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第五十四話



四日ぶりです。


やっと、進むのか?

いやでも、まだか。




――――――注意――――――


R―15要素あり。

別に(ry

またもや、ちょっと激しい。


――――――――――――――





「……ハーレムの定義って、何人からなんだろーな」


「その台詞、前にも聞いたことがあるような……。何時だったでしょうか?」


「はぁれむ? 御主人様、それは?」


「あぁ、後宮のことさ。……ま、俺には関係のない話だがな」


「「…………」」


「愛はないが、情はある。ちゃんと愛でてやるから安心しろ、山百合、瑪瑙」


「「はいっ、(陽様/御主人様)!」」










Side 陽


やぁ、僕、陽!

みんな元気?

僕は元気だよ!

主に息子が!


……仕方ねぇだろ。

二人共、調きょ……苛めがいがあるんだからさ。

それぐらい魅力的な"両腕"なんだよ。


「くぅ~」「んっ……すー」


「…………」


無防備だな、おい。

両側にいる二人を見て、思う。

いやまぁ、此奴らからすれば、愛しい男が隣にいる、なんていうシチュエーションなんだから、安心できるのかもしれない。


……可愛い奴らだな。


「ん……ぅ、……陽、さま?」


「お早う、山百合」


「おはようござ……ひゃっ! ぁぅぁぅっ」


俺の右側で、起きた山百合が声をかけてくる。

挨拶してやったんだが、……顔を赤くした。

多分だが、裸だったのが恥ずかしかったんだろう。

無意識に俺の右腕を抱いて、俯いてしまう。

そうすると、自然と腕が母性さまに包まれる訳で。

……結構、気持ちよかったり。


「山百合、お前、誘ってんのかよ?」


「ほぇ?」


「胸。別に構わねぇけど」


「はぅっ! 〜〜〜〜っ!!」


ボンッ、って音が出たかのように、顔が真っ赤っかだ。

その勢いで一瞬腕を離そうとしたが、迷った挙げ句、そのままで落ち着いたようだ。

いやまぁ、腕から伝わる鼓動は落ち着いていないけどな。


……可愛い奴だよ、ホント。


「陽様は、意地悪ですっ!」


「弄りがいがあるからな」


そう言って、山百合に抱かれる腕を抜く。

名残惜しさからか、少しだけむくれた顔をする山百合を、その腕で抱き寄せる。

頭を俺の肩に乗せて、身体は密着させる。

……別に、身体で直接母性さまを感じたかった訳じゃないからな!


そしたら山百合はというと。

相変わらず顔は赤いが、優しい目でこっちを見てた。

……恥ずかしいのが一周して、耐性ができたのか?


「陽様は、抱擁が好きなのですね」


「……は?」


「無意識なのでしょうが、何時も抱くことを考えています」


「ふぁ……確かに、そうね。抱き締められるのも、抱き締めるのも、好きみたいよ?」


山百合に続いて、反対側で今起きたっぽい瑪瑙が、そんなことを言う。

瑪瑙もまた、自分で山百合と同じような格好を反対側でする。


……やっぱ、そんなに好きか?


