表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IF  作者: 小塚彩霧
4/25

4.下校

付き合おうと言われたものの、付き合うって何したら良いんだろう?


キスとかエッチとか??

いやいや、そんなんいきなりはないよねぇ。

デート?

うーん、遊園地とか?

そんなん中学生じゃお金ないし…。

動物園とか植物園?

いくらなんでも毎日は行かないよねぇ。

うーん。

電話もなぁ、毎日したらきっと怒られるだろうしなぁ…。


体育の授業が終わって、教室に戻る。

席につくと、折り畳んだメモが置いてあった。

『今日、一緒に帰ろう』

この字、あっちゃんだ!

体育の時、男子は1組の、女子は2組の教室で更衣する。

あっちゃん、着替えるときに私の席を使ったのかな?

色々想像すると鼻血出そう…。


そのメモを他の人に見られないように筆箱に隠す。

にやけそうになるのを必死でこらえる。


そっか、一緒に下校か、思い付かなかった。

私と一緒にいるの、見られたくないんじゃないかって思ってたけど…。

手、繋いだりするのかな?ドキドキする。


◆◇◆


放課後、2組の前まで行ってみる。

人がまだいっぱいで、あっちゃんに声をかけづらい。


「どうした?むんちゃん?津川?」

男子が私に声をかけてきた。

「違っ!…森たん待ってるねん。あっ!森たん!!」

教室の出口に通りかかった女友達を呼び止める。

「むんちゃん、どうしたん?」

「いや、あの…、元気?久しぶりやんな…。」

「ははーん、また私をダシに使いよって…。津川、掃除当番やし。」

よくわかっていらっしゃる。流石、小学校からの付き合い。

「あのさ、森たん、ちょっと!」

森たんの耳元でこそこそ話す。

「えっ!そうなん!?一緒に…、待ち合わせ場所決まってないの?ふむ。」

顔をあげた森たんが、大袈裟に、あっちゃんに聞こえるようにこう言った。

「むんちゃん真面目やなあ!放課後、教室に残って勉強するって!」

「も、森たん!」

「それじゃあ、頑張ってねー。バイバイ!」

森たんは私の肩を叩くと、手を振って帰っていった。


向こうで掃除しているあっちゃんと目があった。

ちょっと微笑んでくれた。小さく手を振って1組に戻った。


◆◇◆


掃除当番を手伝って、日直からも鍵を預かって、一人、教室に残って席につく。

自分の机に鞄を置いてその上に頬を乗せた。

廊下に面する窓を眺める。誰も通らない。


あっちゃんが迎えに来てくれなかったらどうしよう。

日が当たらないからまだマシだけど暑いなあ。

あ、今日、塾あるんだった。いつも昼寝してから行くのに、昼寝できないかもな…。

せいぜい30分くらいのはずなのに、すごく長く感じる。


コツンと私の頭が小突かれた。

「村井、帰るぞ。」

「ふぇ?…っ、津川!」

「半目開けて寝るなよ、怖いから。」

「!!」

「それに、頬に跡付いてる。」

「!!!」

ワタワタする私を尻目に、あっちゃんが笑いをこらえている。

「ははは!お前、もうちょっと色気とか要るやろ!」

「すみませんねぇ!色気も可愛げもなくて!」

ガタンと立ち上がり鞄を持った。

歩き出した私の後ろについて歩くあっちゃんが言う。

「ほんまやな、なんでお前みたいなんがええんやろな、俺は。」

「ほんま、趣味悪いわ…。」

教室を出て鍵をかけながら、小さく呟いた。


校門を出て歩き出したら、あっちゃんの方が歩く速さが速くて、何歩かに一回は小走りになる。


気付いたあっちゃんが私の手を握った。

「しゃーないな、トロい村井に合わせたるわ。」

「津川、憎まれ口ばっか。でも、いいや。ありがとう。」


学校から家までは5分。

たいした距離ではないけど、それでも嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