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第二十七話


口調がわからなくなってきた。



もう、午前中、という範囲にしよう。


自分で決めた10時までに投稿、とか難しくなってきたし。



「…………」


「……で、華陀君、だったかしら。 ……陽はどうなの?」


牡丹は、寝台に横たわる患者。

すなわち、陽の様子を診察した華陀に問う。


「はっきり言わせてもらうが……、分からない」


「なっ、どういう――「瑪瑙、黙っておれ」――母様!」


「……説明してもらうぞ」


掴みかかろうとした瑪瑙を御し、薊は問う。

対する華陀は、難色を示す事なく話し始めた。


「勿論だ。 ……俺はゴットヴェイドーの教えに従っていつも治療している」


「……ごっと、べいどう?」


何か引っ掛かったのか、藍が復唱する。

皆はスルーしたが、気になったようだ。

……むしろ、これが普通の反応なのであるが。


「違う違う。 ゴットヴェイドー!!! だ!!」


「こんぺいとう?」


次は牡丹が呟く。

……完全に悪ノリである。


「義姉上……、弁明の余地はまだあるぞ?」


「ごめんなさい、ゴットヴェイドーでした。すいません。……華陀君続けて下さい」


ペコペコと頭を下げる牡丹。

マジギレ寸前の薊には、頭が上がらないようだ。

……本当に太守なのか、疑わしい限りである。


「……こう、義姉上も言っておられるし、後にも言い聞かせておく。じゃから、華陀殿、話を続けてくれぬか?」


「わかった。……その教えにより、俺は体内に巣食う病魔を見ることが出来る」


「だったら、陽のも見れたんじゃないのか?」


「……その上で分からない、ということですか?」


華陀の言葉に反応して、翠、山百合の順で言葉を続ける。


「そうではないんだ」


「じゃあおじさん、どういうこと?」


「……。 見えなかったんだ。本来見えるはずの病魔も、その影すらも見当たらないんだ」


華陀は伏し目がちに、言葉を紡ぐ。

……苦笑いで茜のおじさん発言をスルーところは流石と言うべきだろう。


「じゃあ、なんでお兄様は?」


「……そこなんだ。それが分からないんだ。……呼吸も安定しているし、血流も悪くない」


蒲公英の問いに答え、さらに、と華陀は続ける。


「韓遂殿から聞いた昨日の馬白殿の様子から、過労の線も探ってみだが、そんなに疲労も溜めていなかった」


「ふむ。……ますます分からないわね。全く、陽ってば世話の焼ける子ねぇ」


牡丹は陽の寝る寝台に腰掛け、慈しむように薄く笑い、優しくその頭を撫でる。


「すまない。……俺が力不足なばかりに」


「いいのよ。……この子は死にはしないし」


華陀は俯き、グッと拳を握る。

医者として、治せないのが悔しいのだ。

そんな華陀の様子に、柔らかく微笑んでみせる牡丹。


「……それは勘か?」


「えぇ。私の勘は当たるのよ」


「……願掛けで真似している、という訳ではなかろうな」


「当たり前じゃない♪」


勘、という言葉に薊は訝しむが、牡丹は相変わらずの笑みを溢す。

諦めか信頼か。

薊も微笑んで見せた。


「その言葉、信じるぞ。……っと、すまぬ。少なくとも、医者の貴殿を前にして話す事ではなかったかの」


「いや、構わないさ。あまり勘で判断して欲しくない気持ちもあるが、今回の場合、俺は宛にならないからな」


薊の謝罪に苦笑いで返す華陀。

医者にとっても、勘で全て言い当てられても困るのである。

……とりあえずどこぞの小覇王は、ちょっと自重すべき。


「……悪かったわね、華陀君。 さって、と。んー、陽も一応無事だったことだし、今日のところはこの辺でいいかしらね」


「……ですね。それに、後がつっかえておられるようです」


「陽にばっか時間を割かせてんのは、華陀にも皆にも気が引けるしな」


牡丹の言葉に同意した山百合と翠が追従する。


すくっ、と牡丹は不意に立ち上がり、華陀の前で左の拳を右手で覆い、深く一礼する。

その牡丹の顔に、いつもの笑みはなかった。


「華陀殿、我らの身勝手な願いを聞き入れて頂き、誠に感謝いたします。そして、我らの貴殿に対する数々の非礼、お許し下さい」


「いっ、いや、結局、力になれなかった俺にそのような――」


「時間を割いて頂いたのは事実です。御礼申し上げるのことも、非礼を詫びるのも当然のことであります」


今までとはうってかわった牡丹の様子に、当惑する華陀。

これまでにない表情をいきなり見せられて、驚かない筈がないだろう。

感謝も謝罪も受け取らない華陀を、牡丹は説き伏せ、続ける。


「重ね重ね申し上げありませんが、もうひとつだけ、我らの願い、聞き入れて頂けないでしょうか」


「……あぁ! 何でもいってくれ!」


「ありがとうございます。 では、……未だ病魔に苦しむ我らの民をよろしくお願い致します」


「…………」


そこに病人がいるというのに、自分の力不足から――実はそうではないのだが――治療出来なかったことに、華陀は罪悪感に近いものを感じていた。

そんな気持ちからか、牡丹たちの願い、というものには全力で身を投じようと、自身で決意していた。

しかし、そこにもとより自分の仕事であり、ここに来た目的でもある、民草の治療を乞われたのだ。

もう一度深く頭を下げる牡丹に、華陀は言葉を失ってしまっていた。


「ここにいる馬白も、華陀殿からすれば捨て置けぬ患者ではありましょう。しかし、貴殿は安定している、と仰られた。ならばこそ、今にも病魔に崩れ落ちんとする我らが民を救って頂きたいのです。 ……それが馬白自身の願いでもあります」


