お母様はお母様
「おきさきしゃま、あの……」
「あらあら、どうしたの?
セシルちゃんはこれからもずっとエーミール様の娘でしょ?
気にしないの。
あなたがエーミール様のところに来てからずっと私達にとっては可愛いセシルちゃんなんだから。
陛下もカイルも上皇陛下達も皆そう思っているわ。
それに、あなたはクローディア様が守っていた街の領主の娘でしょう?
仮にあの日クローディア様が生きていたとしたら、きっと見つけたあなたを連れて帰って育てたと思うわ。
だって、自分が守った街で助かった子なんですもの。
だから、セシルちゃん。
あなたも今まで通りクローディア様をお母様と思っていていいと思うの。
確かに本当のご両親のことを知ることも大事だと思うけど、エーミール様やルカちゃんとこれから一緒にいるんでしょう?
だったら、クローディア様のことも、守ってくれたもう一人のお母様だと思っていてもいいと思うの。
多分、彼女もあなたからお母様と思って貰えたらうれしいんじゃないかしら。
あ、私のこともお義母様と呼んでもいいのよ?
カイルから聞いたわ。
可愛いセシルちゃんならぜひ、カイルのお嫁さんに来てほしいわ」
「お、おきしゃきしゃまっ?」
「ふふっ、お目目をそんなに開いたらこぼれちゃうわ。
ほんと、可愛らしいわねえ。カイル」
いつの間にか厨房から戻ってきたカイル様はにっこり微笑んで立っていた。
「ええ、母上。セシルは可愛いのです。
さあ、セシル、父上達がもうすぐご飯を持ってきてくれるよ。
鳥の出汁ので作った卵雑炊と、人参とリンゴのゼリーと、あと桃のスープだって」
「えと、あにょ、その」
いつもなら空腹時にご飯と聞いたら飛びついてしまっていた。
だけど今日はご飯よりもスイーツよりも、銀髪親子の「可愛い」攻撃を受けてどう返していいのかわからない。
しかも「お嫁さん」ワード付きだ。
どーしたらいーのー?
「あまりセシルを困らせないでください」
と、そこへ救世主のように現れてくれたお父様。
自らワゴンを押しています。その上には雑炊が入っていると思われる土鍋が!
「セシル、雑炊が食べたいと聞いたから、鶏と卵の雑炊にしたよ。鶏肉も食べられそうかな?」
「はいっ!
鶏肉食べたいでしゅ」
「おっ、いい返事だな。
セシル、お熱が下がってよかったな」
「ありがとうございましゅ。おじしゃま」
「よし、ちゃんと伯父様って言えたな。可愛い、可愛い。
見舞いの品に入っていた桃で冷たいスープを作ってみたんだ」
お父様の後ろから現れたのは、小さなゼリーの乗ったお皿と、薄い桃色のスープが入ったカップを持った陛下。
そこへ、ベッドルームから「いい匂いがする」とお兄様が目をこすりながら現れた。
「あら、ルカちゃん、起きたのね。大丈夫?」
「はい、お昼よりも楽になりました。
ありがとうございます。
セシルもお熱下がったんだね」
「はい」
「さあ、皆でご飯にしようか。
今夜はここで食べようかと思って持ってきたぞ」
「じゃあ、ルカちゃんセシルちゃん、こちらにいらっしゃい」
そしてその夜は、お兄様と二人皇后陛下にかいがいしく世話をされながら、夜は更けていった。
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