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第十二話


シリアス?です。



てか、そろそろ主人公設定とかうpした方が良いのだろうか。




ある執務室から出てくる二人。

一方は呆れ、項垂れていた。



Side 陽


「ねぇ、山百合さん あの人馬鹿ですか? 馬鹿ですよね? 馬鹿だと言ってくださいっ!」


「……本当に馬鹿でしたら、漢から見ればこのような辺境の地、直ぐにでも落とされているでしょう」


「いや、そういうことじゃなくてですね。……百騎で五百人相手にしろとか、おかしいでしょ!」


「……一人五人斬れば良い話です」


「だから、そういうことじゃねぇって!」


「……ならばなんだというんです!」


「なんかキレられた!? 敵より多く兵を揃えるという常識、完全無視ってのがおかしいでしょうが!」


「……たかだか賊五百人ごとき、百騎で十分と判断したのでしょう」


「いや、でも、もっと多く兵を用意して、一気に殲滅で良くないですか?」


「……必要ありません。機動力が落ちますし、それに、百騎中には私と貴方、陽君がいるのです……十分過ぎるでしょう」


「どんな働きを期待してるか知りませんが、俺、一般兵かつ初陣ですから!」


「……関係ありません」


「関係ねぇの!?」


もう僕ちゃんびっくりですよ。

君主が無茶苦茶だったら、家臣も無茶苦茶とか、なくね?

いや、まぁ山百合さんは忠実に従ってるだけだと思うが(むしろそう願いたい)。

それでも、振り回されるこっちの身にもなれってんだ、コノヤロウ。

いや、野郎じゃないんだけど。


今から初陣ですよ?

二人とももっと労れや。

完全な被害者たる俺が、ちゃんと政務に励んでいたと思えば、これだ。



   ☆ ☆ ☆



「山百合、百騎連れて賊五百人の殲滅、宜しくぅ~♪」


「……はっ! かしこまりました」


「あ、陽もついでにいってきなさい」


「……えぇ~」


「山百合、連行!」


「……はっ!」


「ちょっ――ぐぇ、ぐび、じっ、じまっでまずっで」



   ☆ ☆ ☆



ついでってなんだよ。

そんなノリで死地に踏み込ませる馬鹿がどこにいる。

そこにいるぞー!だって?

ははっ……殴ったろかボケェ!



   ★ ★ ★



Side 三人称


元々、牡丹は早いところ陽を戦場に立たせようと画策していた。

戦場に立ち、どれ程の実力を発揮し、どのような戦功を立て。

――そしてどうやって自分の隣まで登り詰めてくるのか。

楽しみで楽しみで仕方がなかった。


そこへ、偶然にも転がりこんできた、願ってもみなかった賊退治の依頼。

それも、五百人という、測るにはもってこいな人数。

だから、万が一の為に山百合をつけつつも、あえて兵を減らしたのである。


「ふふっ、楽しみね♪ ……って、今日の陽の分どうするのかしら?」


自分の右前には、高々と積み上げられた山が三つ。

そして左前方の陽の机には、これまた高く積み上げられた山が一つ。

いくら考えても、自分がやる、という結果しか見えてこなかった。


「……たーすーけーてーあーざーみー(泣)」


執務室にこだます、悲鳴にも聞こえる声。

まるで、の〇太が猫型ロボットを呼ぶような声だ。

されど、援軍が来ることはなかった。



    ★ ★ ★



Side 陽


意外と近かったな、おい。


「……鋒矢の陣を敷き、騎馬の勢いを持って一気に蹂躙します」


応、と力強く、きびきびとした声で返事をする皆さん。

ま、俺初陣だし、どうせ比較的安全なとこだろう。

皆さん頑張れw

そんなことを考えてると。


「……先頭は馬白で」


馬白……馬白……あ、俺か。

…………。


(……って、はいぃぃぃ!?)


危ねぇ、声出そうやった。


……あの、こんな状況の経験者はいますか?

その方に質問です。

実際にこういう状況に置かれたときって、爆笑か、渇いた笑いか、泣くか。

どれがいいんです?


ちょっwwおまっww

みたいにすればいいの?


まぁ、聞いたところでどれもせず、ただ今の様に無表情を作り続けるけどな。


「質問でーす! 何故僕が先頭なんですかー? この部隊の隊長であり、強者である鳳徳様が先頭であるべきではないでしょうかー?」


わざわざ手を挙げて質問した。

流石に、ここでは真名では呼ばねぇさ。

ただでさえ、今はいきなり先頭に抜擢されるということに不信感を抱かれているのだ。

そこに、上官である人の真名で呼ぶなんて無礼な真似、出来るかっ!

つー話だよ。

そして、ここにいる皆が頷いた。

そらそうでしょーね、ふつー。


「……愚問ですね。答えなどわかっているでしょう?」


いや、答えてやれよ……。

皆さんはわかんねぇだろ。


黒兎のせいだってことをさ。

何故って、黒兎さん速すぎるんだもん。


「しかしー」


「……これは決定事項です。異論は認めません」


やりたくない俺は、反論を試みるが、山百合さんは有無を言わせてくれなかった。

ひどい。


これに対して一瞬どよめく皆さんだったが、すぐに治まった。

隊長の――それも将軍中で一番の信のおける(らしい)――山百合さんの命令にこれ以上とやかく言うつもりはないらしい。


……つかさぁ、再三言ってるけども俺、初陣なんだって。

先頭とか死なせる気?

