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第一話

プロローグというやつ?です。



昔、むかしはるか後漢末期。



ある所にある少年がいた。


容姿は悪くなく、むしろ世間一般から見れば良い方だと言えるだろう。

そのくせ着ている服はみずぼらしく、貧しさだけで服が擦りきれてぼろぼろになっているとは言い難い格好である。

そんな少年がいま、暗い暗い穴の中にいた。


「……うぅん、冷たいし、かてぇなぁ。下が土だから当然といえば当然かぁ?」


(土?あん?)


「なんでこんなとこいるんだっけか?」



   ☆ ☆ ☆



さかのぼること数刻前……


「うぅ……、腹が、げ、限界だ!」


少年は森のなかをさまよい歩いていた。

言わずともわかるであろう。

食糧調達の為である。

最後の食糧が尽きて数日が経っており、足元はふらつき、体力はもう限界だった。


「こんなことになるなら、最後の食糧をあの馬にやらなけりゃよかったぜ……。でも、ああも嬉しそうに食ってたし、しょうがねぇか」


(やっぱり動物には優しくしないと、なぁ。

動物愛護家たるもの、そうする義務があるぜ)


などと、独り言を呟きつつ、歩を進める。


「……って、楽観的になってる場合じゃねぇ! 僕……俺の生死に関わる問題だ!」


(まあ、別に俺がここでのたれ死のうが悲しむ人なんていないからいいんだけどな)


ヒステリックになっては、皮肉げに笑みを浮かべ、コロコロと表情を変えながら、さらに奥へと進んだ。


「おっと、あれは……」


すると、何故か地面から30〜40cmほど宙に浮いている(正確にいえば、吊るされている)林檎があった


「……やった! す、数日ぶりの食糧だッ! この際、なんで浮いてるかなんて気にしねぇ!」


いつもの少年ならば、当然罠だと警戒したであろう。

しかし疑ってかかる暇も惜しむほど、腹を空かせていた彼は何かにとりつかれたかのように飛びついた。

この少年、馬鹿なのだろうか。


「い〜〜よっしゃあ! うむ、では早速、頂きm……」


(あれ?

なんだこの浮遊感は。

……嬉しすぎて、天に召されてるとかか?

洒落にならねぇぞ!)


絶賛落下中であるのにそんなことを考えていられる辺り、結構余裕があるのかもしれない。


「まだ、まだ死にたくなぁぁーーいたっ! ぐおぉぉぉ……」


深くはないが、浅くもない穴底に尻から着地した少年は、急いで尻をさする。


「ケツがあぁぁぁ! ふぅ、結構痛いじゃないか……」


辺りに誰もいないのに――穴の中なのだから当然だ――平静を装う少年。

本当に馬鹿なのかもしれない。


「つか、痛いだぁ? はっ! また、死に損なったか」


少年は、小さく憎々しげに呟いた。


「しかし、まぬけだなぁ、おい。 しかも、若干深めで出れねぇし。……ま、林檎食べて、寝ますかね」


見れば誰もが、猪を捕らえる為の罠である、と気付く罠に引っ掛かった状況でなお、楽観的だった。

もう、馬鹿で良いのでは。



   ☆ ☆ ☆



「う、……思い出しただけで、なかなか恥ずかしい」


(うん、これから気をつけよ。

だがな作者、貶しすぎだろーが)


思い返した少年は、深く反省することにしたようだ。

とりあえず、メタ発言は止めましょう。


「しかし、いい加減出ないと不味いな。……近くに助けてくれる人はいねぇかなぁ?」


期待はしねぇが、な。


都合良くいるはずがないことをしりながら、そう声をもらした。



   ★ ★ ★



同じころ、ある少女もまた森の中にいた。


「初めて仕掛けた罠だったんだけど、うまくいったかな?」



初めてにしては上手すぎだわって伯母上様に言われたけど……大丈夫だよね?


そう小さく呟きながら、森深くに進んでいった。


「たしか、ここら辺に仕掛けたはず、なんだけどなぁ……。」

森に入って早、半刻(一時間)。

少女は、未だに見つけられないでいた。


「うーん、間違えたかなぁ……。ん?」


「……思い…………けで、なか…………しい」


(声?が聞こえる……捕まって騒いでるのかな?)


そう疑問に思い、そっちに足を運んだ。

すると……


「近くに助けてくれる人はいねぇかなあ?」


……そんな声が聞こえてきた


(うん、ここは十八番しかないよね♪

あ、どこで十八番なんて言葉を知ったかは、ひ・み・つ♪)


メタ発言は止めて欲しい。


「ここにいるぞー♪」


はっきりと、自身の代名詞である言葉を、声高々に言い放った。



「って、何処にだよ!」


とツッコミつつも、内心は安堵と驚きで一杯だった


たしか朝方、森に入ったとき晴天だったはずなのに、ほとんど光が入ってこない。

すなわち、木が生い茂っていて、かつ、かなり長く歩いていたはずだから森深くにきている……。

確実に誰もいなくね?


と、判断していたので、当然と言えば当然である。


思考に耽っている少年を尻目に、少女はひょっこりと顔を穴へと出し、口を開く。


「ここだけど」


至極当然、単純明快なことであったのに、何故ツッコんでしまったんだろう、と少年かは少し後悔した。


「どうかしたのー?」


「いや、少し考え事をね。えと、この穴から出たいんだけど、若干深くて出れないから手伝ってくれないか?」


「うん、いいよ♪ ちょっと待っててね」


待つこと、ほんの一時

植物のツル?が、少年の元に落ちてきた。


「それに掴まってね。案外丈夫で切れないから安心してね♪」


「ありがとう」


少年はツルを何度か引っ張り、強度を確認すれば、本当に人一人を吊るしても切れないだろう、と思うほど丈夫だった。

若干の警戒をしつつ、それをつたってよじ登ると、穴から出たところにさっきの少女がいた。


(さっきは光が少なかったから見えなかったけど、かなり可愛いなぁ、おい)


と、少年が内心思うほどの頭に美のつく少女だった。


「ホント助かったよ、ありがとう。えぇっと」


「たんぽぽはねぇ、馬岱ってゆうの!」


これが少年と馬岱との出会いであった。



そして、後に、彼の少年は親友にこう語った。


「この頃かな、俺の掘った深い穴に光が射し込み始めたのは」

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