後始末①
少し長くなりました。
要塞防衛戦は獣人国側の勝利で終わった。
帝国は要塞指令を討ち取った事で、残存士官たちは首の皮が一枚つながった。
「やはり司令官の突撃はいたいね。 完勝とは言えない。」
「とはいえ、あの場合は仕方がないさ。 誰も止められんさ。」
「さて、俺らはどうだかね。」
「失礼します!マサル殿でしょうか?」
「そうだが?」
「指令代行がお呼びです。 ご足労頂けないでしょうか?」
「指令代行?わかった行こう。」
こうして、ユリーダと共に指令代行にあるためにあの塔を上る。 主の変わったあの塔へ。
そして、執務室の扉が開くと、意外な人物が座っていた。
「副官殿?」
「驚いた?まあ、一番あたしが驚いているんだけどね。」
「しかし、どうしたんだ?それだけならよそ者の俺には必要ないだろう?」
「本題はこれよ。」
そういって、引き出しから二通の書状をだして、こちらに渡してきた。
「読んでも?」
すると、首を縦に振った。
内容をみると、連合に対する回答書の要求と相手側に渡す用の書状だった。
すでに連合が価値のないものを送り付けてきたことは伝わっており、なぜそれを送ったかの連合としての回答を出すようにという要請書だった。
それも代理人として、俺が指名されている。
「なるほどね。 輸送に携わっていた俺が答えを出させるわけね。」
「出来るかしら?」
「面倒な事を頼みやがる。 俺に脅しの尖兵をしろと?」
「国の特使の権利をつけるそうよ。 やぅてくれない?」
「今度はこっちかよ・・・。 いれなくされたらどうするんだよ。」
「なら、こちらの国に着なさいよ。 歓迎するわよ」
「それは戦力として?俺が目的ではないだろ?」
「どちらもよ。」「マジかよ?」
「あの部隊はあなたがいないと、まとまらない。 ならすべてを飲み込めば、良い。」
「なるほど。 合理的だね。 わかった。 行こう。」
「ありがとう」
「俺も今回の件は聞きたいからね。 話を聞いてくるよ。」
そうして、執務室を後にした。
そして、二日後に準備の整った部隊を率いて、一路連合に向け、進発した。
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連合・とある場所
「あの傭兵団が輸送に成功したようです。」
「それはまずいな。 こちらが本腰を入れていない事がばれたな。」
「多分、傭兵団のリーダーが詰問の使者にされるはずです」
「なんとかかわすことを考えよう。」
「はっ、かしこまりました。」
薄暗い闇の中でされている密談は、どことなく消えていく。 しかし、責任者が出てこないために大変になることを彼らはわかっていないのだった。
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帰還の途にあるマサル達。
「しかし、どうするんだ?隊長。」
「ひとまず色々と下ごしらえかな・・・。」
マサルは何人かの隊員に先行して帰還させた。
これが後半に色々と反応が出る。
こうして、二日掛けてベースへ帰還した。
「お帰り!隊長!」「任務お疲れさまでした。」
いきなり抱き着いた白衣さん妹と実質指揮官だった伍長さん。
報告を受けるが、特に問題がないようだった。 少し気になるのは売り上げが少し少ない様に感じる事だった。 売れないかな?
とりあえず、ギルドに達成の報告へ行く。
「依頼の達成の報告なんだが。」
「はい!少々お待ちください。」
ギルドの受付嬢が奥へ引っ込んでいく。
5分ほどで再び出てきて、案内される。
「お待たせしました。 こちらへ。 ギルドマスターがお会いになります」
「うむ。」
案内された執務室にはあの時と変わらぬギルドマスターが座っていた。
「久しぶりだなというには短いがね。 まずはお疲れ様というべきかな?」
「まずはありがとう。 こちらとしては色々と確認する事があるからその確認もな」
「そちらに関してはちょっとした行き違いがあった。 そこは謝罪したい。」
「行き違いね・・・。 どんな話かな?」
「まずは石や岩は、集積所行の箱が補給物資の箱と隣同士になってしまったために積み込み担当の職員が間違えてしまった。 申し訳ない。」
ギルドマスターは立ち上がり、深々と頭を下げた。
マスターとなれば、安易に頭を下げれば舐められるから下げないのが、鉄則だったので、異例ではあった。
「それは獣王国の人間にそれで通せると?」
「それはこれから行くさ。」
「行くなら早い方が良いぞ?また帝国は押している。 気をつけてな。」
「ついてきてくれないのか?」
「俺からしたら裏切られた気持ちに対しての償いと保証、依頼料が提示、納得してないが?」
「どれくらいの保証が必要だ?行ってくれ。」
「そうだな。 治外法権、無礼討ちの自由。 それも連合所属のすべての国にだ。」
「ばかな!そんなことをしたら、連合は潰れてしまうぞ!」
「こちらは交渉しているのではない。 命令している。 受け入れるかではないし、拒否もさせない。 裏切りの対価に全ギルドマスターの首を物理的に要求してもいいのか?」
「どちらにしても受け入れられない!ふざけている!」
「ふざけているのはどっちだ?存亡の危機にある国に送る物資を手違いがあったから謝るから許せ?馬鹿にしているのか?それこそ八つ裂きにされても文句は言えんぞ?」
「くっ!」
怒っていたマスターは、椅子に座って黙考を始めた。
「しかし、この街の事ならまだどうにかなるが、全部の国となると、無理だ。 時間が足りない!」
「先ほども言ったが、依頼しているのではない。 出来る出来ないではなく、受け入れろ。 徹底はそちらが死ぬ気で頑張れ。 努力が足りなければ、流さないで済む血が流れるだけだ。」
「本気で言ってるのか?」
「試すかい?」
