が気に入られているのが許せないのである。

山百合からすれば、とばっちり以外の何物でもないが。


「華琳様っ!」


「何かしら、春蘭?」


「此奴、どうも気に入りません」


「……別に、お気に召されなくても結構ですが」


口に出せるだけ、良い性格をしていると言えるかもしれない。

声を大にして、嫌いだと言う夏侯惇。

馬鹿馬鹿しい程真っ直ぐな彼女に、失敬であるが翠を重ね、意地の悪いことを言ってみる山百合。

随分と彼女も図々しくなったものである。

……これも陽に触れてしまったせいなのだが。


「それは困るわね」


「……御命令とあらば、仲良く致しましょう」


「貴様となぞ、誰が仲良くするかっ!」


「……そう、ですか。それは残念です」


間髪入れず反対する夏侯惇に、肩を竦めて本当に残念がっている様子を見せる山百合。

因みに、さっきからずっと無表情であり、なんとも人間味がないし、全く残念に見えない。

……客観的に見ると、遊ばれていると分かることだろう。



「なぁ、孟ちゃん?」


「何かしら、霞」


「アレ、ほっといてえぇの?」


「良くないわよ、全く」


夏侯淵は、からかわれる姉者は可愛いな、と頬を緩ませ、荀イクは呆れているので、他に声をかける側近がおらず、邪魔をされないで曹操に聞けた張遼。

対する彼女は、目の前の光景に呆れるばかりである。



「よーし、分かった! 貴様も武官ならば、これで決着を付けようではないかっ!」


「……なんが分かったのかはさっぱりですが、……良いでしょう」


どういう訳か、どこからともなく自身の大剣―七星餓狼―を取り出す夏侯惇。

翠で少しは慣れていると思っていた山百合を上回るアホさ――単純さには戸惑ったが、武を競うのも悪くないと同意する。

最早、主ほったらかしである。



「春蘭様も、よう飽きへんな」


「毎度のことだし、仕方ないのー」


「お前達……」


「じゃあ、凪はアレ、止めれるか?」


「それは、無理だが……」


三羽烏は諦め。


「ホント猪ねっ!」


「ですが、鳳徳殿の実力を測る良い機会ではあります」


「……ぐー」


「寝るな、風っ!」


「おぉっ! あまりに出る幕がないので、ついうとうとと〜」


三軍師はそれぞれの見解を示し。


「頑張れー! 春蘭さまー!」


「とっ、止めなくて良いんですか、秋蘭様っ!」


「ああなった姉者は、私にも止められんさ」


虎痴は呑気に声援を、悪来はオロオロし、当事者の妹は苦笑して。


「……えぇんか、アレで」


「……仕方ないじゃない。そう言う霞は、闘いたいとは言わないのかしら?」


「そんなの、闘るに決まっとるやないかっ!」


「……呆れた。もう、なんとでもしなさい」


驍将と謳われる者は、始めは呆れ、次には武人の血をたぎらせて笑い。

覇王は、こめかみを押さえ、頭痛と闘う。


そんな魏の日常。



   ★ ★ ★



「……まさか本当にやろうとは。華琳殿なら止めてくれると思ったのですがねー」


「どうした! かかってこんのならこちらから行くぞ!」


そう言いつつ、今にも飛びかかろうとする辺り、我慢弱いのかもしれない。

陽の色にかなり染まっている山百合からすれば、手の内を見せることをあまり善しとしていないので闘いたくないのだが、それは不可能らしい。

……闘うことが悪くない、と思うのは武人、鳳徳としてであり、陽の右腕、鳳徳とは別物なのである。


「……はぁ。では、一手お相手仕りましょう」


「よくぞ言った! はあぁぁぁあっ!!」


右半身になり、右手の戟を下段に、左手の戟を肩に担ぎ、自身の構えを取る山百合。

対する夏侯惇は、一気に距離を詰め、上段から大剣を振り下ろした。


「(……流石は魏武の大剣。なかなか速い……?)」


と、心で思いつつ、山百合は難なく後ろに下がって避ける。


「はあっ!」


それを追撃する夏侯惇。

振り下ろした大剣を、そのまま右上に斬り上げに繋げる。

大抵の兵達ならば――最も、初撃だけで十分に脅威である――おしまいだろうが、山百合にとってはなんてことはない。

右の戟で、簡単に軌道をそらしてみせた。


「これなら、どうだっ!」


大振りでは当たらないと勘に近いもので悟った夏侯惇は、地面と平行に大剣を構え、無数の突きを放つ。

全ての突きが急所を狙ったものだったが、山百合は武器を使うことなく全てを避けきった。


確かに急所を突くことは必殺になるが、それが読めてしまえばなんてことはない。

山百合は、急所を狙う攻撃を逆手に取り、それだけを避けることで全部回避したのだ。

……一つでも急所に入らない攻撃があれば、武器で庇っていたことだろう。


「くっ! 避けるなっ!」


「……避けなければ死んでしまいますので」


「ならば死ね!」


「……断固拒否します」


一度間合いを開けて、会話をする山百合と夏侯惇。


未だに本気を出していない二人だが、夏侯惇は微かな焦りを、山百合は不可解な疑問を感じていた。



「(……コイツ、霞より強いぞ。もしかすると私より……そんなことはあってはならん!)」


魏武の大剣、と国の号を背負うからには、この国最強でなくてはならない!

