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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY
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釈明の使者②

少し長くなりました。

戦いものではないですが、書いてみました。

そろそろ報復回です。

連合のメンバーがある部屋に集まった。

人質に取られている者達だ。 ある者は妻や恋人であったり、ある者は家族や親族だった。


「代表、我らに有利な条件は出してもらえそうですか?」


「すまない・・・。 限りなく不可能な状況だ。 なによりあちらは取引の内容まで知っているようだ。 それでは無理だ。 主犯を全員引き渡せば、納得をして貰えるだろうが・・・。」


「それこそ無理です!指導部は勿論、首脳部全員を引き渡すことになりかねない!そんな事をすれば、人質になっている者は全員、殺されます!」


「分かっている!大きな声を上げるな!気づかれる!」


「!! 済まない・・・。 つい・・・。」


「気にするな・・・。 俺らもだからな・・・。」


「・・・。」


「どこまで条件を出せるか分からないが、明日がある。 それにかけよう・・・。 最悪は・・・覚悟を決めよう・・・。」


その言葉に各自がそれぞれのバッグを見ていた。 彼らは自決用の爆発物だった。

すでに替えられているが、彼らには本物と思えるように巧妙に製作されていた。 だが、成果があれば、帰ることは出来るが、無ければ彼らは監視者に不幸の事故として帰路で消される。 当然、人質も。

この部屋にいる男女は、悲壮な覚悟をしていた・・・。

しかし、それを見ている男がいた・・・。

正確にはカメラからだが。


<アバロン側>


「中々にクソだな。 連合の上層部は。」


「そのようですね。 もう一度、刷新させます?」


「それもいいが、まずは彼らを引き込もうか・・・。」


カメラからの音声でかなりの怒りの気持ちになったが、彼らは知らない。

まだ明かす訳にはいかない。


「幹部陣には家を吹き飛ばすか?」


「良いですね。 幸いな事に容疑のある関係者は豪邸に住んでおります。 ピンポイントで攻撃できますしね。 どうされますか?」


「彼らがこちらに付いて、家族と再会したら撃とうか・・・。」


「御意。 では準備します。」


アバロン側に幹部連中が一番守りたかったであろう資産を破壊するボタンを押させる決断が、下された瞬間であった・・・。


「明日が楽しみだ。」


<連合・本国会議室>


ここで少し時間を早めた状態で。


「あの女はこちらの意図に沿って、動いておるか?」


「はっ、他の生贄共も同様に・・・。」


「これでアバロンが説得できれば、我らはまた儲かることが出来る!」


彼らはこれから起きる不幸に気が付かない。

それは人質たちがいなくなったという報告で一瞬で凍り付く。 彼らをコントロールが出来なくなる。 それどころか、報復が確実にある事が確定したからだ。

彼らが今更遅い事後策を検討している時に外を空を切り裂くような音が響いた。


「五月蝿い!なんだ?!」


「代表!外を見てください!」


「あれは?・・・おい!落ちたぞ!・・・あれは通商幹事長の家では?」


「えっ?!嘘だろう?!我が家が!我が家が燃えている!なぜ?」


その後もそこにいた連合幹部連の豪邸に火の手が上がる。

呆然と立ち尽くす彼らの家が次々と、燃え上がる。 そして、彼らの物資集積場も燃え上がる。


「終わった・・・。 我らは・・・。」


「もう・・連合は・・・なくなる・・・。」


荘厳な連合の議会場の展望室から見えるアバロンのロケット誘導弾が、連合の主要施設を破壊している光景が、写っていた。

それは自身らの歴史と連合の終焉が、これから訪れる結末が・・・。


<アバロンサイド>


時間が少し戻る。


連合の使節団との交渉がこれから始まる。

アバロン側は使節団の交渉組の取り込み計画を実行し、すでに監視組を切り離している。 相互の監視も暗部以外にも近衛も混ざり、交渉組と監視組が会わないようになっている。 監視組に暗部的な能力がある者を選抜しなかった事で容易に隔離された。 それも全員が男性であったがために、さらに簡単だと暗部の女性小隊長に言われた時は、笑ってしまった。


