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竜に変身できる種族に転生したと思ったら、ちょっと違うみたいです。  作者: 秧摩 真羽


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【番外編】 バーベキュー(ルカ視点)

読んでいただいてありがとうございます。

ブックマーク・評価、ありがとうございます!

誤字報告も助かりました。ありがとうございます。


「おにーしゃま、おにーしゃまの前のお肉焼けました。

 食べましょう」


「うん。ありがとう」


 目の前の網の上で良い焼き色が付いた牛肉を箸でとってお皿にのせて、父上が作った特製のタレで食べる。


 美味しい。


 おいしそうな匂いが庭中広がって、さっきからグリルの上を眺めることができないセシルは、靴を脱いでわざわざ椅子の上に立って焼き具合を監視している。


「グレイ、そのおしゃかなひっくり返す!」


「はい、これですかね。

 セシル様、監視もいいですが、自分も食べましょうね」


「大丈夫。おとーしゃまが用意してくれましゅ。

 ノーラン、ベリュトラン、そのトウモロコシにお醤油塗って!」


 今日は妹のセシルのリクエストで、城のお庭でバーベキューだ。


 王宮に事情聴取に向かった日、セシルが先に熱を出して、数日王宮に滞在した。

 セシルが熱を出した次の日、僕も久しぶりに熱を出してしまったけど、セシルと父上と一緒に眠るなんてすごく久しぶりで嬉しかった。

 ノーランとグレイとマーサは同じ日に事情聴取で王宮に行ったけれど、帰りはセシルがお熱を出したから、先に帰ってもらって、しかも情けないことに僕まで熱を出してしまったものだから、父上は僕たちが回復するまで父上が昔使っていた王宮の奥宮の部屋の使用許可をもらって滞在していたのだ。


 そして昨日王宮からヴァルハランドの城に戻ると、城の皆が出迎えてくれた。

 セシルがもう自分の出自を知ったから、父上が恐れていたことが無くなった証だ。


 セシルは僕たちがルドンの街で拾った領主の子。

 見つけた時一緒にいたカイルが「この子は魔力が多い」と言っていたこと、セシルを守っていた女性に頼まれた最期の言葉と、クローデン王国では引き取り手がいなかったから、ルードリア帝国でも育つと思って連れてきた僕と父上の大事な宝物。

 でも、出自が違うことを隠すためにできてしまった不自然な城内の空気。

 でも、母上と実の妹ルシア、そして僕の乳母だった獣人のシーラを失った悲しみは、連れてきたセシルの愛らしさのおかげで薄れたのだと思う。


 あの事件から、父上は竜王族だからという力の過信を反省し、城内の警備の者を増やし、僕にも身の回りを世話する乳母と新たに護衛をつけるという話もあったけれど、僕はもう自分の大事な誰かが死ぬ、自分より弱い種族が、予期せぬ出来事で巻き込まれて死ぬ姿は見たくなかった。

 だから身の回りを世話してくれる乳母は必要ないし、自分が強くなるから護衛も遠出以外必要ないと父に伝え、その代わりに、セシルに竜王族の乳母をつけてほしいと伝えた。


 そこで白羽の矢が立ったのが、ノーランの妻で、ヴァルハランドの城の女中頭だったマーサだ。


 彼女はノーランと結婚するまでは、騎士として王宮に勤務していたから、それなりに力も強い。


 それにマーサとノーランは母と妹の葬儀の儀式でセシルの許から離れるときも大事に面倒を見てくれて、可愛がっていた。


 マーサが抜けた穴は新しい使用人たちに任せればいい。

 そしてセシルの周りはノーランとマーサと父上の乳兄弟のグレイだけにして、セシルには時が来るまで事実を知らせずに本当の娘のように育てよ、という父上のお達しがあった。


 あの聖人も操っていたというウラジミールのせいで、思いがけない状況でセシルと僕たちは血の繋がった家族じゃないと知られてしまったけど、今のセシルの顔を見たら、隠していた時の方が歪だったんだとなんとなく分かった。


 血が繋がった親子じゃない、兄妹じゃないと知った哀しそうなセシルの顔は思い出したら今も胸が締め付けられるし、泣かせてしまったことは本当につらい。

 でも、セシルが熱を出した日の夜、父上から、セシルの口から、知ってよかったと、血は繋がってなくても 今まで通りでいてもいいかと言ってくれたという話を聞いて、本当に安心して、僕は情けないけどまた泣いてしまった。

