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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY
100/109

王宮の激闘

祝100話目になりました!

これからもKYの作品を御拝読頂ければ、大変うれしいです!

暑い日が続き、体力が落ち気味ですが、お互いに頑張って行きましょう!

昼間のゆったりとした時間が流れている獣王国・王城でお茶を楽しんでいた獣王一家。

その空気を突き破る事態が迫っていた。


「今日もお茶がおいしい・・・。 家族と飲むものは旨いな。」


「そうですね。 やはりゆったりとした時間は良いですね。」


「ん? 何か騒々しいな・・・?なっ!あれはなんだ?」


バン!


「急報です!正門に宰相様の軍が襲い掛かってきました!」


「なに!なぜだ?!」


「分かりません!ですが、油断していた為に正門が抑えられ、後続が続々と押し寄せております!」


「そうか・・・。 あ奴には我らは邪魔だという事か・・・。」


「今なら裏門から逃げられます!お早く!」


「いや、あ奴の事だ。 出てきた所を襲われる。 ここで戦うしかない。」


「ですが!いえ、分かりました・・・。」


攻め手はやはり裏門にも兵がおり、正面に張り付いていた守備兵も押されており、裏門の警備兵も宰相軍に押され、王城入り口に即席のバリケードを築いて抵抗していた。 

王城内にいた所属問わず集められた兵士は、守備兵・警備兵・儀仗兵・近衛兵・銃兵・近習兵・雑役兵と革鎧しか身に着けていない者からフルプレートの兵士までいた。


「宰相が軍を率いてここにやってきた。 我らには退路はない。 生き残っても全員を殺すつもりだ。 君らには迷惑しかないがな。」


「何を言われますか!裏切り者はあちらです!」


「そうです!我らも共に!」


集まった兵士も騎士も少ない。 初戦で多くの兵士が散っていた。

今も2階へ上がる階段を最前線に防衛をしているが、数で押されているらしく、破られそうになっていたとこに銃兵の手投げ爆弾が戦線を保持した。


「使用人は最優先に。 あと、子供のな。 ワシらが後でよい。」


「・・・はい・・・。 ありがとうございます。」


命令を受けた文官の女性は、傍にいた数名の雑役兵と脱出するグループと共に秘密の脱出口を目指した。

人数は30名だが、目立たない格好で逃げ出した。


「今、戦線はどうなっている?」


「二階の階段踊り場も奪われ、3階の階段の上り口が最前線です・・・。」


「そうか・・・。 出来るだけ交代が出来るのであれば、交代して疲労をためないようにせよ。」


「分かりました。」


しかし、戦線は保持が出来ずに次々と戦線は後退してしまう。

勇敢に戦った者も一人、また一人と倒れていった。 階級を他わず、兵種も問わずだ。

最前線で戦っていた兵士や騎士はすべてが手負いになっていたが、後がない事で徹底抗戦の状態になったのだが、王も予想していない事が起きた。


「? お前たちはどうしたんだ?」


「・・・。 王よ。 我らも戦わせてください!」


「お前たちの気持ちは嬉しいが、お前たちを巻き込む訳にはいかん。」


王のそばに来たのは、メイドや料理人、庭師などの非戦闘員たち。

手にはナイフや鉈などの自分らが仕事で使っていた物だった。 彼らは負傷兵の手当てに手を貸していたが、時間が経つにつれて減っていく戦闘員に自分らがなる事を認めて貰う為に来たのだった。


「バリケードで防衛するだけではなく、切り込みをしておられるのでしょう?我らも参加させて下さい。 追い打ちをするのでは無ければ、我らもやれます。」


「・・・すまない・・・。 貴公らの滅私奉公、感謝する。」


王は、名乗り出てくれた使用人たちに頭を下げ、感謝した。

使用人たちも平伏し、臣下の礼をとった。


「貴殿らと共に我が王族の意地見せつけようぞ!」


「「「「「おおおっ!!!!」」」」


負傷兵を含めた死兵と化した群れが、切り込みの準備をした。


<宰相軍>


彼らは正門と裏門の警備兵を鎧袖一触で斬り捨て、そのまま王城になだれ込んだ。

王城外でも郊外の屯所からやってくる騎士団との迎撃をしながら王城の攻勢を続けた。 元々大部隊がいたわけでは無いが、王城の入り組んだ場所であるがために少ない兵でも抵抗が出来た。 


