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竜に変身できる種族に転生したと思ったら、ちょっと違うみたいです。  作者: 秧摩 真羽


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皇帝陛下もやってくる

 皮をむかなくても食べられる明るい黄緑色の瑞々しい輝き。


 昨年の夏、まさかこの世界にも同じものがあるなんて、この存在を知った時私は名前も知らない神様に感謝したよ。


 もちろん、そんなシャインマスカットをお値段気にせず食べても心配ないこの境遇にも!


 ああ、大好き、シャインマスカット様!


 その下にサクサクのタルト生地。


 幼児のお口ではタルト生地とマスカットを同時には頬張れないので、交互に口に運んでいる。視界に入れるのは輝くマスカットと、バターが香るタルト生地のみ。


 あとは辛うじてお口に運んでくれるお父様が視界に入るが、そのお父様はいつもの笑顔の餌付け時間とは違ってちょっと渋い顔だ。


 なぜなら、カイル様の後から私が目を離せない原因のタルトを作ったお方がお兄様と一緒にご登場なさったからだ。


 そしてその方は今、私の真向かい、すなわち執務室の中にある来客用のソファに悠々と腰かけている。


 ちなみにノーランは下がり、今は部屋の隅にグレイとマーサが控えている。


「ああ、もぐもぐと可愛らしいな。

 私が作ったタルトもおいしいかな?」


「おいしいでしゅ、皇帝陛下。しゃいこうでしゅ。

 ありがちょ」


 おっと、つい目の前に差し出された次のマスカットの輝きに負けていつもの通り噛み噛みのお礼になってしまったが、それはご愛敬と許してもらおう。


 ん? いつ噛み噛みが治るんだ? って? それは大きくなれば治るのだ。


 お父様の膝に収まって無心でマスカットのタルトを頬張っている私と、ローテーブルを挟んで対面するように座っているのは、お父様の実の兄、このルードリア帝国の皇帝陛下だ。皇帝陛下の両脇にはカイル様とお兄様が座っている。


 輝くばかりの金髪にカイル様と同じ琥珀色に金をちりばめたきれいな瞳、ちょっと日焼けした肌、お父様よりちょっと鍛えた感があるがっしりとした体つきで、顔立ちはお父様の兄上だけあって超イケメンの皇帝陛下だ。


 だが、在位三百年記念というように御年は三百歳を超えている。


 いったい若いまま何年保つねん!


 そんな突っ込みは置いといてだが、今の今まで皇帝陛下の趣味がお菓子作りって知らなかった。お父様は料理が趣味だし、いったいこの兄弟って何ですか?


 さっき梨のゼリー食べたけど、どちらも滅茶苦茶おいしいよ!


 私の記憶が確かなら、前世でストレス発散とやけっぱちで某高級ホテルに行って食べたスイーツとか、有名パティシエ店のお高いスイーツに負けないよ! 


 尊敬の眼差し付きでキラキラ皇帝陛下にお礼を言うと、にっこりと返された。その目じりの笑い皺がセクシーざんす。


 私は例の助け出された時以来ルードリアの王宮には行ったことがないのですが、皇帝陛下御夫妻もカイル様や上皇ご夫妻と同じくお忍びでいらっしゃいます。


 ただし、皇帝陛下はお忙しい方なので今まで会った回数は数回ですが。


「そうか、最高か。それは良かった。

 昨日イリアが王宮の農園で梨とシャインマスカットを狩ってきたから、さっそく作ろうと思ってな。

 今回はお昼休憩にルカとカイルがタルトの飾りつけを手伝ってくれたんだ」


 イリアというのは皇后陛下のお名前。

 銀髪にエメラルドグリーンの瞳の持ち主で、小柄で華奢な女性だ。


 ただ、竜王族の方ではなく、以前お会いした時にご本人の口から、風の精霊の一族とおっしゃっていたような……。


「カイルしゃま、おにーしゃま、おいしいでしゅ。

 食べないの?」


「僕たちは王宮で食べたから大丈夫」


「ああ、心配しなくていいよ。

 セシルが食べる姿を見るだけで癒されるから。

 ねえ、父上」


「ああ、可愛いなあ。女の子はクローディアの時もそうだったが、男の子とは違った可愛らしさがあるね。

 とはいってもクローディアの子供時代から三百年以上たつけどね」


読んでいただいてありがとうございます。

気に入っていただけましたら、ブックマークと応援よろしくお願いします。

また、お恥ずかしながら、誤字脱字ありましたら、報告よろしくお願いいたします。

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