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竜に変身できる種族に転生したと思ったら、ちょっと違うみたいです。  作者: 秧摩 真羽


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夏空の下

感想いただき、ありがとうございました!大変うれしかったです。

また、誤字報告ありがとうございます!助かります。


「しゅごいっ、本当に直っていましゅ」


 朝食後、王宮へお勉強に向かうお兄様を見送った後、お父様に頼んで奥の塔に連れてきてもらった。

 まだ気温が上がらない朝のすがすがしい空気の中、マーサが付き添う中、お父様に抱っこされて中庭を歩き、直った城の姿を目にするが、昨日見た時とまったく変わらず、ステンドグラスも同じ柄だった。


「城の者が、グレイとノーランを助けた後、城が安全だとわかった後、すぐ直してくれたらしい」


「そうでしゅか。よかったでしゅ。

 おとーしゃま、……城の者が、ノーランとグレイとマーサ以外、私の側に来なかったのは、私が拾われた子だから?」


 城からお父様に視線を戻し、昨日気付いたことを問うと、お父様は視線でマーサを下がらせ、金色が混じった紫色の瞳を私から城に向けた。


「……それは、難しい質問だな。

 どちらかといえば私が嫌だったんだ。

 誰かがセシルは私の実の子じゃないと言って、奪っていってしまうのではないかと思うと、必要以上に近づけさせたくなかった」


「ノーランとグレイとマーサは?」


「あの三名は私がセシルを連れて帰った時、我先にと喜んで世話をしてくれた。

 それに、城の中に勤めるものの中でも私が特に信頼している。だからだ」


「おとーしゃま、じゃあ、いちゅ私に話しゅつもりでしたか?」


「そうだな、……時が来たら、セシルが私達みたいに変身できないとわかったら話そうかと思っていたなあ。

 私やルカが竜や動物に変身する姿をとても羨ましそうに見ていたから、自分もできるようになるとすごく楽しみにしている夢を潰してしまうなあと思って、一生懸命考えていたよ。

 遅くても五歳の誕生日までが限界だろうなと思っていた。

 事実を知ったら傷つくだろうとは思っていたが、それまでは本当の家族みたいに過ごせるだろうと思っていた。

 城の者にも周囲の知り合いにもセシルの耳には入れないように頼んでいたから、セシルは昨日まで知らなかったんだ」


「……そうでしゅか。

 おとーしゃまが言う通り、いちゅ知っても私はきじゅつきましゅよ。

 昨日、ベリュトランじゃない、ウラジミールから聞いてびっくりしました」


「セシル」


「でも、……昨日聞いてよかったと思いましゅ」


「セシル?」


 そう、いつ聞いたとしてもこの優しく料理がうまくてかっこいいお父様と天使のような将来イケメン確定のお兄様と家族じゃないと知ったら傷つく。


 傷つくのは確定だ。


 でも今回のこの事実は、誰もが私を傷つけたくてやったことじゃない。


 薄れてきた前世の記憶にある、他人から故意の嫌がらせやいじめや無視でできた心の傷とは種類が違う。


 お父様達は種族が違う私を助けた後、いくらお母様に死の間際に頼まれたとはいえ、私をクローデン王国の誰かに渡してもよかったはずだ。


 妻子と大事な使用人を失ったのに、赤の他人の言葉を守り私を大事に育ててくれたお父様。

 母と妹と乳母を失ったのに、心の傷を隠して優しい良い兄であり続けようと頑張っていたお兄様。


 二人の愛情の深さはきっと私では計り知れないと思う。


 昨日の今日でそう結論付けるのは早いかもしれないけれど、私が事実を知ったと聞いて、お父様もお兄様もすごく精神不安定になってしまうほど大事に思ってくれているのだ。

 それって、ものすごく貴重で、ありがたいものじゃないだろうか。


「おとーしゃま達がすごく私を大事にしてくれていりゅのは分かりました。

 おにーしゃまも今日本当は王宮行きたくなかったでしゅ。

 すごくすごく不安そうでした」


「ルカは、あの時、母も妹も自分の乳母も失っているのだ。

 昨日、セシルにあの日のことをあんなに詳しく話してしまったことをすごく後悔していたよ。

 でも、ルカはあんな辛いことがあっても、セシルがいたから、良い兄でいようと頑張ってきた。

 もちろん私もルカと同じでよい父であろうとしたし、これからもよい父でいようと思っている。

 だが、私もルカも、いや、……私達だけではないな。

 ノーランやマーサやグレイや遠くで見守っていた城の者も皆セシルが事実を知って城を出て行ってしまうのではないかと心配で仕方がない」


 不安そうに揺れる金色が混じった紫の瞳は、朝見たお兄様の瞳と同じだった。


「私、もう親子じゃないって知りましたよ」


「ああ、そうだな」


 再度「親子じゃない」と試すかのように伝えても、お父様が見つめてくる瞳の奥を見て、ほんの少し勇気を出した。


「でも、今まで大事に育ててくれたことも知ってましゅ。

 私もおとーしゃま達大事でしゅ。

 ……今まで通りでいてもいいでしゅか?」


 一緒に居たい。

 そう望まれている、自分も望んでいる。

 だったら言葉にして伝えなくては。

 そう、それがまるで恋の告白みたいに恥ずかしくても、相手と同じ気持ちだとわかっていても、自分の言葉を伝えなくては。


「おとーしゃま達と一緒に居たいでしゅ」

 

 言ってしまってからどんな反応が返ってくるか、ものすごく緊張したけれど、杞憂だった。


 私の言葉に一瞬の瞠目の後、ゆっくり綺麗に微笑んだお父様の笑顔を私は一生忘れることはないだろう。

 本当に心底嬉しそうにほほ笑んでくれたその顔を。

  

「もちろんだ。

 セシルは大事な大事な娘だよ。

 これからも同じように私を「おとーしゃま」と、ルカを「おにーしゃま」と呼んでくれるか?」

 

 愛おしさ満開の顔で私の瞳を覗き込むその顔とは裏腹に、照れ隠しで珍しく会話を茶化してきたお父様に苦笑いするしかない。


「おとーしゃま、確かにまだはっきり喋れましぇんが、しちゅれいでしゅ」


「すまない、すまない。

 ……ああ、良かった……小さなセシルが、自分からここから去ると言ったらどうしようかと思うと何も考えられなかった。

 ああ、良かった」


 夏空の下、私が「暑いでしゅっ」と文句を言うまで、ぎゅっと抱きしめ続けていたお父様の瞳から、静かに一筋涙がこぼれていたことは私の心の奥底にそっと秘密にしておく。

読んでいただいてありがとうございます。

申し訳ありませんが、次の更新まで一週間くらいお時間をいただきます。

しばしお待ちください。何卒宜しくお願い致します。


お話は一件落着の雰囲気ですが、まだ続きますので、最後までお付き合い願えると大変うれしいです。

気に入っていただけましたら、評価、ブックマークなどよろしくお願いします!

また、お恥ずかしながら、誤字脱字がありましたら、報告よろしくお願いいたします。

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