8.佳境
あっという間に冬休みになった。
年が明けたら受験勉強もラストスパート。
お互いに志望校合格を目指して、塾に通ったり、模試を受けたり、赤本の問題を片っ端から解いたり。
冬が近付いて段々日が暮れるのが早くなって、学校では勉強しづらくなった。
その頃から、時々、親がいない時間を見計らってお互いの部屋で勉強するようになった。
冬休みは俺の部屋ではなかなか勉強できなくて、圭子の部屋かマクドや図書館に行くことが多くなった。
圭子の部屋で英語の問題を解いていて、ふと顔をあげると、圭子がうつらうつら居眠りをしていた。
「圭子?」
はっ!と体を震わせて目を覚ました。
「昨日、夜更かししすぎたみたい。英語、苦手やから問題見るだけで眠くなるわ…、ふあぁぁ…。」
「眠いん?」
「今めっちゃ眠い…。」
「寝たら犯す。」
「え!?…でも、あっちゃんやったらいいよ…。」
圭子は伏し目がちにそう言って、シャープペンシルを机の上に置いた。
俺は勉強していた机を端に退けて、圭子を押し倒した。
「圭子、ほんまにええの?」
「…うん。」
キスしてもう一度聞く。
「なあ、避妊って知ってる?」
「ヒニン?」
「コンドームって知ってる?」
「??なにそれ?」
そのまま起き上がって机を元に戻す。
「あっちゃん…?」
「バカ!お前は結婚するまでセックスするなよ!」
「なんで?」
「お前なぁ!妊娠したり病気になったらどうすんねん!?」
「………。」
「ちょっとは目ぇ覚めたか。はよ英語の続きやるぞ。」
俺だって本当は興味津々でヤりたいことこの上ない。
避妊とかも詳しいことはあまり知らんけど、やっぱり何かあってからでは遅いし、圭子を傷つけたくない。
親が言うように中学生ではまだ早い。
くそー、もったいないなぁ。
胸だけでも揉めばよかった。
下半身がジンジンする。抜くだけ抜いてもよかったかもしれん。
あぁ、でも、そんなん、目の前に女が居って、入れずに我慢できるわけない。
圭子だって自分だけずるいって言うかもしれん。
ぐるぐるエロいことばっかり考えてしまって、英語の問題が解けない。
力余ってバキッとシャープペンシルの芯を折ってしまった。
「あっちゃん、この問題さぁ、関係代名詞?」
「え?あ、ああ…。」
圭子…。
既にさっきの襲われてもいいって言ってたムードはどこに?ってくらい普通に問題解いてる。
俺だけかー、こんなに悶々としてるのは!
くそー、女って案外アッサリしてるんやな、羨ましい。
治まれー、治まれー。
「関係代名詞…。繋いでる前半の文章はどうなってる?後ろの文章で修飾されてるのはモノか?人か?」
圭子の前ではええかっこしたい。
どうか、俺が悶々としてるのが悟られませんように。