第三十話
口調やらがわからなくなってきた。
大分やってないからなー。
「……今回こそは、ボクたちの出番があるといいね」
「そうだね、プロテインだね」
「……ぷろ、て、いん? わかんないけど、多分古い気がするよ」
「いや、ちょっとしたマイ(作者)ブームで」
「……さっきから、意味のわからない言葉を……。やめた方がいいんじゃない?」
「そうだね、プロt――「黙れ!」――んだよ、振ったのは瑪瑙じゃねーか」
「……そうだね、ぷろていんだね」
「あ、おまっ、パクんじゃねぇ! 大体、会話の四往復だけで三回も使うとかくどすぎるだろ」
「そうだね、ぷろt――「もういいわ!」――ふん、元はといえばアンタが悪いんだからねっ!」
「ふむ。……こんな他愛のない会話にすら、儂は混ぜて貰えぬのだな」
「「……サーセンしたっ!」」
……不憫だ。
「薊がすっごーく可哀想な気がするんだけど、始めさせて貰ってもいいかしらね?」
「……まぁ、よろしいかと」
何処からか、電波を受け取った牡丹。
が、華麗にスルーすることにしたようだ。
「さてさて、夜になった訳だけど?」
「……よもや、夜襲に酒を持って行く等とは」
山百合がそう言うのも仕方がないだろう。
武器を持たずして、しかも、用意したのは俗に言う良い酒ばかり。
二人は、到底夜襲に向かうとは思えぬ格好をしていたのだ。
「まぁまぁ。直ぐに分かるから、ね♪」
「……と、いいますか。私達、反対側に来ているのですが」
山百合がボソリ、と呟く。
若干、二人の話が噛み合っていないようで、ちょっとだけかすっている。
今現在――山百合が言ったように――西涼勢と曹操軍が陣を敷く左翼の真反対、右翼に来ていた。
直ぐに分かる、と連呼する牡丹に付いていったところ、自分たちの陣から反対側の場所に着いていたのである。
「ほら、着いた」
「……成程、そういうことでしたか」
陣を見て、山百合は理解した。
「会いたかったでしょ?」
「……それは、まぁ、はい」
旧友との再会。
山百合がほんの少しだけ望んでいたこと。
……ほんの少し、と言っても、山百合が自ら望むことは少ないので、常人の強く望む事に等しいのだが。
その山百合の心を読みきった牡丹は、計らっていたのである。
「行ってきなさい♪ 私も私で用があるから、ね」
「……ありがとうございます」
柔らかい笑みで一礼し、歩いて行く山百合。
旧友の在る天幕へと向かうのだろう。
その少しだけ嬉しそうな背を見て、牡丹は呟く。
「まったく、山百合は変わらないわねぇ」
山百合が少女だったの頃から見てきた彼女の笑顔。
歳は繰ってるくせに、それだけは寸分も変わらない。
そんなことを思いつつ、牡丹は牡丹の用を果たしに向かった。
★ ★ ★
暗き闇夜の空の下で、金色に輝く欠けのない月。
このような佳き日に酒を飲まない酒豪家はいない。
しかして、呉の酒豪家、悪く言えば飲んだくれの黄蓋もまた、月を肴に、酒を飲んでいた。
「……ほんに、良い月じゃのぅ」
思わず感嘆の声を上げてしまうほどに美しい月。
「……だ〜れだっ!」
そんな月が雲に隠されてしまったとき、黄蓋にとって思わぬ来訪者が現れる。
黄蓋は後ろから両目を手で覆われたと思えば、先のふざけたような言葉。
この際、口調はどうでもよい。
重要なのは、呉の宿将とまで呼ばれる黄蓋の後ろを、いとも簡単にとってみせたことである。
いくら酒を飲んでいるからと言っても、後ろに気を配っていない訳ではない。
宿将と言わしめるレベルならばもっての他。
だが、とられた。
「……牡丹じゃろ」
そこまで考えて、黄蓋は答えた。
「ど〜して分かったのよ〜。つまんないじゃな〜い」
黄蓋の目を覆っていた手を外しながら、むくれたような声で答える者。
黄蓋の言う通り、牡丹だった。
「儂の知る限り、楽々と儂の後ろをとれる者は二人しかおらん」
一人はもう、逝ってしまわれたがの。
ボソリと黄蓋は続ける。
「……氣を消し過ぎたのが仇になった訳ね」
最後の言葉は聞こえない振りをして、牡丹は肩をすくめた。
人は無意識のうちに自らの氣を発し、さらには他人の氣を感じる。
