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IF  作者: 小塚彩霧
9/25

9.受験

いよいよ2月14日。受験の日だ。

受験に向かう前に家の前であっちゃんに会う。


「あっちゃん、おはよ。」

「おはよ。」

「これ、あげる。帰ってから食べてな。」


握っている手を差し出したら、あっちゃんが手のひらを出したので、握った手から落とす。


「…チロルチョコ?」

「だって、作る暇もなかったし、あんまり大きなチョコやったら持って行くのも大変やろ?」

「ははは、そやな。ちょっと運貰えた気がする。頑張るわ。」

「うん。私も頑張る。」

「じゃあな。」

「うん。」


◆◇◆


試験開始のチャイムが鳴る。

一斉にパラパラと問題用紙をひっくり返す音が響く。

最初の試験は国語。

黙々と問題を解く。古典のヤマも当たって順調だ。

試験終了の5分前には問題が解き終わった。

最後の確認を行う。

受験番号、名前。確認OK。


次の試験が数学で、最後が英語。


苦手な英語。ぎりぎりまで単語の暗記を頑張ったから、大丈夫なはず。

緊張しているのか、頭がボーっとする。

なんとなく、手に力が入らなくて、文字が書きづらい。

問題用紙が何枚もあって、問題を読むだけで一苦労だ。


なんとか最後まで問題を読んだけど、難しくて分からない。

もしかしたら当たるかもしれないと思って、とりあえず、どの解答欄も埋める。

最後の最後まで粘って、なんとか全部の欄を埋めることができた。

チャイムが鳴って、問題用紙と解答用紙が回収される。

受験番号と名前も忘れてない。


面接の頃には、体ががくがく震えだした。


(面接、緊張するなぁ。それにしてもこんなに体が震えるほど緊張するって初めてかも。)


震える体を抑えるのに必死で、聞かれている内容がよくわからない。なんとか受け答えして乗り切った。


面接が終わっても止まらない震え。

それもそのはず、帰宅して体温を計ると39.6℃の熱があった。


◆◇◆


あれから一週間。

三日三晩、高熱が続き、救急搬送されてそのまま入院した。

原因は結局わからず終いだったけど、普段しなかった勉強を頑張ったから知恵熱だったんだろうなんてことになっている。


やっと学校に復帰できる。

あっちゃんに会うのも一週間振り。

受験の結果はどうだっただろう?


少し早めに家を出ると、あっちゃんに会った。


「おはよう。」

「圭子!?おはよう。」


一緒に並んで歩き出して、妙な間ができる。


「圭子、体調大丈夫なん?

救急車で運ばれてそのまま入院したって聞いたからビックリしたわ。」

「あ、うん。ずっと寝てたから、まだフラフラするけど。親は知恵熱やって笑ってたわ。」

「…ふーん、そっか…。」


そしてまた妙な間ができる。


「あ、そうそう。寝てる間に通知来て、封筒がペラペラやったから落ちたーと思ってんけど、受かっててん。」

「受かった?」


あっちゃんが立ち止まって私を見た。


「え?当たり前やし?学校にも親が電話して報告してたで?」

「…圭子、学校ではお前が滑ったショックで寝込んでるってことになってるけど。」

「えー!?それであっちゃんもそう思って気ぃ遣ってた??」

「だって、何て言うたらいいかわからんし!」

「えー!専願では落ちんやろー。で、あっちゃんは?」

「落ちた……って言うたらどうすんねん!?受かったわ!」

「よかったー、おめでとう、あっちゃん!」

「圭子もおめでとう。お前のチロルチョコのお陰やな。」


照れくさそうにそう言って歩き出す。


「じゃあ、お返し、楽しみにしてるからね。」

「えー!30円のモンって難しいな。」

「えー!」

「あほ!3倍返しやぞ!」

「じゃあ30倍返しで。」

「はは、300円か。考えとくわ。」


二人で並んで歩く通学路。

まだ肌寒いけど、春はもうすぐ。


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