牡丹の言い分はこうだ。

原因不明の病に倒れた陽を、放ってはおけないだろう。

しかし、何かはわからないにしても、今のところ危険はない。

ならば、治せない陽のもとにいるよりも、治せる民を優先してほしい。

それは、牡丹と同じである陽の願いでもある。

と、いうことだ。


権力者で独占するより、力なき民に分け与える。

……どんな時代から見ても、特殊な構図である。


「……わかった。それが貴女方の願いなら」


「ありがとうございます」


牡丹はニコリ、と笑いかけた。

また、うってかわった表情と雰囲気に、見惚れるものがあるな、と華陀は思った。


「……終わったようじゃな。 さて、皆も各々の仕事に戻れ。無論、義姉上も、な」


「嫌よ!」


牡丹と薊以外の6人は、粛々と持ち場に戻る。

拒否った牡丹は薊に引き摺られて戻ることとなった。

……本当に太守(ry



   ★ ★ ★



辺りが暗闇で覆われた頃……。


「ふぅ。……それで、話とは何かしら、華陀君。陽のこと? もしくは愛の告白――」


「馬騰殿、……分かっているだろう?」


「――つれないわね〜」


「すまない。……本題だが、貴女も――」


「誰にも言わないで頂戴」


「――……わかった」


「感謝するわ。……見立てでは、あとどれぐらい?」


「……一年はきっている」


「そ。ありがと」


「いや、不甲斐ない限りだ」


片方が微笑む傍ら、対する片方は、悔しがっていた。



   ★ ★ ★



「陽ちゃんが倒れたらしいわん」


「ふむ、例のオノコか。どのような顔をしておるのぉ〜。……ドキがムネムネしてきたわい!」


「どふふ、そこはムネがドキドキ、よん♪」


「む、勘違いするでないぞ! べ、別に貴様の為に間違った訳ではないからの!」


「分かってるわよん」


「おっと、話が逸れてしまったわ。 ……外史拒んだか」


「あくまでも、突端はご主人様のようねん」


「じゃが、付属でしかないファクターが、外史に拒ませるとはの。……なかった、と言うべきじゃな」


「これから、この外史は何処まで許容するのか……見ものねん♪」


「むむむ、やはり、ドキがムネムネしてきたわい!」


会話こそ聞こえなかったものの、様子を窺っていた兵は、身をよじる二人に吐き気を覚えた。



   ★ ★ ★



明くる朝……。


華陀は、どこからともなく聞こえる騒がしさにより、――陽の手配した――宿にて、目を覚ます。

外か、と判断し、眠気眼で開いた窓から外を見た。

華陀を一瞬で眠気を覚まさせる光景が、そこに広がっていた。


老若男女問わない長蛇の列が、大通りにできていたのである。

華陀は大通りに面したある一室に泊まっていたため、窓からそれを一望することも、どこに向かっているのか確認することもできた。

……言うまでもなく、城に向かっていた。

華陀は、急いで寝間着から着替え、朝食も採らないで、真っ直ぐに城へ向かった。



城に近づくごとに、人の密度は増し、門前近くでは、半身になってでなければ通れないほどであった。


「ちょっとすまない」


「おいおい、兄ちゃん。横入りは良くねぇぜ。皆、順番に並んでんだ」


「そうだそうだ!」


「かっこいいからって、調子にのらないで!」


城に近づく度に、こんな絡みをされる華陀。

ちょっと不憫である


「ちょっと退いてくれ」


「おいおい(ry」


「そうだ(ry」


「かっこい(ry」


「おぉ、華陀先生ではありませんか。昨日はありがとうごぜぇました」


「いや、当然のこと――『華陀先生だって!?』――え?」


人だかりの中心で華陀と叫ばれる。

そして、皆がみな、一斉に華陀を見る。

