現地にて
いよいよ戦闘が開始された。
転送が終わり、目を開けるとそこは野戦陣地(?)といった感じの洞窟の様な場所に設えた居住スペース兼弾薬集積所みたいなとこだった。
「おーい!誰かいませんか?おーい!」
陣地内を歩き回るが、だれもいない。
数十人規模が入れるほどの陣地だが、誰もいなかった。
作戦指揮所の様な場所を発見し、机の上に一枚の紙を発見する。
『ヨコタ・マサシ様』
この度は申し訳なく思っております。 こちらの都合でゲームの世界よりこちらの世界「ウィズテア」の世界に転移させて頂きました。 この世界は戦乱に疲弊しております。 あなたのお力をお借りしたく、よろしくお願いします。 その為、元の世界のあなたはもういません。 ご了承下さい。 本当に申し訳ございませんでした。
「はぁ?なんで?なんで俺?!どうして?」
思考が混乱した。 ゲームが楽しめると思えば、転移させられて元の世界に戻れない。 様々な思考が沸いては潰れ、攪乱する。 その繰り返しで数時間は作戦室で荒れた。 しかし、人間は腹が減ると、良くないことを考える。
「そうだ!食事を取ろう!食事をして仕切り直そう」
ひとまず陣地だから食料もあるはずと、思ったがなかった。
携行していた食事をして、満足すると、少し前向きな考えが出てきた。
自身の姿の確認だ。
着替えが出来る所に鏡もどきみたいな物があったために確認すると、第二次世界大戦時のドイツ軍の兵士の戦闘服に支援兵用の装備と思われる太もも部に道具袋が一つずつ背中にザックを背負っていた。
顔も思いっきり日本人顔だが、前の自分よりイケメンになっていた。 なぜか男性のシンボルもあることに安心した(元の自分のより大きかった・・・)。
「よし、後は敵が誰かだな・・・。」
会う人が必ず味方とはありえない。 確認すると、情報を管理していると思われるファイルに敵の兵士の情報が載っていた。 そこにはアメリカ兵の姿が描かれていた。 そして、同盟している兵士の情報もあった。 獣人たちの国だ。 基本装備は旧イタリア軍装備だった。 どうやら、こちらの世界は少し違うようだった。
「ひとまず情報はわかった。 なら外も見てこよう。」
偵察に出ることにした。
しかし、装備はドイツ軍の小銃「Kar98k」ポイ銃にワルサーP38に銃剣、柄付き手投げ弾3つと弾薬50発。
少し探したらパンツァーファウストがあったので、2本ほどザックに差し込んで持っていくことに。
暫定の拠点から南にまっすぐ進むと、同じ服を着た死体を発見した。
死体は死後数日は経っているらしく、腐食が出始めた。
「同じ制服だ。 友軍だったんだ・・・。 ひとまず腰についていた巾着に財布や軍隊手帳があるはず」
死体を探すと、兵長の手帳を発見した。 遺体は持っていけないだろうと遺品になりそうな物だけ巾着に入れ、収納する。 これをすべての兵士に行って際にふと近づく気配で身を隠した。
そこにはアメリカ装備の兵士が3名。 ふかしたばこで、近づいてきた。
「しかし、このあたりの公国戦力は駆逐できたから今度は獣人共の国か?あいつらは手ごわいが、装備が行き届いていない。 この森から挟み撃ちにすれば、潰れるだろうよ。」
「そうだな。 出来れば、獣人でも良いから女が欲しいぜ!溜まっててよ!きついわ」
「ちげぇねえ」
下衆な笑いをしている男どもを見て、何かが動いた。
ライフルに弾を込めて、一番後ろを歩いていた兵士の頭に叩き込んだ。
「ん?」
ドサッと、言う音と共に倒れた同僚をのぞき込むと、ヘルメットに弾痕が刻まれた。
「てきゅ・・・ダン!う」
「ひい!兵長!」
叫ぼうとした男の首に弾が当たり、頭をもいだ。
恐怖で動けない最後の兵はヘルメットに穴が開くと、糸の切れた人形のように倒れた。