「牡丹様は、それを知っていて、陽様を抱き締めていたと思います」


「言われてみれば、そうよね。……蒲公英はわかんないけど」


「まぁ、お前らがそういうんだったらそうなんだろう」


俺を見てる二人がそう言うのなら、間違いないんだろうさ。




Side 三人称


いつか牡丹が言ったように。

陽は愛に飢えている。

その理由を語るには、陽の過去を知るべきだろう。



陽は、勿論最初から独りではなかった。

確かに父親もいたし、母親もいた。

ただ、それは赤子の時の話で、物心つく頃には、母親はいなかった。


だが、父親は確かにいた。

……その父親は、生みの親と同一ではなかったが。

髪色だけは似通っていたが、形と瞳でなんとなく義理だと、陽も理解していた。

それでも――罪滅ぼしのように見えなくもなかったが――子として愛情をそそいでくれたのも、知っていた。


……だが。

やはり、子は母が恋しい。

それだけでない理由もあるが、陽は他の人の誰より多く愛を欲していたのだ。

義父の愛が、その心をギリギリで押し留めていた。


しかしながら、その均衡は破れてしまう。

義父との離別によって。


まだ、その時は十を数えたばかりの餓鬼だった。

愛してくれる義父もいなければ、元々いない友。

ほんの少しの善意と、強烈な悪意に晒される毎日。

次第に心は荒み、闇に染まり。

人を信ずる事を止めた。


それからは毎日が楽だった、と陽は思っている。

自分の利を考えるだけでよいのだから、これほど簡単なことはまずない、と。

時に盗み、時に給仕、時に間諜、時に奴隷。

なんでもやった。

自分の利……生きる為に。

その為に。

人の腹を読むことを覚えた。

人を観察することを覚えた。

人を利用することを覚えた。


ただ、それは自分の利になることばかりではなく。

腹黒さを知ってしまった。

悪辣さを知ってしまった。

狡猾さを知ってしまった。


そうして。

次第に人が、大人が嫌いになり。

純粋な子供と動物が好きになり。

同じように染まっていく自分が嫌いになり。

純粋なモノを追い求める自分が好きになった。


少なくともその生活に、愛なんてものは欠片もなかった。



そんな毎日に、転機が訪れた。

非日常が舞い降りた。


……蒲公英だ。


眩しいぐらいに屈託のない笑みに、陽は一瞬で惹かれた。

その純粋さに、憧れを抱いた。



それから。

牡丹と薊と翠に出会い。

山百合と瑪瑙に出会い。

茜と藍に出会い。

家族を知った。

自分だけがいた、自分で狭めた暗い闇が広がりをみせた。

紛れもなく、家族がその闇を払う光をくれた。


しかしながら。

共に明るみに出てきてしまったモノ。

それが感情であり、欲求であった。


陽の外見や頭はもう駄々っ子ではないし、ガキでもなく、羞恥の感情だってある。

経験上、感情をコントロールする技術は得たし、欲を抑える術を持ち併せている。

だから、いや、だからこそ、甘えられない。

甘えられる訳がない。

どうしようもなく心が子供であるのに、頭が老練しすぎていたのだ。

故に、幼少のころから積み重ねてきた愛情に対する欲求不満が解消される訳ではなく。

今でも愛に飢えていた。


いや、もっと正確に言えば。

母性という温もりを、安心感を欲していた。

肉体的に伝わる体温が。

トクントクンと、一定のリズムを刻む鼓動が。

心から母性を感じさせ、愛を感じさせてくれる。


だからこそ、陽は抱擁が好きなのだ。




   ★ ★ ★




そんなこんなで朝も昼も過ぎ、今は所謂おやつ時。



「……………………」


陽は困惑していた。

これがかなりのものらしく、珍しく無言で、かつ、目の前の大好物の茶菓子にさえ手をつけない程に、考え込んでいたのだから、相当のことであるのは確かだろう。


「……っ……ぁぅっ」


陽をそんな風にさせているのは、椅子に座る陽に対して横になって上に座り、陽の背に手を回して、赤くなった顔の額辺りを右胸に押し付けて隠す山百合である。

陽の上に完全に乗っている訳だが、その重さについては一切のツッコミはないらしい。


時間を少し置いたお蔭で、とりあえず少し回復した陽は、山百合の頭を右手で撫でる。

同時に左手で自身の後頭部を掻いて、もう一度頭の中を整理し始める。


「(山百合は部屋を訪れて、俺に暇かを聞いた。仕事もほぼ終わり、支度もほぼ終わってたから暇だと言った。そしたら時間をくれと言うから許可したらこれだ。……こんだけで分かるかっ!)」


心で毒づく陽。

言えることは一つ。

役得である、ということぐらいのものだ。


それから陽は考えることを止め、たっぷり十分程撫で続けた。




Side 陽


「で。なんだ、これは」


「あ、その。……えっと……」


抱き付くことは止めたが、依然として俺の上に横向きで座る山百合に、問うことにした。

対する山百合は、頬を赤らめて、目を反らしつつも両人差し指の先をつんつんさせている。

些か古い仕種ではある。

いや、この時代では、相当先駆けてるのか?


