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私の記憶を探してください  作者: 海原鈴
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紅一点からのお願い

「あーー」


大学の食堂で叫んでいるのは鈴春蓮(すずはるれん)

ちょっと変わった大学生だ。

変わったといっても人より頭の切れが良いと言われているだけ。


「どうしたんだよ。蓮ちゃん?」

「いやさ…1年半たった今でもHR社が造ったアンドロイドの情報が何1つ入手できてないんだよ……」

「はは、まぁ、どんまい」

こいつは桜井悠希(さくらいゆうき)中学からの腐れ縁で親友だ。


「なんだよ…」


と、ため息をつきながら明日までに提出しないといけないレポートの作成に移った。


数分して悠希のスマホが鳴った。


「あっ、俺、そろそろ帰るは」

「え?今日バイトだっけ?」

「残念、彼女とデートでーす」

「ちっ、リア充め」

悠希は俺のその言葉に耳も向けず食堂から出ていった。


「なんだよあいつ。いーなー悠希には彼女いて」


これまで彼女がいない俺。

なんでこうにも彼女ができないかな。

そんなことを思ってる自分に悲しくなり場所を移動しようとした時、大学の紅一点である花宮楓(はなみやかえで)に声をかけられた。




「あの…」

「はっ、はい!」

急なことに思わず声が裏返る。


「あっ、ごめんなさい。急に声をかけてしまって」

「いっいえ、なんですか?」

「……お願いがあって」

「お願い?」


花宮さんは申し訳なさそうな顔をしながら頷いた。

だが俺は、こんな美人に“お願いがある“って言われて心の中は舞い上がっていた。


「えっと…場所移動しようか?」

「はい」


周りにいる男性人の目線が気になりながらも大学の近くにあるカフェへと移動した。



カフェに入店して案内された席へと座る。


「……おっ、お願いとは?」

「あの、えっと、引かないでほしいんですか…」

「うん」

「私の……記憶を探してほしいの」

「え?」


思わず間抜けな声が出た。

一瞬では理解できず黙ってしまった。


「引きましたよね…」

「いや、引いてはないけどびっくりはした」


でも、花宮さんが言ったことは冗談ではないと感じた。

真面目な彼女がそんなことを言う人ではないことを知っているから。


「分かった」

「良いの?」

「うん、冗談を言ってるとは思わないから」

「ありがとう!」

花宮さんは嬉しそうに俺の手を握った。

「う、うん」

急なことに俺の心臓は動機が激しくなっていった。


「記憶を探すって何の記憶を探すの?」

「両親の記憶を探したいんです」

「両親の記憶?」

「はい。えっと、その、私、小さい頃交通事故にあって一部の記憶がないの。だから、両親の記憶を探したくて」


花宮さんは歯切れが悪そうに応えた。

あんまり言いたくなかったのか?と、少し申し訳ないと思いながらも聞かないと探すにしても探す記憶が分からないと意味がない。


「なっなるほど。顔も覚えてないってことだよね?」

「うん、顔も名前もさっぱり」

「うーん、探すと言ってもどう探すか…」


出だしからつまずいてしまい頭を抱える。

少しでもなにか思い出せたなら……


「花宮さん」

「はい」

「時間がどれだけかかっても良い。家族のことで思い出せる事があったら連絡してよ」

「分かった。本当にありがとう」

と、花宮さんと連絡を交換して俺たちは解散した。




次の日、大学に向かった俺はすぐに多くの男性人に囲まれた。


「なぁ、昨日花宮さんと何話してたんだよ!」

「あの、紅一点に声をかけられるなんて」

「告白されたのか!」


質問攻めされ思わずため息が出そうになる。

こんなに男性に囲まれると暑苦しい。


「たいした話してないし、告白もされてない。ただ、今度提出する課題何か聞かれただけだよ」

「ほんとか?」

「ほんとだよ」


そう応えそそくさに席についた。

話せるわけない。

記憶を探してほしいとお願いされたことなんて。


「蓮ちゃん、花宮さんに声かけられたんだね」

「まぁ、課題聞かれただけなんだけどね」

「ふ~ん」

「なんだよ」

「別に」

悠希の反応に不思議に思いながらも講義が始まった。



「はぁ…疲れた。」


1時間の講義が終わり、サークルの教室へと向かった。

大学1年生から入っている機械やAIに興味がある人が集まっているサークルに入っている。

教室の扉の前に着くと中から騒がしい声が聞こえてきた。


「どうしたんだよ。こんな騒いで」


そんなことを言いながら“ガラガラ“と扉を開けるとお茶を飲んでいる花宮さんがいた。


「はっ、花宮さん!?」


なるほど花宮さんが来たから騒いでいたのか。

騒ぐのは分かるけど……

どこから出てきたのか分からないお洒落なお菓子とお洒落なカップがあった。


「花宮さん。どうしたんですか?」

「えっと、その少し思い出したことが」

「わっ分かった。とりあえず教室出ようか」

「はい」


教室を出て少し離れた出窓に座った。


「サークルに来ずに連絡してくれれば良かったのに」

「ごめんなさい。講義中だと思ったから」

「あぁ、そうだったんだね。で、思い出した事って?」

「えっと、入院してた病院の名前を思い出したんです」

「病院の名前…。あっ、病院の人に花宮という名前の人が入院したか聞けばって両親も交通事故に?」

「うん」


両親も交通事故にあってたのか。

病院に行って聞いてみれば少しぐらい情報が獲られるか。


「今から、行く?」

「えっ、講義はもうないの?」

「うん。ないよ。」

「ありがとう。病院の名前は“桜井病院“です。」

「分かった。行こうか」


サークルの部長に休むことを伝え大学を出ていった。

桜井病院ってここら辺では有名な市立病院だよな。


桜井病院に向かっている最中、ふと花宮さんを見た。

彼女は少し険しそうで、悩んでいる顔をしていた。


それから数十分。

桜井病院に到着した。

「あっ、花宮さん。小さい頃交通事故にあったって言ってたけど、何歳ぐらいの時?」


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