助かった
「セシル様ッ」
そして、空を眺めていた私の背後から、いきなり現れて抱き上げてきたのは、転移魔法でお父様のところに行ったと思っていたマーサだった。
「マ、マーサ?
大丈夫でしたか?」
「ええ、ええ。
エーミール様のところにロジオン様がいらっしゃったのですよ。
ご無事でよかった」
ぎゅうっと抱きしめてきたマーサの頬は涙にぬれていた。
きっと間に合って安心したんだと思う。
つられて私もほろりと涙が流れたが、マーサの胸に顔をうずめて気が付いた。
なぜかマーサはニンニク臭くなかった。
なぜ?
彼女も同じニンニクいっぱいの焼肉だったはずなのに。
私も食後水魔法で歯磨きしたのに。
「ああ、やっと来たか」
私の場違いな疑問を打ち消すかのように、こちらを振り向きもせず、マーサの気配を察して声をかけてきたロジオン様。
その声に、マーサが私を抱えたまま頭を下げた。
「ロジオン様、ありがとうございます」
「いや、礼には及ばん。
その子と一緒に、安全な場所にいてくれ」
「はい、畏まりました
セシル様を、本当に、本当に良かった」
「はい。ロジオンしゃま、助けてくれました。
マーサ、ロジオンしゃま、とっても強いのよ」
「はい。ロジオン様はとても強いお方です。
これであの胸糞悪い吸血鬼も退治され、ベルトランも助けていただけますね」
私を抱っこしているマーサが感慨深げに呟いた。
「どうせならあの男の犠牲になった方々や、操られ踏みにじられてしまった方々の分の恨みも晴らしていただきたいです」
私の無事を確かめながらも、さっき聞いた胸糞悪い酷い話を思い出しているのだろう。
「セシル様、居なくならないでくださいね」
ぎゅっと抱きしめてくる腕が強くなって思い出した。
「でも、私……」
そこで、思い出してしまった。私はマーサたちが本来仕えるはずだったお父様の娘じゃないことを。
「セシル様、今それを考えちゃメです。
さあ、エーミール様達がもうすぐいらっしゃいます。
それまで待ちましょう」
マーサに促され、空を再び見上げた。
「マーサ、ねえ、あの竜は……あれは……、おとーしゃま、おにーしゃま、カイルしゃまに……陛下ッ?」
どんどん近づいてきた黒い塊が翼を広げた竜の姿だとわかり始め、竜は黒、紫、金色が二頭……、どう見ても私が知っている四人の竜の姿にしか見えない。
そしてその竜たちは鱗を煌めかせながら、一目散にこちらに急降下してきた。
読んでいただいてありがとうございます。
気に入っていただけましたら、評価、ブックマーク、応援よろしくお願いします。
また、お恥ずかしながら、誤字脱字ありましたら、報告よろしくお願いいたします。