自分の氣が高ければ、他人の氣を敏感に感ずることができ、相手の氣が圧倒的であれば、自分の氣が低くても感じられる。
……昼間の軍議に於いて、牡丹と山百合が入ってくる、と曹操、夏侯淵及び周瑜が気付けたのもこの為である。
では、牡丹はどうやって黄蓋の背後に周りこんだのか。
簡単だ。
牡丹の言う通り、自ら発する氣を抑えたのである。
……この行為は言うほど簡単ではないが。
突然だが黄蓋は、氣の扱いが上手い。
故に、僅かな氣の漏れでさえ存在に気付かれ、見つかってしまう。
だから、黄蓋にイタズラがしたかった牡丹は、気付かれない程に氣を抑えた。
だが、そのような芸当が出来るのは、黄蓋の知る限りでは、今は牡丹一人だけ。
だからこそ、誰が目を覆っていたのかが分かられてしまった。
そんな訳で、氣を抑える、ということが、今回は仇となったのである。
言うなれば、氣=気配だ。
氣を消せば、気配は消せる。
存在を隠すことと同義なことが可能なのだ。
……そう、昼間の軍議の際、牡丹が皆に気付かれずに席に着けたのも、この為だった。
「毎度毎度、後ろをとるのを止めてくれぬか? 武人としての誇りが傷付いてかなわん」
「無理☆ むしろ、気付けるように精進したらいいんじゃない?」
肩を落としながら、牡丹に訴える黄蓋。
が、即答で否定し、さらに難題を出す牡丹。
「ああ言えば、こう言いおって……。まぁ、よい。で、何用じゃ、儂は暇ではないぞ?」
……酒を飲むのに忙しいだけであるが。
「祭と久しぶりに飲もうかな〜、と思ったけど、暇じゃないのね。わざわざ西涼から良い酒持ってきたのになー」
あーあ、残念だなー、とわざとらしい声を上げる牡丹。
「(良い酒……)うむ、そんなに急ぐことも無かったの。共に飲もうではないか」
良い酒、という言葉に、いとも簡単に釣られる黄蓋。
……なんて現金な人なのだろうか。
それほどまでに、西涼から持ってきた良い酒、というものに魅力があるとも言えた。
「暇じゃないんでしょー? 迷惑とかかけらんないから帰るねー」
「いっ、いや、待て――「待て?」――ではなかった、待って下され! 一緒に飲まさせて下され!」
後ろを向いて、帰ろうとする牡丹を引き留める黄蓋。
もう、性格が少し変わってしまうほどそれが飲みたかった。
「しょうがないわね〜」
いかにも言葉通りのような顔をする牡丹。
……内心、滅茶苦茶笑っているのだが。
「うむ、美味い!」
「ある、あるこーる発酵、だったかな? とりあえず、それで作ったお酒なんだって」
黄蓋の感嘆の言葉に、少しだけ誇らしげに補足を入れる牡丹。
「ふぅむ、聞いたこともない製法じゃな」
「ま、正直私にも分からないわ。陽が勝手にやって、勝手に持ってきたものだしね」
ホント、やる事なす事突拍子のないことばっかりなのよね〜。
と、牡丹は呆れ口調で話すが、満面の笑みを浮かべている。
牡丹にとって、思わず笑顔になってしまう程に、陽の予想外の行動が愉快極まりないのだ。
「陽? 誰じゃ?」
知らぬ名に反応する黄蓋。
当然と言えば当然であろう。
「あぁ、忘れてた。私の息子の馬白のことよ」
「はて、息子……馬白。……馬孝雄。もしや、天狼のことか?」
「は? 天狼って?」
「……は?」
聞き返す牡丹に、呆気にとられる黄蓋。
「……まさか、自分の息子の二つ名を知らぬ訳ではあるまいな?」
「なにそれ? 陽に二つ名なんて大仰なものついてるわけー?」
心底あり得ない、と言わんばかりに――口調は疑問形なのだが――否定する牡丹。
そんな様子に、肩をすくめ、呆れ果てる黄蓋。
自分の部下、ひいては息子の二つ名を知らないのだ。
呆れない理由がなかった。
……ただ、このこと――息子の風評を知らない牡丹に呆れたこと――が、自らの主である孫策に対しても呆れていることになる、ということを、黄蓋は知るよしもない。
(孫策には"江東の小覇王"という二つ名があったのだが、本人は、周瑜に教えて貰うまで知らなかったのである)
「"西涼の天狼"じゃ! 儂でも知っておるのに、何故お主が知らんのだ!?」
「へー。それ、陽のことだったのねー」
てか、なんか語呂悪くない?
