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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY
108/109

帝国皇妃 出産 襲撃 

スイマセン。

更新が大幅に遅れました。

季節の変わり目で多くの方が、体調不良になりましてピンチヒッターを頼まれる事が多く、大変です。

連合の惨状を報告書で受け、その被害に溜飲が下がる思いをした。


連合被害

 家屋全壊 320棟(ほぼ各幹部宅のみ)

 物資保管庫・収納庫 2500

 馬房・竜房被害 300

 死亡者 120名


このほかにも破損や被害が判明しきれていない物があるが、それらを統合すると、連合の物資在庫のほぼ7割に達している。 民生品である国内分は確保しているが、商いの為に3割ほど民生から出しているらしくて、連合の中で不満が増えてきているらしく、帰国した幹部たちは突き上げに合っているとの事。

それに影響を受けたのは、公国と新獣王国である。

 連合に依頼した食料の半分程度しか入らず、国内の消費に追いついていないらしい。 公国は隣の共和国の国々と交渉し、なんとか消費量を確保しているが、獣王国の分は確保できなかったらしく、公国からは僅かな物資を乗せた荷車が、向かうのみだとも報告が来た。


「あの宰相殿も大変だな。」


「はっ、非公式ではありますが、帝国に交易の打診があったとあちらから連絡がありました。」


「して、答えは?」


「『義兄殿の許可がないので出来ない』と、伝えたそうです。」


「それはそれは。 だが、食料は少し考えねばな・・・。 人は腹が減ると、見境がなくなる。」


「御意に。 前線の部隊より痩せた兵士達が草を毟って、食べていたという報告があります。 少し検討したいと思います。」


「頼む。 暴発しないようにしてくれ。 少しあちらの方も産業があればいいが・・・。」


「あちらは傭兵業を始めた者がいるらしく、しきりに営業をしているようです。 主に反アバロンに。」


「警戒は続けよ。 疑いのある所は監視の網は掛けろ。」


「はっ!」


その後の追加報告で活動している傭兵団は12。 そのうち3の兵団が反アバロンを掲げ、こちらを攻撃する機会を伺いながら連合や公国、共和国からの物資輸送に従事していた。 他の兵団も大小の差はあるのだが、少なからずこちらに恨みはある。 そこは人的資源は多い国だから出せる物は人。 その為、食料も不足気味の新獣王国内では、前線に回される物資が先細りになった。 

 一方でアバロン側は普通に食事もとれるし、嗜好品もあるから余計に不満が溜まる。 先の連合を叩いたことで、物資の輸送量は大幅に減った事が前線兵士に響いた。 結果が足りずに雑草を齧るという形で現れた。

アバロン側も対策として、帝国側に取引に応じる商人に扮した帝国軍人が、帝国製の食料と嗜好品が渡っていった。 当然、武器は出さなかった。 そういった行動で国内のこちら側の不満は和らいだが、依然としてくすぶっているものはある。 その懸念が起きそうな事案もあるからだ。

書類箱の一番上にある封書。 これがあるからだ。

内容はやはり旧獣王国皇族最後の生き残りである現帝国皇妃の存在だ。

今、彼女のお腹には子供を宿している。 それが安定期を過ぎて臨月期を迎えようとしている。 その彼女がより安全な出産をするためにアバロン中央病院に入院している。 手紙はその妻を案ずる夫で、義弟である帝国皇帝からの手紙だ。

 

「本当に大変だよ・・・。 これで彼女も含め赤ん坊にも危害が加われば、こっちもただでは済まないしね、どうしよう・・・。」


「閣下!皇妃様が産気づかれました!」


「来たよ・・・。 医療体制は万全に。 警備も手抜かりないようにね。」


「はっ!」


フラグ回収とでもいうべきか、件の中心人物が産気づいた。

今は分娩室に入り、出産に向けての過程に入っているとの事。 無事に生まれる事も大事だが、国に返すまで何事もない毎もないようにするのが、目標になった。

出産自体は順調位にいった。 一月近く入院していたことで状態が把握できたことが大きい。

産まれた子供は4人。 診断時は3人と思われたが、もう一人いたことが判明し、現場では少し慌てたらしいが、そのまま産まれて男女とも2人の4人の赤ん坊が、元気に産声を上げた。

彼女も疲れ切って、自身の子を一目見た後は安心したように意識を手放し、夢の国に向かった。 バイタルも問題ない事で、病室で様子観察となった。 赤子たちも入室制限された特別室に移され、監視と成長が見守られることになった。

事件も起きる。

特別室担当の看護師二名が病院内で倒れている所を発見された。 ほぼ半裸で。

駆けつけた病院関係者や女性警技官らの聞き取りで、後ろから誰かに襲われてからは記憶はなく、気が付いたら服が奪われたらしい。 当然、容疑者はすぐに見つかった。 特別室に入ろうとしたが、暗証番号と指紋が合わなかった事と、見覚えのない看護師に疑問を抱いた警備担当が声を掛けた事で相手が逃げた事で捕り物となった。 麻酔銃が撃ち込まれた事で確保され、容疑者1名が確保された。