 しかも二日続けて感情が高まってしまったからか、その後僕も熱が出てしまった。


 でも、家族の絆は血だけじゃない、種族じゃないと、心の底から思えるようになってまだ数日だけど、今、僕の心はすごく穏やかだ。


「エーミール様、ご要望の品でございます。

 あと、足りないものはございますか?」


「大丈夫だ。ありがとう。

 料理長、そちらを任せてすまないが、皆で楽しんでくれ。

 警備の者達にも行き渡るように頼んだ」


 料理長は精霊族で、実はとても子煩悩だ。

 セシルが城に来てからは父上が僕たち家族の料理を作っているから存在が薄いけど、実は何気に僕たち子供二人を気にしてくれていたことは感じていた。


「はい。ありがとうございます。

 お嬢様、ご要望のラムチョップをエーミール様に焼いてもらってくださいね」


「ラムチョップ! 食べてみたかったんでしゅ!

 料理長、ありがとうごじゃいましゅ!」


 ほら。やっぱりセシルが今朝父上に急にリクエストしていた食材を用意しているし。


 そしてリクエストが適って喜ぶセシルが、思った通り勢いよく椅子の上から料理長の方に大きな頭を下げるので、料理長が照れている。


 ああ、そんなに頭を下げちゃ、椅子から落ちちゃいそうだよ。


「セシル様、椅子の上から落ちそうですから」


 すかさずマーサが側に張り付いてくれてほっとしたけど、セシルは時々ドンくさいから危険だ。


 篝火をたいて辺りを明るくし、虫が来ないように虫よけの魔法を展開した父上は、厨房で準備された食材を吟味しながら焼いていく。


 噴水と芝生と花壇を隔てた車止めがある方の砂利の上では城の殆どの使用人たちがグラスか皿を片手に、おいしそうに食事をしている。


 こちらの焼き網には牛・豚・鶏、羊の各種類の肉と焼き野菜、ホタテや白身魚がいい具合に焼けていて、鉄板にはガーリックライスにアーリオリ・オーリオ・ペペロンチーノと塩焼きそば、キノコや魚のホイル焼きがある。


 そこに料理長が持ってきた子羊の肉が乗る。そこにローズマリーの香りも加わって、食欲をそそる。


 バーベキューなんて初めてだ。


 しかも、場所は離れていても、城の使用人たちも一斉に一緒に食事をするなんてことも、僕も初めてだ。


 玉砂利の敷き詰められた一角に僕たち家族にノーラン、マーサ、グレイ、ベルトランがいる。そして向こう側の広い砂利の方は城の使用人たちがバーベキューをしている。


 ただ、あちらの方は普段料理をしている料理長を中心にバーベキューをしているのだから、あまり普段と変わらない気がするけど、皆が一斉に食べるということはしたことはないだろう。


 バーベキューをやりたいと言ったセシルの言葉を聞いたグレイが父上に相談したとき、その場にいたセシルが付け加えて「城の皆も一緒は無理でしゅか?」と言った案が採用されて、今このような光景になっているのだ。


 今までセシルの前では気配を殺し、姿を見せなかった使用人達が、遠くからバーベキュー奉行をしているセシルを見守っているのは、とても胸がほっこりするし、今までセシルに近寄らせないように指示していたことに対し、申し訳ないことをしたなと思う。


「おにーしゃま、ホタテ!

 しょの近くのホタテ取ってくだしゃい。

 マーサが好きだって聞きました」


「セシル様、自分で取りますから」


「だって、マーサは今ジュース準備してるでしょう」


「いいよ。ホタテ僕がとってあげる」


「セシル様、トウモロコシ焼けましたよ。召し上がりますか?」


「丸々一本もいりましぇん。

 ベリュトラン、半分こしましょう」


「はい、畏まりました」


 皆がセシルを中心に笑いながら楽しんでいる。


 こんな幸せな日常がずっと続けばいいのにと願いながら、僕はまた焼けた肉を頬張った。


 うん、美味しい!


読んでいただいてありがとうございます。

番外編はまだ季節が半袖の時期です。

寒くなりましたが、皆さま体調にはくれぐれもお気をつけてお過ごしくださいませ。

新しく連載を始めました。世界観は同じです。

よろしかったら読んでいただけると嬉しいです。

「規格外の魔力を持つご令嬢は、恋など楽しんでいる暇がありません。」

https://ncode.syosetu.com/n7480hj/

宜しくお願いします。

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