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旅に出なきゃ、やっぱりダメ?

「アンタらさぁ。自分勝手が過ぎない?

俺、美味しくご飯食べてるの、見て分かるよね?

そんな時に、モグモグしてるときにさ!

話しかけられて!

俺抜きで話題進められてさ!


バカじゃないの?!


…あ、すんません店主さん。あの…おかわりいいっすか…?

すっごい美味いっすこれ…。」



俺は激しく憤りながらも、パスタのようなもののおかわりをいただいて、夢中で頬張った。いやホント店主さんに申し訳ない。

ひとまず、女性陣には座ってもらった。

立ったままギャーギャー騒がれるのは落ち着かない。


「あ、あのですね…その、道中急いでおりまして…つい…。」


ミレットという少女は、俯きながら眼線だけ上げ、こちらを窺うように呟いた。

それを睨みながら、俺はパスタをすする様を、左手で指差して見せた。


「ご、ごめんなさい。」


俺は遮られためちゃくちゃ美味しい食事を、再度、心から堪能していた。

それをまた邪魔するやつは、誰であろうと許せない。

パスタだけではない。

なんかポトフっぽいものとか、ポークソテーっぽいものも絶品だ。

美味い、なんて美味いんだ!


「あ、あの、勇者…さん。ず、随分美味しそうに食べるんだ、ねぇ。」


「はい、師匠…。」


ギロリ、と、シャミィと名乗った女性に視線を向けた。察するに、だいぶ慌てて

いるようだ。弟子の方は…何て名前だったっけ?

だが、ようやく俺は腹一杯、満足のいくまで食事を楽しみ、フォークっぽいものとナイフっぽいものを置いた。

異世界だっていうのなら、もっとこう、違う感じの道具があっても良さそうなものを。


「はぁ~…ご馳走様でしたぁ…。

で、何だっけ。俺に同行したい、って話だっけ?」


俺は膨れたお腹をポンポンと叩きながら切り出した。


「そ、そう。アナタ、間違いない、伝説の勇者。この世界、救」


「やだ。俺ここで暮らすわ。ちゃんと仕事はするから。」


間髪を入れずに、俺は答える。

すると、どうだろう。目の前の女性陣はみんな「えっ」って顔をした。

にしても、どうしてこの人たち、妙に露出多いの?

戦うんだよね?防御力とか、そういうのは?

一番防御力高そうなのが弟子の人って、どうなの?


「なんで何の縁も無い世界を救わなきゃなんないのよ。そもそも、ここの状況知らないしさぁ、俺。いきなり放り出されただけだから?」


俺はため息をつく。


「そ、そうでしたか!異世界から来られたなら当然ですよね?!

 でしたら、私がご説明いたしましょう!」


…なんだか腑に落ちないが、ひとまずは置いておこう。

説明だけでも聞いておかねば、今後に差し支える。


「この世界『ムウ』は、太古の昔、神々が、安寧の大地をお創りになる目的で…つまり『楽園』を目指してお創りになった土地です。魔物の存在に怯えることは日常的にあるものの、人々は神々を信仰し、平和に過ごしておりました。

しかし近年、闇の司祭・セインという者が、『神殺しの団』という教団を組織し、神々に叛乱を企て…世界を混沌へと導こうとしているのです。

古来より


『ムウの世が乱れし時、遥かな地平より絶対の力を携えし勇者来たれり。

混沌を打ち払い、大地に真の光を灯すであろう。』


という伝承がありますので、アナタがまさに…。」


長いな。まぁ想像してたけど。

それしても、やっぱり腑に落ちないんたよなぁ。

やはり、全て鵜呑みにする俺ではない。


「…いくつか聞いてもいいかな?」


「はい、答えられる範囲になるかもですが。」


「じゃ。何から何まで神々が作ったの?」


「え?さ、さぁ…あくまでも伝承なので。」


「ふぅん…そう。で次ね。闇の司祭とやらは、なんで混沌に導こうとしてるの?そもそも混沌って?」


「あの、えっと、私は闇の司祭に会ったことないので、そこまでは…。」


「んー、まぁそっか。それじゃ最後。

俺がその『勇者』であるって証拠は?」


「先ほどの『紅蓮の魔術』ですよ!あんなに強力な魔導は初めて見ました!」


強力な力=勇者、って結びつけるの、短絡的でどうかと思うんだけどな…。

実際、インチキくさい女神に

「勇者」って烙印押されちゃってるから、まぁ間違いないんだろうだけど…認めたくないなぁ。面倒だもん。


「そうさ!あの力こそ『勇者』の証!

アタシは一眼見て確信したよ!アンタが勇者だ、ってね!な?ナナ。」


「はい、師匠。」


「あの炎、真の光灯す、必ず。世界、正しい方向、導く、アナタ。」


なんか、乗せられてる感すごいんだよな。イヤなモンはイヤだし…。

学校行かなくていいのは嬉しいかもだけど、俺はのんびり暮らしていく方が性に合ってるんだけどなぁ。


4人の女性たちに丸め込まれようとしている中で、俺はひとり、目をぎゅっとつぶり、顎に手を当て俯きながら、うんうんと唸っていた。イヤなモンはイヤだ。


イヤなモンはイヤなんだ!



よし、断ろう。

 


そう思い立って、カッと眼を見開いてみる。

すると、再び周囲の光景は全てフリーズしていたのだった。



「…またか。」


「『またか』じゃありません!何度手を煩わせれば気が済むのです!!

女神をそう何度も光臨させて、贅沢にも程がありますよ!」

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