「ちっ、捕まっちまったか・・・。」


「容疑者確保した。 警戒を続けよ!」


捕まったのは狼族の女性。

倒された看護師は普人とエルフの女性だから多少無理はあるが、獣人の看護師もいるアバロンでは紛れ込むことは出来た。 実際に特別室手前までは来ているのだから。

しかし、奪われた服は2着。 容疑者が着ていたのは一つだから足りない。 尋問を行ったが、当然ながら言わない。 尋問がしている担当官からもいい返事が聞かれなかった。


「この状況はよろしくない・・・。 まずはもう一着の看護師服といるか分からない工作員の存在は良くはないな・・・。」


「捜査と警戒は続けておりますが・・・。 今のところは・・・。」


「そのまま頼む。 もし赤子の一人、彼女自身でも帝国とのヒビになってしまう。 それは避けねばなるまいし、それ以外の目的も・・・捨てがたい。」


「はっ!」


<???>


ここはアボロンでは珍しい棄民が溜まり場にしている酒場の二階の宿屋に黒い影が複数いた。

アバロン内でも比較的治安が安定していないのは、街の入り口にある門前町の端っこ位しかなかった。

しかし、そこも当然捜査やがさ入れは来る。

しかし、いる人の数が多い為に手が届いていないというだけで、犯罪は少なかった。

その宿の一室で密会が始まった。


「先の赤子の強奪は駄目だったが、合鍵キーと皇妃の所在は確認できた。」


「しかし、それでは足りない。 登録している指紋や目のチェックがあるらしい。」


「その点、赤子の方はそこまでの監視がないらしい。 その代わり有人の警備員室前を通らないといけないらしい。 ロックもそこで解除するらしい。 刃物や武器類はセンサーですぐに気が付かれる。 油断が出来ない。」


「そこは我ら固有の爪で掻っ切ればよい。 赤子の首位が何のことはあるまい。」


「そこからは情報がないために入ってからどうなるかだ。」


「逆に警備兵の制服を奪い、大型ロケット発射場か工場を破壊しに行った方が良くないか?」


「いや、そこには常に警備がいる。 赤子や皇妃誘拐の方が相手の深層に深い傷が出来る。 一応、協力者が騒ぎを起こす手はずになっている。 そこは向こうに任せるしかない。」


「分かった。 当初の計画通りにその二つを主に狙う。 陽動は協力者に一任する。」


「各自の健闘を祈る。」


無言で去っていく人影は次々と下にある酒場へと消えていった。

彼らがどう動くかはわからなかった。


<アバロンサイド>


ここ最近は軽犯罪が目立っている。

万引きや窃盗、置き引きなどだ。 元々、起きやすい犯罪ではあるが、ここ最近が顕著になった。

犯人も統一性のない構成だが、なぜか引っかかった。

流民や難民の類は、役所で申請すれば、休む所と食事は保証され、仕事も経歴に合わせて対応する体制が出来ており、他国民でも対応は変わらない。 犯人の過半数は他国民と流民だが、自国民の存在もあることに疑問があった。 普通なら気にならない所が気になった。


「閣下、お呼びでしょうか?」


「忙しい所で済まない。 この犯罪を犯した人間の背後関係を洗ってもらえるか?」


「これをでございますか?」


「すまないが、頼む。」


「閣下がそこまで言うのですから意味があるのでしょう。 分かりました。 確認します。」


俺は首肯定し、書類を渡す。

受け取った男性は、俺に一礼して去っていく。

書類を受け渡した俺はその体を執務椅子に委ね、愚痴る。


「嫌な予感が当たらなければよいが・・・。」  


しかし、フラグというものは回収される物らしい。

それから数日後に各軍事拠点内の武器庫が攻撃を受けたとの報告が来た。 そのうち1つが中の物が取られたらしいが、そこは食糧庫だったらしく、武器と同じ木箱に入っていたが、中は食料との事。 それ以外は攻撃を受けたが、追い返したとの事。

さらに3日後に病院内で暴行事件が発生し、逮捕者とけが人が出た。 さらに2日後には市場でボヤが起きて、一時騒然となったとの報告が来た。


「やはりだ。 これから何かが起きる・・・。 警戒せねば・・・。」


「しかし、閣下。 どこをどのように警戒をすればよいか・・・。 分かりません。」


「彼らの狙いは多分、こちらに継続的なダメージになる事を狙っている。 そうなると、兵器を破壊することは一時的だ。 奪うなら変わるが。 しかし、どこに何があるかなんて探っていたら他のターゲットがいなくなってしまう。」


