戦力
技師二名が味方になり、にぎやかになった部隊は一路、小国連合に向かうことになった。 比較的安全な避難国であり、永世中立国的な国であるから避難民が多くいっているとの二人からの意見で向かうことになった。
「しかし、無事に着けるかな?」
「なに、無事に着くようにする行動をすればいいんだよ」
助手席でのたまう白衣姉こと、シイラ。 ブラウスにショートパンツで白衣を纏い、大股開きで座っている。 ちなみに白衣妹こと、レイラさんはトラック荷台に乗っている。
「・・・。 とりあえずこのまま、まっすぐか?」
「ああ、まっすぐだ。 そのうちに小国に向かう中間の街に行きつくから今日はそこで一泊だな。」
いうが先かで壁に寄り掛かるように寝てしまった。
「案内ぐらいは最後までしろよ・・・。」
それから2回休憩をしたのちに中間点の街にたどり着いた。
避難する人達で町は活気に沸いていたが、それは幻想だった。 通りの端には疲れ切った人達が座り込んでいた。 それは戦争ではよくある被害者だった。
「街には入れそうにないな。 街の外でテントを張ろう・・・。」
「ああ」
マリーダも気が付いていた。
そして、呪った自身の力のなさを。
とはいえ、一人の兵士が強い力を持っても集団で挑まれれば、つぶされる。 数には勝てないのだ。
もっと、力が欲しい・・・。
その夜、自身のショップ内にあるスキルが販売されていた。
売られていたスキルは『精兵召喚』『志願兵募集』の二つ。
『精兵召喚』 価格は1200万クレジット
文字通り精兵を召喚してしまうスキル。 自動で指揮のスキルがつき、そのレベルで召喚兵の数が増えていくというスキル。
もう一つのスキルは『志願兵募集』 価格は15万クレジット
スキル保持者が先導者となるスキル。 先導された者は先導者に忠誠を誓ううえ、兵士としての能力が向上し、指揮能力はつかないが、先導次第で大軍を手に入れることが出来るスキル。
「性能を考えると、前者だけど価格的には後者しかない・・・。 しかし、どこでやるか・・・。」
15万クレジットを払い、スキルを買う。 他に幾つかのスキルも買う。
有望そうなスキルや武器・設備を見ながら、眠りについた。
朝。
街の入り口付近に止まったトラックの荷台で目を覚ましたマサルは、目の前の光景に驚いた。 入れなかったと思われる難民が、溢れていた。 種族問わず。
「これだけいると、すごいね。」
「はい。 すごいです・・・。」
「戦争で被害を被るのはやはり一般人だ。 それを守るのは軍人だが、命令で動けない事は多い。 辛い思いをした軍人はこれも多いのも現実なんだ。」
ピコーン『志願兵募集』スキル発動。 先導者の効果発動しました。
「そうだ。 命令とはいえ、市民を見放さなくてはいけないなんて・・・。 畜生!」
「おれは生活を守るために兵士になったんだ。 なのになのに・・・。」
「戦車に蹂躙されそうな市民の集団を見捨てないといけないなんて・・・。 なんでこんな事に」
先導者のスキルで、負傷兵たちから沈痛な言葉が吹きだす。
彼らも傷ついていた。 助けようにも助けられなかった者、命令のために見捨てなければいけなかった者等、苦しみながら来た者もいる。 彼らに先導者のスキルの効果がしみこんでいく。
「俺、あんちゃんについていくよ!」
手をあげたのは、13歳くらい男の子だった。
「親御さんはどうしたの?」
「父ちゃんは兵士に殺された。 母ちゃんも一緒に・・・妹も・・・ううっ」
少年の心には大きすぎる傷だった。
家族が自分を残して、すべて死んでしまった・・・。
少年の言葉は一気に先導者のスキルの効果が浸透した。
我も我もと、さっきの負傷兵を中心に志願兵が増えていく。
種族選ばず志願してきた。 少年も女性も。
「思っていたより効果高い?」
「そうですね。 ここまでとは思いませんでしたが・・・。」
結果は難民からも志願兵が来た。
人数は百人の志願者が現れた。 男女含めてだが。
しかし、義勇軍を編成しても根無し草ではどうしようもない。
ご飯がなければ、戦い続けられないし、弾もなければ継続して戦闘も出来ない。 よって、必要な物はスポンサー。 しかも継続的にお金を出せる人。
「どうする?金が続かねば、戦えないぞ」
「少し試してみるよ。」
彼らをマリーダに任せて、マサルは商業ギルドへ。
そこでマサルはあるものを作る権利と販売する権利を売りに出した。
それによって、状況が変わっていくことになった。