戦後処理
戦争回は終了しました。
これからは平和回にしていきたいと思います。
様々な国や連合、ギルドの代表が一堂に会した会場に当事者である獣王国と公国の代表は不参加だ。
彼らはもっともらしい事を言い、出席しなかった。
公国は元より離れられない状況だった。 共に領地の8割は抑えられている為にそこから取れと言わんばかりに不参加を決め込んだ。
「やはり獣王国と公国は、参加しませんか・・・。」
「共和国の2か国もです。 彼らも大変ですから。」
「まあ、仕方がなかろう。 彼らはもうギリギリだ。 どうにもならん。」
それぞれの思惑があるだろうが、会は開催した。
帝国とアバロンはあえて発言せず、他国の要望を聞いた。
「我が連合は隣接する州を3つ頂きたい!」(小国連合)
「わがギルドは、アバロン製品の格安での取引を永年契約してもらう」(商業ギルド)
「アバロン軍にレギオン契約してもらい、わがギルドに随時共闘関係を結んでくれ!」(冒険者ギルド)
「元公国の領土を我が共和国にすべて譲り渡してもらいたい。」(共和国代表)
余りにもの手柄と見合わない報酬の希望に驚いた。
小国連合はあくまで獣王国と公国の取引を取りやめただけで兵も100名程度しか出していない上に活躍もしていない。 それで3州も?と、いうものだし、商業ギルドはほぼ同様な事しかしておらず、それで割引なら話が分かるが、格安とは暴利過ぎる利益だ。 冒険者ギルドはまだましだが、彼らは経費までは面倒見るとは言っていないので、話は聞くが必ずやるという共闘関係は無理がある。 経費を全額見るというのであれば、まだいいが、それをしたら数回でギルド本部と支部を10をこす支部を閉鎖・廃止する事態になる。 共和国も義勇兵を出した不義があるので、すべては無理だ。
一通りの訴えを聞いた所で、議長であるマサルが話した。
「貴殿らの訴えは分かった。」
「では、聞いて頂けますか!ご英断ですぞ!」
「そうですな!」
「ありがとうございます!」
「・・・なにも叶えるとは一言も言っていませんよ?」
「「「「えっ?」」」」
「まさか叶えられるほどの成果があるとお思いか?それは高望みというものですぞ?」
「我らは今大戦に際し、様々な支援はしておりますぞ!」
「ギルドは後方支援の為に人員を配して、万全を期しました!」
「「「我らもです!」」」
それぞれの代表が異口同音な事をいう。
後方支援は多岐にわたるが、彼らはそこまで活躍していない。 実働の人間には金銭で対価を払ってある上にそれも依頼契約だからあくまでギルドは受注しただけ。 小国は取引差し止めのみだ。
「でっ、では現状はどのくらいが叶えられますか?」
「そうですね・・・。 では・・・」
マサルは各代表者にそれぞれの要求に対しての回答を示した。
それは大幅に減らされた状態で言われ、それでも妥協したことを伝えたが、彼らは憤慨した。
大した貢献がないが、全土にある組織であることで、マウントを取りたいらしい。
「この条件で納得が出来なければ、ゼロベースで決まりです。」
「貴殿ら・・・あまり欲をかくと、あの二か国の様になるぞ?連合の代表はわかるであろう?」
「!!!!」
アバロン軍の無茶ぶりに振り回された経験のある連合は冷たい物を感じた。
もう一人の当事者の獣王国がいないので、彼らの仕打ちを知るものは彼らからしたら連合しかいなかったのだが、彼の恐怖の混じった顔になにか感じ取った彼らは、自分らの調べた事が嘘ではないことに確信が持てたようで、静かになった。
「あれは事実だったのか・・・。」
「あんな無茶を?」
「・・・。」
彼らはそれぞれの感情を感じたようで最初の要求をごり押しする事はなかった。
静かになったところでマサカツは声を掛けた。
「まずはお座りください。」
「「「「「「・・・・・。」」」」」」
「お座りいただいたのでこちらの出せる条件を説明します。」
マサルが提示した条件は、手柄というより常識範疇で渡せるものが提示された。
ほぼ要望を叶う事はない状態だが、少しは貰うことが出来た。 丸損は防げたことが嬉しかったことらしくてすぐに退室していった。 今会議で認められた事を書面にして貰って。
残ったのは、帝国皇帝とお付きの老将が残った。
「会議の最中もあまり発言をしていないけれど、どうしたんだ?」