まぁ、いい。

問題はそこじゃねぇ。


……可愛いすぎるだろーが。


俺の中の可愛さゲージを振り切りやがった山百合を、俺の右胸にもう一度頭を押し付けるように、しかしながら優しく、右手で抱き寄せる。

やっぱり、山百合を俺の右腕にして良かったわー。


「ぇ? ……陽、様……?」


殆ど抵抗しないでさっきと同じような体制になった山百合は、そこから上目遣いで俺を見る。

山百合も驚き、といった様子だ。


「いきなり、こんなことされたらビックリするだろう?」


「……あっ……! もっ、申し訳っ――陽様?」


隠された意味に気付いた山百合は急いで離れて謝罪しようとするが、それは俺が許さない。

その意図が掴めず、更に困惑した様子で見つめてくる山百合。

……何故、こうも可愛いんだ。


「山百合。どうして抱き付いたか、嘘なく言え。正直に言うなら此度のこと、不問にしてやるぜ?」


「は、はいっ。えと、……先ほどまで私は警邏に出ていました。そこで少し、仲睦まじい夫婦を……見かけまして、その」


「それに充てられたのか?」


「はっ、はぃ。……少し、羨ましくて」


成る程、と思う。

山百合の恋愛観は、至って普通だ。

……瑪瑙の奴が異常なだけでもあるが。


山百合が今まで見てきたのは、尊敬する牡丹の、成公英との綺麗で純粋な恋愛だ。

牡丹と(性的な意味で)寝た時に、散々成公英との惚気話を聞かされた俺は、それがわかる。

長く、長ーく聞かされただけの俺は腹立たしい限りだったが、少し憧れるぐらいには、羨む程の関係だった。


そこから考えるに、どうやら、山百合はラブラブが好きなようだ。

しかし、残念なことに、山百合に対するラブはないのだ。

ラブを注ぐのは、後にも先にも(あれ、意味同じか?)永劫一人だけだ。

あ、一つあったわ。


家族愛が。


それはまぁ、今はおいといて。

愛がなくても、大切にしようとは思っている。

……おいとく意味なかったな。

家族だから、大切にしたいと思う訳だし。

ま、俺の右胸だから、って理由も混在してるがな。

むしろ七割こっちだったり。

これはどうでも良いか。


兎に角、だ。


この山百合の憧れるラブラブの雰囲気に付き合ってやれるぐらいには、俺は山百合のことを気に入っている。


それが言いたかっただけ。


「なかなかに面白い。……良いぜ、なんでもござれ。今なら何しても不問だ」


「でっ、ではっ! 陽様の唇、戴きますっ」


はむっ、と。

俺の頭の後ろに手を回して引き寄せて、啄むように、俺の唇に自身の唇を合わせる山百合。

唇から感じる柔らかさがなかなか心地良く、俺を虜にしようとしやがる。

段々と離れたくなくなってしまい、舌を入れそうになってしまうのだ。


けどな。

山百合、ごめんだけど。

不満はないし、むしろそのこういは嬉しい。

だけど、これはどうしようもなくてな。


やっぱ、蒲公英としたいなって気持ちはさ。



「…………むぅ」


そんな思考が読まれたっぽく、少しむくれて唇を離す山百合。

一々、仕草が子供っぽくて可愛いのだから、仕方がない。


それに免じて、軽いリップキスをしてやることにする。

別になんでもないようなことだが、俺から、というのが良いのだよ。


「…………♪」


ほら、心底嬉しそうな顔だ。


さて、いよいよ山百合も、欲望に忠実になってきたな。

嬉しい限りだ。

俺の一部なんだから、そうでなくては困るのだが。


例えばこんなふうに。


「……ぁっ! ひゃ、んっ。そんな、横、からぁっ」


「相変わらず、良い尻だ」


「ぁんっ、そんなに、揉まなっ……はぁ、んっ、ふぁ」