「王宮の兵はまだ抵抗しているのか?」


「はっ!兵種問わず抵抗をしています。 王を中心に抵抗の神輿にしておるようです。」


「ふん!一思いに叩き潰せ!」


宰相軍はしゃにむに進んだ。

抵抗する王宮兵は兵種問わず戦った。

儀礼兵の儀式用の槌や雑役兵の鉄剣が宰相軍に襲い掛かった。

しかし、その抵抗も数の暴力の前では無力だった。 しかし、王宮の兵はゲリラ戦をして出来るだけ出血をしいる戦をした。

だが、多くの兵や騎士を犠牲にし、1つずつ階層を制圧していった。


<王宮側>


死闘は続いていた。

義勇兵となった兵をとなった使用人達も戦死と負傷が増えた。 訓練など受けていない者たちだから仕方がないが、彼らも死に物狂いでその手で戦った。 


「王よ。 使用人たちの義勇兵も半数以下になりました。 兵も全員で50名程に・・・。 いかがしますか?」


「・・・手に負えぬものは?」


「6名程・・・。 こちらで介錯を・・・。 無念です。」


「六名はどの仕事についていた?教えてくれるか?」


「はっ、近衛が1名、儀仗兵が1名、メイドが2名と後宮女官兵が2名です・・・。 メイドの一人は昨年の登城したばかりの者です。」


「そうか・・・若い命を散らしてしまったな・・・。」


「ここも危のうございます。 後退を。」


「仕方ない。 わが後宮で抵抗しよう。」


「殿は私が務めます。 お早く。」


「うむ。 貴様の献身、感謝する。」


「はっ!」


王を中心に正妻と妾2名と共に撤退を開始した。

先ほど声を交わした騎士は王宮と後宮を繋ぐ廊下に6名の兵士と共にバリケードを張り、抵抗の準備をしていると、警戒をしながら宰相軍が現れた。


「お見えになりました。」


「ああ、そうだな・・・。 我らはもう退かん。 ここで死ぬ。 良いか?」


「・・・何をいまさら・・・。 ここまで来たんだ。 最後もお供します。」


騎士が横を見ると、兵種が違う者達が同じ顔で覚悟を決めた顔をした。

銃士となり、残弾の少ない銃を構える青年兵。 汚れや返り血でどす黒い色になった儀仗兵。 槍とナイフしかなくなってしまいながらも槍を構える女性兵士。 戦死した女官兵の鎧を着て、槍を構えたメイドに庭師でありながら剣を振るっている中年男性とその弟子。 

彼らはここで共に死ぬことを覚悟した。


「ならばよし!参ろうぞ!共に冥府へ!」


「「「「うおおおおお!!!!」」」」「いやぁぁぁぁ!!!」


たった7人の斬り込みは、勝利を意識していた彼らには驚きというより驚愕しかなかった。

もう勝ち目のない中で斬り込む彼らが信じられなかった。

その僅かな隙をつき、肉薄した彼らは暴れまわった。 

まず銃士の銃が、弾切れするまで撃ち捲り、指揮官と思しき者を射殺。 弾の切れた銃は銃剣を装備していた為にそのまま槍の様に使った。 騎士と庭師の二人の剣も、儀仗兵の装飾された槍も、女性二人の槍もすべてが、数の暴力に立ち向かった。

しかし、時が経つにつれて、倒れていった。 庭師の男性が、5人の兵士の槍で胴を貫かれた。 その弟子も騎士の剣で斬られた。 少し離れた場所で女性二人も兵士の剣で胸を貫かれ、共に倒れた。