そういった自覚は、猪武者とかアホとか言われていても、夏侯惇は確かに持っている。

それが、目の前の敵に脅かされているのだ。

焦るのに不思議はないだろう。



「(……どうも、おかしいですね。身体が軽い、軽すぎる)」


対する山百合は、自分に戸惑っていた。

それは、最初の攻防のときからだ。

初動の速さと威力には見張るものがあると始めは感じていたのに、剣速がそれ程でもない、と感じてしまった。

それに、連続の突きだって、――急所狙いは分かっていたので――捌ききる自信はあったが、避けきれるとまでは思っていなかったのだ。

良く言えば成熟しているので、悪く言えば歳も歳なので、彼女も自分の出来る範囲は理解していた。

だからこそ、困惑しているのである。

予想を超える、自分の動きの速さに。


互いにそんなことを考えていた為、睨み合いが続いていると勘違いする他のメンツ。


それも束の間。

山百合は動き始めた。


「……少々、お付き合い頂きます」


「どういう意味――ぐっ!」


違和感があるのなら、確かめればいい。

そう考えた山百合は、この仕合を有効活用することにした。

相手の実力も申し分ないので、丁度良いのだ。

……自分の範囲を再度確認することが、必ず陽の為になる、とどこまでも陽のことを考えて。


山百合は基本の構えから、後ろ足の左足で思い切り踏み込み、一気に爆発的な推進力を生み出し、そのまま右の戟で刺突を放つ。

後手に回していた為に彼女の初速の速さに驚き、夏侯惇は自身の大剣を逆さに向け、少し危ないタイミングでそれを逸らした。


しかし、山百合の攻撃はそこで終わらない。


「……ふっ!」


「ぐぅっ――「……甘い」――なっ!」


逸らされたままに夏侯惇の横を駆け抜け、二歩程の距離の所で右足で急ブレーキ。

そしてそのまま切り替えして左半身になって、左足で踏み込みながら、肩に未だにあった左の戟を振り下ろす。

対する夏侯惇は、振り向きざまに、放たれた唐竹一閃を頭上に大剣を翳して受け止める。

その攻撃の重さに唸り声を思わず上げたが、これは危なげない様子だ。

だが、山百合の攻撃はまだ終わっておらず、右の戟での逆風(真下からの切り上げ)を放った。


「ぬっ、せぇいっ!」


「…………。無茶しますね」


しかしながら、夏侯惇は獣のような勘でその攻撃を察知し、受け止めていた左の戟を上に払いのけ、そのまま大剣を半周させて右の戟を弾いてみせた。

そのために両腕が大きく開き、隙が出来たので、山百合は後ろに下がって間合いを取り、呆れるように呟いた。






その仕合を見る魏のメンツは、一様に山百合の強さに驚いていた。

それもそのはず。


山百合に限らず、馬騰軍は表立って戦ったことは一度もないのである


馬騰軍が活躍するのはほぼ異民族相手のときだけだ。

……元からその為の軍なのだから当然なのだが。

そんな訳で、表に情報が出ることは少ない。

それに、情報が出回る機会となるはずだった黄巾の乱、反董卓連合。

黄巾の乱は、翠の名が大きく売れた程度、反董卓連合に至っては武力的な介入はほぼなく。

結局、どちらも殆ど活躍することはなく終わってしまった。


そういった理由も少なからずあるのだが。


馬騰軍の将の実力が明確でない一番の理由はと言えば、陽が情報操作したから、である。

最終的にはこの一言に尽きるのだ。


而して、曹操ら魏のメンバーは、馬騰に仕える古参の将、鳳徳、ということしか知らず。

自分達の推す絶対的な武力的強者である夏侯惇と渡り合っている山百合に驚いているのだ。



「(……間違いない。あれは、氣、だ。私とは違うが、間違いない)」


……一人だけ、違う理由もあって驚いている人物もいるのだが。






「……元譲ちゃん」


「なんだ」


「……次で終わりにしましょう。理由は、分かりますよね?」


「あぁ。……ここで死ぬ訳にはいかん」


互いに正面で構え、対峙する二人は、最後の攻防の前にして語らう。

何故最後かと言えば、長引けば長引く程、どちらも死んでしまう確率が高くなるからだ。


ぶっちゃけ、全力全開でいけば、山百合に分がある。

経験と身体操作の練度、そして知識の差が、彼女に天秤を傾けるのだ。

だが、彼女は全力を出せない。

出してはいけない。

主、陽の為に。


更に、夏侯惇も強い。

武力的には半歩劣るぐらいであるし、そんな差は、魏武の大剣を名乗る誇りとプライドで詰められる。


よって、本気だが全力ではない山百合と、全力だが気力全開でない夏侯惇の実力は拮抗しており。

最後まで仕合えば死合になってしまう。


それを悟った二人だから、終わらせようと言うのだ。


「……では。いざ尋常に」


「勝負っ! ハアァァァ!!」


力と力の勝負。


その行方は――――。








陽は語る。


「ToLOVEる、だったか? 俺は全く興味なかったわ。じじいは変態だから、単行本まで持ってやがったけどな」




なんかFateみたいですけど、恋姫も知名度で能力向上してたりすると思うんですよねー。

この作品には微妙に関係あって、殆ど関係ない話なんですけどねw

無双シリーズで未だモブの馬騰が強いんですもんw






「てんめぇ、モブとか言うんじゃねぇよ。ぶっ殺すぞ」


聞いてたんかい。

そんなこと言ったってしょうがないじゃないか!

事実だし。


「悔しい! 言い返せない! なんで蒲公英がよくて、私はダメなのよっ!」


あなたの立ち位置が微妙だから?


「ちっくしょー! 反乱なんで、起こさなきゃよかったー!」



……危ないとこ突いてくるな。





おしまい☆




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