若干興奮気味の黄蓋の言葉を適当にあしらうだけでなく、紡ぐ言葉も気だるげで、あまり興味を示さない牡丹。
「……変に、堅殿に似ておる」
「最大の誉め言葉ね、それ♪」
自分が楽しいそう、面白そう、といと思えるもの、こと。
それ以外には、基本的に興味を示さない。
これが、牡丹の性格である。
先のやりとりでそれを垣間見た黄蓋は、自らの言う堅殿――前呉王であり、元の主である孫堅文台――に似ている、と呟いてしまう。
実は、それは仕方のないことなのである。
元々その性格は、孫堅自身の性情なのだ。
更に言えば、似ている、のではなく、似せている。
つまり、牡丹が孫堅の性情に影響を受けた、取り込んだ――悪く言えば、真似した、パクった――が、一番正しい。
黄蓋はそれを知らぬ故に似ている、と言い、牡丹は上手く似せていられていることを喜んだのである。
「にしても、狼、ね」
「…………」
何の因縁か、はたまた西涼ということで、あやかったのか。
そう思いはするが、陰りのある牡丹の表情に、黄蓋は口に出すことを止める。
それも一つの、友としての優しさである。
「……ふ。まぁいいわ」
「……そうか」
「っていうか、そんなことはどうでもよくてね――」
★ ★ ★
時は少し遡り……。
山百合は、ある天幕の前に立っていた。
どうしようかと立ち尽くしている、と言っていい。
山百合の主である牡丹は、夜襲をしに来た、と言っていた。
主に従うならば、このまま――不意討ちの様に――天幕内に押し入るのがベストだろう。
しかし、山百合も武人。
不意討ちはあまり好きでない。
やらないこともないが、出来るだけやりたくない。
やはり、――位置的に、すでに深く侵入しているのことになるだが――呉の兵に伝えてもらうべきか。
そんな今更なことをずっと考えていた。
「誰だ!」
……後ろに人が接近していることにすら気付かぬほどに。
刺すような鋭い声に、ビクリ、と肩を震わす山百合。
おそるおそる後ろを振り向くと知己の者がいた。
「……冥琳ちゃん」
助かった、と呟くほどほっとする山百合。
これで夜襲をしなくても済む、と。
「何も助かってはいないぞ」
「……ぇ?」
答える暇もなく、周瑜愛用の武器―白虎九尾―に縛られる山百合。
完全に油断していたので、簡単に捕まってしまっていた。
「我が主、孫策の暗殺を試みた罪は重いぞ」
何故か笑んでいる周瑜に、山百合は首を傾げた。
「あら冥琳、どうかしたの? お仕事ならちゃんとやってるわよ〜」
言葉を続けるにつれて、どんどんトーンが下がっていく。
孫策もまた、酒をよく飲む。
故に、金色に輝く月を肴に、酒が飲みたかった。
なのに、まさかの仕事。
テンションが下がらない訳もなく、声のトーンが下がるのも必然だった。
「先ほど、貴女を狙った暗殺者がいてな。やはり、近衛をつけたほうが良い」
「え、嘘?」
「本当だ。……入れ」
周瑜の言葉と共に、縛られた者が入ってくる。
孫策の疑うような目が、みるみるうちに驚愕に変わった。
「……えっ!?」
「……5年ぶりであると言うのに、このような対面になろうとは。姉貴分として顔向け出来ませんね」
ばつの悪そうに俯きながら入ってくる、姉と慕っていた山百合には、驚くしかなかった。
「……勿論、暗殺などするつもりはありませんでしたよ。ちょっとした――「山百合お姉ちゃん!」――おぉっと」
いきなり抱き付いてくる孫策に驚きながらも、両手が――腕ごと縛られているため――使えないので、体重移動と足さばきを駆使して受けきる山百合。
流石は歴戦の将、と言うべきだろうか。
