2.接近
中学3年間で一番ビッグなイベント、修学旅行。
クラスが違うから、一緒に行動できるわけでもないけど、やっぱりちょっとウキウキする。
学ラン姿も好きだけど、私服姿もちょっと気になる。
新幹線で東京まで移動。
私が1組であっちゃんが2組。2クラスで1車両ということで、あっちゃんと同じ車両になった。
(ラッキー!!)
私の座席から、あっちゃんの座席は2列向こう。結構近い。
立ち上がって、背もたれ越しに覗き込んでみる。
(きゃーん。あっちゃん、メガネ姿もかっこいいなぁ~///
これは写真に収めねば!!!)
堂々と隠し撮り?してたりでかなりの不審人物。
「どうせなら二人で一緒に撮れたらいいのなー…」
心の中でつぶやいたつもりが、思いっきり独り言になっていたらしく、
私の横の通路を通りかかった同じクラスの女子に腕を掴まれた。
「じゃあ、撮ればいいやん。行こう行こう!」
「えぇ?あっ、あれっ??」
あっという間にあっちゃんの席に連れてこられた。
「津川、むんちゃんが一緒に写真撮りたいって。」
その一言で辺りがわぁっと沸いた。
あっちゃんのとなりに座っていた男子が立ち上がり、私に席を譲ってくれる。
断ろうにも周りが既にそれを許してくれない。
皆の好奇の眼差しの中、彼の隣に座った。
(あっちゃん…。)
恐る恐る彼の顔色を伺う。
でも、あっちゃんは頬杖をついて窓の外を眺めたまま、こちらを向いてはくれなかった。
「ほら!津川、こっち向いて!!」
カメラを構えた女子がそう言ってシャッターを押した。
私は怖くてあっちゃんの顔を見れなかった。
お礼もそこそこにカメラを受け取ると自分の席に戻った。
◆◇◆
楽しかった修学旅行から戻り、撮った写真も焼き上がった。
(あ…。)
ずっと窓の外を眺めていたあっちゃん。
なんだ、ちゃんと笑ってるじゃない。