「・・・!まさか!」


「そう、それが狙いだ。 看護師の服を盗ったのも手段だったんだと、俺は思う。」


「直ちに手配を!」


「いや、すでに頼んだ。 それがうまく働けば避けられるはず・・・。」


「分かりました。 我らも出来る限り対策を練ります。」


「そちらもよろしく頼む。」


「はっ!」


警戒をしていた事は現実に起きた。 

各所で起きたボヤや喧嘩が相次いだ。 その騒動が病院近辺に起きたことで病院を警備していた隊員も応援に駆り出された事で入り口はがら空きになる。 そこに怪我人が押し寄せた為に病院の警備スタッフや医療スタッフもそちらへ。 そうなると医療スタッフは各フロアが最低限の人員になった。 警備も。 そこを狙って、来た。

工作員は4人。 全員が赤ん坊を狙った。

叫ばれる女性より叫ばない赤ん坊を狙った誘拐作戦は、別で警戒中の部隊に発見され、睡眠薬が塗ってある針で3人が倒され、未遂に。 最後の一人は入り口まで来たが、暗証番号が変えられている上に警備システムも更新したことで、たどり着いた頃には確保のための人員が待ち構えている所になった。

不利を知り、逃げ出すがその頃には逃げ道もなく、御用となった。

即日で尋問が行われ、案の定であるが後ろには危険認定した傭兵団がいる事が判明した。

理由は帝国との不和。

子供がいなくなれば、必ずヒビが入るとにらんだ人間が彼らに依頼した。

その事で彼らは行動して、失敗した。 背後関係も洗ったが、有力な証拠が出ずに傭兵団上層部も彼らを裏切り者として、尻尾きりをした。


「お前たちも上司が悪かったな・・・。」


「ふん!失敗したんだ。 切られる事はどうにもならん!」


「諦めが良い事で・・・。 それならウチ来るか?」


「あほか?お前?俺は敵だぞ?また襲ったらどうする?」


「その時は殺すさ。 遠慮なしでな。 だが、技術は惜しいからな。 お前がその気なら雇ってやるよ。 なんなら家族連れでも良いぞ。 お前の方で使える連中も来たい奴は考えてやるよ。 連れて来たらだがな。」


「・・・。 本気か?」


「どうとるかは任せるが、それ以外の仕事の連中でも良いぞ。」


「・・・。 時間をくれ。」


「好きにしろ。」


暗殺部隊の頭目と思われる男は、真剣な顔をして尋問室を去った。

保釈された彼は、仲間や家族を引き連れて現れた。 アバロンに就職するためだ。


「来たぞ。 雇ってくれるんだろな!」


「それは適性を見てだ。 他の連中もそれぞれ対応するから。」


「おう!よろしく頼む!雇用主殿!」


こうして、暗殺部隊の面々もアバロンに就職した。

元々似た活動をしているメンバーはすぐに諜報部隊に組み込まれ、専門的な知識を叩き込まれ、彼らは自身で活動していたより数倍の金額を手に入れ、任務に集中できる環境を手に入れた。

他の仕事をしたい者も面接をして出来るだけ対応してやり、各地へ。

聞き取りをしていくと、やはり獣王国内の過激派貴族と公国商人の一部が裏で糸を引いていた事を知れたが、あえてすぐには攻撃をしなかった。

しかし、彼らは徐々に時代の波にのまれて消えていった。 静かに・・・。


それから3か月。

帝国の迎えに乗り、去っていく皇妃となった元獣王国皇族最後の生き残りの女性。

今は自身のお腹を痛めた末に、産み落とした4つの命が入ったオクルミを来た3人の侍女達と満面の笑みをのぞかせていた。


「お世話になりました。 お陰で無事に生まれました。」


「まずは良かった。 これからが大変ですが、助けを借りながら頑張ってください。」


「はい!有り難く・・・。 皇帝にもとても良い贈り物を頂きました。 天に感謝しなければ・・・。」


「お帰りもお気を付けください。」


「そこは心配しておりません。 帝国騎士や兵士が守ってくれるのです。 安心です。 国境まではアバロン軍も護衛に就いてくれるのです。 これ以上の安心はありませんよ。」


こうして彼女と赤子たちは、馬車の中に納まって病院前を出立していく。

医師団や看護師も頭を垂れる。 その前を馬車が騎士達の馬や兵士の行軍を間に挟んだ状態ですすむ。

彼女も自身の出産に尽力してくれた医療団に御手振り(おてふり)をして、彼らに行った。

それから20日ほど経った頃に帝国皇帝名前で、皇妃が帰国した事を知った。

手紙には、子育てや妻を労わることに腐心している若き帝国皇帝の奮闘が書かれていた。


「あちらも苦労しているだろうな・・・。 まあ、頑張れよ?」


自身も二桁の子供を妻達に産ませている。

当然、妻だけでは対応できない。 しかし、妻達は偉ぶることなく、周りの人に手を借りて子育てをしているのだがから。

今日も自分のプライベート区画は、子供の鳴き声や妻や手伝いの女性の声で溢れている。


「今日も平和だな・・・。 ここは。 いや、ここだけは・・・な?」

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