確かに勝てないしな・・・。


自身もマリアたちに勝てる気がしない。

母になった彼女らに挑もうとも思わないが。


すでに連合側は席に付いているとの報告がある。

いくら遅れても文句を言われない立場になったとはいえ、さすがにこれ以上遅れるのはマズイ。


「さて、交渉に行こうか。」


「はっ!」


補佐役の役人を従えて、交渉の舞台に座る連合の代表の元へ向かう。

入室すると、連合側が立ち上がる。


「お待ち申し上げておりました。」


「うむ、まあ良い交渉になる事を祈っておりますよ。」


連合側は、全員が代表側に倣って頭を下げた。

こちらはあえて反応せずにそのまま席に着いた。 交渉と言っても向こうの話を聞くだけだが。

話はすぐに始まった。

話は長かったが、何度かの休憩をはさみながら進んだ。 彼らの必死の説得に拘束されていた者への愛情が深い事を知った。

そして、4回目の休憩時間時に待望の連絡が来た。


「閣下。 失礼します。」


「入れ。」


「お連れ様がお付きになりました。」


「そうか・・・。 全員いるか?」


「勿論です。 ですが、数名が拷問を受けたらしく、その傷があります。 うち一名の女性は連れてこれずにアバロンの病院に収容しました。」


「そうか・・・。 拷問とはな。 良い度胸をしている・・・。 では行こうか・・・。」


交渉は当然、互いの妥協点の探り合いだ。

どこまでなら許せるかという所だ。 当然、連合の言う妥協点は無理だ。

交渉も長くなり、こちらの人も疲れてきた。


「今日はこれくらいにしませんか?」


「えっ?!そんな・・・もう少し、もう少しです!」


交渉団は昨日より話を聞いてくれることで、少しでも良い条件を手に入れようと、疲れている事を押して話している。 交渉も二日目でも彼らの顔には疲れがある。 医務官でもある士官に見せた所、要休養と言われた。


「そろそろ彼らに会すべきでは?」


「そうだな。 そろそろ・・「大変です!」どうした!」


「代表者の方を始め、数名が倒れました!」


「医務官は?!」


「すでに処置中です!他の交渉に参加された方も念のために収容されています!」


「分かった。 全力を期すように医務の者に伝えてくれ。」


「はっ!」


報告に来た獣人のメイドに申し送り、彼らとの引き渡しを考える。

彼らも異国で不安だろうからと思い、この時に引き渡すことを決めた。


「病院に連れていき、介助者という事で彼らを再会させよう。」


「よろしいのですか? このタイミングの方が良いだろう。 勿論、人質であった者が介助者と告げずに彼ら会わせる。 無論、監視者には来させないようにせよ。 その場合はその者を消す必要がある。」


「分かります。 その様に・・・。 彼らの隔離は継続します。」


「よろしく。」


役人が去ると、彼らも病院に向かう様で離れていく足音がしている。

彼らは病院で、介助者の派遣を知らせられて人質になった家族と面会する。 説明も部下達に任せた。

彼らが退院してくる日までは、少し暇だ。


<交渉組サイド>


「ん?ここは?」


「目が覚めました?」


見慣れない天井のある部屋に寝かされていた。

声を掛けてくれた兎人族の白衣を着た女性が笑顔で返してくれた。 そして、ここが病院であることを教えて貰った。 交渉の休憩中に倒れ、ここに収容された事を伝えられた。


「交渉は?!どうなりました?!」


「詳しくはわかりませんが、先ほど来た役人の方より回復してから行うそうです。 ひとまずは体を直してからと、聞いておりますよ。」


「そうですか・・・。 それまでは居させて頂けると?」


「はい。 というより厳命が来ておりますので、私も中途半端では嫌ですし、私達スタッフも納得しませんよ。 回復するまでは居てください。」


「世話になる。」


看護師の女性は微笑みを返し、退室していく。

日々が恐ろしい速さで過ぎた連合の日々と一変して、ゆったりとした時間が流れる病室で外を見る。

外の窓を戦闘機と思われる機体が、遠目で確認できる。 しかし、連合では外を見ている時間がほぼない時を過ごしていた。 いつ誰に蹴落とされるか分からない時間は、殺伐した時だった。


「どうですか?落ち着かれました?」


「ん?貴方は?」


「申し遅れました。 この病院の相談員のワールと言います。 貴方は異国の方との事で今回は措置が出るとの事で、お伝えに来ました。」


「措置?」


「はい。 この病院に来る患者さんはほぼすべてがアバロンの方で、少数派で帝国の方がいます。 帝国の方は付き添いの方が、必ずいますので措置はないのですが、皆様は居られないので付く事になりました。」