最後の銃兵の青年も持っていた銃を大剣で叩き割れたまま、斬られた上に近づいた兵士に槍で突き殺される事に。 最後に残った騎士が周りを見た。


「お前たち・・・逝ったか・・・。」


彼に視界に共に奮起した6人の雄姿の遺骸が見えた。

騎士も手傷は多く、出血で視界も霞んでいた。 戦闘する力はない。 が、諦める事は出来なかった。


「我こそは思う者はかかってこい!」


「死にぞこないがぁぁぁ!」


「「「「「「うあああああっっっ!!!!」」」」」


一人の騎士を筆頭に襲い掛かってきた。

霞む視界でも彼は戦った。 一人また一人と、敵兵を斬り倒して騎士に迫った。

しかし、届かなかった後ろにいた兵士の遮二無二突き出した槍が、騎士の背中を貫いた。


「ぐふっ!」


「死にぞこないは死ね!」


「ぐはっ!王よ・・・無念です・・・。」


彼らの斬り込みは終わった。

被害は20名程だが、余裕をかましていた彼らにはありえない被害だった。

彼らはこれからまだ続くこの戦いに恐怖した。


まだこんな連中がいるのだと・・・。


死んだ彼らを見た。

女官兵の二人は、よく見れば美人の範疇にもれなく入る女性達だ。 銃士の青年もよくよく見れば、女性兵士だった。 宰相軍は女性まで戦っていたことに驚いた。 普通は匿われるか、逃げ出すことが多いが、王宮内ではメイドまでナイフを片手に襲い掛かってきたからだ。 こういったことが何度もあることに恐怖を覚えた。 


<連合軍側>


帝国軍陣営に無事に辿り着いた逃げた獣王国の脱出者が来たことで、帝国軍とアバロン軍が進撃を開始した事で包囲していた領主軍が連合軍と相対したが、アバロン軍の戦車や装甲車からの攻撃であっさりと瓦解して、王城に入られる。

王城の軍は、攻め手であるはずが逆に攻められる側になった。

帝国連合軍は、遮二無二上へと上がる。 宰相軍は僅かな王宮兵攻めより連合軍に人手を割いたが、王宮側が行なった各所にバリケードを構えたが、確認をしながらバリケードを吹き飛ばしていく連合軍は、時間がかかってしまう。


「くそう!急がんと、獣王たちが!」


「ですが、無理にも押せません!我らが王宮派を殺してしまう事態は避けませんと・・・。」


「分かっている!」


連合軍は宰相軍の攻城兵部隊を的確に撃破しながら王城を制圧していく。

それこそしらみつぶしの様に・・・。


<宰相軍>


最初は攻撃は順調だった。

しかし、急報を伝えた脱出組の連絡で、進撃を開始した連合軍は前線が領外ではなく、王城内に変わった。 城の周りの領主軍は鎧袖一触で蹴散らされ、宰相領に撤退を開始した。

王城にいた兵力は、連合軍と戦端を開いたが、王宮軍の前線の後宮はまだ先鋒も辿り着いていなかった事が幸いした。


「連合軍は王城側に向かった!こちらには、気が付いていない!今のうちに彼らを討ち取れ!」


「はっ!取り急ぎ伝令を放ちます!」


後宮を攻めていた宰相軍は、王城を占拠していた部隊が隠れ蓑になり、気が付かれなかった。

その為、その隙に攻め立てた。

各曲がり角や少し広い廊下では、両陣営の兵達が互いの得物で噛みつき合う戦いが続いた。


「こっちの廊下に兵を!」


「そこの部屋にはメイドがナイフを構えているぞ!鹵獲した手投げ弾を投げ込め!」


ひゅっ!バン!


「「「「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」」」」


「いまだ!いけぇ!」


「「「うおおっ!!」」」


「死んでたまるかぁぁ!」


「お母さん!ごめんなさい!いやぁぁぁ!」


メイド数名の立て籠もった部屋を手榴弾で倒したと思った宰相軍の部隊は、襲い掛かってきたメイドに驚いた。 部下3名を失いながら5名のメイドを倒したが、部屋を調べると驚いた。