……才能を無駄に使っている、とも言えるのだが。
「久しぶり! ずーっと会いたかったんだから!」
「……ごめんなさい。私も会いたかったのですが、二人の成長の為、心を鬼にしました」
それに、具体的なきっかけ、というものもありませんでしたから。
と、柔らかく笑んで続ける山百合。
言葉にした通り、本当はもっと早くに会いたかった。
孫策、周瑜、山百合が最後に会ったのは5年程前。
それから半年、孫家は堕ちた。
前呉王であり、孫策の母である孫堅が亡くなったからだ。
それにより、孫家についていた豪族たちは次第に離れてしまった。
だがそれでも、孫家を守っていかなければ、支えていかなければならない。
さらに、盗られたものは取り返さねばなるまい。
その筆頭に立つのは、孫堅が嫡子、孫策。
それを補佐をするのは周瑜。
それぞれ、孫に蓮なる者達をまとめる重要な立場になった。
他州の将と会っている暇があったら、少しでも復興を進めるべきだ。
そう心に刻んむことで会いたい気持ちを抑え、二人は政務に励んだ。
……孫策はほどほどにサボるのだが。
安易な慰め、励ましは逆効果であり、二人の成長の妨げ、かつ無駄な時間になる。
山百合もそう思うことで、抑えていた。
そんな中での再会。
孫策の少々責を問うような言い方になるのも仕方のないことだった。
「……そろそろ解いてくれませんか?」
「うん、わかった」
「いや、待て!」
「……信用出来ませんか?」
「そういう訳ではっ! ただ、建前として……」
「残念。もう解いちゃった♪」
「雪蓮! ……全く、お前というやつは!」
「はいはい、久しぶりに三人揃った時なんだからそんなカリカリしない♪」
「誰が怒らせていると思っている!」
「……ふふっ」
5年程前と寸分違わぬ二人の言い合いに、最後に会ったのが昨日であるかの様に思えてくる山百合。
情勢や立場が変わっていく中で、こういったやりとりは変わらない。
何とも言えない可笑しさに、自然と笑みが溢れた。
「……雪蓮ちゃん」
「ん、何?」
「……そんなに冥琳ちゃんをいじめないであげて下さい」
「え〜、山百合お姉ちゃんは冥琳に付くわけ〜」
「……いいえ。私は中立です」
元々、二人の敵になるつもりはありませんから。
そう続ける山百合。
どちらに与する訳でもなく、かといって、介入しない訳でもない。
基本的に、山百合はどちらかの味方ではなく、どちら共の味方なのである。
「……私は至極真っ当、当然のことを話しますね」
「なっ、何?」
山百合の放つ一語一句に、見えないプレッシャーを感じ、たじろぐ孫策。
……周瑜は、いいぞもっとやれ状態である。
「……貴女は王なのですよ? 親衛隊がいないとはどういうことでしょうか?」
「あ、あははは?」
「……ですから私が暗殺未遂の罪を被る事になってしまったのですよ?」
孫策には渇いた笑いしか浮かんでこない。
このあとは、ずっと山百合のターンだった。
……周瑜がわざわざ山百合を捕らえたのは、親衛隊も付けない孫策を叱って貰う為だったのである。
この後、普段は二人以上の兵、もしくは将の一人が付く、ということで合意したらしい。
その時の孫策は、心なしかげっそりしていたという。
★ ★ ★
場所は戻り……。
「なんじゃとっ!? それは真かっ!?」
「えぇ、ホント。そんなことに嘘吐いてどうするのよ」
酷く狼狽する黄蓋。
対する牡丹は酷く冷静だった。
「……いつ頃じゃ」
「私の花は咲くかしらね〜」
「……そう、か」
「そうよ。……お墓参りに行けないのが悔しいわ」
一陣の秋風が二人の頬を撫でた。
★ ★ ★