ちょっとだけたじろいだのは仕方がない。


『うぉー! 華陀先生だ! お通ししろ!』


『華陀先生の邪魔するなー!』


『きゃー、かっこいいわ!』


手のひらを返すかのように、対応も、言葉も変わり。

今まであった人だかりが一瞬で左右に分かれ、城までの道のりが開けられる。

華陀は、なんとも言い難い気持ちになった。



「あ、あの……」


「あっ、こらっ!」


突然少女が、華陀の前に躍り出る。

連れ戻そうとする母親を手で制して、華陀は少女に笑ってみせた。


「どうしたんだい? どこか痛いのか?」


少女は俯きながらも首を振る。

どうやら違うらしい。


少女黙ったまま、右手を華陀に差し出して、開いた。


「これは……、綺麗な石だね」


手のひらの上には、磨かれたかのように艶めく石があった。

華陀にはまだ意図がわからなかった。


「……俺にくれるのか?」


コクッ、と少女は頷く。

しかしそれだけではなかった。


「……これで、お兄ちゃんを、治して」


恥ずかしさ半分、不安さ半分の、今にも泣きそうな声色で懇願する少女。

対する華陀は、医者の顔に変えた。


「君のお兄ちゃんはどこにいるんだ?」


華陀の問いに、少女は当たり前であるかのように城を指差す。

はっきりとしない自分の子の様子に、母親が助け船を出す。


「この子、というより、ここにいる子供たち皆の言うお兄ちゃん、とは、馬白様のことです」


「……と、いうことは」


少女に便乗したか、わらわらと華陀のもとに子供たちが集まってくる。


「僕の今月のお小遣いをあげるから!」


「へへーん! 僕は二月ぶんだよ!」


「僕はお兄ちゃんに教えてもらった、竹とんぼ!」


「私はお花の束を作ってきたの!」


「私はお人形さん!」


『全部あげるから、お兄ちゃんを治してあげて下さい!』


一人一人が手を掲げ、自分の大切であろう物を差し出している子供たち。

それには華陀も心の底から驚いていた。

そして同時に理解した。

この人だかりは全て、馬孝雄を見舞う為のものなのだ、と。

馬孝雄は、こんなにもこの街の皆に好かれ、慕われているのだ、と。


「……わかった。絶対に治してみせる!」


華陀は、はっきりと答えてみせる。

皆に誓うように。

そして、自らに誓うように。



   ★ ★ ★



「――元気になぁぁぁれぇぇぇえ!!!」


陽の部屋にて、華陀は城中にこだますほどの声を張り上げる。

そして、ありったけの氣を注いだ鍼を、陽の心臓に打ち込む。


本来、氣のこもった鍼を患部に打ち込むことで、病魔を滅するのが、五斗米道の基本である。

だが、ひとつだけ、そういった治療とは違った奥義があった。

その名は、投氣亜外流。

またの名を、闘氣注入。

自らの氣を、他人に分け与える、というものである。

……闘魂ではないので気をつけるように。


その奥義に、


『使用後には、愛と哀を知ることができ、後の好敵手(とも)との戦いの末に昇天する』


という逸話が、あったりなかったり。


とにかく、華陀は今回、それを陽に施した。

むしろ、これしかない、と確信したのであった。


「……ふぅ」


『…………』


玉のような汗を拭う華陀。

そんな中でも、達成感のある顔をしていた。

対して馬家の人々は、華陀の声量に呆然する。

……昨日は診察のみで、治療はしていなかったので、知らなかったのである。


「……で、どうなのかしら?」


いち早く戻ってきた牡丹は、達成感に溢れつつも、疲労感も拭えない様子の華陀に問う。

……もう少し労ってもらいたいものである。


「……様子を診てみないとわからないが、俺の氣がうまく馴染めば成功だ」


