戦火の後で
今回は短めです。
スイマセン。
獣王国のクーデターの処理が終わった中で、変化が起きた。
人質として帝国に渡った獣王国王家最後の子孫である彼女が、妊娠した事が判明した。
「はっ?!なんで?!」
「どういうこと?!」
義弟である帝国皇帝からの手紙で判明した。
あの後も義弟は彼女を献身的にサポートしたらしく、徐々に心を開いてくれたそうで、付き合うようになった。 そこは知っていたが、まさか一線を越えて子供まで作るとは思わなかった。
「妊娠まで受け入れるほどに仲良くなったのか・・・。」
「我が弟ながら恐ろしいわ・・・。」
「あと、報告に来るらしい。 ?!あと3日しかない!」
「!! 急がないと!」
てんやわんやであるが、準備が出来た。
迎える側も国境まで護衛隊を派遣し、不測の事態に備える。 空からも監視の為に監視員を乗せた中型機を複数飛ばした。 当然、偵察隊も何十班も放って、警戒にも当たらせた。
「何とか間に合ってよかったですね。」
「本当だよ。 まあ、彼らから聞く話の方が気が重いけどね。」
「分かりますが、聞いて上げて下さいね?」
「ああ、分かっているよ。 君も無理はしなくていいんだよ?」
「大丈夫ですよ。 もう2回目ですから。」
出迎えの列の中で唯一の椅子に座ったままでいるのは、ジョアンナだ。 2回目の妊娠をしてすでに7か月程だ。 複数人を身籠っている為に大きくなったお腹を摩りながら、慈愛に満ちた顔をしている。
反対側には、マリアもいる。 そうこうしていると、偵察兵と思われるバイク兵がやってきた。
「帝国皇帝陛下夫妻様、あと一時間ほどでこちらにお越しになります!」
「分かった。 下がって良し。」
「はっ!」
バイク兵が下がり、受け入れるパーティー会場のスタッフたちは最終チェックに余念がなく、料理の最後の仕上げに熱を帯びる厨房では、料理長が部下に活を入れ直したりしていた。
少しの心の余裕が出た所で、彼らを乗せた馬車が見えた。 馬車の周りは騎士の乗る馬やこちらの車両部隊が固めていた。 馬車は敷かれた毛氈の端に留める。 すぐに後ろに乗った従者と前の御者が踏み台を出し、従者は扉を開け、彼らが降りてきた。
「義兄様!姉上!お久しぶりです!」
「マサル様、マリア様、ジョアンナ様。 お久しぶりでございます。」
義兄は朗らかな顔でこちらに手を振っていた。
その傍らには、帝国に行く前の悲壮感が消えた女性らしい笑顔をたたえた彼女がいた。
正直、それは嬉しかった。 ただ、すでに彼女のお腹には若き皇帝の子が宿っているだ。 少し驚きもあるのだが、幸せそうな空気なので少し嬉しい気分になった。
「まさか彼女を身籠らせるとは・・・。 彼女はどうするのだ?」
「姉上、勿論ですが正妻として迎えたいと思います。 崩壊したとはいえ、獣王国の正統な後継者です。 問題はありません。 他にも共に来た使用人や銃士たちも結婚した者がおります。 来れないために報告のみになりますが。」
「そうか・・・。 皆、幸せそうで何よりだ・・・。」
「ええ、そうね・・・。」
少し引き気味のアバロン側と幸せいっぱいの帝国側。
ひとまずロビートークは、それぞれに収穫があった交流であった。
場所は大広間に移り、食事会と談話の回となった。
久しぶりに来た同行の帰還組も初訪問組も互いの状況などを話して、楽しみながらの食事会となった。
ここでそれぞれに別れる。
武官組は軍事施設へ。 文官は政務機関へと案内人と共に移動していく。
皇帝と妻となった彼女はマサル達と共にプライベート区画へと移動した。
「さて、どうなったら彼女を身籠る事を受け入れたかを教えて貰えないかな?」
「そうですね・・・まずは・・・」
帝国に渡ってすぐはこちらと大して変わらなかったそうで、刃物の類は一切置かなかったらしい。
しかし、暇を見ては会いに行くことで、彼女も心を許すようになった。 そして、外出が出来るようになった時に事件が起きた。
通りを歩いていた際に馬の暴走で彼が怪我をして、結構な深手を負ったらしい。 彼女の目の前で怪我をした為に彼女の動揺は凄まじく、大慌てで護衛の者が駆け付け、救護施設に運び込まれた。 命に別状はないが、彼女は献身的に介護をした事で、互いの距離が近づき、回復と同時にプロポーズをして、受け入れられた。 その後は早く、民族融和を掲げた帝国内は、獣王国の元国民もおり、彼女の正妻として迎えられることも政策としても良い結果になった。
二人が結婚したことで、踏み切れなかったカップルが、結婚してそれがいい方向になった。
そこに彼女の妊娠で大いに盛り上がる。
その中で彼女と共に行った護衛の兵やメイドたちの中で、現地の帝国人と籍を入れて夫婦になる者が増えたとの事だ。
「とりあえず良い方向になり、何よりだ。 うちの医療機関でもう一度検診するか?」
「そうですね。 こちらの検診で他に何かわかれば、嬉しいです。」
「私もお腹の子がどうなっているかを知りたいです。」
「分かった。」
呼び鈴を振ると、メイドが現れた。
彼女に皇妃となった彼女の検診を予約するように依頼する。
依頼を受けたメイドは、しずしずと頭を下げると下がっていく。 ほどなくして病院側からの連絡が来たことで、病院へ移動する。
「帝国と違ってアバロンは、とても進化した診療を行うんですね?」
「ああ、ここで君のお腹にいる私たちの子供が確認できるんだよ。」
「はい!楽しみです。 私たちの赤ちゃんが何人いるかも楽しみです。」
「はっはっはっ!そうだな。 楽しみだな。」
楽しそうなバカップルを乗せ、病院に着いた。
病院にはドクターを始め、スタッフが整列していた。
「帝王様、皇妃様。 お待ち申し上げておりました。 どうぞこちらへ。」
「うむ、世話になる。」
「よろしくお願いします。」
二人は院長に案内される様に院内へ。
そして、産婦人科を担当する女医の診断でお腹には、3人の子供がいる事が確認された。
それを見た彼女は、涙を流して喜んだという。
そして、ここがマサルの妻達が子供を出産した病院だと知ると、出産が近づいたら入院をすると、義弟を通して言ってきた。
断る理由もないので、承諾した。
「義兄殿!姉上!世話になった!」
「お世話になりました。 出産の際はまたよろしくお願いします。」
「ああ、気を付けてな。 帰り道も用心して帰れよ。」
「奥さんを大事にね?」
一週間ほどの滞在ではあるが、帝国皇帝夫妻は帰っていった。
悲しみに塞いでいた女性が、華麗にバカップルに変貌をしていた事に驚きはしたが、それでも彼女にとっての幸せが掴めてよかったと思うことにしたマサルだった。
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