場所はまた戻り、先から半刻後の孫策の天幕にて……。
「はっあ〜い♪ 雪蓮ちゃんも元気――うっぷ、ぎぼぢわるい」
「ちょっ、大丈夫ですか?」
「だぁーいじょーぶい♪」
「……いえ、かなり壊れてますよ、牡丹様」
あの後、言葉数は格段に減った為、酒を煽る機会が多くなる。
ここで、陽の作った酒について解説しよう。
酒、と言っても、一概には言えず色々ある(作者は未成年だからそこまでは知らないけどね!)。
その中でも、アルコール発酵とは、日本酒を醸造するときの行程の一つだ。
そう、日本酒。
牡丹が(勝手に)持って来たのは、――完全ではないのだが――まさにそれ。
……本当に、どうやって作ったのだろうか。
それはさておいて。
いくら未完成だと言えど、この時代の濁り酒とは訳が違う。
具体的にはアルコールの度数が違う。
いくらこの時代の酒に於いて"ザル"と言えど、陽の作った酒は違うのだ。
もうお分かりだろう。
牡丹は酔っていた。
……若干壊れてしまうぐらいには。
黄蓋も同じく酔っていたので、孫策の天幕に牡丹を案内してすぐに帰っていった。
……悲痛に染まった今の顔を見せたくない、という気持ちもあるが。
「……牡丹様、帰りますよ」
「うん。……あ、ちょっと待って」
咳払いをして、改めて孫策の方に向き直る牡丹。
その姿勢、態度には、酔っていることを感じさせないほどに、真剣さが滲み出ていた。
「大きくなったわね、雪蓮ちゃん。一瞬、王蓮かと思っちゃったわ」
「あの鬼に見間違われた事を喜ぶべきなのかしら」
思案顔をする孫策。
……本当は嬉しいのだが。
「さぁね、そこは自分で決めなさい。 そういえば、……狼がね、自由に使って、だって。ま、私的にも存分に使って欲しいと思ってるわ」
何度も助けて貰ったのに、まるで恩返しができやしなかったから、ね。
と、牡丹は遠い目をしながらそう言う。
あとね、と続ける。
「敬語はなしね。私も雪蓮ちゃんも互いに一軍の長。立場は等しいんだから、ね♪」
左目で軽くウィンクする牡丹。
「はい、じゃなかった、……ええ、そうね」
「ん、よろしい♪」
にっこりと笑う牡丹。
が、次の瞬間には顔を青ざめさせた。
「……もう、げん……か、い」
「……牡丹様、ここで出してはなりません!」
「でも、……らめぇっ! れちゃうぅぅぅう!」
「……頑張って我慢して下さい、牡丹様! すみません、こんな形ですが、おいとまさせて頂きます」
「うん、またね、牡丹さん、山百合お姉ちゃん」
その後、牡丹は呉の敷いた陣の外に出た途端、存分に吐いたそうな。
「……嵐みたいな人ね」
「文台様に、負けず劣らずだ」
天幕に取り残された二人はそう呟いた。
★ ★ ★
「はぁ、また出番なしだよ……」
「まぁまぁ、落ち込むなって。今回はあたしもないことだし、な?」
「訳が違うよっ! 前回出番のあった翠お姉さまとはねっ!」
今回の出番なしの現地組は賑やかだった。
……作者的にも、蒲公英が出せないのは悔しかったりする。
てか、メタ発言やめれ。
陽は語――。
「って、おいぃぃぃい! 出てねぇんだから、語るとこなんて一個もねぇじゃねーか!!」
「うっさいわね! 耳元で叫ぶな!」
「これが叫ばないでいられますかね!!」
「そうだね、ぷろていんだね」
「こいつ、またやった!?」
「だから、儂も交ぜて、って言ってるでしょっ!」
「「(薊さん/母様)が壊れたっ!?」」
居残り組も、違う意味で賑やかだった。
氣やら気配やらは、独自解釈です。
本編では、美少女達がつおいのは、無意識に氣を使っているせいだと思って下さい。