6.進路
勉強の甲斐あって、模擬試験の結果は上々。
「おおお!社会の偏差値上がったー♪」
「俺も!数学の偏差値上がったー!!」
二人して模擬試験の結果表を見てホクホク。
「なぁ、圭子。志望校どこに決めるん?」
「あっちゃんと一緒のところがいいと思ってるけど、公立やったら、私、体育あかんから入られへんし…。」
「俺、私立の男子校に行くつもりやねん。今回の模試、結果が良かったから、本命で進路希望出そうと思う。」
「へぇ…、どこに行くん?」
「上町高校。」
「そっか…。」
「圭子は?」
「私は…私立やったら桜泉女学院にしようと思ってた。上町とちょっと近いな。」
「ほんまやな。合格できるようにがんばろな。」
「うん。」
◆◇◆
いつもの通り下校すると、家の前であっちゃんの妹と会った。
「お兄ちゃん、圭ちゃん、おかえり。」
「ただいま。」「ただいま。」
「お兄ちゃん、圭ちゃんと付き合ってるん?」
なんて答えるんだろう?
「付き合ってるよ。亜由美、お母さんに言うなよ。」
「なんで?」
「絶対色々うるさいから!」
なるほど。それはそうかもしれない。
「圭子、また明日な。亜由美、家に入れ。」
「はーい。圭ちゃん、バイバイ!」
「バイバイ。」
◆◇◆
夕食を食べ終わって、皿を下げようとしたとき、亜由美が唐突に喋り出した。
「お父さん、お兄ちゃん、圭ちゃんと付き合ってるんやって!」
「へぇ。そうか新もそういう年頃か…。」
「亜由美!喋んな言うたやろ!」
「お父さんにとは聞いてないから。」
「お母さんもおるんやから一緒やろ…。」
お母さんが流しの皿をカチャンと鳴らして言う。
「新、そのままそこに座ってなさい。亜由美は自分の部屋に行きなさい。」
ダイニングテーブルに俺とお母さんとお父さん。
気まずい雰囲気が流れる。
「新、今がどういう時期か分かってるでしょ?」
「…」
「しっかり勉強しないといけない時期でしょ?」
「…」
「あとで後悔したって遅いのよ?圭ちゃんだって同じ受験生なんだから!」
ガタンと立ち上がって言う。
「わかってる!俺と圭子、一緒に勉強してるだけや!
成績だって上がってる!何の問題があるねん!?」
「勉強なら塾でもできるでしょ?よりによって圭ちゃんと付き合うなんて!」
「別に勉強なんか誰とやったって一緒や。」
「女の子と…間違いがあったらどうするの?」
「間違いってなんやねん。まだ中学生やし、お母さんが心配することなんか何もないわ!」
そのままダイニングを飛び出して自室に上がる。
「新!」
「お母さん、新もああ言ってるねんから、そっとしとき。」
「お父さんまで!!」
間違い…。
何考えてるねん、大人の方がよっぽど間違ってる。