「そうか、ならばあがいてやろうか・・・。 これから」
ここに一人の兵士が誕生した。
自分は戦死した同胞たちから武器弾薬・食料を集め、敵兵からはすべてを奪った。 収納し、ベース基地へ運んで整備しておいた。
「これが俺の新たな世界・・・。 理不尽な扱いを受けた気持ちをあいつらにぶつける。」
こうして、新たな戦いが始まった。
やはり先の三人が帰還しないことを心配して捜索隊が編成され、捜索に出ていた。
そこに暗殺者がいるのにも関わらず。
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「隊長、ヘンリーとジョージがいません。 さっきまで後ろを歩いていたんですが・・・。」
「どこ行ったんだ?あいつらは」
捜索隊は軍曹を中心とした一個分隊の10名。
森に入ってすぐに足のケガをした通信兵を付き添いを含め2名下げたが、今度は一番後方を歩いていた組が行方が分からないと、副長が報告してきた。
そのまま、放置は出来ないので捜索をすることに。
「たく、ビーズ兵長たちも見つかってないのに何してんだ?あのバカは。」
「しかたありません。 ジョージたちを探しましょう。」
「前進!」
捜索人数が5人に増えたことに悪態をつきながら、残った6人で捜索する。 敵を駆逐したはずの森だからと、安心して。
「今度は3人でか・・・。 三人の中央は指揮官クラスだろうな。 なら」
ゲリラ戦では必要以上に銃は使わない。 音でばれるからだ。
まずは後ろのグループを狙うことにした。 音もなく近づくと、指揮官クラスの男の首めがけて弓矢を引き、狙撃する。
「がはっ」
「副長!」「どこから?がっ!」
矢継ぎ早に放ち、後方のグループを抹殺した。 そして、すぐ移動する。 先頭のグループが声で駆けつけるからだ。
「どうした!副長!」
「これは一体!?」
しゃがみ込む二人の目の前にあるのは、矢の刺さった副長以下Bチームの無残な死体だった。
そして、もう一つ気づく。 三人チームのはずが自分らは二人しかいないことに。
「おい、ジムはどうした?」「えっ?」
隊長の目の前で部下の首の矢が生えた。
声も出すでもなく、息絶えた部下。 隊長は一気に凍り付いた
ここにはまだ残存勢力が?
それを叫ぶ前に自身の胸にナイフが生えた。
「マジかよ・・・。」
最後に見たのは自身の胸に生えたナイフだった。 こうして捜索隊は全滅した。 しかも戦力不明のままでの状態で。 捜索人数が11人に増えた。
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「流石にいなくなれば、捜索はするよな。」
死体を回収し、敵装備も回収。 遺品はベース内にあった空き箱に投げ入れた。 敵の死体はひとまず収納する。 同胞とは別枠で。
捜索隊はその後、10回ほど編成をされたが、最後の捜索で装甲車両を含めた部隊が未帰還になると、中止されたようで、来なくなった。
「しかし、装甲車を無傷で手に入れられたことは大きい。」
そこにはM8装甲車があった。
夜間を待ち、夜陰に紛れて収納した。 その後は歩哨を弓で倒し、一塊になっている場所には爆弾を投げ込んだ。 そのあとで細工した機銃で撃ちまくり、逃げる兵を弓やナイフ、小銃で殺した。 士官を先に暗殺したことで収拾がつかないうちに打ちのめした。 多少の逃走兵が出たが、仕方がない。 一人で50人は倒せない。 その代わりに大量の物資と弾薬を手に入れた。
「これで脅威を感じるかな?もしかしたら遠征が必要かな?」
遠征とは後方の砲兵隊や弾薬集積地に奇襲をかける行動だった。 一人という事で行動の制限がないが、捜索は限られるから危険が伴う。 ひとまずは様子を見ることにした。
フリーク!