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竜に変身できる種族に転生したと思ったら、ちょっと違うみたいです。  作者: 秧摩 真羽


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家族というもの

「おとーしゃま……じゃない」


 そう、聞いてしまったのだ。


「セシル」


 うつむく私の視線にお父様の足の先が映った


「……私、おとーしゃまの本当の子供じゃないって聞きましゅた」


「セシル」


 俯いて硬く手を握って動かない私の体に、問答無用とばかりにお父様は強引に抱き上げた。

 辺りを見回すと、さっきまでの笑顔で一件落着といった安堵の空気は消え、皆の表情が強張っていた。


「ご、ごめんにゃしゃ」


「セシル、何に謝る?

 セシルは何も悪いことはしていない。

 逆に今日はセシルのおかげで悪い奴が退治できたじゃないか、なあ、エーミール」


「陛下、畏れながら私が操られていた時に……」


 何があったか状況説明しようとするベルトランの言葉をお父様が遮った。


「ベルトラン、何があったか私達はマーサから聞いている。セシルが何を知ってしまったかということもだ。


 セシル、……確かにセシルと私は血が繋がっていない。

 それを黙っていたこと、隠していたことは本当に悪かった。

 いずれ事実を伝えなくてはならないとは覚悟はしていたが、まだもう少し先にしてくれと周りに頼んでいたのは私だ。


 でも、あの日からずっと娘として育ててきた気持ちは本物だと思っているし、これからも大事な家族だと思っている。

 だから、私をまだお父様と思ってくれないか?

 ルカのことをお兄様と思ってくれないか?

 そしてこれからも私とルカと一緒に暮らしていかないか?」


 じっと私を見つめるお父様のところに、横からお兄様がやってきて、必死な顔で私の手を握った。


「そうだよ。セシルは誰が何か言っても僕の妹だよっ」


「おにーしゃ……」

 

 じっと見つめる紫の瞳がみるみる涙の幕を張っても、瞬きもせず、いつもの穏やかなお兄様とは別人のように声を張り上げて言葉を続けた。


「そう、僕はセシルのお兄様だよ!

 血は繋がってなくても、これからも僕はずっとセシルのお兄様なんだ。


 あの日、僕は違う部屋でお昼寝したまま気が付かなくて、目が覚めたらお母様の部屋で乳母のシーラは死んじゃってて、母上もルシアも居なくて。

 僕がお昼寝していなかったら、母上もルシアも死ななかったかもしれない」


 お兄様は急に涙を浮かべながら懺悔のように言葉を続けた。


「ルカ、あの時はまだお前も小さかったし、同じ部屋に居たらお前も誘拐されて死んでいたかもしれないと、気にするなと……」


「父上は黙ってて!

 あの日のことを思い出すと、僕はすごく、すごく苦しいんだ。

 でも、セシルがいたから、母上とルシアがいなくなっても僕は頑張れたんだ。


 あの日、お母様たちがいないってわかった後、慌てた僕は王宮の父上のところに行って、父上達と一緒に母上達を探しに付いていった。

 クローデン王国のルドンの街に着いたら、見たこともない酷い街だった。

 道端とか窓とか、見える範囲にたくさんの人達が死んでた。

 とにかく、母上を助けなくちゃいけなくて、すぐに母上の側に行った。

 でももう母上は、すごく弱ってた。

 聖人を倒したけどルシアはダメだったと言って父上の腕の中で泣いて謝って、そして、僕を見て「強くなるのよ」って言い残して、僕が何か言う前に消えちゃった。

 

 母上も妹もいなくなっちゃって僕は泣きたかったけど、でも、カイルが建物の奥に生きてる人がいるって、消えちゃった母上の竜鱗が見えるって言ったから、たくさんの死体が転がってて、怖くても、泣きたくても、母上の形見があるならと思って、生きてる人がいるなら助けなきゃと思って、殆ど壊れて崩れ落ちそうな建物の奥に行ったんだ。

 中に入ったら、扉の前で死にかけても立ちふさがって「教団に娘は渡さない」って言って剣を片手に部屋を守ってる血まみれの女の人がいたんだ。

 でも、僕らがルードリア帝国からきた竜王族だってわかったら、すごく安らかな顔で微笑んで、竜鱗の加護で辛うじて体に魂が宿っていたのに、急に首の竜鱗のペンダントを外しはじめたんだ。

「娘を、セシルと代々伝わる竜鱗をお願いします」と言って、「夫の側に行かせてね」って呟いてそのまま息を引き取っちゃった。

 

 部屋の中には、言葉通り、籠に入ったセシルがすやすや眠ってた。

 僕は母上と妹がいなくなっちゃったけど、この子は父上も母上もいないんだと思ったら、涙が止まらなかった。

 でも、そんなときに眠っていたセシルが籠に触ってた僕の手の指を、あったかい小さな指で握ったんだ。

 手を握ったのは偶然かもしれないけど、その時……この子は僕が守っていくって思ったんだ。

 たとえ種族が違っても、セシルを見つけたのは僕達だし、セシルの母上から「お願いします」って頼まれたのは僕達で、……僕はっ、僕はっ、誰がなんて言っても、血がつながってなくてもセシルのお兄様なんだ。

 だから、だからっ……」


 言葉が詰まったお兄様の紫色の瞳から溜まっていた涙がぽろりと一筋零れ落ちた。


「そうだ。

 ルカもセシルとエーミール三人で家族だと思ってるよな」


 陛下の手で感極まってしまったお兄様は、肩を抱き寄せた陛下に抱き着いて顔をうずめ今まで聞いたこともないような声で号泣した。


読んでいただいてありがとうございます。

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