山百合の服の、腰のくびれ近くまである深い右のスリットから左手を入れて、右の臀部を一撫でしてから揉みしだく。

感触が堪らないな。


……早く、蒲公英のも、揉みたいな。


おっといけねぇ。

今は山百合を愛でないとな。


「――ッ!? やっ、あんっ! はっ、……ぁう、ん、ひあっ……はぁんっ!」


謝罪の意味を含めて、右腕を山百合の肩に回して、そこから手を伸ばして、山百合の母性サマをやわやわと揉んであげた。

……甘い吐息を吐いて悶える山百合も、やっぱ可愛いな。


そろそろ俺も、膨れ上がる嗜虐心とアレに耐えられなくなってきた。


「山百合」


「はぃ。よう、さまぁ……っ」


その後は、まぁ、ご想像にお任せするよ。




   ★ ★ ★




その日の夜……。


「ご主人様、僕を食べてっ」


「お前は本当に直球だなおい」


そして、また俺を困らせるのがこのもう片方の腕、瑪瑙だ。

この、欲に忠実な姿勢は大いに結構。

むしろ、好感も持てる。

だが、自重はしろ。


「あたっ! ちょっと、何すんのよ!」


「本当に食って欲しいなら、せめて、従順モードは解くなよ……」


「だって、今日は無理かなって思ってさ」


初見でなんとなく、ね。

と、続ける瑪瑙。

まぁ、確かに日のある内に気分がハイになってたからな。

近年稀に見る、嗜虐心のピークだった。

……ちょっと、山百合苛め過ぎたかもなー。


「ま、それはいいじゃない。それより、ほらここ……っ」


「勝手に誘っているが、俺の寝台だからな、そこ」


顔を赤くして手招きする瑪瑙。

誰の診断か、なんて、ほんの些細なことだがな。



「はー、今更だけど、蒲公英の気持ち、わかるわー。こんなに落ち着けるのなんて、ここしかないわ」


「おい」


「ん、何?」


悪びれる様子もなく、無断で俺に――食われる準備はしていたらしく――裸で抱き付いて、勝手に納得を得て、まったりとしている瑪瑙に、言い返す言葉がない。

そこに呆れも諦めもあるが、一番は、心底幸せそうに微笑む瑪瑙に少し見とれたからだ。

……なんか、恥ずかしっ。


「なんでもない」


「そう? だったら良いけど」


本当に悪びれないのな!



と、まぁ、表は相変わらずこんな感じだ。

必要以上にツンツンしてきたら、苛めに苛めて、デレッデレにして裏を引きずり出して、みたいな。

だけど、どちらに於いても、俺の左腕に変わりはなく。

割と言うことは聞く奴だ。


山百合が忠義のワン公なら、時によって反抗したり、とことん飼い主に甘えるニャン公、ってとこか。

……成る程。

こうやって動物に似てるから可愛く思えるのかもな。

改めて考えてみるもんだな。


ま、そんな瑪瑙との関係。


今は、珍しい表の甘えん坊タイム、って奴か?

こうやって掴ませないところもネコっぽい。

しっかり首輪はつけてるがな。


……そうだ、リアル首輪、つけようかな。

黒を基調とする瑪瑙に、映える赤い首輪……。

なかなかイイじゃない。

俺が堪らなくなりそうだが。

もっと可愛がってしまいそう

さらに、くぅん、と物置しそうに鳴く山百合が同時に想像できてしまう。


なんだこれ!

最っ高じゃねぇか!

そうだ、首輪、山百合にも付けたら!

……うは、堪んねぇ!!


いかん、変態思考に陥っているぞ、俺。

落ち着け。


蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英蒲公英

……よし、ぉk!



とりあえず、首輪はアリだな。

絶対つける。


……蒲公英にはつけないぜ?

