戦いの果てに・・・
今回を持って、この話はひとまず締めたいと思います。
また同じ系統の話を書きましたら、ご閲覧して頂けたら幸いです。
100話を越すお話を読んで頂き、ありがとうございます。
先の連合との抗争は、反アバロン側の継続戦闘力を大幅に削り取った。
獣王国・公国・共和国普人国・小国連合と、反アバロンの主要国や組織は、連合の参集で多くの組織が人員と資金を集めた。
結果は敗戦に終わり、抵抗勢力は多くが壊滅や資金難になり、活動に大幅な制約を受けた。 その間もアバロン諜報部隊が暗躍し、彼らの残った芽を刈り取っていく。 反アバロンの強い傭兵団の幹部が不慮の事故を装って、暗殺。 反アバロン派に資金を供給している商会や商人も次々と姿を消し、抵抗の芽は潰されていった。 一方で反アバロン派でも平和的に職や仕事を見つけ、真っ当な生活をしようとする者は何もしなかった。 彼らの活動で害する事はしない。
「帝国皇帝より先の出産についての礼状が届いております。」
「うむ。 無事に着いたようで何よりだな。」
「閣下もユリ様の2度目のご出産でしたし、マリア様も3度目でございます。 閣下も子沢山でございますので、お体をご自愛ください。」
「・・・。 そうだな。 気を付けよう。」
「はっ、よろしくお願いします。」
実際に俺も複数人の奥さんがいる身だから出産が重なったり、二日続けてという事もある。
子供もすでに10名以上いるから異母兄弟だらけだ。 それでいて、仲が悪い訳でもないからマリアの子がユリーダの子と遊んでいる事も普通にある。
「俺も子沢山だよな・・・。 しかし、子供を産み育てられる世界・・・。 なんと平和で良い事よ。」
おれの独り言も扉の向こう側ではあっというまに消される。
子供達の声が充満しているプライベート空間は、大いに騒がしいからだ。
「貴方様。 執務は落ち着かれました?」
「ああ、今な。 義弟殿から先の出産について、感謝の手紙を貰ったよ。」
「そうですか。 あの子もすぐに家のようになるわね。」
「どうかな?まあ、一人というわけにはいかないらしくて、側室の選定に苦労している様だよ?」
「それは仕方がありません。 妻は一人だけというのは、権力者ではありえません。 貴方の様に複数の側室と一人の正室。 これが自然です。」
ゆったりとした椅子に座る正室のマリア。
すでに20台には入ったが、貫禄も女性らしさも増した。 騎士をしていた時よりも鋭さはないが、いまだに剣の腕は立つ女傑になった。
「主殿。 我らの軍も今や強大な力を手に入れた。 これは嬉しい限りだな!わっははっ!」
「ユリーダ・・・。 君はあまり変わらないな。」
「私は私だ!何者ではない!」
「・・・。 そうだね。」
娼婦にされる寸前から助け出した彼女もすでに二度の出産を終え、母になったが最初からの豪快な所は抜けなかった。 その事で少し危うい感じがしたが、彼女は肝っ玉母さんの様な頼りがいのある女性に変貌したのだ。 子育てを手伝ってくれる親類の女性達と共に他の正室と側室仲間の子供も手伝っている。
「閣下。 内政も落ち着きました。 帝国間の取引も順調でこちらのものも良い感じで売れています。」
「ジョアンナ、君も無理はしないでね?」
「大丈夫ですよ。 ユリーダたちが手伝ってくれるから。」
「そうだが・・・。」
「無理はしませんわ。 でも、もう3回目だから平気だから。」
以前と変わらない真面目そうな制服に身を包んだジョアンナも今は目立たないが、妊娠をしている。
しかし、依然と違うのは上着をサイズチェンジした事。 母になった事で以前の服が着れなくなった為。それでも彼女の凛とした美しさは失せることなく、寧ろ輝きを増している。
「旦那様!昨日、私の子がご飯を食べれる様になりました!」
