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2話

「見えるか? あれが修道院だ」

 アイネイは一つの方向に指をさす。その先に見えるのは修道院? の様なもので、まだ輪郭がハッキリとしていない。辺りは草原でそれ以外は何もない。真ん中にその小さくボヤけている修道院があるだけだ。

 そんな変わり映えしない景色の中歩くのは森の中を移動するよりも疲れを感じる。自分たち以外の人の姿は見えない。


「修道院の周りに町はないのか?」


「あの城壁の中に修道院と、小さいが街が1つ。他の街へ行くとなると馬で半日はかかる。歩いてくる者なんかそうはおらんな」


だろうな──クラトスは胸の中でため息をついた。だったら馬か何かで俺の所まで来ればよかったのに。そうすればこんなに歩かなくて良かったものの、と少し腹が立つ。

 ずいぶん歩いたのか、初めはボヤけてよく分からなかった修道院だが、今は目を擦らなくともハッキリと姿を捉えることができる。日が暮れる前になんとかたどり着くことができそうで安堵する。

 門の前まで歩いきアイネイは立ち止まる。

 見上げる程に大きく立派で、それでいて重厚な門だ。左右には修道院を囲む様に大きく城壁がそびえ立っている。端から重厚な鎧を着た守衛と思われる男が歩いてきた。


「アイネイ・ニーロ。ただいま帰還した」


「お帰りなさい。お待ちしておりました」

 

 守衛達は敬礼をしてクラトス一行が中に入るのを見送った。

 門をくぐった先で周りを見渡す。店や、民家が立ち並ぶこの辺りはおそらく街だろうか。

 色は違えど同じ服を着た若い人、店の人、住人と皆クラトスを好奇な目で見ている。異邦人を見るかのように足先から頭までじっくりと舐めるように見る。この国には似つかない服装をしているのでよりそれを際立たせているのだろう。


「しかし、貴公がなぁ」


 アイネイはチラッと見て呟いた。クラトスは怪訝な顔をした。


「あぁ、いや。独り言だ」


 気にするな——と彼は顔を戻した。


「クラトス殿はいつから騎士に?」


「6つの時だ」


「そうか......それで。なるほど」


 アイネイがボソボソと呟いている。


「さっきから何を言っている。気味が悪い」


「悪い悪い。色々と気になってた事があってな」


 彼は苦笑した。


「ほら、あれが修道院だ」


 アイネイが立ち止まって指を差した。少し長い階段の先には、これまた大きな門が構えてあり、その奥には城のように高くそびえ立っている建物がある。


「さ、院長がお待ちだ。中へ入るぞ」











「よくぞ、クラトス・デスフィリアを連れて来てくれました。アイネイ」


 執務室の真ん中に大きくて豪華な装飾が施された机と椅子が鎮座している。そこに上品な声色で話す1人の女性が座っていた。


 彼は短く返事をして頭を下げた。


「そして初めまして。私はアテナと申します」


 アテナはクラトスに歩み寄り一礼をした。


「貴方が来てくれることを心よりお待ちしておりました」


 それはどうも——とクラトスは頭を下げた。


「何故、私がこの様な場所に?」


 場の空気に呑まれてかしこまってしまう。一つの動作をする事に表情が変わるアイネイでさえ、顔を固くしたままだから尚更。



「長い話なるでしょうからどうぞおかけになって」


 彼女は目の前の長椅子に手を差した。一礼してクラトスは座った。包み込む様な柔らかさで思わず力が抜ける。

 

「アイネイもおかけになって。長旅で疲れたでしょう」


「いえ、私なら平気です。お気遣い感謝します」 


 そうですか——とアテナは呟き迎えに向かいの椅子に腰掛けて、使用人に茶を持って来させるよう指示した。


「話したい事は色々ありますが......さて、何から話しましょうか」


 アテナはこちらを見つめて何か考えている様子だ。

 しばらくして小さく息を吐いた。


「端的に申し上げますと、貴方にはここ、メテオラ修道院にて教師をやって頂きたいのです」



「......はい?」

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