ちょっと強引では?
陛下はお兄様の頭を片手で撫でながら、お父様と私の方を向いた。
「エーミール、とりあえずここで話すのもなんだ、……お前の城は奥の塔が壊されたようだし、ノーランやグレイのことも心配だろう。
一旦城に戻って、明日、昼から王宮に来い。
そしてセシル、今日はあのウラジミールが言ったことは考えるな。
確かに私達もエーミールとセシルが本当の親子じゃないことは知っていた。
エーミールが見つけた子供を引き取ったことを了承したのは私だし、クローデン王国側に生存していた子供を引き取る旨を通達したのも私だからな。
クローディアとルシアを失ったことは本当に辛く悲しい出来事だった。
でも、セシルがいたおかげでエーミールもルカも、もちろん私もカイルも悲しみに心を潰されることなく救われたのは事実で、セシルを本当に大事だと思っている。
それは今までも、セシルが事実を知ったこれからも変わらない。
だから自分は血がつながっていないから、自分が家族じゃないとか、竜王族の家族にふさわしくないとか変なことを考えるなよ。
今日はセシル機転のおかげで、意外な誘拐犯が分かったんだから、その功績だけ喜べばいいんだ」
「そうだよ。父上が言った通りだよ。
ああ、可愛らしいお目目が真っ赤だ」
陛下とは反対の方から寄ってきたカイル様は涙ボロボロでぬれている私の頬を魔法で乾かし、困ったような微笑みを浮かべて私を見ていた。
「今日一番活躍したのはセシルなんだから、ね、父上」
「そうだな。
セシルが勇気を出してマーサをエーミールの許へ転移させなかったら、こんなに早くウラジミールが誘拐事件の主犯だともわからなかったし、ニンニクの臭いの話もしてくれなかったら、まだ私たちは奴と上空で戦っていただろう」
いつも通り接してくれようと陛下もカイル様も接してくれる。
でも、私は今まで親戚だと思って気安く接していたけど、これからどうしたらいいのだろう。
大事だと思っていると言われて、すごく嬉しかったけど、私が拾われた子だという事実が、血の繋がりがないことがとても悲しかった。
私が城でも限られた人しか側に近寄らなかったのも、お父様達が出かけるとき同行しても常にお父様達が離れなかったのも、それを隠していたからなんだと納得がいった。
「カイルしゃま」
「ん? なんだい?
その顔はまだあの男の言葉や、叔父上やルカと血がつながらないまま家族でいることが不安なのかな?
だったら、早く私の婚約者になって、将来はお嫁さんになって、家族になってしまえばいい。
すべて大丈夫だ。
父上も母上も喜ぶ」
すっごくシリアスな話をしていたと思ったのに、いきなりカイル様の口から予想もしていない飛躍した話が飛び出してきたものだから、思わず周りとカイル様の顔を交互に見てしまった。
「カ、カイリュしゃま?
しょ、しょれはちょっと」
多分皆、びっくりしてしまったのだろう。
ずっと俯いて声を殺していたマーサとベルトランも、様子を俯瞰してみていたロジオン様も、陛下に顔をうずめて泣いていたお兄様も、お父様と私の様子を心配そうに見ていた陛下も、私を抱っこしてずっと眉をハの字にしていたお父様も皆鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「皆、なんだい?」
皆の反応が理解できないと肩をすくめるカイル様。
いや、あの、この場合は皆の反応が当然かと……。
「いや、あの、カイル、お前ね、確かに家でセシルをお嫁さんに欲しいと言っていたのは知っていたけどね、時と場所とか、その……なんだな」
「父上も賛成していたじゃないですか!
それにセシルがあのウラジミールのせいで今日事実を知ってしまったことは仕方がありません。
一番大事なことは、いかにセシルがこのまま私、いや私達と一緒にいてくれるかどうかです。
それに、今日、セシルも皆もあのウラジミールのせいで大変な思いをしています。
難しい話は、落ち着いてからがいいと思います」
「いや、カイル、言葉の後半はお前の言う通り、それはそうなんだがね」
「カ、カイル、ダメだよっ!
セシルにお嫁さんの話はまだ早いんだからね!」
「なんだよ、ルカ。
ルカも将来セシルが遠くにお嫁さんに行ことは阻止するって言ってたじゃないか。
私ならそれほど遠くないぞ」
「それはそうだけど、僕はカイルがセシルをそんな風に思っていること初めて聞いたよ」
「はははっ、子供たちは可愛らしいな。
さあ、今日はみなウラジミールのせいで疲れているだろう。
俺も寝起きでいきなりこいつの退治で疲れた。
今日からしばらく俺は王宮に滞在することでいいんだな?」
「はい。ロジオン様は王宮に予定通り滞在してください。
そしてセシル、今日は疲れただろう。
もう悪いことは考えずにお休み」
「え?」
カイル様の衝撃発言とその後の大人たちの会話のキャッチボールをじっと眺めていたら、にこっと笑ったカイル様にいきなりおでこを触られ、意識がブラックアウト。
「……強引すぎるだろ」
意識が遠のく中、陛下の呆れる声が聞こえた気がした。
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