俺は蒲公英の主じゃないしな。

唯の夫婦、俺の嫁だ。

妻、嫁の奴隷化、よくない。

ダメ、絶対……とまでは言わないけどな。


そろそろ現実に戻ろうか。

首輪辺りで一人立ちした息子を、瑪瑙さんが握っているのさ☆


「どっ、どうしたのかしら? 普段、ぼぼぼ、僕の裸を見たところでこんなにはならない癖に……っ」


やっぱ、素面で恥ずかしげもなく息子を握れるのは蒲公英しかいないな。

イタズラっぽく笑んで上下運動させる蒲公英も最上にイイのだが、こうやって顔を赤くしてくれるのも、なかなかくるものがあるのだよ。


「少し、考え事をしてな。そしたらちょっと興奮しただけだ」


「妄想で勃つなんて、へっ変態ねっ!」


責めるスキがあるのが嬉しいのか、ちょっと握る力が強い。

少し刺激が強めで、気持ち良いのだけなのだが。


「そうか。その相手、お前だったんだがなー」


「ぇ? 嘘、そんな……。……やだ、もうっ」


赤い頬に手を当てて、いやいやと瑪瑙は首を振る。

なんだ、この乙女な仕草は。

……新鮮でグッドだ。


「本当だ。そこで、どうする? 首輪、付けるか?」


「くっくく、首輪っ!?」


「あぁ、俺をたぎらせた首輪」


「首輪……。飼い主ぷれい……。散歩ぷれい……。ご主人様の、愛玩動物の証……。……ぁ……はあぁ〜」


全部声に洩れてるが、まぁいいだろう。

恍惚とした顔で、こっちを見上げる瑪瑙。

……真性のドMだなおい。

こっちの嗜虐心を引っ張り出して煽るんだから、仕方ない。


だが、それが悪くない、と思えるぐらいにはコイツを気に入ってるってことでもあるのだが。



「瑪瑙」


「………………はっ! なっ、何かしら?」


おろ、戻った。

珍しい、いや、初めてか?

まぁいい。


「お前、俺には、今日はもうその気がない、って言ったよな」


「えっ? あっ、うん」


「さっきのも、ただ一時の生理現象に過ぎない訳で、その気は別にないからな」


無論、嘘だ。

絶賛その気が湧き上がってるから、苛めてるんだよ。


「それが…………っ!? ぇ、そんなっ!?」


「分かったようだな。いくら濡れていようが、……自分で処理しろよなー」


「嘘、いやっ、そんなの待ってよ! 僕、こんな、……ぁあ」


コイツは、床の上で絶対に強気にさせない。

わざと受けてやっても、必ず主導権は直ぐに奪い返す。

それが、瑪瑙とするときの、絶対条件だ。


その方が、互いに楽しいからだよ。

口では拒絶するが、身も心も悦んでいるのが分かるし。

罵倒でも焦らしでも、不安と期待に満ちた目でみられたら、ねぇ?


「ほら、自慰でもしろよ。見ててやるからさ。俺は全く手を出さんがな」


「そんなっ……でも、……あぁ……見られてる……。陽……ご主人様に、……いやぁっ……」


「しゃべってないで、手を動かしたらどうだ?」


「……ぁ、ごめんなさい……」


い、いかん。

何時も紳士でスマーティーな俺が変態になってきた!