「ならば、まだ数日はかかる、ということになるのかの?」


腕を組み、右の眉を上げた薊は、困ったように呟く。

文官をまとめる立場としては、陽が数日間動けない、というのは、相当な痛手なのである。


「あぁ、そうだ。どれ程で馴染むかもわからないし、たとえ馴染んだとしても、何が起きるか俺にもわからない。……数日は絶対安静にしてもらうことになるからな」


「ふむ。これは、困った困った。……陽の抜けた穴を埋める為にも、義姉上にも頑張ってもらわぬとな」


「……なん……だ、と……!」


若干細く笑む薊。

牡丹は、絶望に瀕したような顔つきになる。

……この二人は、シリアスだということをわかっているのだろうか。



   ★ ★ ★



その日の夜……。


「……困ったわね」


「全くじゃ」


『…………』


牡丹が呟き、薊が相槌を打つ。

言葉には出さないものの、この場にいる全ての者たちが同じ気持ちだった。


「……どうしようかしら、この、反董卓連合、ってやつ」


数日前から、陽の頭を悩ませていたものだった。


「そんなもん、出陣するに決まってんだろ!」


「あんたバカァ? 集結するのシ水関なのよ? ……まるっきり逆でしょうが」


翠の言に、反論する瑪瑙。

出陣以前に、西涼から、というより、今現在董卓たちがいる洛陽より西側から、シ水関前に馳せ参じる、ということ事態がおかしいのである。

さらには、多大な時間がかかる、かつ、向かうまでの食料、資金などの問題がネックになっていた。


「……まあまあ、落ち着いて下さい。それに、どちら側を標的に出陣するか、も重要です」


山百合は熱くなる二人を諌めつつ、さらに問題を提起する。


「山百合お姉さま、それって」


「……はい。董卓側か、反董卓側か、ということです」


山百合は腕組みをし、目を閉じて、蒲公英の言葉に続ける。

反董卓連合の言い分は、陽の予想通りでのものであった。

その内容の信憑性は不確かであるが、事実ではない、とは確信出来ないもの。

どちらに正統性があるのか、判断しかねていた。


「うーん、反董卓連合側に付くことにしたとして、……やっぱりシ水関まで行くのって、面倒よねぇ〜」


「母上っ! 洛陽の民が逆賊の手にかかってもいいって言うのかっ!?」


翠は檄文の内容を信じており、あたしが討ってやる、ぐらいの気概でいたのだ。

母親である牡丹のだらけた発言に怒るのも当然である。

だが。


「別に。関係ないもの」


「――――っ!!」


牡丹は据わった目で答えた。

その顔に、いつもの笑みはなかった。


「私にとって、この西涼の地以外、どーでもいいのよ。……そもそも私、あそこ、嫌いなのよね」


どちらに付いても、あそこいかなきゃいけないのか、あーあ、やだやだ。

牡丹は無機質な顔をして、おどけた感じでそう続ける。

牡丹の心の底から出た本音であった。




結局何も決まらず、一刻経つ。

険悪なムードも高まっていた。


「……お兄様がいたらなぁ」


「……蒲公英ちゃん、それは言わない約束です」


そう。

蒲公英の言うように、陽が居れば全て解決出来るのである。

檄文の内容の真相も、どちらに付くべきなのかも、そして、どんな展開が待ち受けているのかも。

総じて、冒頭の困った、とは、陽がいないことを指していた。


「……も〜、仕方ないわねぇ。ウダウダ考えてたって何にも進まないし。……翠の意を汲みましょう。我らは反董卓連合に参加する」


『……御意!』


散々悩んだ末、牡丹は漸く決意する。

いつもは即断即決が基本の牡丹であるが、それがなせるは、主に陽のおかげなのだ。


「出陣は三日後と、一応しておくわ」


「一応、とは、どういうことじゃ」


