後始末②
いよいよ弁明に入ります
10日の準備時間があった事で、副官殿に通信が出来た。
その上で、お土産や道中の準備をした。
動員する兵士は30人。
留守番組を中心に人選し、今度はキッチンカーや入浴車をけん引していく。 トラックは5台を出し、装甲車やジープ、ハーフバイクやバイクも動員した。 総台数20台ほどになった。 ギルド側も高速魔導馬車なる簡易自動車の様な物に乗り、40名程の護衛付きで来た。
「お待たせしました。 まいりましょう。」
こうして、マサル達を先頭にギルド側も進んだ。
マサルは徒歩の者はおらず、車両に乗っている。 一方、ギルド側は護衛は殆どが、徒歩だった。 しかもギルド幹部はすべて魔導馬車に乗っているために消耗がないが、護衛は違った。
決定的な結果が出たのが、野営時だった。
マサル側はキッチンカーや入浴車を使用し、交代制ながらも食事もお湯も温かいものが手に入ったが、ギルド側はそうはいかなかった。 寝床も雨露や寒さを防げるテントであったが、ギルド側は護衛はすべて自前の物のみだったために、外部から雇った冒険者達から不満が出たが、マサル達はギルド側に何とかしてもらうように伝えると、ギルド側がマサカツに対価を払う形での提供を申し入れてきたが、マサルは拒否して、自身で解決するよう求めた。
ギルド側も強くは言えず、自身で用意をするために自ら薪を燃やして、湯を沸かして、提供したが、数が足りていなかった。 女性にとって、体臭は防ぎたいが、ギルドから提供されるものは少なすぎるために不満は出まくった。 ギルド側はマサル達に協力を求めたが、拒否されたことでよりギルドの弱腰の対応に怒りが出た。
ここでマサルは女性だけのパーティーに声を掛けた。
「ギルドとの契約を破棄をして、私たちと契約しませんか?」
「えっ?」
女性4人のグループは、すでに薄汚れており、髪はぼさぼさになっていた。
当然、契約はギルドと契約してしまっているが、途中契約破棄も出来た。 ギルド側に告知をして、了承されれば、破棄できるのであった。
彼女らはマサルの条件に有無も言わずに賛成し、ギルド側に告知する。 必要経費が増えてしまったことで報酬払いが厳しくなったギルド側は報酬放棄した彼女らの訴えは受け入れられた。
その日の夜には、マサル達のテント群の一つに移動し、食事と入浴を味わった。 その光景は他の女性がいる混成チームが複数の目につくことになってしまう。
すると、混成チームの殆どが鞍替えを宣言してして移ってしまう事態になる。 行程の半分くらいで、護衛の半分がいなくなる事態になった。
さすがにまずいと感じて、残ったチームに報酬の倍増を打診し、移ったチームにもその旨を伝えたが、胃袋を掴まれ、居心地の良いベッドまで用意をされた彼らは報酬倍増より食事を選んだ。 選ぼうとすると女性から拒否があり、選べないという事もある。
「ギルド側から寝返った彼らは誰も戻らずか・・・。 金よりもか・・・。」
「それはそうだろう。 温かい食事に夜露に濡れることのない場所で休め、身を清められる上に報酬まであるこんな好条件、倍額くらいでは寝返らんぞ?隊長。」
「そうですね。 冒険者はわかりませんが、任地でこの二つならやはりこちらを取ります」
「そうか。 やはりね。」
ギルドからの報酬倍増は、移ってきたチームのメンバー内ではまだ少ないらしく、最初に移ったチームを含め、こちらの宿営地で過ごしていた。 行軍時は荷物はトラックだが、ジープやトラックの隙間や徒歩でついてきていた。 ギルド側は少なくなったために魔導馬車や通常の馬車に乗ることの出来る者が増えたが、護衛は男性のみになっている。
「これは現地で揉めなきゃいいね・・・。」
「揉めれば、ギルド側の失態だ。 それこそ獣王国の意のままだよ。」
「これはギルド側は気合を入れないと、いけないねエ」
正直、ここまで来てあの手紙の一文が、結果的にギルドを苦しめた。
『行程の途中でギルド側の護衛を誘ってください』
最初は数を減らすだけだろうと、思っていたが、街が近づくに連れて意味を理解した。
一行は、要塞の門前街に着いた。
街の門前には列になっていたが、特使でもある為に最優先に検査を受けた。
まずはマサル達だが、衛兵も戦いに参加していた者が多く居た為にマサル達を見ると、敬礼をして迎えてくれた。 マサルも答礼し、身分の高そうな衛兵を捕まえ、労いの気持ちで一つの酒の入った木箱を渡すと、破願して喜んだ。 当然、そのまま通されたが、ギルド側はそうはいかなかった。
憎悪の対象である連中に厳しく、護衛も少しでも素行が良くなければ、ギルド側の責任であるという念書も取られ、怪しい物は退去まで預かるとして、いくつかの木箱が没収された。
とにかく入場は出来た。
そして、国側の用意した宿に泊まり、行程の疲れを落とした。
ギルド側の不幸はこの夜から始まった。 行程中に娯楽を提供していなかったために護衛の冒険者たちが街で騒ぎを起こし、拘束される事態になり、ギルド職員がとりなしに走る事態となったり、酔った勢いで住人に絡んだり襲う事件が起きて暴れた為に斬られる事態になった所で、マサルも呼ばれた。
一緒にいた冒険者も投獄され、事態収拾に努めたが、冒険者の失態でしかなかった。
当然、傭兵団も苦情は来ていた。
ある食堂で大食い獣人兵は5人で、店の食材を半分以上喰ったという物や酒屋で大樽を担いで帰ろうとして、転倒してしまい、通行人に酒をぶちまけるという事態になったいう物だった。 ともに代金は払っていた為に前者には、諦めて追加仕込みをお願いし、後者は謝りに回った。
ただ、比較的迷惑がありがちな物であったために大ごとにはならなかった。
「やはり街では弾けたいか・・・。」
「とはいえ、節度は必要です!」
「そうだね。」
マサルの呟きにエリザがぷりぷりと怒っていた。 マサルも返事をしながら、エリザの兎耳のある頭をなでると、子ども扱いされたことにさらに怒った。
お詫びにと、その夜はエリザと仲良くした。
事後は寄り添って休んだ。
そして、明日に始まるという弁明式はどうなるかと思いながら、眠りについた。




