お幾つですか?
は?
なにィっ!
「しゃ、三百年?」
思いがけない皇帝陛下の言葉に、目が飛び出るかと思ったよ。実際、口にしていたタルトを吹いちゃったよ。
ばっちい。
「おとーしゃ、ごめんなしゃい。汚しちゃった」
「大丈夫だよ。
セシルはクローディアの話をほとんど聞いたことがないからびっくりしたね。
兄上、セシルにはクローディアの話はほとんどしていないのです」
「エーミール、それは良くないと前も言っただろう。一応母親はクローディアなのだから」
「ですが……」
「皇帝陛下、おかーしゃまは三百年以上生きていたのでしゅか?
え? 皇帝陛下もおとーしゃまも幾つ?」
そういえば私、カイル様とお兄様は八歳という以外知らないぞ。
「おっと、そこからか。
セシル、教えてほしかったらこの城では皇帝陛下じゃなく、伯父様と呼びなさい」
「え? おじしゃま?」
チョロい私は首をかしげて請われるまま答えると、皇帝陛下は両サイドのお兄様とカイル様の肩を抱えて、すごく嬉しそうに笑った。
「かわいいなあ。
セシルはルカとカイルが同じ年の八歳とは知っているんだな?」
「はい。知ってましゅ」
「寿命が長くて力が強い種族ほど子供が少ないことも教えてもらったかな?」
うんうん、だから力が弱い人間の出生率と比べて圧倒的に子供が少ないんですよね。
夫婦で子供が生まれるのはせいぜい多くて数百年かけて二人で、三人目が生まれるところは奇跡に近いらしい。だから私とお兄様みたいに年が近い兄弟なんてここ数百年なかったそうだ。
だから皇太子のカイル様はまだ兄弟がいない。
そうなるとカイル様は妹がいるお兄様がうらやましいらしく、遊びに来るとお兄さんごっこがやりたいのか私に滅茶苦茶かまいたがる。
いや、目の前の陛下もだ。
「じゃあ、伯父さんのお膝の上においで」
陛下の問いに頷くと、満面の笑みで目の前に陛下の両腕が伸びてきて、お父様のお膝の上から私を取り上げた。
おうっ、黒髪のお父様と違うキラキラブロンドのイケメン陛下、目が潰れそうなくらいまぶしいぜ。
「兄上!」
取り上げられたお父様が不満顔で陛下を見つめ、私の食べかけのタルトを皿に戻した。
「いいじゃないか。滅多に会えないのだから」
「そういって、いつも来るたび私からセシルを取り上げるじゃないですか」。
「お前は心が狭いねえ。少しの時間だからいいじゃないか。
おっと。前より大きくなったな。
セシルはもうすぐ三歳か」
「はい。だから、おじしゃまはいくちゅ?」
陛下の膝の上なので下から見上げて質問すると、ぎゅーっと羽交い絞めにされた。
ギブッ、ギブアップだ!
く、苦しいっ!
ペンダントの石がお腹を押して食べたタルトが胃から飛び出る!
バンバンその腕をたたいてもお父様より逞しい腕はびくともしない。
「父上、セシルが苦しがっていますよ。か弱い女の子なんですから」
カイル様、ナイスフォロー。
しかもか弱いだなんて。うれしくて惚れちゃうわ。
あー、しかし、苦しかった。締め上げられてせっかく美味しく食べたスイーツ戻しちゃうかと思ったよ。
腕を緩めてもらえて、ほっと一息。
普段座ったことがない膝の上はお父様のお膝の上と違うので、安定できる位置を探して座りなおした。
「ああ、すまんすまん。あまり愛らしくて。
そうだ、私の歳からだったな。
私は生まれてもう数えるのが面倒だが四百三十三年だ。
エーミールはまだまだ若輩者で三十三歳だ。ちょうど四百歳離れている」
「よ、四百?」
安定ポジションを探して落ち着いたというのに、驚愕の歳の差発言を聞いて、思わずお膝からずり落ちそうになっちゃったよ。
確かに長寿と聞いていたけど、あまりの歳の差に声も裏返っちゃうよ。
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