薊は、あやふやなのを好まないタイプである。


「明後日までに陽が回復すれば、あの子の意見も聞くってこと。その意見次第で、出立する日も変わるかも知れないでしょ?」


「なるほどの」


ぽん、と手を叩く。

……直前になって変更することになる可能性がある、ということには突っ込まなくても良いのだろうか。


「ま、どう転んでも、薊と瑪瑙はお留守番だけどね♪」


「「……えぇっ!?」」


薊はともかくとして、瑪瑙は若干だが、やる気を出していたところに、牡丹の発言。

驚きの声をあげてしまうのに不思議はない。


「えぇっ、ってなによ〜。誰がここと陽を守るっていうの?」


こことは、金城と隴西を含む西涼全体のことである。


「まぁ、確かにの」


「…………」


未だ不満気な瑪瑙。

そんな義娘を見かねた薊はこう耳打ちした。


(……陽は例外として、残るのは儂とお前の二人だけじゃ。陽と二人っきりの時間を作ることなぞ、造作もないことなのじゃぞ?)


「うん、わかった。残るよ、母様。……牡丹様、喜んでお引き受けします!」


凄まじい勢いで切り返し図った瑪瑙。

そんな様子に、牡丹はしまった、と右手で顔を覆い、薊はしたり顔をし、羨望の眼差しで瑪瑙を見る山百合と蒲公英。

どうやら耳打ちの内容がわかったらしい。


「…………?」


若干一名、わかっていなかったりする。



   ★ ★ ★



一方、各地では……。


「勿論、参加するわ」


「ですが、華琳様っ!」


「いいのよ、桂花。麗羽のバカな策に、乗じさせてもらうわ。……最後に笑うのは、覇王である私なのよ」


「……御意」


「まだ納得いかないかしら?」


「いっ、いえ、そんなことは」


「可愛いわね。……今日は私の閨に来なさい」


「はっ、はい!」


陳留での一コマ。

……真面目な話から、どうしたら百合百合しい話に転ぶのか。



   ★ ★ ★



「……来たわ。千載一遇の好機よ」


「あぁ。この期に乗じる他ないな」


「で、どうする? アレ、使っちゃう?」


「遠慮なく、と、いきたいところだが、まだ保留だ。向こうで会ったら聞けば良い」


「それもそうね〜。……贈った本人がこないのは残念だけど」


夜闇の中での断金の会話。

アレとは、このときの為にと、贈られた膨大なお金のことである。

……陽が倒れたことは、局地的に知られていた。



   ★ ★ ★



「……いや、いるよね。絶対いるよね。むしろ、いなかったらおかしいよね!?」


一刀は街中でシャウトする。

そうしないといられなかった。

黄色い全身、くりくりの黒目、赤いほっぺ、尖った耳、ギザギザの尻尾。


「……ピカ○ュウ」


なんとも愛らしいぬいぐるみがあったのである。

陽がピカチ○ウのぬいぐるみを市場に出すと決定したのは、わずか三日前。

元々隴西において、――少量だが――すでに生産していた。

今でさえ、色々と突っ込みたい気がしないでもないが、問題はそこではない。

どうすれば三日の内に平原まで持ってこられるのか、である。

……そこは華麗にスルーしてもらうと、作者的に助かったりする。

とにかく、檄文は(何故か)届いていない為、今日も平原は平和だった。

……距離的に一番近い筈なのであるが。





陽は語る。


「俺があのとき倒れてなかったら、どうなってたんだろね。心底愉快な流れになってただろうな〜」



華陀の技は、勝手に決めたものです。



某世紀末覇者が救世主の嫁の後ろ首を突いて、闘氣を送った、ってのを思い出しただけですが何か(`・ω・)(キリッ


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