……これ以上は放送できないな。



とりあえず。

その気にさせるおねだりをされたから、苛め抜いちまったじゃねぇか。






   ★ ★ ★






Side 三人称


時と場所は変わり……。


涼州攻略戦の本陣、長安。

その大広間にて、謁見する者がいる。


「久しいのう、華琳」


「えぇ、久しぶりね、薊」


「随分と生意気になったものよ。年上を尊んで敬語を使わぬか、敬語を」


「嫌よ。私は王で、貴女はただの敵将ですもの」


「ふむ、手厳しいな」


そう言いつつも、朗らかに笑う者。

韓遂こと薊である。

冗談の一環であるので気にしてはいないようだ。


「そんなことはどうでも良いの。本題に移りなさい」


「儂にとって、そんなこと、で済む問題ではないぞ!」


「はいはい、もう良いわ。真似事なんて茶番をしてないで、本題に移りなさい」


「むぅ」


薊との会話に既視感を覚えた曹操は、さっさと次に進むよう促した。

対する薊は、些か面白くなさそうな顔だ。

いつぞやの誰かさんとの問答を真似てみたのがあっさりと流されたのには、思うところがあるらしい。

……しかし、どうやって知ったのだろうか。



「さて。……今日は何用できたのかしら、韓遂」


「先ずは、場を設けていただいた事に感謝を。忝い曹孟徳殿」


薊は先とは表情を一変、真剣な面持ちをし、左で拳を作り、右手でそれを包んで一礼する。

これぞ韓文約、と親交が深い者をして言わしめるであろう立ち振る舞いである。


格好はそのままに、顔を上げて口を開く。


「ここに、正式に和睦を申し入れに参った次第に御座います」


「なにぃ! 貴様っ、戦わずして逃げるとは、それでも武人か!」


「…………」


事実上の降伏発言に、夏侯惇が横槍を入れるように、薊を詰った。

それについて薊は、反応することはせず。

ただ、底冷えするような目で、曹操を見やる。


因みに、薊は正確には武人ではない。


「……っ。私の部下がすまないわね」


「いえ」


「かっ、華琳様っ! こんな奴に謝罪など!」


「黙りなさい、春蘭!」


「っ!? もっ、申し訳ありません」


明らかな意図を含んだ薊の目線に、曹操は謝罪する。

しかし、己で下であると価値を決めてしまっていた為に、夏侯惇はその謝罪を信じられない目で見、そして指摘した。


だが、その行為が曹操の怒りを買ってしまった。


「孟徳殿、少し良いですかな?」


「……何かしら?」


「いや何、老婆心が湧いてきてな」


「……そう。良いわ。発言を許します」


未だ苦虫を噛み潰したような顔をする曹操に、薊は軽い様子で口を開く。

薊に対して少し居所が悪い曹操は、ニッと笑う薊に眉を下げて許可した。


「そこの小娘。確か、夏侯元譲といったな」


「……それがどうした」


「…………。まぁ、良い。貴様に一つ言って置くぞ」


立場は将として等しく。

……漢の位では確実に薊が上だが割愛しよう。

儒教の教えでは年配を敬うのが普通であるのにもかかわらず。

未だ不遜とも言える態度をとる夏侯惇に、薊は一瞬微妙な顔をする。

が、今からそれについて指摘するのだから、とスルーした。


そして、一度息を吸い直して、言葉を口にする。


「貴様が口を開く程、曹孟徳の器が知れると思えよ、小娘。真に忠臣を名乗るならば、……先ずは、黙れ」


「ッ……!!」


「黙して侍り、主の命に従い、献策をし、武功を立て、時に諫める。……別に、常にそうあれとも、そうたれとも言いはせぬ。だがな」


大広間には、薊の声のみが響き渡る。

反論をする者も、咎める者もいない。

そこに、真に将足る者の姿があるからだ。

歳の数だけ培われたモノが、迫力として滲み出ていた。


「主の足を引くことはするなよ。足下を見られることになるからの」


真剣な顔をして語り終えた薊は、ふぅ、と息を吐いて破顔する。


「いや、ついつい説教臭くなってしまった。すまんの」


「良いわ。誰もが心に刻むべきを説いて、咎める意がないもの」


老けたものよ。

と、心で思いながら苦笑する薊に、曹操もクスリと笑った。






「さて、降伏の旨、聞き入れてくださいますかな?」


「それについて答える前に、理由を聞かせてもらえないかしら? 馬超、馬岱の事も含めて、ね」


「……痛いところを突かれる」


今度は、薊が苦虫を噛み潰したような顔をする。

降伏するにあたって、それが受理される為の手札だったのが、抗戦派の筆頭であった牡丹と血の繋がりがある翠と蒲公英、それに、曹操の興味を引く陽と山百合だ。

その三枚――曹操はあまり蒲公英に興味がないので――の内、一枚を失った、いや、落としたことを、相対する曹操が知っているのだ。

悔しがるのも無理はないだろう。


ただし、薊本人が本当にそう思っているかは別なのだが。



「元々、儂は牡丹が大嫌いじゃ。だからこそ儂は、奴の地位が欲しい」


「……ふぅん」


曹操は、値踏むように薊を見つめる。

確かに十数日程前の涼州連合の会合に潜り込ませた隠密と、内容は一致している、と頭も同時に巡らせる。


だが、それ故につまらないとも曹操は思う。

別に戦わない結末を嘆く訳ではない。

