アバロンの報復 連合の末路
少し体調がよくなりました。
ですが、季節の寒暖差はきついです。
連合側の交渉担当を自陣営に引き込んだアバロン側は、連合側に対しての報復をどうするかが話し合われていた。
「連合は中小の部族や経済集団、グループが合わさって集合した集合体で議員という代表者が集まり、議会を開催して合議制を取っていますが、利権や議席には値段がつき、その席や利権を資産が多い者が寡占状態で保持され、本来の運営は効率が悪い状態にあります。」
「成程、叩き潰しても問題のない集団であることは分かった。」
「今回は連合をメインではあるが、命は奪うべきではない。 出来るだけな。」
「では、どのように?」
「現政権で今回の事に関わっている連中には、制裁を加える。 場所も分かっているな?」
「はっ!勿論です。」
「よろしい。 ロケット部隊に下命。 連合首脳部の屋敷を更地にしろ。」
「はっ!直ちに!」
下命は即刻、部隊に下命されてターゲットとなった首脳陣30名の邸宅が第一目標とされ、発射台に目標に二発叩き込めるように60発がセットされる。 発射台付近は件の部隊の隊員が走り回り、発射準備が整えられる。
2時間後には準備が整えられた。
「・・・。 発射、整いました。」
「うむ。 彼らに反省を促そう。 すでに告知書があちらに付いているはずだしな。」
「あの連中が真面目に帰っていればですが・・・。」
「そこまでは知らん。」
「発射は誰がなさいますか?」
「彼女にして貰う。 来たまえ。」
呼ばれたのは、交渉団の代表者の女性だった。
彼女は今後、アバロン側の役人になる事が決まっていた。 その上で過去と決別する意味を込め、ここに来ることを立候補した。
「後悔はない?」
「後悔するくらいなら娘と共に自決しますわ。」
「そうだね。 ボタンはそこだ。 好きなタイミングで押してくれ。」
「畏まりました。」
ポチ。
彼女は俺からボタンを教えて貰うと、一礼した後ですぐに押した。
何の躊躇もない行動に周りにいた側近が驚くほどだった。
大画面のモニターに大音響と噴煙の中を飛び上がろうとしているロケット弾が映っていた。
その画像を横目で見ながら、彼女に聞いた。
「躊躇しなかったな。」
「ええ、こちらの方に祖国がしていたことを教えて貰いましたので。 旦那もまさか加担していたとは思いませんでしたが・・・。」
「・・・。 愚問だったな・・・。 ご苦労。 下がって良し。」
「はい。 失礼します。」
作戦室を出て行く彼女を見送る。
画面には白煙を引きながら飛んでいくロケット弾。
かつての部下によって放たれた復讐の刃が、一路連合に飛んでいく・・・。
<交渉団・護衛組>
彼らはアバロン側のハニートラップにまんまとハマり、酒に女にと、娯楽を味わった。
護衛組全員で同じ場所にいるので、裏切られる事はない。 それを良い事にアバロンから提供される物を好きなだけ貪った。 交渉組が頑張っているときも人質がいるから何もできないと決めつけて好きなだけ楽しんだ。
しかし、それにも終わりが来た。
交渉組が体調不良を起こすほど頑張ったらしく、全員が病院に収容されてしまう。
「交渉担当者が倒れた。 他の者も要検査で10日ほどは、ベッドから離せない。 だが、彼らの成果である書簡がある。 そこで君らに持ち帰ってもらいたい。 どうかな?」
「はっ!有り難く頂きます!(マジかよ・・・。 もう少し遊びたかったのに・・・。)」
「よろしく頼む。 急いでくれ。」
「はっ!直ちに向かいます!」
口ではそう言っているが、明らかに嫌そうな護衛組。
しかし、命令で来ている以上はその書簡(成果)がある以上は国に運ばないといけない。
当然、即日に出て行ったが、ダラダラと国境を目指した。
「ちきしょう!交渉組の連中ももう少し長引かせろよ!メイドのヘーリアちゃんがもう少しで落とせたのによ!」
「俺もだよ。 あとアバロンの酒なんて故郷じゃあ、飲めねえしよ。」
「食べ物もだよ!何のためにここに来たか分からないよ!」
任務の事など糞くらえと言わんばかりに誰も聞いていないと、思ったようで毒舌を吐いていた。
しかし、歩みは馬の並足より遅い速度で進んでいるために日が暮れた頃であってもアバロン執政府のある街から15キロほどしか離れていなかった。
近くの街でも大抵は、朝日が昇るころには出発するのが基本だが、彼らは日がある程度登った頃に出発したのだった。
当然、そんな牛歩で進んでいけば、距離も伸びない。
10日もかけ、アバロン国境から数キロの位置でまた日が暮れた。
「いよいよアバロンとはお別れか・・・。」
「いうな。 今日は食いだめ・飲みだめしようぜ・・・。」