「これは・・・。 まさかそうするとは・・・。」


「そこまでして・・・。」


彼らの見ていた先には、服が裂けて息絶えているメイドがいた。

彼女は爆弾の衝撃を一身に受けて、絶命した。

その為、4人のメイドは各自のナイフで襲い掛かってきたのだった。

明かりが戻った部屋には、美少女美女と言われるほどのメイドが、死んでいた。 このような事がなければ、良縁も期待が出来た女性達だった。


「我らは何のために戦っているんだ・・・。」


「分かりません。 何が正義なのかも・・・。」


しかし、戦闘は続く。

最前線は後宮の最後の部屋の手前まで来ていた。

ここで連合軍も後宮の戦いに気付き、部隊を送り込み始めた。

後宮最深部に追いやられた王宮派は、その事実に気が付けない状態だった。 それを宰相軍は足止めに尽力した。


「援軍が来たことに気が付かせるな!足止めに尽力しろ!」


「攻め手は王宮派を追い詰めろ!時間がないぞ!」


「はっ!」


王宮派の兵士はすでに20名を割っており、今は最後の自決の地となった部屋の前にテーブルやタンスを積んだだけのバリケードに10名弱がいるのが、最後の兵力だった。 攻め手は50名が同様のバリケードをして、機会を伺っていた。


「司令部からの伝令です!『攻勢を開始せよ!』です!」


「・・・わかった。 総攻撃を開始する。」


「はっ!」


宰相軍の攻勢が始まった。

王宮派も少ないが、銃兵の撃つ銃弾が彼らを射抜く。 片目を切られ、片目で狙いを付ける弓兵も少ない矢を番え、放つ。

最後の時が迫った。


<王宮サイド>


王は、外に聞こえた喊声と銃声と剣戟音で終焉の時が来たことを感じた。

自身も何度となく行った斬り込みで、自身の大剣は折れ、亡くなった騎士の剣で戦ったが、もはや動けなかった。 少し離れた場所に動くこと処か、手の施しようのない者がいる。 無傷は正妻と妾のみで、彼女らも自身の服を割いて、兵士や騎士の手当てに使う程になっていた。


「もはやここまでか・・・。」


「王様・・・。 彼らはどうしましょうか?」


「・・・辛いが、引導を渡してやらねばな・・・。」


王は一人ずつに声を掛け、手の施しようのない者に手を貸してやった。

彼らは笑っていた。 


「王よ・・・。 お先に。」と。


「我も向かうとしよう・・・。 これまでの忠義、感謝する・・・。」


「我らも参ります。 あちらでお待ちしております・・・。」


正妻の妾の女性達も自身のけじめをつけ、旅立った。 彼女らに最後まで付き従ったメイドは、外にいる兵士と共に最後の突撃をしていった。 突撃の出来ぬメイドは彼女らに背を向け、けじめをつけた。


「我はやはり王としての力量が足りなかったのであろうか・・・?あの子に何を残せてであろうか?」


「我も参ろうぞ!」


王も自身の首に剣を肩で挟み込んだ。 そして・・・・。


「我が生き様!知らしめようぞ!」


王が倒れる。

扉の向こうでその音と同時に最後まで残った兵士が全員、突撃を始める。

最後の命の炎を燃え上がらせての突撃だ。

僅か10名足らずの挺身突撃。 各々が声を上げながら最後の最後まで命を燃やし尽くす攻撃だ。 王たちが自決する時間を稼ぐだけの不毛な時間稼ぎ。 しかし、彼らには意味のある時間だ。

片手がなくなれば、もう片方で。 片足がなくなれば、這ってでも立ち向かった。 刃が折れれば、相手の得物を奪い、奪えない時は自身の牙で相手に噛みついた。 最後は銃兵の戦死者から回収した手投げ弾でけじめをつけた。

こうして、王宮派の最後の抵抗はおわった。

が、宰相派には次のクライマックスが待っていた。

連合軍の攻撃だ。


<連合軍>


王宮を制圧した連合軍は、勢いそのままに後宮になだれ込んだ。

捕虜の情報で王宮派が数十名程度まで減っていたことを知った連合軍は、ほぼ動く兵は宰相軍と判断し、快進撃をした。 手投げ弾でバリケードごと吹き飛ばし、狙撃で相手を倒した。

進軍する事、2時間で最後の抵抗した場所についたが、すでに王宮派は玉砕した後でけじめをつけていた後だった。


「遅かったか・・・。 くそっ!」


連合軍の介入で獣王国の正統な王者は去った。

僅かな脱出者を残して・・・。

これにより獣王都と周囲の街も連合軍の管理するところとなり、宰相派は自身の領地と獣王都に面していた親派の貴族領2州のみとなった。


 

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最近、次の作品を少し考えております。 形にした際はまた投稿をしていきますので、よろしくお願いします。

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