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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY
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小国連合の反目

久しぶりの更新です。

少し精神的に疲れてしまい、臥せっていました。 起きる事は出来たので、臥せっていたのは一日ですが、無気力なままでぼーっと、天井の壁紙をみていました。


アバロンと帝国の栄光は他を寄せ付けない程であった。

両国ともに莫大な資金や物資を投じているが、その見返りもある運営をしているから大いに盛り上がったのだが、それが面白くない国もある。

小国連合だった。

ギルドは開発の際に大いに依頼が出た事で儲かった。 その為、両ギルドは不満は出なかった。

連合は開発が比較的終わっている地域が、隣接していた為に取引が少なかった。

同じ陣営にいたのに両ギルトと比べてもあまりにも差が出ている事が許せなかった。


「我らの実入りが少ない!同じか、少ないはずのギルドは儲かっているのに我らはなんで割を食う!」


「元々、我が連合側はアバロンが開発した土地が多く、土台が出来ているために入植者が来ても比較的短期間で自活が出来たことで、こちらとの取引が減少しました。 そこは仕方がないです。 まずは我が国も新製品や商品を開発するか、販路を見出すしかないです。」


「では開発は!商品化出来るものはないのか?!」


「我が方は小さな集団の連合体のなので、どうしても全体の調整となると、手間がかかります。 それは仕方がありません。」


「そういう事は・・・ないのだな?」


「あったとしても、アバロン製品には質や量でも負けます。 あとはそれぞれの部族や集団の特産品は、アバロンで買われておりますが、これは量産は出来ません。 ですが、我らにしても貴重な商材ですのでそちらは保護をして、生産を継続的にしております。」


「しかし、それでは大きなモノは得られん!」


「今はそれでも大事な収入源です。」


「もうよい!」


話を強制的に切った男は、小国連合の新しい長になった男だった。

先代の老齢の代表は、先のアバロンの騒動で引退した。 その空席に今の代表になった男が座った。

その代表の判断でアバロン側に着いたが、あまり儲からなかった。 終戦後は近隣の領地の自活体制が整うまでは、儲かることが出来たがその後は、逆に自陣営へ売り出すことで利益を得られたが、連合は元々が小さい集団だから利益は頭打ちになってしまい、連合上層部の期待するようなものがなかった。


「しかし、儲けが足りない・・・。 どうにかして大きく儲ける手段はないものか・・・?」


「代表、儲ける手段はありますよ?」


「なんだと!どうすればいい?!」


「新獣王国や公国側に売るんです。 あちらは物資が足りていないはず・・・。 商機はあります。」


「しかし、それは開戦時と終戦後の取り決めで、あちらサイドに売らないという盟約がある。 それはどうするんだ?」


「あちら側にもダミー商会を立ち上げて貰い、そちらを返して取引をするんです。 そうすることであちらの欲しいものが得られます。 こちらも利益が出ます。」


「それを誤魔化す事も必要か・・・。 幸いな事にあちらとも繋がりもあるレジスタンスの様な組織もあります。 そちらとも交渉する必要がありますが、損ばかりではないかと・・・。」


「・・・。 しかし、このままでも後がない・・・。 よし!すぐに行動だ!準備を!」


「はっ!直ちに!」


こうして小国連合は、禁じ手を使ってしまう。

当然だが、交渉は上手くいき、レジスタンスも宰相領(新獣王国)側も承諾を得た。

彼らは必要物資が手に入り、連合側は利益を得られた。 元々物資不足の獣王国サイドやレジスタンスは小国連合の少し質の下がった物資でも大変貴重な物だった。 互いの利益と需要がかみ合い、連合は少なくない固定収入を得た。 しかし、アバロン側にバレるわけにもいかないので、すべてが内密に行われていた。 当然、公国もこれに乗り、共和国の一部も乗り込んだ。

連合は倉庫で肥やしになっていた物資が一気にはけたことで、連合内の信用も回復し、さらなる取引がな能になり、大いに盛り上がった。

レジスタンスや協力者もその恩恵で、物資と金銭、情報を得たことで活動の制限が少し取れたことで、それぞれの活動に活気がでた。


「この方法で取引をしていけば・・・我らに栄華が来る!」


「ですが、油断は出来ません。 アバロン側と帝国側に悟られぬよう互いに気を付けるよう厳命し、よりよい取引に繋げましょう。 武器は扱うのも暫くは取りやめましょう。 あれは尻尾が出ます。」