まぁ、死ぬのも一興だけど。

でも、生憎と死ねないんだ。


"死ぬな"

……もう五年ほどにもなる、昔に契った古い古い約束。

俺からの約束は破られたのに、俺は何故か破りたくなかった。

ま、今は関係ねぇわな



   ★ ★ ★



人を殺すコト。

それは意外にも簡単だった。

一人目は袈裟斬りで、二人目は喉への突き、三人目は首を跳ね、四人目は、……と二桁殺したところからわざわざ殺し方や殺した数を数えるの止めた。

死んだ奴のことなど、気にしていられなかったからな。

……いや、いちいち気にする必要なんてないんだが。


俺は黒兎の背の上で、ただただ槍を振るえば良いんだからな。

俺の思念を読み、黒兎は動き。

俺が思考しておらずとも、黒兎は動く。

人馬一体と言うべきなのか、黒兎に動かされている、と言うべきなのか。


とにかく今の俺は、俺たちは、負ける気など起きるはずがなかった。



取り残しは、まぁ、後ろに任せますよ。



   ★ ★ ★



Side 三人称


先頭を走って――勿論すれ違う奴らは全て斬り伏せて――いると、陽は見たような奴らを見つけた。

確認すれば、この前逃がした三人組であった。


なんとなく観察してみると、その中のアニキが、この賊どもの頭らしいことがわかった。

気が向いた陽は、逃げようとしていたところを捕まえることにした。

陽が、……再登場早すぎだろーが、と思ったのは余談である。




「って訳で、そろそろ死ぬ?」


「いやいや、どういう訳でだ!」


「そこにいるデブに聞いたらわかるだろ」


「どういうことだ、デク!」


アニキが振り返り、デクに問う。

間違えることなかれ。

デブではなく、デクである。


その間に陽は黒兎から降りた。



「なぁ、兄ちゃん。……また、見逃してくんねぇかな?」


デクから聞き、再び陽の方に身体を向ける。

陽が剣呑な目を向けて、腰に刺さっている――今の状況だと槍より使い勝手が良い――剣を抜いて切っ先を向ければ、アニキは慌てて取り繕う。


「勿論タダでとは言わねぇ! ……何が欲しい? 金か?」


陽は無意識の内に、剣の握る手に力を籠めていた。

アニキは如何に自分の身を守るかで精一杯なのか気付かない。


さらにアニキは言葉を紡ぐ。

……それが自らの首を絞める結果になっているとは気付かずに。



「そうだ! ご要望とあらば女でもいいぜ? 今いる上玉の奴は皆アンタに回してやるよ!」


「その金と女は、何処で仕入れた?」


「勿論、そこいらの邑からさ」


「ふ〜ん」


陽は右手に持った剣を挙げる――ゆっくりと、されど確実に。

その行為は、剣を肩に担ぐ過程であるように見えなくもない。

だが、後ろで見ていたチビとデクは気付いていた。

……明らかに殺める為の動作であると。

しかし、陽の一挙一動にあわせて、凍えるてしまうのではないか、と思えるほどに温度が下がっていくことに。

凍てつき、冷たい陽の右目に、恐れ、声すらもだせなかったのである。


「あっ、アニ……」


ピタリと陽の挙げる剣が止まる。

これ以上は流石に不味いと思ったチビは、懸命に声を上げようとした。

しかし、その瞬間、冷たい殺気が向けられ、口を閉ざしてしまった。

そして、窺うように陽を見た途端、チビは固まってしまわずにはいられなかった。


――射殺さんばかりの、酷く鋭く冷たい陽の右目と目があってしまっては。


「ぁ……ぃ……」


「なぁ、だから、なぁ頼むよ兄ちゃん!」


チビは身震いが止まらず、押し黙ってしまった。

よってチビの声は届かず、まだアニキは気付かない。

そればかりか、アニキはすがるように陽の裾をひき、頭を下げて未だに懇願する。


「頭、上げな」


(へへっ、ちょろいもんだぜ)


そう思いながら、素早く頭を上げるアニキ。

しかし、現実は甘くなかった。


――陽の右目が、それを雄弁に語っていた。


すぐにアニキも動かなくなってしまった。

いや、本当は動けなかった、が正しい。

まるで、本当に凍らさせられたかのように、逃げなければ死ぬ、と頭でわかっているのに、身体が固まってしまっていたのである。


「俺、正直どっちにも興味ねぇから。それに、アンタ前科たっぷりみてぇだし、……死ねよ」


(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!

だずげで、があぢゃーん!!)


口を開くことさえ出来ないアニキは、心の中で叫ぶ。

しかしその叫び、陽にとっては駄々漏れの言葉だった。

陽にしてみれば、ここまで動揺しきった人の心を見透かすことなど容易だったのだ。


陽が目を鋭く細める。

それにより、一気に温度が下がる。

そして……、


「……ちっちぇえな」


……陽は剣を振り降ろした。



   ★ ★ ★



陽は、(かしら)であったアニキの首級を持ち、来た道を帰る。

その道は壮絶だった。

全て一太刀で斬り伏せられた死体が、通った道を示すかのように並んでいたのである。


それを成した者。

それは、先頭をひたすら走った者。

名を馬白、真名を陽といった。



この戦いは陽が、"西涼の天狼"として台頭するための前哨戦であるかのように、陽のために用意された独壇場だった。



「なんだか、……虚しいよな」


そう思わねぇか、黒兎。

道中そう声を洩らし、自分の馬に問いかける陽。

されど、今回ばかりは黒兎の嘶く声しか聞こえなかった。




そう。

だから、山百合が、帰ってきた陽に付着した返り血が、陽の涙のように見えたのは見間違いではなかった。





陽は静かに語る。


「初めての戦で、相手は全滅。俺が殺したのは総勢33人。……意識して数えてた訳じゃなかったのに、未だに覚えてるよ」


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