「ありがとうございます。 ではいつから着きますか?」


「それはこちらでは・・・。 来院したらすぐにお連れします。」


「よろしくお願いします。」


相談員の女性が退室していった後も外を眺めていた。

連合の事務所にいた時も味わう事がない時を今、異国の地で味わっている。


「あの子とこの景色を味わいたかったな・・・。 叶わないが・・・。」


そうつぶやくと、床に雫が垂れていた。

何もないとこなのに・・・と、思いながらしゃがむとさらに2つ、3つと増えた。

顔をあげると、窓ガラスに映った自分が泣いていた。 泣いていたことに気が付かなかった。


「私は・・・私はあの子を・・・あの子に逢いたい・・・。 酷過ぎるじゃない・・・うううっ」


自分でも考えないようにしていた娘との再会。 

連合のどこかにいる人質となった娘に会ってから死にたい・・・。 今はそう思ってしまっている。

さめざめと涙しか出てこない。 声をひたすら殺して泣いていると、ふと声がかかった。


「お母さん?」


「へっ?」


顔を上げると、見間違うはずのない娘が立っていた。

夫の裏切りで引き渡されたはずの娘が今、自分の前に立っている。

さめざめと泣いていた自分が、今度は感動の涙を流していた。

もう会えないと思っていた娘に逢えたことを神に感謝した。 その後は娘がどうなってここに来たのかを教えて貰った。 案の定、連合では粗末な部屋に押し込められ、過ごした。 数日間はそこに入れられ、その後は『ママの知り合い』という人達に連れられて、アバロンに来たらしい。


「あとはママがここにいるから驚かせてやりなって、お姉さんに連れられてきたら泣いてたから驚いたよ。」


「そうなんだね。 そうなんだね。」


私は娘の話をひたすら聞いていた。

娘は最初はどうしてそうなったかを理解する前にアバロンの部隊に救出され、驚かす芝居をママがするから頑張ってねと、言われてここに入ったらしい。

そこまでくると、どうして必要以上に時間稼ぎをしたかが分かった。 このためだと分かった。


「ありがとうございます。 ありがとうございます。」


「ママ~、また泣いてるの?いい子いい子してあげようか?」


「そうね。 お願いするわ。」


それから数日間、病院という環境ではあったが、娘と楽しい時間を過ごした。

そして、体が回復した所で再びあのテーブルに着いた。


<アバロンサイド>


人質となっていた人たちを介助者として引き渡した事で、交渉のメンバーは顔色が良かった。

そして、意気揚々とテーブルについていた。


「元気になったようで何よりですね。」


「はい。 お陰様で。」


「まあ、話し合いはしますが、貴方の国は結論が出ています。 すでにあなた方の監視役に返書を持たせて帰国させています。」


「なっ!では我らは置いて行かれたのですか?!」


「そこは違います。 あちらには回復したら帰国させますと、伝えましたが・・・。 帰ってどうするんですか?皆さんの大切な人を人質として取る国に未練がありますか?」


「・・・。」


後ろにいた交渉組も黙った。 暗部より交渉に成功すれば、人質が帰ってくる。 立場を上げてやるくらいの話しかなかったとの事。 しかも口約束で。


「我らの調査でも多分、良いように尻尾きりにされますよ?実家の方も貴方方を見捨てる算段が付いている所が殆どときいています。 そこに義理立てしますか?」


「そんな・・・父上が私を・・・?」


「これまで頑張ってきたのに・・・。」


後ろでは、比較的若い文官らしい男性と後方支援担当と思われる士官服の様な服を着た若い女性が絶望からか、項垂れていた。

俺はそんな彼らに囁く。


「アバロンに来ませんか?無論、今回救出した家族や恋人と一緒で。」


「本当ですか?」


「ええ、その代わり働いて貰いますよ。 給金や住む家やある程度の保証はしますが。」


一気にざわついた。

彼らからしても祖国には帰れない。 帰ったら二度と日の目は見れないし、また命を狙われかねないのは分かり切っていた。 だが、アバロンにいれば、家族と暮らせる。 

この条件も今の彼らには、除外することは出来なかった。

そこにいた全員が加入を望み、俺も受け入れた。 

アバロンは、大した苦労することなく、即戦力の人間を20名近く手に入れた。


「彼らの加入は有難いですね。」


「ああ、彼らの配置もよろしく頼む。 報復に来ないとも限らんしな。」


「勿論です。 家族を含め配慮いたします。」


「よろしく。」


彼らはその後は各方面でその腕を振るった。

中には、人質であった女性の一人が、アバロンで開花して連合では開かなかった才能を発揮した者もいたという。


「さて、連合にはペナルティーを科すかな・・・フッフッフッ・・・。」


一人の男の言葉が、静まり返った会議室にあった。

しかし、それを聞く者もいなかった・・・。

今後ともよろしくお願いします!

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