精鋭の集まる涼州兵と戦うことでの自身の兵の損失というリスクを払うことなく。

そして、薊の従臣を受け入れることによって、その精鋭を手にする可能性もあるのだ。

どちらかと言えば、というよりプラスのことしかない。


それでも、やはり英雄と華々しく戦いたいと思うのはエゴでしかないだろう。

それ故に、曹操は覇王なのだ。


「本当は奴らの首を差しだそうと思うておりましたのだが。……そこは狼にしてやられてしもうたわ。情けないかぎりじゃ」


「…………」


頭の後ろを掻いて、薊は苦笑する。

それを間違いではないと曹操は思うが、やはり簡単に信じることはしない。

陽に対する過大評価はあるが、それを真に受けないぐらいの頭は持ち合わせていた。


「馬超、馬岱の二人など、たかがしれておる。直に、捉えてみせまする」


「そう。一応、期待しておくわ」


「ふむ。手厳しいの」


形式的な返事の曹操に、もう一度薊は苦笑した。




「儂は、いや、儂等は人を出す。その代わりに、儂に西涼の統治を任せては下さいませぬかな?」


「……それが、降伏の条件、ということかしら」


「は。その通りにございます」


自身の提示した条件に確認をとる曹操に、薊は頭を垂れる。

わざわざそこまでするというのだから、如何にこの条件が重要なのかが分かる。


「……そうね。桂花、貴女はどう思う?」


「はっ! 及ばずながら申し上げますと、賛成できかねます。叛意がないとも言い切れず、異民族との交友のある西涼で力を蓄える可能性も無視できません」


「そう。では、稟。貴女は?」


「はっ。桂花のいうことには一理あります。しかしながら、此度の戦によって、また魏の領土が広がり、辺境まで手が届かなくなってしまうのも事実。この誘いは受けるべきかと」


このあたりまで聞いて、身内だけのとこでやれよ、と薊はそう思う。

降伏相手を前にして、賛成反対を聞いているのだから、これほど気分の悪いことはない。

かといって、別に咎めようとも出来ないし、する気もない。

こうして目の前でやっているのだから、結果は明日、みたいに持ち込まれることはないからだ。


「ふむ。では、風?」


「…………ぐぅ」


「起きろ、風!」


「おぉっ! あまりにも出番がなかったので〜」


……漫才も身内でやれ、と薊は思った。


「ふむ〜。風も稟ちゃんに賛成ですね〜。しかしー、本当に叛意がないのかを、具体的なもので示させるべき、と風は愚考するのです」


「そうね。私もそう思っていたところよ」


「…………」


程イクの進言に、曹操は口角を少し上げて笑う。

同時に聞いていた薊も、やはりなと思う。

元から三軍師と、それに引けを取らない頭を持つ曹操を出し抜けるとは思ってはいなかったのだ。


「叛意云々は、信じて貰わねばなるまいが、見合うモノは提示するつもりじゃ」


そう言って、薊は懐から竹簡を取り出す。

これは元から用意していたもので、現代でいう、誓約書みたいなものだった。


「『一、我々涼州連合は、曹孟徳に降る。

二、我々は、六万の兵内訳歩兵四万、騎兵二万、同時に馬二万を、譲渡する。

三、誓約二に伴い、それらを指揮する将を一人、差し出す。』

これで如何であろうか」


「…………ふむ」


少し考える仕草をする曹操は、内心で少しだけ驚いていた。

降伏の条件として、自分達が用意したものより、遥かに破格の条件だったからである。

西涼を治められる地位、所謂太守を任せてほしい、という要求を汲んだとしても、有り余る程に、――特に涼州産の馬二万という点が――好条件だった。


「わかったわ。その話、受けましょう。ただし」


「将は其方が決める、じゃろう? 誰かはわかっていますがな」


「ふふ、さてどうかしらね?」


互いに笑い合い、この会談は終了した。






   ★ ★ ★






ここで終われば、薊にとって順風満帆なのだが。

それは問屋が卸さない。






「今、何と言うた……?」


「はっ。ですから、馬白様が……お亡くなりになられました」


朝から冷水をぶっかけられた気分になった薊だった。






陽は語る。


「ごめんね薊さん。悪いとは思っているんだ」




えっちぃのは次ぐらいで終わりなはず。


陽君は変態ではありますん。






「ヤりすぎよっ! ずるいっ! 陽の変態っ! でも、それが多分堪らないっ!」


何言ってますの……?


「首輪とかアカンでしょう?」


アカンくない。


「僕もアカンくないと思うよ。牡丹、付けてあげよっか?」


「なっ!! ちょっ、まて。…………魅力的だ。ちょっとした束縛感が、……イイな」


「じゃ、早速」


「だ・が・な。お前の主は俺だ。主に首輪をつけてどうするよ」


「い じ め る ☆」


「死にさらせぇぇぇえ!!!」


何をやってんだか。




おしまい☆






「……ちっ、一回だ。一回だけなら、……ぃぃょ……」


「マジか!? 牡丹~」


「あっ、こら! 抱きつくなって!」





ホントにおしまい☆




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