「分かった。 それは気を付けるべきだな。」


取引を始めて数か月。

食料と嗜好品に限定した取引は思いのほか、うまく行って連合に多額の売り上げを齎した。

しかし、獣王国も公国も武器の購入を打診していた。 しかし、連合は最後の一線を守って売買をせずにいたが、取引が上手くいき続けた事が互いの感覚をマヒさせてしまう。

とうとう連合は最後の一歩を踏み出してしまう。


「代表、本当にするのですか?」


「いままでうまく行った。 これはあちらが気が付いていない証拠だ。 今回もうまく行く・・・。 私は確信している。」


「・・・。 そうですか。 ですが、注意をせねばなりません。 取引自体が違反なのに我らは・・・その上を行っていますから・・・。」


「分かっておる。 モノはどうしている?」


「はっ、付き合いのあるレジスタンス組織が、我が国の工場で生産した銃器1000丁と銃弾20000発を輸送中との報告が・・・。」


「そうか・・・。 これがうまく行けば、我らは商いの幅が増える。 勝負時だ。」


「何もない事を祈りましょう。」


連合の取引に加担した高官数名が、言いようのない恐怖に苛まれていた頃、アバロン側はこのことに気付いていた。 その事実は彼らは知らない・・・。


<アバロンサイド>


アバロン治安本部では、最初から連合の裏切りには気づいていた。

しかし、彼らの販売するモノが生活必需品と嗜好品であった為に見逃していた。

監視の目を少し緩めようとした所で、自国生産の銃と弾薬を販売しようとしている事を掴んだ。 アバロン生産の銃から見たら、精度も射程も低いモノだが、銃が纏まった数を販売しようとしている事には変わりはなかった。


「連合への制裁は考えねばなりません。 いかがいたしますか?」


「まずは詰問書の送付と対応の監視だな。 それでも行うようならこちらも考えがある事を伝えよう。」


「慈悲・・・ですか?」


「元は協力者だからな・・・。 それでも裏切るなら・・・」


「畏まりました。」


こうして、詰問官と共に連合に使者が向かった。

ここで対応を誤れば、制裁が待っているが彼らはどう対応するにしても良い物はなかった・・・。


<連合側>


取引がうまく行ったと思っていた矢先にアバロンから詰問官が来るという急報に議会は荒れた。

裏取引は限られた人間しか知らない為に知らない者は皆目見当がつかないという形で、口論するために余計に収集が付かなかった。


「そもそもアバロンが何を聞きに来るのか、ここは確実に開示するべきだ!」


「それよりも昨今の連合の取引の成果はどこに販売したのか?これからではないか?」


「そうではなく、どう乗り切るかを考えるべきだ!」


議論は二転三転し、裏を知る者も知らぬ者も互いの主義主張が錯綜してしまい、対策どころか行動も出来ないままで詰問官が来訪する時を迎えてしまう。


「さて、我らのお聞きしたいのはいくつかありますが、禁止されている敵国連合側に対する貿易についてお聞かせ願いたい。」


「それは・・・我らも商人です。 物資が欲しいという所があれば、販売するのは商人です。 それは経済活動です。」


「分かりました。 その為の食料と嗜好品なのですね?それは良しといたしましょう。 次に禁制品の輸出をしていますね?それについては説明をお願いできますか?」


「それは・・・」


ここで連合側が黙ってしまう。

ここで知るものと知らぬ者で別れた。

そうなると、どうにも出来ずに連合側の申し入れで、休憩を取ることになった。

連合側はこの時に詰問官を抹殺するつもりだった。 

しかし、その様な事態になる事が予想していたアバロン側は、直ぐに退却してしまう。

これに気付いた連合は追っても差し向けるが、すでに間に合わなかった。


「これでは我らは敵対行動を取っただけだ!宣戦布告をするか?!」


「こちらは不利です。 味方をしてくれるであろう両国は、戦力が足らずでこちらに援軍は送れませんでしょうし、無理です。」


「ではこのままやられろというのか?!」


「そうではありません。 ここは誤解を解くための使者を立てましょう。 出来れば、女性を。」


「そんなものでどうにかなるか?」


「それは使いの女性に対しての対策を立て、彼女が達成しないといけない状態にすれば、良いのです。」


「・・・なに?」


「使者に立つ者の身内を人質にして、交渉をさせましょう。 そうすれば、必死になるはずです。 それで失敗すれば・・・。」


「その者と関係者を処刑すればよい・・・と?」


「御意に。」


「分かった!そうしよう!準備せよ!」


人選に入ったのは、中央で奉職していた女性職員ヤルー。

彼女は同僚とも言える男性と結婚したが、旦那より出世してしまった事が、彼女の行く末を暗くした。

今回の申し開きの使者に選ばれたからだ。


「代表、私が呼ばれたのはなぜですか?」


「うむ。 貴殿にアバロンに赴き、我が方の潔白を証明してきてほしい。」


「それは無理です。 すでにあちらに禁制品の取引も確認されている今、潔白は無理です。」


「いや、して貰う。 なぜならそれをしない場合は、お前の大事な娘が身代わりに死んでもらう。」


「そんな!無理です!なぜ娘が?!」


「旦那に嫌われたらしいの。 お前の席に旦那を座らせると言ったらすぐに娘を連れてきたぞ?」


「なんですって?!自分の娘を人質にしたの?!なんて男なの!!」


「まあ、お前の頑張りが娘の命が救われる。 励めよ。」


「くそっ!」


彼女は毒ついた。

最愛の娘を椅子の為に差し出した夫にも、好転のない交渉で良い目を出して来いという上司たちに。

彼女は娘の為だけにアバロンへ向かう。 敵うはずのない約定を得るために。

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