私、弱すぎるのかしら
巨大な竜たちは地面に着陸した途端、何やらどっかから運んできた四角い大きな木箱をウラジミールが閉じ込められている水の檻の横にドーンと放り投げたものだから、木箱のミシミシとひび割れる音とともに一部の木の欠片が衝撃で飛び散り、土埃が舞った。
そして少し離れた場所で見知ったキラキラしい姿が現れた。
「セシル、無事でよかった」
視線が合ったそれぞれ四人がマーサに抱っこされている私のところへ駆け寄ろうとしたけど、ロジオン様に止められた。
「悪い。お嬢ちゃんが大事なのはわかっているが、あっちが先だ。
操られている男の体がそろそろ限界に近い。
ウラジミールが檻を破ろうと無茶をさせて魔力を使いすぎている。
ミカエル、エーミール、こっちを手伝ってくれ」
「わかった」
運ばれてきた朽ちかけの木箱を一瞬で粉砕したロジオン様に声をかけられたお父様達は、一瞬私の様子を伺ったけど、私が頷くとすぐに彼のほうへ走っていった。
だって、ベルトランをあのウラジミールという自称吸血鬼の王から取り返してもらわなくてはならないんだから。
しかし、お父様達に近いほど能力が高いベルトランを支配しちゃったりできたウラジミールをやすやすと抑え込めてしまう力といい、北の大公のお父様だけじゃなく、皇帝陛下を呼び捨てするロジオン様っていったい何者?
「ロジオン、間に合ったようでよかった。恩に着る」
「いや、もとはといえば、あれに温情をかけた昔の俺が悪かったんだからな。
お嬢ちゃんは頑張っていたぞ」
さて、粉砕された木箱の中から現れた物は鎖でぐるぐるに巻かれた石棺だった。
その石棺が現れた途端、銀の薔薇で覆われた水の檻が揺れ、あたりに水滴が飛び散った。
「ウラジミールの意識はまだ元気みたいだな。
エーミール、ルカ、カイル、あの草原向こうの森に見えるトネリコの木から槍を削って準備してくれ。
最低六本だな。
急いでくれ」
「わかりました。では森で木を取って削ってきます。
ルカ、カイル、行こう」
「はい、父上」
「はい、叔父上」
お父様達は山へ芝刈り、じゃないトネリコの槍を作りにその場から一瞬で消えた。
「で、私は何をやればいいんだ?」
「棺の解除の手伝いだ。棺にかかっている鎖をほどくから、解いたらその水の檻の水を抜き檻は壊して珊瑚の精を保護してほしい。
まあ、十中八九、鎖を解いたら棺を壊して中から出てくると思うがな」
「おいおいおい、中にいるのは三百年前に大半の同族の吸血鬼を屠って力を得たというあのウラジミールだろ?」
「ああ、そうだ」
「だったらさっさと棺ごと消してしまえばいいじゃないか」
「お前、あの珊瑚の精から早くあれを本体に戻してやらないと、あの精は死ぬぞ?
これからあれの意識をこちらに移すからな」
「でも体から出てこなかったらどうするんだ?」
「自分の体に執着しているから大丈夫だ」
「わかった」
ロジオン様は棺の前に立ち何やら手をかざし、陛下は水の檻の前に立ち、中の様子をうかがった。銀の薔薇の蔓からのぞく水の檻からは、水しぶきが飛び散る。
「おっと。ロジオン、まだかなり元気だぞ」
どうやらまだウラジミールはベルトランの体を使って反撃しようと暴れているらしい。
「そりゃ、逃げたいだろうからな。
水でこっちの話は聞こえないし、保有している空気は少ないし焦っているだろうな。
しかし、なぜ転移魔法でもっと早く来なかった?
手間取ったか?」
「あの箱はお前がかけていた術のせいで、転移魔法の越境許可があっても使えなかったんだよ。
おかげで飛ぶしかなかったんだ。
こんな全速力でノーザンバランドの最北端から飛んだのなんて初めてだ」
「いい運動になっただろう」
男性二人の緊迫感のないやり取りに思わずマーサの顔を眺めてしまった。
北の塔が壊され、必死でマーサと逃げ、ノーランとグレイの心配をし、ウラジミールの長い話から衝撃な事実を知って、マーサに救援を頼んでいる間に危機一髪状態になって、あと少しで死ぬという状態だったのに、今、目の前では男性二人が暢気に喋っている……。
「マーサ、私達、弱しゅぎるのかしら」
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