「あの状況で話したら彼らが突き上がるでしょ?」
「・・・確かに。 ん?ちょっと待ってくれ。」
「どうしました?」
「ああ、うちで預かっている女性がいるんだが、話があると来ているんだ。 少しいいか?」
「構いませんよ。 (時間稼ぎか?まあいい。)」
「失礼します。」
そうして入ってきた女性は獣人だったが、耳と尾っぽがある女性だ。 毛深くもなく、耳と尾があるだけの女性だった。
「はっ?へっ?」
「どうなされた?何か不都合でもありましたか?」
「いえ、その様な事は・・・。 あの、私はいつ処刑をされますか?」
「そのような事はありません。 だれがそんな事を?」
「市井からです。 彼らからしたら我ら獣人国の人間は、恨みの対象でしょうから・・・。」
「恨みもあるでしょうが・・・。 貴方は宰相軍に殺されかけたのですよ?」
「そのために兵も騎士も、父たちも死にました・・・。 最後まで警護してくれた者の中には、自身に爆薬を縛り付け、死んだ者もおります。 私は・・彼らに報いれません・・・。」
「死ぬことが重要ではありません。 これからを作るのも大切です。 貴方は女性です。 次の世代を産むことも大切です。」
「ですが・・・私が我が国の失態に対して出せるものは命しか・・・。」
彼女は自身の故国が起こした事に涙し、償いとして自身を殺してほしいと、願い出てきた。
マサルを含め、彼女は外界と断たれた後宮内にいたことで知らない上に、自身も被害者なのだが、彼女は責を感じ、自身の命を差し出そうとしていた。 当然、御付きの人を含めて必死に説得を試みた。
しかし、彼女の表情は晴れなかった。 耳も尾も垂れ下がっており、元気がなかった。
「では、彼女は帝国でお預かりするのはどうでしょうか?」
「へっ?」
一同が驚いた先に発言者がいた。
若き帝国王だった。 彼の言い分は彼女も獣王国の物として、保証の一環として帝国が貰い受けるというものだった。 人質として引き渡されるのであれば、彼女も自身の身の立場が出来、落ち着くだろうというものだった。
「だが、君は独身だろう?良いのか?」
「構いません。 ですが、ここにいれば彼女はさらに思い悩みますよ?ならば、私に預けた方がいい。 幸い、私の国の保証はまだ決まっておりません。 なら賠償の品の一つとして、彼女を頂きたい。 当然ですが、他にも領地は頂きますよ?」
「それは無論だ。 頼めるか?」
「勿論。 彼女に付いて行きたいという者も連れていきますよ?良いですね?」
「勿論だ。 すまない。」
こうして、彼女は彼女は保障の一つとして、慕う使用人たちと銃士隊残余と共に帝国に渡っていく事に。
しかし、マサルに気付かない所で若い帝王は、ガッツポーズを小さくしている事に気が付かなかった。
帝国はその後は全獣王国と公国の領地の3割ほどを切り取ったが、それ以上は取らなかった。 それどころか彼女の荷物や使用人たちを馬車に乗せ、彼女を自分の馬車に乗せると、いそいそと戻っていった。
「あの子があそこまでの手柄を上げたのに多くを欲張らなかったのは驚きです。」
「うーん。 それどころか、彼女に凄い親身になって対応するのが気になるな・・・。」
「まさか・・・?」
「いや、まさかそれはない・・・はず?」
マリアとマサルは、ある事実に気付いた様な気持ちになったが、彼の事を知る姉であるマリアは、その事にはすぐには気が付かなかった。
何がともあれ、戦後処理が終わり、獣王国は宰相領と小さい州が2つが獣王国領となり、公国はほぼ廃墟寸前の公都とその門前町(半壊)と、その周辺地2キロ圏内のみではあるが、支配地に出来た。 共和国の人族の国は、そのまま存続した。
それ以外は戦争前とあまり変わらない状態だ。 多少増えた国もあるが。
大きく変わったのは、帝国とアバロンのみだった。
「戦争が終わりましたね。」
「ああ、終わったな・・・。 ひたすらに獣王国側に被害が出る事だった。」
「仕方がありません。 それが彼らの過ちです。」
マサルは、自身の執務室で外をみる。
そこには基地の全容が見える風景があった。 大型戦略爆撃機やロケット基地、獣王国が苦しめられた兵器が見えていた。
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