「ユリちゃん!いくらでも食べるからといって、食べさせては駄目です!」
「二人共仲が良いな。 まあ、医務官のいう事は聞けよ?ユリ?」
「旦那様もエリザちゃんの肩を持たないでよ!ブゥー!」
「はいはい。 悪かったよ。」
「当たり前の事です。 ユリちゃんがいい加減だからいけないです。」
「うううっ!」
囚われてから一緒にいるこの二人も仲がいい。
俺の妻になり、出産を経てもその中の良さも色気も増した。 それでいて子供の育児も協力してやっているようで本当に仲がいい。
彼女らの周りにも子育てを手伝うために実家から与えられたお手伝いさんが数名ずついる。 彼女らも妻間を行き来して、それぞれの妻達を助けている。
妻達は互いの子供の子育てをして日々を過ごしている。
軍も抵抗勢力が自滅・減退したことで、治安維持と危険魔獣討伐がメインになった。
その部隊運営も今では妻達の手を離れ、部下たちが廻している。 妻達は子育てと俺の相手、妻同士のお茶会に精を出している。 それどころか部下の女性陣も巻き込んだ一大組織となり、陰から夫を支える組織の様な会を結成したらしく、初代会長にマリアが就任したらしい。
隣国の帝国の皇妃もその会員らしく、着々とその触手伸ばしている様子。 その為か、下手な組織より情報をもっている。 そして、その情報は彼女らの中で精査され、有益とされたモノはそれぞれの夫の元に妻からのピロートークや睦言のような形で齎される。 それがある為か、アバロンは安定した運営をしているのだった。
<時は流れ>
時が流れて、新獣王国に訃報が響く。
新生獣王国評議会議長の地位にあった宰相が、病没。 志半ばで旅立った。
後を息子が継いだが、他の宰相と共に政をしていた貴族達も病気や死亡によって、結成当初の半分が姿を消していた。 存命の者も体力の減退や体調の問題でほぼすべての貴族評議員が引退し、後を弟や甥、息子たちが引き継いだが、すでに反アバロンではなくなっていた。
彼らは評議を重ね、獣王国は帝国の軍門に下った。 表向きは皇妃の領地としての承認を得て、皇妃の領地となった。 裏はそれを理由にしての領内の立て直しだった。
公国は完全に解体され、共和国の人族2か国に吸収合併という名の併合された。 公国は獣王国以上に経済が行き詰っていた。 その為に身売りをするしかなく、無条件併合を受け入れた形だ。
小国連合は、形は維持をしているが、連合としては成り立っていない状態に戻った。
その形に戻ろうとはしているが、それを請け負うだけの人材がいない上に戦闘の傷が深く、立ち直っていなかった。 その為、小商いが中心の昔ながらの部族間取引が主になり、かつての様には行えなくなったことで鎖国体制になっていった。
さらに時がたち、帝国の後継ぎがアバロンの第二夫人の長女が嫁ぐことが決定した。
これは両国の合併を目標にした物になった。
「これからは新しい世代が世を作っていく・・・。 それまでは精進せんとな。」
「そうですね・・・。 まだ戦闘は絶えない・・・。 今までの様に大きな戦いはないが、戦いは続いているのは、悲しい・・・。」
「仕方がない事だ。 宗教やしきたり、体の色や言葉・・・。 そのどれかが違うだけで争いが起こるのは仕方がないのだ・・・。 だから我らは考えねばならない。 争いがなくなる様に・・・いや、少なくなるようにな。」
「そうですね。 共に頑張りましょう。」
「ああ、共にな。」
話をしている二人が互いを見る。
アバロン国頭首と帝国皇帝の二人がいま、傾こうとしている日差しに目を向ける。
互いの国の安寧を祈る二人の元首は、これからも共に政務に励むのであった。
余談ですが、投稿中のお話もございます。 そちらも御贔屓にして頂きたく思います。
これからもKYの作品をお願いいたします。