「そうだな。 もうこれないだろうし・・・。」
彼らは任務の事より自身の利益を優先し続けた。
それが翌日に後悔することになる。
翌日、宿の外で空を切るような音にのろのろと起きだした。
「うるせぇな・・・。 何の音だ?」
「んあ?」
「どうした?」
昨日は酒や食事を部屋に持ち込んで遅くまで飲んで食った。
その為に起きるのが遅くなった。
窓を開けた一人が、幾条もの白煙が飛翔している事に気が付いた。
「なんだ?あれは?」
「ん?あの方向だと、連合の方じゃねぇか?」
「まさか・・・。」
彼らも信じたくはないが、今自身の中にある疑問と結論が急げと告げていた。
彼らはまだ寝ている同僚たちを叩き起こすと、急いで馬に飛び乗った。 もし、これがアバロンの報復だとすれば、日付も書かれている。 行きは3日で来たのを10日もかけたのだからヤバイ。
意図的に被害が出る様にしたとなれば、自分どころか家族も危ない。
「急げ!言い訳もできない状態になる!」
「「「「おう!」」」
大人数がいたが、到着が遅れる事は目に見えている。
彼らは数名に絞り、一気に国を目指すことにした。 確かにそれは有効な手段ではあるが、すでに遅かったのだが、努力をしないという訳に行かなかった。
結果は幹部・首脳陣の邸宅を完全に破壊されてから25時間後に辿り着くという失態を演じた。
「貴様らは我らにこんな目に逢わしたのだ・・・。 分かっておろう?覚悟せよ。」
「そんな!どうか、温情を!」
「知らん。 連れていけ。」
何かを叫んでいた護衛組の代表者は他の護衛組の面々と共に監獄へ。
当然、彼らの家族も同様に連行されたが、護衛組を縁切りすることで恩赦が出ると知ると、すべての護衛組の家族が離縁した。 家族持ちも妻の実家にすべてが取られ、単身者は実家がと、彼らはだれも守ってくれないまま、暗い牢屋で過ごした。
彼らの命もアバロンのロケットで消し飛ぶ運命になった。
連合の幹部連はひとまず生き残ったが、当然だが資産は吹き飛んだ。 それどころか、偶然家にいた家人が巻き込まれた者もいた。 その被害者の人数は10人。 アバロンに対しての損害賠償請求をしようという流れになるが、監獄と共に吹き飛んだ護衛組の持ってきた書状に彼らは凍り付いた。
「アバロンは本気だ・・・。 我らに誠意ある対応を即日で求めている・・・。」
「それはどういう・・・「読め。」・・・失礼しても?」
議長が書状を他の議員に渡すと、その議員の周りに人だかりが出来る。
その内容は先代の受けた物と変わらない事と、首脳陣による申し開きを求める物だった。 それも早急なるもので。 その会談で連合を潰すか、存続するかを決めるというものだった。 それも首脳全員の出席のみがテーブルに着く条件となっていた。
「今から準備となると、一週間はかかりますぞ?出立するのにも。 いかがしますか?」
「いや、それでは二次攻撃が行われる可能性がある。 その可能性も示唆している。」
「そうだ。 すでに二次攻撃の目標が指定されている。 今から中のモノを他へ移したりしていたらさらに時間がかかるぞ。」
「いや、あまり引っ張るべきではない。 二次攻撃がすぐ行われる可能性も・・・第三次もないとも言い切れんし・・・。」
「指示は出して置き、直ぐに出るか?」
「いやいや、物資が膨大だ!誰か指示を出す者がいなければ、混乱が出る!そうしたらどうする!今後の商いに支障が・・・。」
議論は堂々巡りを続けた。
先代の時は期日の指定があり、それに間に合わすためにひたすら急いだ。 橋がない所に船を繋ぎ、その上に板を渡して急造の橋をかけたり、通過する街の目抜き通りを完全に封鎖して街を駆け抜けたりもした事もある。 今回は時間制限はないが、遅れていると判断された瞬間にアバロンから先ほどのロケット弾が飛来して、我らの資産を破壊していくと、警告されていた。
急ぐにしても首脳全員の出席が義務とされ、残って指示を出すことは交渉決裂するとも言われている。
八方ふさがりの中で解決策を見出そうと、全員が出しては潰しを繰り返している。
「結論は出たな・・・。 我らはすぐにアバロンに向かおう。 各次官クラスに荷物の移送を指示させ、彼らの指示に従うようにせよ。 また、ロケット攻撃を受けた際は、直ちに退避して安全を確保するようにとも伝えろ。」
「・・・よろしいですか?それで・・・?」
「それしかない。 これ以上連合に悪評を持たすと、あちら(アバロン)はこちらを潰しにかかるか、必要物資の無償供与を言い渡されかねない。 今は時が必要だ。 急げ。」
「はっ!」
連合の首脳陣は大慌てで準備を始めた。
今回の取引の事も、その他諸々の準備もせねばならないが、ここでとちればあちらですべてが終わる。