マサルの余裕のなる顔を見たマスターは、自身で破滅のボタンを押すことを避けたかった。 だがしかし、目の前にいる男はいつでも押せるだけの戦力・兵器を所持している。 自分にあるのは、交渉力だけだったが、それを使うにしても失態がでかすぎた。 ギルドマスターとして、相手との落しどころが違うだけでなく、nowな決断を求められる上に彼の後ろには、獣王国という国が絡んでいる。 一つ間違えば、すべての責任を押し付けられて、消されるのは見えている。 落しどころを探した。
「ああ、それと、相手があと3日以内の返答を希望している。 期限はあと3日だ。 相手は連合ギルドのトップの直筆のサインと捺印を私の前で行う事を確認できなかった場合は、交渉決裂と言っている。 急いだ方が良い。」
「なっ!そんな連合ギルド本部はここから10日も距離がある所にある街だぞ!それにトップマスターは高齢だ。 体的にも、距離や時間的にも無理だ!」
「そうか、頑張って何とかしろ。 それがお前らの仕事だ。 決裂した場合は、即日で獣王国は国内の兵や傭兵たちを招集し、ここを目指す。 そのまま進撃してくるからそこでは交渉は出来ない。 頑張れ」
そこまで言った所で、退室していくマサル。
そして、閉めかかった扉の前で思い出したかのように振り返っていった。
「うちらの方もよろしくな。 納得しなければ、俺らも加わるかもね?」
笑顔で去っていく。 当然そこからはギルドは大わらわになった。
本部との連絡・相談。 交渉術を使って、10日の道のりを3日で踏破するための計画を練ることに。
どちらにしてもトップマスターにはすぐに出発してもらうように話し、周りで確認しながら、急ぐルートを考えた。 妨害や難所、懸念材料をすべて考慮して計画を出さないといけない。 戦争ではなく、略奪で終わってしまう戦争を起こさないようにする方法を模索した。
それどころか、自身らは近くにマサルの傭兵団の駐屯地があり、ギルドはいの一番に攻撃を受けることは明白。 必死だった。
「まずはここにトップマスターが来て頂かない事には、無理だ・・・。」
計画は順調に進み、先んじて妨害されるであろう賊を討伐し、魔物も倒しておき、計画通りに進ませる。 今のところ、5日の工程を1日弱で走破したが、ここから難所が2か所続き、慎重に進まないといけないところもあり、最大の難所がある。 それにトップマスターも体力がいつ切れてもおかしくない状況だった。 とはいえ、戦争となれば、ギルドは多くの金銭や物資を集積しているため、強奪される。 そうなれば、仕入れも出来ない。 そうなれば、立て直しは大変になる。
神が味方したのか、2日目の夜には、交渉している街より70キロの地点まできたが、そこでマスターが倒れた。 回復を行いながらの状態のために根本的な治療が出来ない。 とはいえ、ギルドマスターは3日目の昼前には、やってきた。 すぐに使者であるマサルが呼ばれた。
「おお、なかなか頑張ったようですね。 卑怯者だから謝罪を受け入れてもらうためには、必死ですものね。」
「この度はこちらの不手際で大変な迷惑を・・・。」
「はぁ?不手際?迷惑?殺されたい?違うだろ?すべてそちらの失態だろ?不手際どころの騒ぎじゃない!一つ間違えば、国が一つ消えていたくらいの失態だ!言葉を選べ!」
「もっ、申し訳ない・・・。 本当に。」
マサルの恫喝にトップマスターと言われている老人は、おびえた。
周りの職員もマスターを擁護しようとするが、下手な事を言ってしまい、無礼討ちされることを恐れた為に誰も口を開けられなかった。
「まずは遠路、規定内に足労してくれたことには評価をいたします。 まずは我らに対する物は治外法権と我らの販売している物の独占権と妨害をした商人・国等はこちらが指名した相手をギルドが即時の締め出しの徹底をしてくれれば、良しとします。」
「それでも相当の『パン』・・・権利。」
「なにか?わかりました。 ならば、治外法権のみで良いです。 ただし、金銭での保証は頂きます。 そちらの規定ではなく、こちらのですが。」
「わかりました。 受け入れます。」
希望を伝える際に話を遮ろうとした不届き物は髪の毛を一部、刈り取った。
その後の妥協策にギルド側が乗った。
これから国側の保証・謝罪についての話が始まる。
要塞で彼女に預かったものを渡す。
「この書状は相手側の高官から渡された物です。 心して読んでください」
「はい。 拝見します」
マサルが渡す書状をギルド職員が受け取り、トップマスターに渡す。
読んでいくうちにトップマスターの顔色が困惑に変わる。
「失礼ですが、我々が獣王国へ赴けば、よろしいのでしょうか?」
「そちらの書状については、渡すように言われているだけで、内容がわかりません。 どういう事ですか?」
そこで説明をされたのは、ギルド側の責任者を含めた一行を招くという物らしい。
失態・妨害に対する詰問を行うために召喚らしい。 当然、断れない。
断っても良いが、そこで待っているのは、破滅か併合の二者択一。
そして、その同行者に自分が指名されているとのこと。 ただし、護衛ではないので、ギルド側は自身で雇う必要がある。
「そうですか・・・。 わかりました。 われわれは平気ですが、そちらはどうですか?準備にどれくらいはかかりそうですか?」
「そうですね。 2週間は貰えますか?」
「論外です。 10日以内で整えてください。 謝罪に行くのに待たせてどうするんですか?」
「・・・。 わかりました。」
こうして、再び要塞へと向かうことになった。
今度は土産付きで。
「どういうことになるかね。」
手には治外法権を連合内で全面的に認める書状を持っている。
暑い日が落ち着きましたが、まだ蒸し暑い日が続いています。
体に気を付けましょう