あちらが遅いと判断すれば、向かっている最中に攻撃も受ける事もある。 彼らは必死にない時間を準備に費やした。
しかし、出発に3日掛かり、護衛隊の帰還からすでに5日経過した。
一行は馬車10台と冒険者と兵士の護衛を含め、70名の大部隊で旅立った。
「ひとまず出立した。 まずは急げるだけ急ごう。」
「はい!」
しかし、計画通りには行かなかった。
通常の工程の三分の2の時間で進むことを決めていた為にまず急かされる事で、護衛の冒険者達から不満が出始めた。 そして、不満を食事や金銭で補いながらアバロンに入った。
そこからはさらに辛くなった。 護衛の冒険者が途中で契約を解除する事が増えた。 アバロンに入った連合側の冒険者が次々と去っていく。
「おい!契約と違うぞ!目的地に着いていないのにいなくなるな!」
「お前らにとやかく言われる筋合いはない。 お前らの条件では無理だ。 金はもう要らないからもういいだろ?じゃあな。」
「おい!待て!コラァ!」
冒険者達は、最初からアバロン側に居を移すために今回の依頼を受けたらしく、最終的に残った冒険者は3つのパーティーのみで、10名程度しか残らなかった。 出発時は50名程がいたが。
兵士の中にも姿を消した者もいた。 連合の護衛勢力が半分になっていたが、進まねばならない。
「こんなはずでは・・・。 しかし、急がねば・・・。」
「議長!空を!」
「なに?!あれは!!」
空には自分らの家を破壊したロケット攻撃がまた空を白線を引きながら飛んでいた。
目的地は宣告した場所であろうことは分かっていた。
「遅かったか・・・。 無事であろうか・・・?」
「平気なはずです!我らの部下達がやり遂げてくれたはずです!」
「うっ、うむ。 今はそれを信じて進もう・・・。」
「はい!急ぎましょう!」
連合の彼らは残った護衛を引き連れてアバロン執政府のある街を目指したが、当然ながら10台の荷馬車は狙われやすい。 数回の襲撃で馬車を2台駄目にしながらもなんとか辿り着いた。
「中々の遅い到着でしたな。」
「・・・。 この度は大変申し訳なく。」
「本当にそう思っているのなら人質を取るなんてことをせずに自ら来ればいいものを。 姑息ですな。」
「・・・。 行き違いがあったのは謝ります。 人質ではなく、保護というものでして・・・」
「・・・。」
「・・・。」
「まあ、良いでしょう。 お座りください。」
「はい。 失礼します。」
連合の代表はぬけぬけと言い放ったが、こちらがすべて知っている事も知っているようで言葉を選ぶように言葉を続けた。
しかし、連合側の言い訳は当然の如く、看破できるものではなかった。
「言いたい事は分かりました。 ですが、こちら側はそれを受け入れる事は出来ません。 したことに対しての謝罪が受け入れられない以上はこちらは断交を決定したいと思います。」
「断交?!そんなことをしたら我らは干上がります!ご再考を!やったことに対しての反省が見られない上にさらなる策を用いての言い訳。 申し訳ないが甘受して頂くことを望みます。」
「そんな!我らに死ねと?」
「そこまでは言っておりません。 これまで通りに食料の販売は続けても良いです。 ただし、銃器は出来ませんよと、いう事です。」
「しかし、我らとて商人です。 身を守るために必要だと言われれば、用意をするのが商人というものなのです。 それをするなと?」
「剣や槍なら良いですが、飛び道具は駄目です。 それに暫くは監視をします。」
連合からしたらほぼ監視下に置かれる事はやはりよろしくないが、総入れ替えされないのであればと考え直し、渋々の了承をした。
交渉は上手くいき、特に何も刑罰が行なわれるほどではなかった。 獣王国と公国に食料だけでも卸しているだけでも利益があるからだ。
連合の代表たちは、アバロンの0(ゼロ)回答に良くして、国に帰っていった。
「彼らに自国の事を教えないで良かったのですか?」
「それではこちらで暴れるだろう?だからだよ。」
「また、暴れそうですね・・・。 国で。」
「その時は絨毯爆撃をしてやるさ。」
「・・・。 今なら連合に同情できます。」
送り出した役人と共に連合の代表を送り出した。
彼らは一様に笑顔だった。 今、本国で起きている事が知らないから。
<連合首脳陣>
我らはアバロン国内をゆっくりと移動している。
アバロン側からのお咎めなしというのと変わらない注意と監視が付くくらいならどうにかなると思っていたからだ。
国に近づくにつれ、その様子が違っている事に気が付いた。 出発する前と。
「これは一体・・・。」
目の前の光景に一同が絶句した・・・。